top of page

『生きるための表現手引き』を読んで。【書評】

  • 2 日前
  • 読了時間: 14分

更新日:1 日前

生きるための表現手引き

NewsPicksパブリッシングから出版されている『生きるための表現手引き』


日々マーケティングの世界に身を置いていると、つい「どんな成果が出るか」「誰の役に立つか」といった目的や合理性を求めてしまいがちです。


しかし、本書が教えてくれるのは、そうした「意味」や「オリジナリティ」へのプレッシャーを手放し、日々の簡単な自炊や友人との会話、月に一度こうして『ほねろぐ』を綴るような小さな営みさえも「表現」として捉え直し、自分らしい生き方を取り戻すための視点です。


本記事では桜井が心に残ったパートを一部抜粋して、ビジネスや生き方に転用できる点、そして凝り固まった思考をほぐしてくれる気づきとしてまとめてみました。





【生きるための表現手引き】書籍説明


誰しもみんな、かつてはクレヨンの画家で、粘土の彫刻家で、前衛の作詞家・作曲家だった。


とめどなく溢れる、自分だけの創作や表現の意欲を持っていた。

大人になって、それを続ける人も一部にいます。

でもやめてしまう人が大半ではないでしょうか。

自らに備わる創造性を忘れ、自分は創造性とは縁がないと思ってしまう。


でも誰しも、手を動かして自分らしい生き方を取り戻すことができます。

日々の仕事は、簡単な自炊は、電話中の落書きは、友人との会話は、ちょっとしつこい調べ物は、大事な人への贈り物は、それぞれ自分だけの小さな表現です。

表現行為とは、生きる態度がいつのまにか変わることなのではないか──。

創作や表現に一歩踏み出したい人に向けた一冊。


◯表現を怖がらなくていい

◯職業でなくていい——生き方

◯普遍的でなくていい——個人的なこと

◯役に立たなくていい——好きなこと

◯表現とは旅をするようにつくる


(Amazonより)


生きるための表現手引き
生きるための表現手引き


「職業としての表現者」でなくていい


(本書より) 東北芸術工科大学の学長を務める中山ダイスケ氏は、毎年卒業していく学生たちに、次のように声をかけているそうです。 「創作を仕事にせず、傍らで続けなさい。創作したいのであれば、自由な時間のなかで続けなさい」と。 これは、わたしにとって意外なメッセージとして響きました。美術系の人々、先生であれ学生であれ、あるいはプロであれ、少なくない人が真逆の理想を掲げているように感じていたからです。わたしがこれまでよく耳にしてきたメッセージはこのようなものでした。 「自らがつくりたいもの、つくると決めたものをつくり続けなさい。芸術の純粋性を信じて、商業主義に染まらないように。他者や企業の考え方に合わせることなく、作家としてのあなた自身の美意識を存分に発揮しなさい。就職など、俗に染まるような『堕落』は避けなさいー」。

本書を読む前、私自身も「創作とは専業でなければならない」という無意識の縛りのようなものを感じていました。


しかし、本書を通じて伝わってきたメッセージはむしろ逆で、上記のように「創作を仕事にせず、傍らで続けなさい。創作したいのであれば、自由な時間のなかで続けなさい」と本業ではなく、むしろ傍らでも続けなさいという、いわば仕事ではなく心持ちとしての「創作」というスタンスでした。


むしろ仕事として、業務としてその作家性・芸術性が削がれ、商業性だけが残るようならそれは創作ではないとも取れるなと感じました。



「経済」で測らなくていい


(本書より) 資本主義リアリズムという言葉があります。 資本主義が浸透しきった社会において、それが唯一採りうる政治・経済体制であるかのように思われること、その代替案や外部を想像することすら難しい状態を指す、イギリスの批評家マーク・フィッシャーによる言葉です。 わたしたちが暮らす社会では、拡大し続ける格差や貧困、気候変動など、資本主義システムが外部とみなしがちな課題が多くあり、これらの根本的な解決は見出されていません。このまま自由競争のメカニズムに任せるだけでは、世界のあらゆる課題すべてが解決するわけではないことは明白です。 すべてを資本主義のシステムのなかで解決することはできない。資本主義社会は、主に短期的な欲望が可視化する場所です。競争が激しい企業や産業においては、いますぐ売れなければ意味がないとみなされる企画や商品もあるでしょう。一方で、資本主義経済が測るものは、あくまでいま現在の社会における価値軸、評価軸であることを忘れてはいけません。

地方ビジネスにおいても資本主義に置き換えられるもの、資本主義では置き換えてはいけないものがあります。


商売をする上で、明日・明後日の売上をつくるのはとても大切ですが、一方で売上だけを考えてしまうとかえって何のために続けているのかわからなくなるものがあります。


最近ニュースに出た以下のものなどはその最たるものではないでしょうか。


▼国立博物館や美術館に収入目標、未達成なら閉館含め再編検討…30年度までに文化庁



(ニュースより)国立の博物館や美術館の運営について、文化庁は来年度から5年間の次期中期目標で、収支均衡を目指した数値目標を定めた。未達成の場合、閉館も含めた再編を検討する。国費に頼らない財務構造への転換が目的で、中期目標には訪日外国人観光客が割高になる入館料の「二重価格」の導入も盛り込んだ。


アートは売上に直接反映されるものでしょうか。その作品を見て感動したり、明日への希望が湧いたり、心が豊かになるような経験に100円・1,000円・1万円の値付けができるでしょうか。


こうした経済的な指標では計れないものに経済指標を付与することはとてもナンセンスだと思います。


もし本当に経済指標で世の中を測ったときにどうなるか。アメリカ合衆国上院議員のロバート・F・ケネディが1968年にカンザス大学で行ったスピーチから一部引用して記載します。


(本書より) GNPで米国を測ったとき、この数値には大気清染やタバコ広告、殺傷現場に駆けつける救急車が含まれます。そして、玄関扉に備え付ける特殊な鍵と、その鍵を壊す者たちが入る刑務所も。また、ナパーム弾、核弾頭、そして都市の最動を鎮圧するための装甲車も。 子供たちに玩具を売るために暴力を正当化するテレビ番組も含まれているのです。 しかしGNPは、子供たちの健康や、教育の質や、遊びの喜びを勘案しません。詩の美しさも、結婚の強さも、交わされる議論の知性も、政治家の誠実さも、勘案しません。わたしたちの理性も勇気も測ることができません。GNPはすべてのものを端的に測り、表します。 私たちの人生に価値を与えるもの以外の、すべてを。 ジョン・F・ケネディ大統領図書館・博物館 “Remarks at the University of Kansas, March 18,1968"より著者抄訳


「重要なこと」でなくていい


(本書より) 一方で、社会常識や資本主義経済の論理で説明できないものは、しばしば役に立たない、とるにたらないとされます。 たとえば足の親指が触れる靴下の縫い合わせの感触が心地よいとか、セミの抜け殻を踏みつける感触が忘れられないとか、ラジオ体操をしていると「からだをねじる運動」に追いつけず遅れてしまうとか、友人同士での飲み会の会話をこっそり録音して半年後に聞き返すのがたのしいとかという話に触れたとして、それは必ずしも多くの人の共感を誘うものではない。頷く人、好きな人も一部いるかもしれませんが、常識からは遠いし、いわんや企業がサービスや商品に生かす展開は望めない。

創作において、経済に並んで「こうしなければならない」の呪縛の1つとして「重要なことを創作しなければならない」という強迫観念です。


実際、本書では重要でなくても構わないとしており、上記のような些細なこと・多くの人の共感を誘うものでもよしとしています。


▼とるにたらないこと・重要なこと


「重要なこと」でなくていい
『生きるための表現手引き』より弊社にて作成

認められず、説得しづらく、非論理的で、少人数的なことでも良い。むしろその方が創作性を発揮できるとさえ感じます。



「生きのびる」でなくていい


(本書より) 歌人の穂村弘は『はじめての短歌』(河出文庫)のなかで、これを「生きのびる」と「生きる」の対比として表現しています。 「生きのびる」が前者の合意しやすいほうで、「生きる」が後者の容易には合意しがたい、でもなにかがあるほう。 生きのびる、というのは、生活するために、お金を稼ぎご飯を食べるなど、日常生活のインフラを安定させる行為です。これは生命維持のために必要不可欠な一連の営みですが、それだけが目的になると徐々につらくなるものです。

▼生きる・生きのびる


『生きるための表現手引き』より弊社にて作成
『生きるための表現手引き』より弊社にて作成

「生きる」ではなく、「生きのびる」ことのなにがつらいって、価値基準が「お金に換算可能」なものによっていってしまうことなんだと思います。


世の中にはお金に換算可能なものばかりではないが結果的に、お金に換算可能なものばかり探してします。お金に換算可能なもの以外は価値のないものと思い込んでしまう。


すると次第に自分は何が好きか?がわからなくなるんじゃないかと思います。社会の物差しばかりを優先してしまうとかえって自己がなくなってしまうのではないかと感じました。



「普遍的」でなくていい


(本書より) 「普遍」は、自然科学系の、再現可能性の高い知的営みと重なります。たとえば鉄球を斜塔から落とすとき、地面につくまでの時間は複数回やっても(ほぼ)一定のはずで、計算も再現も可能です。先の議論における多くの人が共有/合意するであろう「共通言語」にも対応します。 一方で「ただいちどの人生」とは、人文学的な知、つまりたった一人のいま・ここに関する、およそ再現できないことを指します。ある地域の歴史は、その時代のその場所で、そこにいた人たちのあいだで起こったできごとであり、その後は類似した場面こそあれど、再現されることはありません。教科書に載るような歴史的なできことは社会の共通言語になりうるものですが、一方でわたしたち一人ひとりの、一見「とるにたらない」人生や表現は、この「ただいちどの人生」に共鳴します。

『生きるための表現手引き』より弊社にて作成
『生きるための表現手引き』より弊社にて作成

よくビジネスシーンでは「再現性」「生産性」「一般化」のような、社内の知見をどのようにして平準化していくかという議論になりがちなのですが、それはあくまでもビジネスの一側面であり、これまで積み重ねてきた会社の歴史、地域の文化、伝統工芸の職人芸などの人文学としての積み重ねもまた、忘れてはいけない価値なんだと思い出しました。


ロジックを組み合わせて最適解を導いていく自然科学的な脳みそと、理屈では語れない偶発的に起こった文化や伝統へのリスペクトを持つ人文学的な脳みそ、この2つを持てるビジネスマンはとても強いなと感じました。



おわりに:ささやかな「存在」


私事ですが、わたしはさいきん母を亡くしました。わたしは、医師の友人に、母の生前から医療的な相談をしていたため、その日の夜、死の報告と、これまでお世話になったことのお礼の連絡をしました。すると彼女は、「すぐに会いに行く」と提案してくれました。 きっとこんな日にひとりでいたくはないのではと考えてくれた。彼女は、「話し相手になれるよ。もしひとりはいやだけど誰とも話したい気持ちじゃないなら、同じ場所にいて、歯の部屋か、部屋の隅でただ本を読んでいることもできる」と言葉をかけてくれました。 わたしの母は数年前の闘病から徐々に体力を落としていったので、わたしにとってはその後が特別に悲痛なものではなく、一人でいられないという実感こそなかったものの、こんなにあたたかな心の寄せ方があるのだなと嬉しくなりました。その言葉に甘えて、晩ごはんをき一緒して、笑いながら話すことができました。

すごく素敵だなぁと思ったのが、「話し相手になれるよ。もしひとりはいやだけど誰とも話したい気持ちじゃないなら、同じ場所にいて、歯の部屋か、部屋の隅でただ本を読んでいることもできる」といったセリフです。


まるで村上春樹の本の中に出てくる主人公のような言葉だと思ったし、こういった言葉を自然に吐けるようになりたいな、まだまだ人間を磨かなきゃいけないなと思いました。



HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。


日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。


地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。


HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。


▼HONEにできること


語られていない価値の「骨」を探す

商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。


現場に入り、五感を使って「骨」を磨く

戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。


手を動かしながら、「骨」を強くする

支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。


文化となる「骨格」を、未来へ残す

目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。


▼HONEにできること


▼HONEの強み


01/一貫サポート

戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。


02/現場主義

デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。


03/全国実績

北は北海道、南は沖縄まで、一次産業から観光、教育、行政、ベンチャー、スタートアップ、アトツギなど、多種多様なプロジェクトに携わってきました。たくさんの地域を見てきたからこそ、それぞれの良さに気づくことができます。そして土地に根付くその事業の「らしさ」を、より鮮明に見つけることができます。全国各地で積み重ねた知見を、次の挑戦に活かします。


04/産学官連携

企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。


▼HONEの強み


なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。


制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。


なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


地方に必要なのは、「地域理解」


こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。


地方に必要なのは、「地域理解」

\こ相談はこちらから/


HONEサービス一覧
voicyはじめました。
youtube はじめました


その他、気軽にマーケティングの相談をしたい方のための「5万伴走プラン」もスタートしました。詳細はバナー先の記事をお読みください!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


5万併走

\こ相談はこちらから/



【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

bottom of page