2021年にNHKの大河ドラマの主人公、そして2024年、1万円札の肖像が渋沢栄一さんに変わりました。再び時の人となった渋沢栄一さんですが、著書「論語と算盤」では道徳と経済の両立を説いた実践的な教えとして知られています。
本書から地方マーケティングに活かせるヒントがいくつか見つかったため、備忘録として書き残しておきます。
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目次
その1.地方は都落ち?
その2.逆境を乗り越えるには?
その3.与えられた仕事は全生命をかけてやる
その4.大きな志と小さな志を調和させる
その5.「できない人」を「できる人」に導く
論語と算盤について
2021年にNHKの大河ドラマの主人公に、そして2024年に1万円札の肖像が渋沢栄一さんに変わります。
しかし、あなたはどれだけ栄一のことを知っているでしょうか?なぜ、栄一の著書『論語と算盤』は、不朽の名作として読みつがれているのでしょうか?
栄一は「日本の資本主義の父」と呼ばれ、生涯に500もの会社の設立に関わり、資本主義(商工業)の発達に尽力して、日本の経済の礎を築いた人物です。
その1:生涯
その2:代表作『論語と算盤』
その3:歴史的な関連人物
3つの側面から、縦横に渋沢栄一を掘り下げ、図やイラストを多用してわかりやすく解説します。(Amazonより抜粋)
なぜ今、渋沢栄一なのか
大企業による事業の独占、税金逃れ。富裕層がお金を増やす一方で、貧しい家庭が増え続ける格差社会……。こうした現在の日本を渋沢栄一が見れば、「私はこんな未来のために働いたのではない」と嘆くでしょう。
なぜなら、栄一は「道徳経済合一論」を唱え、経済活動で得た利益は、みんなでシェアする社会を理想としたからです。しかし、本書の著者・齋藤孝先生は次のように語ります。
「今の時代にもう一度渋沢栄一に光が当たって、新しい1万円札を見るたびに『これから先、みんなが益するような社会にしていきたい』と願えば、日本はまだまだ明るい方向に発展していくことが期待できます」
ぜひ本書から、栄一の心の動き、強い精神、知力の働きというものを学び、日々の活動に活かしてください。(Amazonより抜粋)
印象に残ったシーン
それでは早速、本書内で印象に残ったシーンを抜粋してご紹介したいと思います。シーンとともに、なぜ地方マーケティングに生きるのか?についてもあわせてご説明していきたいと思います。
その1.地方は都落ち?
エリートが官僚になるのは当然だという考え方は、長い間ありました。帝国大学(東京大学)ができるのは少し時代が下ってからですが、帝大の法学部は、もともとは官僚養成のための場所でした。それが第一の目的になっていたので、卒業生が一般の企業に勤めることを「民間に行く」と言いました。明治時代は、官僚になって天下国家を担うのがエリートのすべきこととされていたのです。 その後、帝大を出て民間の銀行や大企業に勤める学生も増えていきます。官民のバランスをよくしていこうという栄一の考えには先見の明があったのです。(本書no.497)
今でこそ、役人と民間の序列や差のようなものはなくなってきました。むしろ最近は一部の役所で人手不足・定員割れも話題となっています。
「せっかくいい大学に出たのだから東京へ働きに出るべき」や「中小企業ではなく大企業に行くべき」といった意見をすべて否定するわけではありませんが、地方にもいい仕事、会社はたくさんあります。
むしろ、地方マーケターとして私が感じるのは、ヒト・モノ・カネなどの様々なリソースが足りていない地方の方が、むしろ成果を出すための難易度が高いのではないか?ということです。
地方へ行くことは都落ちではなく、むしろ使命感を持って取り組む覚悟の表れであり、難易度の高いミッションへ取り組むやりがいを得られる場所だと私は思っています。
その2.逆境を乗り越えるには?
世の中に逆境は絶対にないと言い切ることはできないのである。ただ順逆を立つる人は、よろしくそのよって来るゆえんを講究し、それが人為的逆境であるか、ただしは自然的逆境であるかを区別し、しかる後これに応ずるの策を立てねばならぬ。 齋藤孝. 図解 渋沢栄一と「論語と算盤」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.730-733). Kindle 版.
渋沢栄一さんは「逆境というのは必ずあるものだから、まずは、それが人為的な逆境なのか、自然的な逆境なのかを区別しよう」と言っていたそうです。
自然的な逆境の場合は、その状況を受け入れて勉強しながらチャンスを待ち、人為的な逆境の場合は、反省して悪い点を改めることが肝要となります。
私自身も体育会系であり、採用する人やプロジェクトをともにするパートナー企業についても体育会系の人を重要視しているのですが、それは「逆境の中で培われた精神力」があるからだと思っています。
また、逆境力のある人というのは、「何でもかんでも跳ね返して努力する人」ではなく、「いったい自分はどの逆境に立ち向かい、進んでいかなければならないのか?を考えられる人」ではないかと思っています。
その3.与えられた仕事は全生命をかけてやる
与えられた仕事にその時の全生命をかけて真面目にやりえぬ者は、いわゆる功名利達の運を開くことはできない。──第2章立志と学問[自ら箸を取れ] 齋藤孝. 図解 渋沢栄一と「論語と算盤」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.822-824). Kindle 版.
渋沢栄一さんは「全生命をかけて、与えられた仕事を真面目にやらない人は、道を開くことはできない」と言っています。また昭和恐慌のときに大蔵大臣として辣腕をふるった高橋是清さんもこう言っています。
「自分の与えられた仕事が重いとか軽いとか言う前に、与えられたものは一生懸命やれ」。
任務が重すぎて自分の力量ではこなせないことを「力不足」、力量があるのに仕事が軽いことを「役不足」と言いますが、そういうことは関係ないのです。できなら自分一人で完遂すればいいし、できないのなら周りの人に助けを得ながら完遂すればいいだけだと思います。
与えられた仕事を全生命をかけて真面目にやる、ということはとても当たり前のことですがすべての人ができることではありません。
よく、「地方創生に興味がある」と相談を受けることがあるのですが、では「まずは10人の地域住民の皆さんの声を聞いてみよう」というと、大抵の人は10人の話を聞く手前でやめてしまいます。
仕事というのは大抵が面倒なことであり、多くの人がやりたがらないものだったりします。仕事のいいところだけを切り取ってやる、のような虫のいい仕事はなく、大変で面倒で人がやりたがらない仕事の先に結果があると信じています。
その4.大きな志と小さな志を調和させる
つまり大なる立志と小さい立志と矛盾するようなことがあってはならぬ。この両者は常に調和し一致するを要するものである。──第2章立志と学問[大立志と小立志との調和] 齋藤孝. 図解 渋沢栄一と「論語と算盤」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.844-846). Kindle 版.
志を立てることを大事にする渋沢栄一さんは、志を大きなものと小さなものに分けて、「大きな志と小さな志が調和するのがいい」と言っています。
人生という建築があるとすれば、大きな立志は建物であり、小さな立志がその基礎にある。そうした骨組みが重要だと説きました。
地方で仕事をしていると、正直あまりお金になりづらい仕事というものがそれなりにあります。直接仕事にはつながらないけれど、地元の付き合いやどうしてもやらなくてはならないことです。
地方のしがらみとも言えるかもしれませんし、それが嫌で地方を離れる人も少なくないと思っています。ただ地方に根ざして働くというのはその面倒さやしがらみと付き合っていく必要があると思っています。
自分にとってはあまり大切だとは思えないけれど、先人にとって大切ならやろう!というある種の割り切りも必要になります。
またもう1つ、「ライスワーク」と「ライフワーク」という考え方があります。ライスワークとはお金のための仕事で、ライフワークとはやりがいや生きがいを得られる仕事のことを指します。
私自身、渋沢栄一さんの言葉(大きな志と小さな志)の解釈としては、「お金のためだけに働くこと」というのは立志に反するのではないかと考えています。常にライスワークとライフワークが重なる場所を探し、割り切らずに理想を求めていくことがそれらを調和させるはずだと思っています。
その5.「できない人」を「できる人」に導く
しかし、悪人必ずしも悪に終わるものでなく、善人必ずしも善を遂げるものとも限らぬから、悪人を悪人として憎まず、できるものならその人を善に導いてやりたいと考え、最初より悪人たることを知りつつ、世話してやることもある。──第3章常識と習慣[悪んでその美を知れ] 齋藤孝. 図解 渋沢栄一と「論語と算盤」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.921-924). Kindle 版.
渋沢栄一さんは、生涯に500近い数の会社の設立に関与したため、人から相談を受けたり物事を頼まれたりする機会も多くあったそうです。
通常なら、栄一さんのような大きな仕事をしている人は、頼まれたからといっていちいち人に会うことはしません。ところが、彼は頼まれれば断らずに面会したのです。それを自ら「門戸開放主義」と言っています。
その主義につけ込んで、無理なことを言ってきたり、「お金を貸してくれ」と頼んだりする人もいたのですが、それでも面会を断りません。並大抵のことではありません。
今の時代、「なんでも相談に乗るよ」と言いながらも、よく知らない人から「お金を貸してくれ」なんて言われたら困ります。しかし、栄一さんはお金を無心する人の話も拒絶せずに聞きました。送られてきた手紙も門戸開放主義で、すべて目を通して面会したそうです。
「悪人が必ずしも悪人に終わるとはかぎらない。だったら善に導いてやりたい」という考え方で、評判の悪い人からの相談も聞き、じつに器の大きい人でした。
渋沢栄一さんほどの人でもここまでオープンマインドなのか!と驚きました。
私も普段忙しいそぶりを出してしまったり、明らかに自分に利がないばかりか負の何かをもらってしまいそうな人がいた時、つい避けてしまったり連絡を取らないようにしてしまう自分の器の小ささを恥じました。
自分というものを勘定に入れず、できることを最大限やり、多くの人のために自分のスキルと経験を使い果たしていきたいと改めて感じました。
最後に
以上が図解 渋沢栄一と「論語と算盤」でした。
本書の最後に「一人ひとりの人間の倫理観が足りないとき、経済活動は利益中心になる」という言葉があります。利益は大切ですが、利益だけを追い求めてしまったとき、果たして人間は本当にがんばれるのか?ということです。
「論語で一生を貫いてみせる」と語り実践されてきた渋沢栄一さんのすごさを改めて感じ、私自身も実践をし続けようと改めて思いました。
HONEのスタンスとサービス
私たちHONEのミッションは「日本中の地方にマーケティングを実装すること」です。これからも地方に根ざし、マーケティングの力で地方・地域の文化・習慣を守るお手伝いをしていきます。
主なクライアントさんは地方であり、北は北海道、南は九州までさまざまです。
HONEが大切にしている価値観や代表桜井の想いについては以下をご参照ください。
当社では「地方×マーケティング」に特化したサービスの提供を行っています。
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地方マーケティング壁打ちサービスについて
例えば、以下のようなお悩みの方に最適なサービスだと考えています。
①何から始めていいかわからない
マーケティングの悩みは多岐にわたります。「売上を上げたい」「集客を増やしたい」「ブランドコンセプトを見直したい」「市場分析市場分析を実施したい」「SNSを始めたい」など、多くの打ち手はありますが、何から始めていいかわからない…。第1歩としてご活用ください。
②新商品・新サービスの相談がしたい
新しい商品やサービスが果たして売れるのか?消費者にとって有益なものになっているのか?についても重要な要素です。市場に受け入れられそうか、競合優位性はあるか、自社の強みは行かせているのか、など、マーケティング・ブランディングの両視点からお話をさせていただきます。
③地域/まちづくりの相談がしたい
地方は「1社、単体のブランド」だけでなく、地域コミュニティ全体で同じ方向を向きながらインパクトを残していかなければなりません。民間だけでなく、自治体や第3セクターなど、官民が連携して1つの目的に向かっていくためにどんなスキームで進めていけばいいか?についても専門家の視点からアドバイスいたします。
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以上、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
【記事を書いた人】
株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。
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