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「駅前に人がいない」は本当か?島田駅前の数字から考える、地域課題の見つけ方

  • 18 時間前
  • 読了時間: 14分
AIに読まれる記事と、人が読みたくなる記事は何が違うのか?

HONEの検索データから見えた、これからの記事づくり

地域の課題について話すとき、「人がいない」「店が減った」「まちに活気がない」といった言葉がよく出てきます。


もちろん、現場で感じる体感値はとても大切です。ただ、その実感だけを出発点にしてしまうと、原因と課題が混ざり、打ち手を誤ることがあります。


今回、2026年8月19日におびサポPLUSにて開催するイベント「島田駅前公開作戦会議」の準備として、島田駅前・中心市街地に関する公的データを調べてみました。


調査前は、私自身も「島田駅前は人が少ないことが課題なのではないか」と思っていました。しかし、数字を比較していくと、それほど単純ではありませんでした。


結論から言えば、島田駅前の課題は「来る人がいない」ことだけではなく、


駅、公共施設、店舗、創業者など、すでに存在する人や機能が、滞在・回遊・消費・挑戦へつながっていないこと

にあるのではないか、と私自身は考えています。

ただし、これも現時点では仮説です。今回は、島田駅前の数字を題材にしながら、地域課題をどのように見つけていけばよいのかを整理していきます。


おびサポPLUSとは


「おびサポPLUS(プラス)」は、静岡県島田市が設置する産業支援センター「おびサポ」の機能と名称を拡充し、2026年7月3日にリニューアルオープンした新しい産業支援拠点です。


JR島田駅前(島田商工会議所会館内)に位置し、オープンイノベーション、新規事業の創出、企業のDX推進、マッチング人材の育成などを通じて地域経済循環率の向上図る拠点として機能しています。


明るいコワーキングスペースで、複数の人が木製テーブルでノートPC作業。窓に「asippo」ロゴ、白い室内に自然光が入る。
おびサポPLUS





数字は、比較して初めて「課題」になる


例えば以下の数値左上に記載している「中心市街地の通行量は5,890人/日です」と言われても、それだけではこの人数が多いのか、少ないのかが分かりません。


緑基調の日本語インフォグラフィック。島田駅前の通行量、JR島田駅利用、公施設利用、商業満足度、人口・高齢化、店舗減少などの数値比較が並ぶ。
島田市公開資料よりHONEにて作成

数字を課題として扱うには、少なくとも次の4つが必要となります。


  • 現在値:いま何が起きているのか

  • 比較値:いつ、どこ、何と比べるのか

  • 差分:どれくらい変化したのか

  • 原因仮説:なぜ、その変化が起きたのか


さらに、測定地点、調査時期、実人数か延べ人数か、市全体か中心市街地か、といった定義もそろえる必要があります。


島田市の令和6年度評価書では、中心市街地の通行量は基準値6,384人/日に対して5,890人/日となり、494人、約7.7%減少しています。


一見すると「通行量が減っていることが課題」と言えそうです。


しかし、人口も同じ程度に減っているなら、通行量の減少は駅前固有の問題ではなく、人口減少に伴う自然な変化かもしれません。


「数字が減ったこと」と、その数字が減った原因の根本的な問題は何か?まで深掘りして考えることが必要となります。


緑色の解説インフォグラフィック。数字は比較して初めて「課題」となる、現在値5890人/日、比較値6384人/日、差分-7.7%と示す。
中心市街地の通行量


通行量は、人口以上に減っているのか?


島田市の資料には、測定地点や評価上の定義が異なる複数の「通行量」があります。

中心市街地8地点を同条件で調べたデータでは、歩行者・自転車の通行量は次のように推移しています。


  • 令和4年:8,043人

  • 令和6年:7,589人

  • 2年間で約5.6%減少


一方、中心市街地の人口は、平成26年の9,141人から令和5年の8,393人へ、9年間で約8.2%減少しています。島田市全体も同じ9年間で約5.2%減少しました。


ここで注意したいのは、通行量は2年間、人口は9年間の変化だということです。


期間が違うため、「通行量は人口以上に減っている」とは言いにくい状況です。反対に、「通行量の減少はすべて人口減少で説明できる」とも言えません。


今後、確認したいのは、同じ期間における中心市街地人口と通行量の変化、つまり「人口1人当たりの通行量」です。


また、通行量調査は毎年11月の平日、9時から19時まで、指定地点を通った歩行者と自転車を目視で数えたものです。イベント開催、天候、曜日、通勤・通学行動などの影響も受けることになります。


通行量は重要な指標ですが、これだけでまちの状態を決めることはできません。


流用:


緑基調の日本語インフォグラフィック。中心市街地8地点の通行量がR4の8,043人からR6の7,589人へ減少。人口も9,141人→8,393人、通行量減少=衰退ではないと示す。

島田駅の平均乗車人員は藤枝駅の半分。ただ六合駅・金谷駅を含めると見方が変わる


令和6年度のJR島田駅の1日平均乗車人員は、約4,820人です。


同年度の藤枝駅は10,195人。島田駅単独で比較すると、藤枝駅の約47%しかありません

この数字だけを見ると、「島田駅は藤枝駅と比べて利用者が極端に少ない」と感じます。


しかし、島田市内には島田駅、六合駅、金谷駅の3駅があります。島田市統計書の年間乗車人員から1日平均を計算すると、次のようになります。


  • 島田駅:約4,820人/日

  • 六合駅:約2,892人/日

  • 金谷駅:約1,622人/日

  • 3駅合計:約9,335人/日


市内3駅を合計すると、藤枝駅の約91.6%にあたります。


もちろん、3駅合計と藤枝駅を比較して、島田駅前に問題がないと言うことはできません。ただし「島田駅の利用者が少ない」という現象には、市内の鉄道利用が3駅に分散していることも影響しています。


藤枝市の方が人口が多いことに加え、藤枝市内のJR駅は藤枝駅のみです。また、藤枝駅周辺では、マンション、商業施設、図書館、再開発など、都市機能と居住機能を駅周辺へ集める取り組みが長期間続けられてきました。


つまり、差の理由は人口規模だけではありません。


  • 市内にある駅の数

  • 駅を利用する範囲

  • 静岡市などへの通勤・通学動線

  • 駅周辺の住宅供給

  • 商業・公共機能の集積

  • 長年の再開発や土地利用


といった複数の要因が関係しています。


大切なのは、藤枝駅との数字の差だけを見て終わるのではなく、「なぜその差が生まれているのか」を構造として考えることです。


流用:


緑色の鉄道利用比較インフォグラフィック。JR島田駅・島田市内3駅・JR藤枝駅の利用者数と、藤枝駅の約91.6%と表示。


公共施設には、年間51.5万人が来ている


中心市街地にある8つの公共施設・集客施設の令和5年度の延べ利用者数は、515,298人でした。


これは実人数ではありません。同じ人が図書館を10回利用すれば、10人として数えられます。それでも、中心市街地には相当な利用目的と人の動きが存在しています。


推移を見ると、次のようになります。


  • 令和元年度:615,286人

  • 令和4年度:498,824人

  • 令和5年度:515,298人


令和4年度から令和5年度にかけては約3.3%増えています。一方、コロナ禍前の令和元年度と比べると、まだ約16.2%少ない状態です。


増加分を施設別に見てみると、主にこども館のプラス17,349人、横井運動場公園のプラス9,289人が牽引しています。


反対に、島田図書館やしまだ楽習センターなど、利用者が減っている施設もあります。


したがって、「公共施設が一様に好調」とは言えず、子ども・スポーツ系施設を中心に利用が戻っている、と読む方が適切です。そして、ここで最も知りたいのは、施設を利用した人が、その前後にどこへ行ったのかです。


こども館を利用した親子が、近隣で昼食を食べているのか。図書館の利用者が商店街を歩いているのか。運動場へ来た人が駅南側だけで帰っているのか。


現在のデータからは、そこまで分かりません。


島田駅前の課題は、公共施設の集客力そのものより、施設利用を次の立ち寄り、買い物、交流へつなげられていないことかもしれません。


緑基調の自治体インフォグラフ。年間51.5万人、中心市街地8施設の延べ利用者の棒グラフ、子ども館と横井運動場公園の増加数、下部に外へ回遊は未測定。


「住みやすい」と「活気がある」は両立していない


島田市の市民アンケートでは、「たいへん住みやすい」「どちらかといえば住みやすい」と回答した人の合計は86.2%でした。


島田市は、多くの市民にとって住みやすいまちです。


一方、住みやすいと答えた1,126人に、その理由を複数回答で聞くと、「買い物、通院など日常生活を送る上での利便性が良い」は22.9%でしたが、「まちに活気がある」は0.3%でした。


また、住みにくいと回答した179人では、「まちの活気がない」と「買い物、通院など日常生活を送る上で不便」が、それぞれ86人で最多でした。


設問や回答者の母数が異なるため、これらの数字を直接比較することはできません。ただし、島田市に対する評価には、


静かで暮らしやすい。一方で、まちの活気や買い物の選択肢は感じにくい

という二面性があるのだと思います。


駅前活性化というと、大型イベントや新しい施設を呼び込みたくなるものです。


しかし、日常の安心や静けさを壊してまで、人を増やせばよいわけではありません。

必要なのは、住みやすさを守りながら、歩いて立ち寄れる場所、選べる店、偶然人と会う機会を少しずつ増やすことではないでしょうか。


流用:

緑基調の統計インフォグラフィック。島田市は住みやすい86.2%、理由は日常生活の利便性22.9%、住みにくい理由はまちの活気がない・日常生活が不便各86人と表示。


創業者が減っているのではなく、地域の器が縮んでいる


島田市商店街連合会の加盟店は、平成26年度の123店から令和5年度の88店へ、9年間で約28.5%減少しています。ただし、これは中心市街地にある全店舗の数ではありません。あくまで商店街連合会の加盟店数です。


また、減っているのは創業者ではありません。令和6年度には、島田市産業支援センターの支援により、市内で24人の新規創業者が生まれています。


つまり、


新しい挑戦は生まれている。一方で、既存店の廃業や退会が続き、それを受け止める地域のネットワークが縮小している

という状態です。


人口減少による需要縮小も背景にはあると思いますが、それだけでなく、店主の高齢化、後継者不足、新しい店舗が商店街へ加盟しないこと、創業者と既存商店との接点が少ないことなども考える必要があります。


創業支援を「店を開くまで」で終わらせず、開業後の定着、既存店との連携、空き店舗とのマッチング、事業承継までつなげていくこと。ここに、おびサポPLUSのような中間拠点が担える役割があるのではないかと思っています。


緑基調の支援制度インフォグラフィック。商店街加盟店が123店から88店へ減少し、24人支援で創業・事業承継や空き店舗連携を示す。


島田駅前の課題は「不足」より「接続」かもしれない


ここまでの数字を整理すると、以下の通りとなります。


  • JR島田駅には1日約4,820人が乗車している

  • 中心市街地8施設には年間延べ51.5万人が来ている

  • 商業振興への満足度は低く、改善への期待がある

  • 市内では新しい創業者も生まれている

  • その一方で、通行量、居住人口、商店街加盟店は減っている


ここから考えられるのは、「人を集める機能がない」のではなく、それぞれの人や場所が点のまま存在している可能性です。


駅を利用しても、そのまま家や職場へ向かってしまう。公共施設を利用しても、別の場所へは立ち寄らない。新しく創業しても、既存の商店や地域活動とはつながらない。商店主が後継者を探していても、挑戦したい若者と出会えていない。


このような「接続が切れている場所」を見つけ、つなぎ直すことが、駅前活性化の一つの方向性になると思っています。


そのために、島田駅前の産業支援センターであるおびサポPLUSが担える役割は、次の5つではないかと考えています。


1.見える化する

通行量や施設利用者数だけでなく、「誰が、何のために来て、次にどこへ行くのか」を調査。数字と当事者の声を重ね、問題と原因を分けていきます。


2.つなぐ

公共施設と店舗、創業者と既存商店、学生と地域事業者、空き店舗と挑戦したい人をつないでいきます。


3.小さく試す

大規模事業を始める前に、施設利用者向けのまち歩き、商店との共同企画、駅利用者向けの夕方イベントなどを小さく実施します。


4.育てる

一度のイベントで終わらせず、反応のあった企画や人を継続的に支援します。


5.記録し、検証する

参加者数だけでなく、回遊先、再訪、購買、相談、創業、連携など、その後に何が起きたかを記録していきます。


地域課題は、最初から明確な形で存在しているわけではありません。


数字を比較し、現場の声を聞き、仮説を立て、小さく試す。その結果から、もう一度課題を捉え直す。この繰り返しが必要です。



答えを決めるのではなく、島田駅前の問いを持ち寄る


以上のようなファクトをベースにして2026年8月19日、おびサポPLUSで「島田駅前公開作戦会議」を開催します。


この会議で、島田駅前の答えを決めるつもりはありません。

市役所職員、地域事業者、フリーランス、市民など、異なる立場の人が集まり、模造紙と付箋を使いながら、


  • 島田駅前では、何が起きているのか

  • それはなぜ起きているのか

  • 本当に取り組むべき課題は何か

  • おびサポPLUSは、どんな役割を担えるのか


を考えていきます。


「人がいない」と決めつけるのではなく、どこに人がいて、どこで流れが切れているのかを見る。問題を急いで解決する前に、まず、解くべき問いを地域で共有したいと思っています。




HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。


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【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

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