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命をいただくことを、未来へつなぐ〜株式会社クロキ・黒木千佳さんが挑む、新しい肉屋のかたち〜【福岡県みやま市】

公開日:

2026年2月23日

最終更新日:

2026年2月23日

命をいただくことを、未来へつなぐ〜株式会社クロキ・黒木千佳さんが挑む�、新しい肉屋のかたち〜【福岡県みやま市】

福岡県みやま市で50年以上にわたり九州和牛を扱ってきた食肉卸業、株式会社クロキ。

地域の飲食店や小売店を支え、歩んできた老舗企業です。三代目として新たな風を吹き込んでいるのが、黒木千佳さんです。家業のDNAである「食肉卸業」を受け継ぎながら、卸の枠を超えた商品開発やスキンケア事業に挑戦されています。

今回はその体験と、未来へのビジョンを伺いました。


株式会社クロキHP https://www.kuroki-group.com/



挫折と学びを経て見つけた「ワクワク」の力


取材中の黒木千佳さん
取材中の黒木千佳さん

黒木さんが家業に入ることになった背景には、黒木さんが立ち止まらざるを得なかった時間がありました。

大学時代、環境問題への関心からオーストラリアへ留学。エコツーリズムを学ぶ中で、「人はワクワクする体験を通してこそ、自然に環境を大切にしようと思える」と考えるようになったそうです。

「強制ではなく、楽しさから始まる変化に意味があるのではないか。」

将来は観光や環境分野で働きたいと考えていたそうです。

しかし帰国後、世界はコロナ禍へ。観光業界は停滞し、内定していた東京の企業への就職も、心身の不調から断念せざるを得なくなります。

周囲が前へ進む中、自分だけが立ち止まっているような感覚。 

「努力すれば叶う」と信じてきた前提が崩れていく中で、プライベートな出来事や睡眠不足も重なり、軽度のうつ状態に陥ってしまいました。


そんなとき、支えになったのは家族の存在でした。

特にお姉さんの「専門家に相談した方が、周りも本人も安心できるよ」という一言が、病院を受診するきっかけになったそうです。ちゃんと向き合うべき状態なのだと認めてもらえたことは、大きな救いだったといいます。

そして、お母さまからかけられた言葉。受験の挫折時にも言われた言葉だったそう。


「置かれた環境で、自分らしく輝きなさい。」


環境は選べなくても、その中でどう生きるかは選べる。黒木さんは心理学や仏教を学び、自分の内面と向き合い始めます。


「特性の表れなんじゃないかと思えたんです。」


出来事を否定せず、押し殺さず、自分の力へと変えていく。この時間が、家業の中で新たな価値を見出す土台になっていきました。「弱さ」と思っていたものを「力」に再定義する姿勢こそ、黒木さんの強さと優しさなのだと感じます。



小学生の頃から抱えていた葛藤


幼少期の黒木さん
幼少期の黒木さん

黒木さんの葛藤は、実はもっと前から始まっていました。

幼い頃から正義感が人一倍強く、曲がったことが嫌いな性格だったのだそう。

中学時代の部活動では、理不尽な上下関係や、友達が先輩から不当に呼び出されることが許せず、先生に報告して改善を求めていました。男女問わず、いじめのような振る舞いがあれば「何しとんねん」と怒って割って入ることもあったといいます。学校生活でも非常に活動的で、応援団長やパネル長を務めるなど、自分がやりたいと思ったことには全力で取り組み、実現させていく頑張り屋さんでした。

不条理を自分ごととして捉え、まっすぐ向き合い、努力を惜しまない。その姿勢は、今の黒木さんの原点なのだと感じます。


小学生の頃に見た「牛のメタンガスと地球温暖化」のニュースも、その正義感に強く響いた出来事でした。

自然を守りたいと思っていた黒木さんにとって、大きな衝撃だったのです。


「うちは肉屋なのに、環境に悪い仕事なのかな・・・」


複雑な気持ちを抱き、人間が地球を汚しているという事実をすべて自分ごととして捉え、心を痛めていました。この経験が、後に中学・高校で環境問題を熱心に学ぶきっかけになったのだと思います。

家業への誇りと、環境への理想。矛盾を感じながらも進学や留学の経験を経て、考え方は少しずつ変わっていきます。


「ゼロか百かじゃない。肉は人類の栄養を支えてきた存在でもある。だったら、やめるのではなく、どう向き合うかを考える人が必要なんじゃないか。」

その問いの先に生まれたのが、黒木さんの人生ミッションです。


「ワクワクを通じて、地球を思いやるきっかけをつくる。」


この想いは、事業の根幹であると同時に、家族や社員の方々への眼差しにも通じているように感じました。否定ではなく対話を。強制ではなく楽しさを。

理想と現実の間で揺れた時間があるからこそのパワーも優しさもあるのです。



「一人じゃない」と気づかせてくれた、アトツギ仲間


アトツギジャンプ
アトツギなかまのみなさま

心の不調と向き合いながら、黒木さんはまず「手伝い」という形で家業に入ります。

当時は、お父さまから明確に「継いでほしい」と言われたわけではなく、「とりあえず手伝ってみようか」という距離感だったそうです。

転機となったのは、2024年に参加した福岡県の後継ぎ支援プログラム「アトツギ・ジャンプ」です。

家業の伝統を守りながら、未来を本気で語る同世代の後継者たちと出会いました。同世代の後継者たちが、熱量高く夢を語っていた姿に共鳴するように、継ぐ覚悟が芽生えてきたそうです。


「大きな夢を話しても笑われない場所なんです。」


笑顔で話す姿が、とても印象的でした。仲間がいるから相談できる。励まし合える。「孤独を解消する」ことは、乗り越えるために大切な場所なのだと改めて思いました。



本当に守りたいものは「いのち」に誠実であること。


研究ノート
研究のノート

黒木さん

かつてお父さまは、「家業は俺の代まで」と漏らしていたそうです。食肉卸は、生産者と販売先の間に立ち、価格交渉や責任を一手に引き受ける仕事。精神的にも肉体的にも過酷な商売です。

年末年始の繁忙期には、利益にならない現場応援に丸一日立ち続けることもあったといいます。ストレスから病を患ったこともあり、大切な娘には同じ苦労をさせたくないという思いがあったのでしょう。

そんなお父さまが向き合ったのは、「家庭でお肉をもっとおいしく食べてもらう方法」でした。焼き方や下処理に手間をかけなくても、肉の良さを引き出せるものはないか。

守りたかったのは、誠実で直向きな安全とおいしさなのです。

約10年にわたりノートに書き溜められてきた研究を形にされました。その結実の一つが、今回Makuake(クラウドファンディング)で挑戦されるお肉をもっと美味しく!をコンセプトに立ち上げた「MEAT Dresser(お肉を着飾る)」シリーズだそうです。


私も実際にいただきました。

シンプルな素材を活かした味わいで、とっても美味しかったです!

(私はかけたかなが特にお気に入りです。^^)



豚脂から生まれた「CHICA」


CHICA
豚脂から生まれた「CHICA」

「いのち」を誠実に大切にする。この姿勢から着目したのがお肉として使われない畜産副産物の存在でした。

「命をいただくからには、余すことなく恵みに変えたい。」

生まれたのは、廃棄されている豚脂の現状を知り開発したスキンケアブランド「CHICA」です。

豚脂はヒトの肌との親和性が高く、馬油やワセリンを上回る保湿力があることも分かったといいます。さらに、福岡県みやま市産の廃棄みかんの皮を活用するなど、環境配慮と機能性を両立させています。

ブランド名「CHICA」は、彼女の名前であると同時に、スペイン語で「女の子」を意味します。留学時代の呼び名でもあり、「日常の中で寄り添う存在になれたら」という願いが込められています。「CH= Care Human、  CA=Care Animal」命を消費で終わらせない。その姿勢が、商品そのものに宿っているのだと思います。



食肉卸という黒子から、ブランドへ


黒木千佳さん
黒木千佳さん

「クロキのものなら安心だと言ってもらえる存在になりたい。」


食肉卸は、スポットライトが当たりにくい黒子のような存在です。だからこそ、誠実さが問われます。

「自分が食べたくないものは出さない。」

先代から受け継いだこの基準に、黒木さんは環境への視点と、ワクワクする商品づくりを重ねています。

取材を通して、黒木さんの挑戦は単なる新規事業ではなく、問いを社会に投げかけることなのだと感じました。

命をいただくということを、どう未来につなぐのか。

命に向き合う、環境に向き合う、そして自分ごととして選択していくためにもおいしいを通して気づくきっかけを与えてもらっています。

葛藤や義憤から目を背けず、自分の形で社会に届けていく。

その姿勢に、強さと優しさの両方を見ました。


多くの人は、「問題だ」と感じたとき、距離を取るか、否定するか、どちらかを選びます。けれど黒木さんは、そうしなかったのです。

心の矛盾から目を背けず、自分の立場でできることを探し、形にしていく。


肉が環境に与える影響を理解したうえで、

お肉は人の栄養を支えてきた存在でもあると学び受け止め、命の循環に「どう向き合うか」を考え続けている姿勢に私も力をもらいました。


Meat DresserシリーズはMakuakeで発売予定(2026年2月27日公開予定)とのことです! 

ぜひこの挑戦を一緒に応援しましょう!

(公開までお待ちくださいませ。)

黒木さん、ありがとうございました。


HONE/亀元



「ほねろぐ」とは


株式会社HONEは地方に足を運び、先人たちが紡いできた伝統や、未来に残したい景色を記録しています。

いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。

町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。

忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。

気づけば、地方が近くなる。

現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。



株式会社HONEについて


HONEの流儀
HONEの流儀

HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。


学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。

自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。

誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。


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