ヘンタイ列伝のはじまりはケンタッキーフライドチキン?!
アルバイト現場で身につけたキャプテンシップ
マーケターの活動によって世間にまじめな印象を与える反面、『少年ジャンプ』の精神を地で行くロマン派でもある「HONE」代表・桜井貴斗。この桜井の特異ぶりはどのようにできあがったのか。このシリーズは、ブランドプロデューサーであり“ヘンタイ魅力発掘人”である片平優が、HONE関係者にインタビュー。桜井本人や彼とともに働く仲間やクライアントに話を聞きながら、創業者である桜井のヘンタイ的骨太エピソードをご紹介します。第1回目は桜井が大学時代4年間、アルバイトに明け暮れたという「ケンタッキーフライドチキン」での話。
■インタビュアー
ブランドプロデューサー
片平 優(ぴら)
ブランドプロデュース会社「Baby Tokyo」代表。広告制作のプロデューサーをしていたとき、自身の出産を機に、企業や商品が赤ちゃんに見えはじめ、7年前に起業。あらゆる企業や人に独自性が眠っていると証明すべく活動中。依頼があった企業におもむき、顧客インタビュー・社員研修等を行う。
小さな頃の夢とインパクトのある親父について
片平優(以下「ぴら」):
では桜井さん、よろしくお願いします!
わたしは普段、法人ブランディングの専門家として活動する傍ら、“変態魅力発掘人”として、あらゆる人の独自性を見つけ育てていきたいという使命も併せ持っています(笑)。
そんなわたしから見て、桜井さんって、優秀さと少年っぽさの両極を持ち合わせているというか、そのマリアージュが桜井さんらしさなのかなと。
みんな優秀になればなるほど幼稚性を失っていくように思うけれど、桜井さんは少年っぽさをもったまま優秀さを身に着けた、稀有な人物です。
桜井貴斗(以下「桜井」):
こういうやつ、あんまりいないですよね(笑)。
その少年っぽさというものは、自分としてはあまり意識していないというか。失わないようにという努力もしていないし、なぜか残っちゃっているという感覚です。
ただ、特性を活かした方が楽しいな、と!
ぴら:
桜井さんみたいな生き方をしている人がいるよと世間に伝えることで、勇気をもらえる人がいるんじゃないかと思っています!
桜井:
そうだとありがたいですね!
ぼくみたいな生き方をしていると、周りの反応としても3つのタイプに分かれます。
シンプルに「うらやましい」と言ってくれる人、家族や立場などを理由に「もうそうは振る舞えないなぁ」という人、そして「ガキっぽい」と突っかかってくる人。その意見の裏側には“うらやましさ”があると思っているので、否定的な意見を浴びせられたときは、「こいつ、うらやましいくせに。こっち来ればいいじゃん」って内心思っています(笑)。
ぴら:
たしかに(笑)。そう考えると、かわいい人たちですね。
そいういうピュアな少年性というか、「こう!」と思ったら突き通す姿勢って、いつ頃からですか?
桜井:
おそらく、小さいときからですね。覚えている範囲でいうと、幼稚園時代の夢は警察官。正義感をもって世のために働いている人がかっこいい、という気持ちが昔からあります。
ぴら:
うちの子も3歳くらいのときに“警察官になりたい”と言っていました!桜井気質あり、かな(笑)?
【正義感】という言葉がひとつキーワードのように感じたのですが?
桜井:
そうですね、ウルトラマン、仮面ライダーなどなど、ヒーローものが大好きで!
もちろんバイブルは『ドラゴンボール』。物心ついた頃にはドラゴンボールのおもちゃを集めていましたね。
ぴら:
ドラゴンボールを抱えて生まれてきたような人ですもんね(笑)!この桜井さんを育てたご両親はどんな方ですか?
桜井:
百貨店に勤めていたおとなしい印象の母と、アパレルのブティックをしていたデザイナー系の父に育てられました。親父はオレンジ色のオープンカーに乗っていた、よくいえばキザなナイスガイ。悪くいえばナルシストですね(笑)。
ぴら:
インパクトありすぎる(笑)!
きっと、なにかしら影響を受けているんでしょうね。
第二の父・ケンタッキーの生みの親、カーネルサンダース
ぴら:
小さいときには正義感にギラギラ燃えていても、成長するとさまざまな外部環境によってそれを失ったりあきらめたり。桜井さんはどうして貫けているのですか?
桜井:
そうなんですよね〜それが自分としても不思議で。
大学時代は文学にハマり、一時期その熱が収まっていた時期もあったんですけど。
一方で、大学4年間はずっと「ケンタッキーフライドチキン」でアルバイトをしていました。大学から自宅までの道のりにお店があって、求人の張り紙をみて「働かせてください」って飛び込むっていう。だからぼくはケンタッキーに救われているし、カーネルサンダースは第二の父といっても過言ではないくらい(笑)。
ぴら:
え?!そんなドラマみたいな人っています?!
すでにもう桜井さんの片鱗が現れはじめているような?!
桜井:
飛び込み応募ってなかなかやばいやつですよね(笑)。
そのときはなぜか即断即決で、履歴書も持たず飛び込んでいて。高校時代はアルバイトをあまりしていなくて、ケンタッキーが実質初めての仕事のようなもの。大学4年の頃には店長直下でシフトを管理をするなど、いつでも社員になれるレベルでした。今の仕事に就いていなかったら、ケンタッキーにいたかも。
そのくらい、ひとつのことを決めたら続けるという習性があるんですよね。
ぴら:
自分の決めたことを正解にしたい、みたいな?
桜井:
そうですね、ここになにかあるんじゃないかっていう。まぁ当時はいろいろありましたけどね〜。お店にお局的な人がいて、その人と対立したこともあったけれど、最終的には仲間や後輩がついてきてくれました。
ケンタッキーにとってクリスマスは一番大切な日で、深夜から仕込みをするんですけど、もう文化祭のような雰囲気とノリでワイワイ楽しくやってました。
ぴら:
現場でムードメーカー的な?
桜井:
みんなで一緒にやったり、楽しませたりというのが好きですね。もちろん自分も楽しみたいですけど、まわりが楽しむ、ということも大切にしています。
ぴら:
大学生というと、ひとつのことに専念するより、つまみ食い的にいろいろ経験したいというか。華やかな職場や、ラクして稼ぐみたいなノリが一般的なような気がするんです。
クリスマスにアルバイトって、相当ストイック(笑)。
桜井:
ぼくがそういうムーブが苦手だったからかも。当時ギャル男が流行っていて、とんがった細長い靴にベストを着て、授業もないのに校庭をチャラチャラ。下心ありながらワイワイという雰囲気が心底イヤで。そういうのもあって大学に行かなくなりましたね。
今思えば、その頃から武闘派だったかもしれません。そんななかで過ごすくらいだったら「オレはチキンにまみれていたい」みたいな(笑)。
現場で先陣を切るキャプテンシップ
ぴら:
すごすぎる。でも、いる場所・入った場所を心底愛する力がありそうですね!
桜井:
それはあります!決めたら「ここだ!」みたいな。
それを“苦しみ”と捉えることもあまりないですね。もちろん大変なときはあったけれど、同世代や後輩など、一緒に楽しめる仲間がいたから。
ぴら:
アルバイト=お金を稼ぐ手段っていう捉え方が多いのではと思うけれど、まわりにそういう人はいなかった?桜井さんの影響でしょうか?
桜井:
ぼくのなかで最近“これかな〜”と思ったのは、サッカー元日本代表監督・岡田さんの「キャプテンシップ」というマインド。現場で自ら動くリーダーシップをそう表現していて、しっくりきました。たしかにリーダーは現場にいないときもある。でもキャプテンは必ず現場にいる。フィールドキャプテン・現場指揮官・現場監督という立場ですね。
ぴら:
【現場】というのも桜井さんのなかで大きなキーワードですね。
空中戦じゃない感じ。現場系マーケター!
桜井:
仕事で同世代の優秀なマーケターやビジネスマンに出会うことも多いですが、“この分野は絶対勝てないなぁ”って思う部分もたくさんあります。その点、ぼくはキャプテンシップがいちばんの強み。コミュニケーション・対人影響力・協調性・方向感覚とか。トッププレイヤーという一面もあるだろうけれど、キャプテンシップのほうがしっくりきますね。
ぴら:
あと思うのは、絶対ハシゴを外さないというか、引かない感じがあります。
桜井:
たしかに、一度決めたらやり通す、納得できるまでやり切るというのはありますね。
「やり切った」というのは、ぼくにとって大事なポイント。
ぴら:
そのやりきり度合いというか、大抵の人はすぐ“やり切った”と思い込んでしまうところを、桜井さんはとことん追求する、という感じがします。
ケンタッキーに4年間いて、その場を味わい尽くした、っていう感じ(笑)。
桜井:
ケンタッキーで一緒に働いていた仲間も、いい意味で変わった人が多かったですね。チキンの骨を煮込んでカレーをつくる人とか、毎日アイドルタイムの3時間しか働かない年上のフリーターとか。奇人ばっかりでした(笑)。
でもぼくの場合、そういう人に対して寛容なのかも。おもしろがって仲間にする節がありますね。その人の得意を見つけて、どうやったらモチベーション高くパフォーマンスを発揮してくれるかというのを、自然と考えてやっていたんだと思います。
ぴら:
人の魅力を見出すのって、自然とできちゃうものなんですか?
桜井:
そうですね、自然とわかっちゃうかも。
個性を大事にしたいということはつねに思ってます。その個性を活かす器をつくるのがぼくの役目、みたいな。
あとはアルバイト当時、無理の利く人たちが多かったのもありますね。土日のシフトが足りないときに助けてくれるとか。それに有無を言わさない関係性もあったし、ぼく自身も基本オープン・クローズで働いてましたけど(笑)。
ぴら:
なんだろう、その丈夫な身体とメンタルも、神が桜井さんに授けた感じ(笑)。
桜井:
メンタルもフィジカルも両方強いですね、ありがたい。
あとはこれ以上は体調崩すな、という線引きもなんとなくわかるので、そんなときはしっかり休むようにしていました。
野生の勘はすごくある方だと思います。
ぴら:
ほぼ動物ですよね?!大変知的な野生動物!(笑)
19歳にしてエピソードが相当濃すぎるし、すでにキャラが確立しはじめている……!
桜井:
そのくらい、ケンタッキーにはお世話になりました。クリスマスの時期になると店内に流れる山下達郎さん・竹内まりやさんの曲はもう本当に一生分聴いた。今でもクリスマスになるとソワソワするというか、ケンタッキーが心配になるくらい。
ケンタッキーには育ててもらった感謝と恩義があります。
ぴら:
桜井さんが勝手に育った感も否めないですが(笑)
感謝というと?
桜井:
当時はたくさんチキンを食べましたし、シフトが入っていないときもふらっと遊びに行ったり、仲間が学校帰りに寄ってくれたり。4年間、実家みたいな感覚で過ごせた場所なんですよね。
ぴら:
4年間、飽きなかったんですか?(笑)
桜井:
飽きなかった!チキンは何回食べても、一口目からおいしい!
ポテトもクリスピーチキンも、どんな新商品が出ても全部おいしい。
どんなにすばらしいブランドでも、根本のプロダクトがよくないと駄目だと最初に学んだのは、このケンタッキーのチキンからですね。
これは声を大にして言いたい!
ぴら:
なんだかもう、当時働いていた桜井さんを想像すると、孫悟空にしか見えない!
仕事!肉!仲間!みたいな(笑)。
そのくらい、ケンタッキーという居場所で桜井さんが形成されたんですね。
桜井:
孫悟空か海賊か、みたいな(笑)。
店頭の張り紙がなければ、今のぼくはないですから。
“置かれた場所で絶対咲かせてやる”イズム
ぴら:
はじめて出合ったアルバイト先をここまで愛せるというのは、一種の才能だと!
誰もが愛せる場所を探していて、そこにのめり込めないのは、その場所や相手が悪い、というふうに思いがち。
桜井:
“置かれた場所で咲きなさい”の精神はありますね。
ぴら:
それが常人レベルじゃない、というか。
今でもクリスマスにソワソワするっていうのはすごすぎる(笑)。
桜井:
15年前のことですからね。
でも、そのリスペクトは薄れるどころか、むしろ年々強まっているかも。
先日、地方の出張先の古着屋さんでカーネルサンダースが古着かなんかを着せられていて、思わずイラッとしたくらい。
“おい!おれの親父をイジるんじゃない”って(笑)。
そのくらい、彼がいないと、今のぼくはいないので。
ぴら:
やっぱりすごい!一度愛すると決めたら、そこで咲くまでやるという一貫性がここにも!
それを桜井さんは本気の本気の本気で貫いていますよね。
桜井:
それをやるべきかと言われたら、ちょっとわからないんですけど、もうぼくのプログラムとして組み込まれているような感覚。今さら引き返せない(笑)。
ぴら:
桜井さんといえば『少年ジャンプ』などのマンガを愛しているイメージでしたが、まさかケンタッキーやカーネルサンダースもその愛する対象だったとは!
桜井:
そういえば、母親は大の鶏肉嫌いでした(笑)。
唐揚げとか、鶏肉料理はつくってくれましたが、母親自身は一切食べない。
それなのに自分はケンタッキーに応募するっていう。
そういう“未知の世界にふれたい”みたいなところも、あったかもしれないですね。
ぴら:
その愛情深さというか、なんとかなるまで徹底して行動する、という精神は常人離れしたすさまじいものです。
桜井:
それがゆえに「こんなもんじゃないだろ」って厳しくなっちゃうんです。愛ゆえに、そこで根ざした自分が絶対成功させるんだ、自分がいた場所はもっと飛躍すべきだ、もっとやんなきゃって。
ぴら:
面構えが違う……(笑)
それほど、自分が選んだ場所やもの・こと・ひとに対して信用があるんですね。
桜井:
自分が信じた道は成功すべきだし、させるべきだというメンタルですね。
迷っているヒマなんて一切ない!
ぴら:
考えれば、楽しくチキンを揚げるアルバイトがいるって、お店としてもありがたいですよね。ノリだけではないというか、冷めていないアツい人たち。
桜井:
そういうマインドの体育会系の仲間が10人くらい集まっていたという感じですね。
そういう意味では、しっかり“チーム”になっていたというか。
ぴら:
そのなかで桜井さんがキャプテンシップを発揮していたと?
桜井:
シフトなんかは、キャプテンシップという名のトップダウンでしたけど(笑)。
「無理」と言わせない楽しい空間をつくること、その人の個性を活かすことなど、居心地のよさとストイックさを一緒につくるということを、意図的にやっていたと思います。
馴れ合いだけじゃない、という。
ぴら:
その人たちが、ありのままでいられる空間というか。
実質もう、桜井さんが店長かってっていうくらい(笑)。
当時の店長さんも、桜井さんみたいな人だからこそ任せられたんですね。
キャプテンシップ、ハンパない!
桜井:
店長がいないときは、ぼくがシフトインしてましたしね。
いやぁ、これだけケンタッキー愛にあふれている人、いないと思います!
どんな内容でもいいから、いつか仕事で携わりたいですね。
ケンタッキーの中の人、見てくれてますか?!
ご連絡お待ちしています(笑)!
HONE社ではマーケティングと組織課題に向き合っています
弊社では地方企業さまを中心にマーケティング戦略の伴走支援を行なっています。
※事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだブランド戦略サポートプランでは全5回でマーケティングの太刀筋を学べるものになっているため、ご興味ある方はご検討いただけたらと思います。
その他、マーケティング・ブランディングに関するお問い合わせはこちらまでお気軽にどうぞ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】
風間 千裕/フリーライター
大学卒業後、地元の広告出版会社入社し約12年間勤務。企画・営業・編集など、メディア運営全般に携わる。当時8万部発行していた女性向けフリーマガジンの編集長も経験。最近はライター業のかたわら、趣味ではじめた「植物療法」と「星よみ」の勉強が本格化。ハーバルアストロロジストとしての活動も準備中。薬にも毒にもなる、見えない言葉のパワー。そのちからによって人を癒やし、楽しませ、勇気づけ、その人らしさをさらに輝かせたいと、日々奔走している。
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