top of page

中小企業のブランディングは、社員とその家族のために。社員と一緒に紡ぎだす、"この会社で働く価値"。【株式会社Baby Tokyo】

公開日:

2026年7月16日

最終更新日:

2026年8月7日

中小企業のブランディングは、社員とその家族のために。社員と一緒に紡ぎだす、"この会社で働く価値"。【株式会社Baby Tokyo】

2026年7月1日、「独自性に産声を。」を掲げ、中小企業のブランディング支援を行う、株式会社Baby Tokyo代表の片平優さんに、お話を伺いました。


「ブランディング」と聞くと、ロゴ・広告・デザインなどを整え、企業の認知度を高める取り組みを、思い浮かべる方も多いかもしれません。私自身も、ブランディングを「外に向けて見せ方を整える活動」として捉えていた部分がありました。

しかし、片平さんが大切にしているのは、まず社員一人ひとりが自社の価値を知り、誇りを持てる状態をつくること。その積み重ねが会社らしさとなり、やがて社外からの信頼や共感にもつながっていくと話します。


今回の取材では、「ブランディングは大企業のためのもの」という思い込みが少しずつほどけていきました。中小企業だからこそ向き合いたい、本質的なブランディングのあり方について綴ります。



株式会社Baby Tokyoについて


企業の独自性は、新しくつくるものではなく、すでに会社の中にある。そんな考えのもと、中小企業のブランディングを支援しているのが、株式会社Baby Tokyoです。コンセプトの策定や、ロゴ・Webサイトなどのデザイン制作に加え、社員や経営者へのインタビューを通して、その会社らしさを丁寧に掘り起こしています。


何気ない日常や、当たり前になっている仕事の中から、その企業ならではの価値を見つけ出し、言葉やデザインとして形にしていくことが特徴です。

目指しているのは、会社を有名にすることだけではありません。その会社で働く人たちが、自分たちの仕事や存在意義を理解し、「この会社で働いている」と胸を張って語れる状態をつくることです。


企業には、それぞれ「こうありたい」という理想があります。一方で、社員や顧客、地域の人たちが抱くイメージとの間には、少なからずギャップが生まれます。Baby Tokyoは、その距離を埋めながら、企業の独自性を社内外へ伝えるブランドづくりに伴走しています。

これまで規模や業種を問わず多くの企業を支援してきた片平さんは、「独自性がなかった会社は一社もありませんでした」と話します。その言葉は、今回の取材を通して何度も耳にした「価値はすでに会社の中にある」という考え方を象徴しているようでした。


▼Baby Tokyoホームページ




中小企業こそ、ブランディングを。


「ブランディングは大企業がやるものですよね。」


正直に言えば、私もそう思っていました。地方の中小企業は、限られた資金や人手の中で、事業を続けています。本当はWeb広告を運用したい。駅に広告を出したい。洗練されたロゴやホームページをつくりたい。でも、今はそこまで手が回らない。だから、できる範囲で工夫を重ねている。ブランディングは、資金に余裕のある企業が取り組むものだと、どこかで思い込んでいたのです。


しかし片平さんの考え方は、少し違いました。むしろ中小企業こそ、積極的にブランディングへ取り組むべきだと言います。理由はシンプルでした。


ブランディングとは、「お金をかけて会社を有名にすることではなく、社員が家族に自分の会社を説明できる状態をつくること。」だからです。


採用活動や営業活動を頑張る前に、「私たちの会社は、何が他社と違うのか」「どんな価値を社会へ届けているのか」を、まず社員自身が理解できているだろうか。その問いに向き合うことが、ブランディングの第一歩だと、片平さんは言います。


どんな会社なの?


そう聞かれたときに、仕事内容だけではなく、「この会社だから働いている理由」を自然と話せる。それは、会社の魅力を暗記している状態ではなく、自分自身が納得し、誇りを持って働いている証拠なのです。


また、社員が自分の会社を理解し、誇りを持てるようになることで起きる変化は、社内だけにとどまりません。仕事への納得感は、日々の接客や営業の姿勢に表れます。その想いは取引先にも伝わり、「この会社にお願いしたい」という信用につながります。


そして、自分の会社を自信を持って語れる社員が増えることで、「ここで働きたい」と感じる人も増えていきます。片平さんは、「社内ブランディングは採用や営業の土台にもなる」と話してくださいました。


一人ひとりの中にある実感を言葉にし、それを共有していくこと。その積み重ねが、結果として会社のブランドになっていくのです。



独自性は、当たり前の中に眠っている。


「どんな会社にも、独自性は必ずあります。」


片平さんは、これまで30社以上の企業と向き合ってきた経験を踏まえ、そう言い切ります。

私たちは、「独自性」と聞くと、他社にはない特別な技術や画期的な商品、華やかな実績を思い浮かべがちです。しかし、片平さんが見つめているのは、もっと日常に近いところにある価値でした。


毎日続けている仕事。何年も変わらず大切にしてきた文化。社員同士では当然と思っている、気遣いや行動。それらは、会社の中では当たり前だからこそ、誰も価値として言葉にしません。


独自性とは、新しい魅力をつくることではありません。社員や経営者へのインタビューを重ね、その会社では当たり前になっている価値を掘り起こし、言葉にして尖らせていく営みなのだと、片平さんは話してくださいました。


その考え方を象徴するのが、支援先である大阪の清掃会社でのエピソードです。


清掃業界では、人件費を抑えるため、アルバイトや業務委託を中心に現場を運営する企業が少なくありません。そんな中、片平さんが支援された企業では、約500人もの正社員を雇用しています。清掃業界では、異例ともいえる規模で正社員を抱える、珍しい企業でした。


ですが、社員の皆さんは「掃除の仕事だから」と、自分たちの仕事をどこか控えめに捉えていたそうです。そこで片平さんは、顧客・取引先・社員へのインタビューや、研修での社員との意見交換を通して、会社が担っている役割を掘り下げていきました。


この会社で働く価値について、研修で語る社員さん
この会社で働く価値について、研修で語る社員さん

そうして見えてきたのは、駅や病院など、多くの人が利用する公共施設の清掃を任されている姿でした。特にコロナ禍では、ただ施設をきれいにするのではなく、「人々が安心して過ごせる空間を守る」という使命を持って、現場に立っていたことも分かりました。


利用者から「ありがとう」「安心して利用できます」と、声をかけられることもあったそうです。社員の皆さんは、ただ掃除をしていたのではありません。誰かの日常を守り、社会インフラを支えていたのです。


研修後のアンケート(大代ゼンテックス)
研修後のアンケート(大代ゼンテックス様)

「人から感謝され、社会を支えている」という事実を社員同士で共有したとき、「こんな会社で働けてうれしい」「家族にも自分の仕事を誇れるようになった」という声が上がりました。研修後のアンケートには、「子どもに自分の会社のことを話したい」という言葉も寄せられたそうです。


納品物の一例(ブランドの提供価値構造図)
納品物の一例(ブランドの提供価値構造図)

事業内容が大きく変わったわけではありません。

変わったのは、自分たちの仕事の見え方でした。


日々の業務の中で当たり前になって、埋もれている価値に光を当て、言葉にすること。そうした積み重ねが社員の誇りを育み、その会社らしさを形づくっていくのだと思います。


納品物の一例(実話をつむいだポスター)
納品物の一例(実話をつむいだポスター)


ありたい姿を言葉にする


片平さんは、ブランディングを「自分たちがどうありたいかという理想」と、「周囲からどう見られているかという現実」のギャップを埋めていく活動だと話します。


企業は、日々の仕事や社員の振る舞い、顧客との関わりを積み重ねる中で、少しずつ周囲からイメージを持たれていきます。このイメージは偶然に生まれるものではなく、一つひとつの企業活動の積み重ねによって形づくられていくものです。


だからこそ、「ブランディングをやるか、やらないか」という話ではなく、「何も設計しないまま見られるか、自分たちらしく見られるよう設計するか」の違いなのだと、片平さんは言います。


お話の中で、特に印象に残ったのが「理念」の存在でした。理念は、会社案内やホームページに掲載するための言葉ではありません。社員が判断に迷ったとき、「この会社ならどうするだろう」と立ち返ることができる指針であり、日々の行動を支えるものです。行動指針としての理念を象徴する出来事として、片平さんは支援先でのエピソードを教えてくださいました。


「大家族経営」を理念として掲げていた企業。社員を家族のように大切にし、困っている仲間がいれば自然と手を差し伸べる。そんな価値観を、会社全体で共有していたそうです。


ある日、ひとりの社員が突然出勤しなくなりました。現場の責任者は「何かあったのではないか」と違和感を覚え、自宅を訪ねます。すると、その社員は体調を崩して倒れていました。もし訪ねていなければ、もっと深刻な事態になっていたかもしれない。迅速な対応によって、一命を取り留めたそうです。


これは、業務マニュアルに書かれていたわけではありません。「家族だったら放っておかない」という価値観が、一人ひとりの判断として自然に表れた出来事でした。


理念が本当に機能している会社では、掲げた言葉と現場の行動が一致しています。その積み重ねが、その会社らしさを育て、周囲からの信頼やブランドをつくっていくのです。


Baby Tokyoの理念起動
Baby Tokyoの理念起動

自分たちは、どんな会社なのか。


その答えは、経営者だけが持っているものではありません。日々の仕事や、何気ない行動の中にあります。だからこそ、対話を重ねながら会社らしさを言葉にしていき、行動規範として浸透させていくことが、ブランディングの本質なのだと思いました。



知名度ではなく、「らしさ」で選ばれる企業に


今回のお話を通して、私自身のブランディングに対するイメージは大きく変わりました。

以前は、「知名度を上げること」や「良いデザインをつくること」がブランディングだと思っていました。しかし、本当に大切なのは、その前段階にあります。


社員が自分の会社を理解し、自分の仕事を誇れる状態になっているか。そこが整っていなければ、どれだけ魅力的なホームページやロゴをつくっても、本当の意味でその会社らしさは伝わりません。


一方で、全員が「この会社だから働いている理由」を語れる会社は、派手な広告がなくても、人の心を動かします。地域には、全国的には知られていなくても、地域に欠かせない仕事をしている会社が数多くあります。


技術力が高い会社、長年地域を支えてきた会社、人とのつながりを大切にしている会社。その魅力は、外から付け加えるものではなく、すでに会社の中にあるはずです。


だからこそ、中小企業にとってブランディングは「背伸びをすること」ではなく、ありのままの自分たちを知り、その価値を言葉にすること。その積み重ねが、結果として「この会社だからお願いしたい」「ここで働きたい」という共感につながっていくのではないでしょうか。


有名になることだけが、会社の価値ではありません。無名でも、自分たちらしさを大切にして、磨き、研ぎ澄ませていけば、きっと選ばれる会社になっていきます。



あとがき


今回の取材で最も印象に残ったのは、「ブランディングは社員と、その家族のためにある」という考え方でした。


社外へ会社の魅力を伝える前に、まずは社員自身が「この会社にはこんな価値がある」と胸を張って話せること。その状態をつくることが、結果として採用や営業、企業の成長にもつながっていくという考え方は、とても新鮮でした。


地域の企業や人を取材すると、「それは当たり前だと思っていました」と話される場面によく出会います。しかし、その当たり前の中にこそ、その会社だけの魅力や地域ならではの価値が隠れていることは少なくありません。


また、取材を通して地域の魅力を言葉にすることと、Baby Tokyoが企業の独自性を言葉にしていることは、どこか似ているようにも感じました。どちらも、新しい価値をつくるのではなく、もともと存在している価値に光を当てる仕事です。


地方には、まだ言葉になっていない魅力を持つ企業がたくさんあります。そして、その魅力を一番よく知っているのは、毎日そこで働いている社員の皆さんなのかもしれません。


ブランディングは社員から。独自性は、会社の中に眠っている。


会社の本当の強さは、誰かと比べて生まれるものではなく、自分たちらしさを知り、それを誇れることから始まる。そのことを、教えていただいた時間でした。


HONEインターン / 森



ほねろぐとは


AIの急速な台頭により、私たちの世界は、目紛しい変化を遂げています。効率化が進むその影で、古きよき日本の文化や風景、人との繋がりが失われつつあるのも、悲しい現実です。


そんな時代だからこそ、我々株式会社HONEは地方に足を運び、先人たちが紡いできた伝統や、未来に残したい景色を記録します。


いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。


町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。

忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。


気づけば、地方が近くなる。


現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。



株式会社HONEについて


HONEの流儀
HONEの流儀

HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。


学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。

自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。

誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。

最新ほねろぐ

匠宿 工芸村に、じんわりとにじみ出るつくり手の想いに触れて。【静岡県静岡市_株式会社創造舎(駿府の工房 匠宿)】

2026年8月7日

匠宿 工芸村に、じんわりとにじみ出るつくり手の想いに触れて。【静岡県静岡市_株式会社創造舎(駿府の工房 匠宿)】

八百年の歴史を日常へ。ORIOが紡ぐ新しい伝統のかたち。【福岡県福岡市】

2026年8月5日

八百年の歴史を日常へ。ORIOが紡ぐ新しい伝統のかたち。【福岡県福岡市】

島のアトツギは、静岡から何を持ち帰ったのか。若者には旅をさせよ。【静岡県静岡市_大人の島留学越境体験】

2026年7月31日

島のアトツギは、静岡から何を持ち帰ったのか。若者には旅をさせよ。【静岡県静岡市_大人の島留学越境体験】

【現場レポート】老舗料亭「浮月楼」で愉しむ、静岡茶×和食のフードペアリング研究会。

2026年7月18日

老舗料亭・浮月楼で愉しむ、静岡茶×和食のフードペアリング研究会【静岡県静岡市】

bottom of page