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「守る」と「変える」。沖縄の保育園が見つけた、これからの独自性。【株式会社Baby Tokyo】

公開日:

2026年9月8日

最終更新日:

2026年9月8日

「守る」と「変える」。沖縄の保育園が見つけた、これからの独自性。【株式会社Baby Tokyo】

会社が続く中で、受け継がれていく言葉があります。けれど、その言葉が日々の仕事でどう実践されているのか、改めて考える機会は意外と少ないのかもしれません。


今回は、株式会社Baby Tokyo代表の片平優さんに、沖縄の社会福祉法人・栄光福祉会さまのブランディングと、事業承継の事例についてお話を伺いました。


約40年前から受け継がれてきた「一人ひとりを尊ぶ」という理念。その意味を職員や保護者の声から見つめ直すと、日々の保育の中にあった、たくさんの行動が見えてきました。


それら行動には、次の世代の新しい挑戦、職員の主体的な行動、採用、そして事業承継などがつながっています。沖縄の保育を支えてきた歴史とともに、受け継いできた理念が、どのように次の世代の力になっていったのかを紹介します。



株式会社Baby Tokyoについて


企業の独自性は、外から新しくつくるのではなく、すでに組織の中に眠っている。そんな考えのもと、中小企業のブランディングを支援しているのが、株式会社Baby Tokyoです。


お取り組みはこちらをお読みください。


参考:中小企業のブランディングは、社員とその家族のために。社員と一緒に紡ぎだす、"この会社で働く価値"。【株式会社Baby Tokyo】





社会福祉法人・栄光福祉会さまについて


沖縄県沖縄市を拠点に、保育所や認定こども園を運営する社会福祉法人です。

約40年前に創業者が保育園を立ち上げて以来、「一人ひとりを尊ぶ」という理念を大切に、地域の子どもたちと向き合ってきました。


2025年当時は、めぐみ野保育園と、認定こども園シャロームの2園を運営。次の世代への事業承継も進むなか、これまで受け継いできた理念を大切にしながら、「主体性保育」など新しい保育にも挑戦しています。今回のブランディングでは、その歩みを改めて見つめ直しました。

 

http://www.eiko-megumino.com/ 



沖縄の保育を支えた歴史


沖縄の保育を考えるときに切り離せないのが、この土地が歩んできた歴史です。戦後27年間、アメリカの統治下に置かれた沖縄では、1972年の本土復帰まで、日本の社会制度が十分に適用されない時期が続きました。児童福祉の制度も本土に比べて整備が遅れ、働く親にとって、子どもを安心して預けられる場所は、決して当たり前のものではありませんでした。


そんな中、子どもたちを守るために立ち上がったのが、地域の女性たちでした。整備された制度を待つのではなく、自分たちで保育の場をつくっていく。沖縄の保育園には、地域の人たちの想いから始まった歴史があります。今回、片平さんから伺った社会福祉法人栄光福祉会さまも、その時代から保育に関わってきた法人の一つです。創業者は約40年前に保育園を立ち上げ、地域の子どもたちと向き合ってきました。


一方で、いま沖縄の保育業界は大きな転換期にあります。かつては待機児童が課題となり、保育園を増やすことが求められていました。それが少子化によって、今度は園児や保育士をどう確保するかが、経営上の課題になっています。


さらに、1970〜80年代に開園した保育園では、創業者から次の世代への事業承継も重なっています。今の時代に合わせて何を守り、何を変えていくのか。栄光福祉会さまが取り組んだブランディングに、Baby Tokyoは共同プロジェクトの一員として加わり、その問いに向き合っていきました。


プロジェクトの様子
プロジェクトの様子

理念の解像度を上げる


栄光福祉会さまには、約40年前から受け継がれてきた「一人ひとりを尊ぶ」という理念があります。Baby Tokyoがまず向き合ったのは、理念を新しい言葉に置き換えることではなく、栄光福祉会さまがこれまで大切にしてきたものを改めて見つめることでした。片平さんは、「変える必要がなく、残すべきものだった」と振り返ります。


一方で、理念は抽象的になりやすく、栄光福祉会さまでも十分に浸透していたわけではありませんでした。そこで、「一人ひとりを尊ぶ」とは、現場ではどんな行動として表れているのか。その意味を具体的に捉え直すことから始めました。


ワークの様子
ワークショップの様子

保護者や職員、外部講師などへのデプスインタビューを行い、100ページを超えるレポートに整理。さらに、職員自身にも理念を日々の仕事でどう実践しているのかを書き出してもらい、ワークショップで共有しました。そこで見えてきたのは、職員にとっては当たり前で、気づいていなかった「一人ひとりを尊ぶ」行動です。


意見の共有
意見の共有

登園した際に子どもたちの名前を呼ぶ。泣いている子の気持ちをまずは受け止める。「できた・できない」だけでなく、そこに至る過程まで見る。家庭や本人の事情にも目を向ける。


どれも特別な取り組みではなく、日々の保育の一場面です。


けれど、言葉にして共有することで、こうした何気ない行動こそが、受け継がれてきた理念を現場で実践している姿だと見えてきました。


Baby Tokyoが新しい価値を外から加えたのではありません。これまで当たり前にやってきたことを掘り起こし、「これが自分たちらしさなのだ」と、職員自身が認識できるようにしたのです。


Baby Tokyo様 提供資料
Baby Tokyo様 提供資料

さらに、保護者の声からも新たな価値が見えてきました。


保育士の子どもへの接し方を見て、「子どもにはこう接すればいいんだ」と学べました。保育園での関わりを通じて、自分自身も親として成長できました。そんな声が寄せられていました。


目の前の子どもに向き合うという日々の仕事が、保護者の子育てにも影響を与えていたのです。こうした声を職員たちに伝えていくことで、保護者への見方が変わった若い保育士もいました。


Baby Tokyo様 提供資料
Baby Tokyo様 提供資料

「もっと優しくしましょう」と教えるのではなく、実際の声をもとに、自分たちで考え、行動を変えていく。理念を新しく掲げ直すのではなく、すでに現場にある価値を見つけ、組織の共通言語にしていく。ここに、Baby Tokyoのブランディングの特徴が表れています。



受け継ぐ理念と新しい挑戦


今回、片平さんから伺った話のなかでも興味深かったのが、企業の独自性は「昔から変わらないもの」だけではない、ということです。栄光福祉会さまには、40年前から受け継がれてきた「一人ひとりを尊ぶ」という理念がありますが、一方で次の世代が新たに挑戦したのが「子ども主体の保育」でした。


子ども主体の保育とは、子どもの意思や興味を尊重し、自分で選択して行動できる環境をつくる保育です。二代目の経営者が導入を決めた新しい挑戦でした。


Baby Tokyoは、この挑戦も独自性の一つとして捉えました。昔から変わらないものだけでなく、時代の変化に対してどんな選択をしてきたのかも、その企業らしさになるからです。


Baby Tokyo提供
Baby Tokyo様 提供資料

ここで見えてきたのは、「守るもの」と「変えるもの」は対立しないということでした。

40年間変わらなかった理念がある。だからこそ、その理念を実現するための保育の方法は、時代に合わせて変えていい。むしろ、変えてはいけないものが明確になったからこそ、変えていいものも見えてきたのです。


自分たちは、先代から受け継いだ理念を守るだけの組織ではなく、大切なものを守りながら、新しいことにも挑戦してきた組織なのだ。そう捉え直すことで、「主体的に、新しいことに挑戦していこう」という意識が生まれていきました。


それを体現しているのが、周年記念イベントです。


職員の皆さんが主体となって企画から運営、発表までを担いました。その様子を見た同業者や地域の人から、「職員がこんなに主体的に動くのはすごい。何をしたんですか?」と聞かれるほどだったそうです。


Baby Tokyoが、イベントの進め方を教えたわけではありません。自分たちの仕事の価値や、組織の持つ特徴を知ったことで、「もっとこうしたい」という思いが生まれ、それが行動につながっていきました。業務改善や新しい提案に自ら関わりたいという職員が出てきたり、「来年もここで働きたい」「ここでこんなことをしたい」と、自分の未来を語る人も増えたといいます。


自分たちの価値を理解し、その価値をもとに次の行動を自分たちで選べる。Baby Tokyoが支援したのは、そんな組織の土台づくりでした。



ブランディングは採用と事業承継につながる


今回の取り組みは、採用や定着という経営上の課題にも影響しています。


保育業界では保育士の採用競争が激しく、人材紹介会社を利用する場合の費用も小さくありません。厚生労働省が公表した令和5年度の実績によると、保育士の人材紹介にかかる平均手数料は全国で64万6千円でした。


参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001569957.pdf 


ブランディングは採用費を直接削減するためだけのものではありません。ですが、自分たちの価値を理解し、「ここで働きたい」と思える職員が増えることは、結果として採用や定着にも影響します。


栄光福祉会さまでは、これまでパートとして働いていた3人が、「来年から職員として働きたい」と申し出てきてくれたそうです。


原点に立ち返る
原点に立ち返る

外部から採用するのではなく、すでに組織の中にいる人が、ここで働き続けたいと思うようになる。さらに、自分の法人を「いい会社なんだ」と人に伝えたくなれば、それ自体が採用の土壌にもなります。


そして今回の取り組みは、事業承継という意味でも大きな変化を生みました。40年間大切にしてきた理念が現場で実践され、次の世代が新しい保育に挑戦している。職員自身が自分たちの仕事や法人について語り、組織を動かし始めている。先代から受け継いだものが、次の世代の中で新たな形で動き始めていたのです。


ワークショップの様子
ワークショップの様子

その姿を見て、創業者は「安心して引退できる」と話してくれたそうです。



地方企業に眠る独自性


最後に、片平さんから地方企業や、事業承継、組織づくりに向き合う経営者に向けて伺ったお話をご紹介します。片平さんは、「これまでの前提が崩れている時代だからこそ、自分たちの会社に目を向けてほしい」と話します。


AIの普及やリモートワーク、少子化によって、採用や働き方を取り巻く環境は変わり続けています。これまでの前提が変わるなかで、企業が将来のビジョンを描くことも難しくなっています。だからこそ、まず目を向けてほしいのが、自社の中にある独自性です。


『「うちには独自性なんてない」と言われることがある。でも、これまで何十社と関わってきて、独自性がなかった会社は一社もなかった。企業の中には、まだ自分たちが気づいていない価値が眠っている。』と片平さんはいいます。


関係者の声を共有する
関係者の声を共有する

ブランディングというと、外から新しい理念やコンセプトを持ち込むイメージがあるかもしれません。しかしBaby Tokyoは、これまでの会社の歩みを無視してブランドをつくることはしません。


創業者が大切にしてきたもの。社員が積み重ねてきた仕事。顧客から寄せられてきた評価。そうしたものを掘り下げ、自社ならではの価値を見つけていく。


一方で、「採用できない」「人が定着しない」といった目の前の課題から、目をそらすわけでもありません。課題が起きるたびに施策を増やす「打ち手のエンドレスループ」から抜け出すためにも、一度立ち止まり、会社そのものを掘り下げてみる。


自分たちは何を大切にしてきたのか。顧客はどこに価値を感じているのか。社員はなぜこの会社で働いているのか。そこから見つけた独自性を、採用や組織づくりの力に変えていく。片平さんは、「独自性は武器になり得る」ということを教えてくれました。



あとがき


栄光福祉会さまでは、40年前から続く理念を変えるのではなく、その意味を現場から掘り起こしていました。


理念を改めて捉え直すことで、職員が自分たちらしさに気づき、そこから主体的な行動が生まれていく。そして、その変化が採用や定着、事業承継にもつながっていく。この流れを見ていると、ブランディングは「外から見える会社の姿を整えること」だけではないのだと感じます。


ワークショップの様子
ワークショップの様子

むしろ、自分たちは何者なのかを、組織の内側にいる人たちが理解すること。その理解が、日々の行動を変え、未来の選択を変えていく。そして、事業承継において大切なのは、すべてを守ることではないのかもしれません。


「変えてはいけないもの」が明確になったからこそ、「変えていいもの」も明確になる。

40年続く理念を次の40年も同じ形で保存するのではなく、その理念を軸に、次の世代が新しい挑戦をしていく。受け継ぐことと、変えること。その二つは対立するものではなく、むしろ両立してこそ、企業は次の時代へ進んでいける。


今回の事例は、地域に根を張り、次の世代へ事業を渡そうとしている企業にとって、そんなヒントを与えてくれるものでした。



HONEインターン/森



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HONEの流儀
HONEの流儀

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