
私たちが毎日のように手にする、お箸。
食べものをつまみ、ほぐし、口へ運ぶ。
あまりにも身近な道具だからこそ、それがどこで、誰の手によってつくられているのかを考える機会は、そう多くありません。
熊本県南関町に、1963年の創業から「竹の、箸だけ。」をつくり続けてきた株式会社ヤマチクがあります。その第二工場の敷地内にあるのが、ファクトリーショップ「拝啓」です。
お箸を販売するショップであり、カフェであり、つくり手と使い手、南関町の内と外をつなぐ場所でもある「拝啓」。
先日お伺いし、店内でお買い物や食事をしながら感じたことをレポートします。
(HONE / 亀元)
「竹の、箸だけ。」をつくり続ける株式会社ヤマチク
「拝啓」を運営する株式会社ヤマチクは、1963年の創業から、竹の素材を生かしたものづくりを続けてきた会社です。創業当初は、福岡市で「山崎竹材工業所」として、竹の建築資材などを製造していました。転機が訪れたのは1977年。売上の約90%を占めていた取引先が倒産し、残された約10%の事業だった竹のお箸の製造に社運をかけました。本社を南関町へ移し、竹箸メーカーとしての道を歩み始めます。
純国産の竹箸を自社で一貫生産できる日本唯一のメーカーとして紹介されています。掲げている言葉は、「竹の、箸だけ。」。半世紀以上にわたり、竹のお箸と向き合い続けてきた会社です。
▼株式会社ヤマチク公式サイト
ファクトリーショップ「拝啓」に込められた想い

「拝啓」のコンセプトは、店名のとおり「手紙」です。その着想は、ヤマチクが各地の催事に出店するなかで生まれました。
売り場に並ぶお箸を手に取り、自分用だけでなく、家族や大切な人への贈り物として、じっくり選ぶお客さま。その姿を見て、代表の山崎彰悟さんは、お箸を選ぶ時間が、誰かを思いながら手紙を書く時間に似ていると感じたといいます。
「拝啓」には、二つの手紙が込められています。
一つは、つくり手から使い手へ届ける手紙です。お箸の手触りや使い心地だけでなく、どのような素材から、どんな人の手を経てつくられたのか。その背景まで伝えることで、一膳のお箸の向こう側にいる職人や産地の存在を感じてもらいたいという思いがあります。
もう一つは、お客さま(お買い物される方)が、手紙を綴るようにお買い物をできるような空間を目指しています。誰に贈るのか。どのような食卓で使ってほしいのか。相手の手の大きさや好きな色を思い浮かべながら、言葉を選ぶように買うものを選んでいきます。
誰かを連れてきたくなる、町の風景


建物の前で最初に目に入るのは、人の背丈ほどもある大きなお箸のオブジェです。外壁には、小代焼の窯元で生まれた陶片を再利用し、「拝啓」の文字が描かれています。熊本のものづくりを取り入れながら、ひと目でお箸屋さんだとわかる外観です。
専門店らしさを感じさせながらも、堅苦しさはありません。地元の人が親しみを持ち、写真を撮り、 誰かを連れてきたくなる場所になっています。
お手紙のように、ゆっくりと届ける接客

実際に店内を歩いてみると、すっきりとした陳列によって、それぞれのお箸が見やすく並べられていました。
一方で、商品の特徴を詳しく説明するPOPは、必要以上に置かれていません。
その代わりに、スタッフの方が会話をしながら、使う人や用途に合わせて商品の違いを説明されていました。私も接客をしていただきましたが、一方的に商品の情報を伝えられるのではなく、こちらのペースに合わせて、少しずつ届けてもらえる感覚です。
すぐに理解し、すぐに購入できることだけを考えれば、商品の特徴をPOPにまとめたほうが効率的です。しかし、「拝啓」が大切にしているのは、手紙を書くような、あたたかなコミュニケーションです。
わざわざ南関町まで足を運んでもらったからこそ、誰が、どのような思いでつくったものなのかを、きちんと伝えてから届けたい。そこには、お客さまを大切にする姿勢だけでなく、つくられた商品そしてその文化を大切にする姿勢がにじんでいます。
セレクトされている商品も、全国から集められた選りすぐりのものばかりです。
接客を通して、物語も地域も知ることが出来る、まさに店舗づくりも編集だと感じました。
お箸屋さんのカフェ

「拝啓」には、カフェが併設されています。
メニューの1つが、その名も「お箸スイーツ」。
南関そうめんの製造過程で生まれる「ふし」を使った「そうめん屋さんのおやつ」や、南関町の菓子メーカーがつくる黒棒を使ったティラミスなど、スイーツもお箸でいただけます。そうめんスイーツはあっさりさっぱりしていて、とっても美味しかったです。
お箸で味わうつけパスタなどの季節限定メニューもご用意されています。
現在は南関そうめんや南関あげなど、地域の食材を取り入れた料理。
どれも素材にも味にもこだわった逸品です。調理担当の方を中心にメニュー開発をされているのだそう。
お食事は、季節メニューを2品いただきました。

南関そうめんの上には、南関あげがトッピングされています。出汁もおいしく、暑い日にピッタリです。地元食材を美味しくいただきました。


