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「いただきます」の記憶をつなぐ。ヤマチクが南関町にひらいたお手紙のようなお店「拝啓」【熊本県南関町】

公開日:

2026年8月17日

最終更新日:

2026年8月17日

「いただきます」の記憶をつなぐ。ヤマチクが南関町にひらいたお手紙のようなお店「拝啓」【熊本県南関町】

私たちが毎日のように手にする、お箸。

食べものをつまみ、ほぐし、口へ運ぶ。

あまりにも身近な道具だからこそ、それがどこで、誰の手によってつくられているのかを考える機会は、そう多くありません。

熊本県南関町に、1963年の創業から「竹の、箸だけ。」をつくり続けてきた株式会社ヤマチクがあります。その第二工場の敷地内にあるのが、ファクトリーショップ「拝啓」です。

お箸を販売するショップであり、カフェであり、つくり手と使い手、南関町の内と外をつなぐ場所でもある「拝啓」。

先日お伺いし、店内でお買い物や食事をしながら感じたことをレポートします。


HONE / 亀元



「竹の、箸だけ。」をつくり続ける株式会社ヤマチク


「拝啓」を運営する株式会社ヤマチクは、1963年の創業から、竹の素材を生かしたものづくりを続けてきた会社です。創業当初は、福岡市で「山崎竹材工業所」として、竹の建築資材などを製造していました。転機が訪れたのは1977年。売上の約90%を占めていた取引先が倒産し、残された約10%の事業だった竹のお箸の製造に社運をかけました。本社を南関町へ移し、竹箸メーカーとしての道を歩み始めます。

純国産の竹箸を自社で一貫生産できる日本唯一のメーカーとして紹介されています。掲げている言葉は、「竹の、箸だけ。」。半世紀以上にわたり、竹のお箸と向き合い続けてきた会社です。


▼株式会社ヤマチク公式サイト



ファクトリーショップ「拝啓」に込められた想い


拝啓の外観
拝啓の外観

「拝啓」のコンセプトは、店名のとおり「手紙」です。その着想は、ヤマチクが各地の催事に出店するなかで生まれました。

売り場に並ぶお箸を手に取り、自分用だけでなく、家族や大切な人への贈り物として、じっくり選ぶお客さま。その姿を見て、代表の山崎彰悟さんは、お箸を選ぶ時間が、誰かを思いながら手紙を書く時間に似ていると感じたといいます。


「拝啓」には、二つの手紙が込められています。

一つは、つくり手から使い手へ届ける手紙です。お箸の手触りや使い心地だけでなく、どのような素材から、どんな人の手を経てつくられたのか。その背景まで伝えることで、一膳のお箸の向こう側にいる職人や産地の存在を感じてもらいたいという思いがあります。


もう一つは、お客さま(お買い物される方)が、手紙を綴るようにお買い物をできるような空間を目指しています。誰に贈るのか。どのような食卓で使ってほしいのか。相手の手の大きさや好きな色を思い浮かべながら、言葉を選ぶように買うものを選んでいきます。



誰かを連れてきたくなる、町の風景


お箸のオブジェ
お箸のオブジェ

小代焼の窯元で生まれた陶片で作られた文字
小代焼の窯元で生まれた陶片で作られた文字

建物の前で最初に目に入るのは、人の背丈ほどもある大きなお箸のオブジェです。外壁には、小代焼の窯元で生まれた陶片を再利用し、「拝啓」の文字が描かれています。熊本のものづくりを取り入れながら、ひと目でお箸屋さんだとわかる外観です。

専門店らしさを感じさせながらも、堅苦しさはありません。地元の人が親しみを持ち、写真を撮り、誰かを連れてきたくなる場所になっています。



お手紙のように、ゆっくりと届ける接客


店内/接客の様子
店内/接客の様子

実際に店内を歩いてみると、すっきりとした陳列によって、それぞれのお箸が見やすく並べられていました。

一方で、商品の特徴を詳しく説明するPOPは、必要以上に置かれていません。

その代わりに、スタッフの方が会話をしながら、使う人や用途に合わせて商品の違いを説明されていました。私も接客をしていただきましたが、一方的に商品の情報を伝えられるのではなく、こちらのペースに合わせて、少しずつ届けてもらえる感覚です。


すぐに理解し、すぐに購入できることだけを考えれば、商品の特徴をPOPにまとめたほうが効率的です。しかし、「拝啓」が大切にしているのは、手紙を書くような、あたたかなコミュニケーションです。

わざわざ南関町まで足を運んでもらったからこそ、誰が、どのような思いでつくったものなのかを、きちんと伝えてから届けたい。そこには、お客さまを大切にする姿勢だけでなく、つくられた商品そしてその文化を大切にする姿勢がにじんでいます。

セレクトされている商品も、全国から集められた選りすぐりのものばかりです。

接客を通して、物語も地域も知ることが出来る、まさに店舗づくりも編集だと感じました。



お箸屋さんのカフェ


お箸スイーツ
そうめん屋さんのおやつ

「拝啓」には、カフェが併設されています。

メニューの1つが、その名も「お箸スイーツ」。

南関そうめんの製造過程で生まれる「ふし」を使った「そうめん屋さんのおやつ」や、南関町の菓子メーカーがつくる黒棒を使ったティラミスなど、スイーツもお箸でいただけます。そうめんスイーツはあっさりさっぱりしていて、とっても美味しかったです。

お箸で味わうつけパスタなどの季節限定メニューもご用意されています。

現在は南関そうめんや南関あげなど、地域の食材を取り入れた料理。

どれも素材にも味にもこだわった逸品です。調理担当の方を中心にメニュー開発をされているのだそう。


お食事は、季節メニューを2品いただきました。


南関そうめん
南関そうめん

南関そうめんの上には、南関あげがトッピングされています。出汁もおいしく、暑い日にピッタリです。地元食材を美味しくいただきました。


トマトの冷製つけパスタ
トマトの冷製つけパスタ

「トマトの冷製つけパスタ」つけ麺のように食べることができます。

スープの酸味と濃さも絶妙です。


実際に料理をつまみ、持ち上げ、口へ運んでみると、その重さや細さ、箸先の形、手へのなじみ方によって、食べる感覚が異なることに気づきます。

軽くて使いやすい!なんだかいつものお箸と違う!!と気づくことができます。


見て、触れて、食べて、お箸を知る。

カフェで過ごす時間そのものが、ヤマチクのお箸と南関町の味を体験する機会になっていました。同時に、カフェは地元の人が「コーヒーを飲みに行く」という日常的な理由で、何度も足を運べる場所でもあります。



使った後、お箸に感謝する「箸供養」


店内にある箸供養箱
店内にある箸供養箱

店内には、使わなくなったお箸を預かる「箸供養」の受付も設けられていました。天然素材のお箸であれば、メーカーは問わないそうです。

毎日の食事を支えてくれたお箸に感謝し、役目を終えたあとも丁寧に送り出す。買い替えを促すのではなく、それまで使ってきたお箸との時間を大切にする取り組みだなと思います。

使い終わったものを手放す時、どんな思いでしょうか。当たり前にそばにあった品物に、当たり前に感謝する時間をつくっているのかもしれません。

手元へ届くまでに関わった人や、食事を支えてくれた時間を思う。

箸供養にも、ヤマチクが大切にする「あたりまえへの感謝」が表れています。



あとがき


私が店内にいたとき、お客さまのこんな言葉が聞こえてきました。


「実は、娘の結婚式の引き出物で、ここのお箸を贈ってもらったのよ。」


お箸は、あまりにも日常に溶け込んでいます。

どこで買ったのか、いつから使っているのかを覚えていない。

傷んできても、いつ、どのように手放せばよいのかわからない。そんな人も多いのではないでしょうか。


どこで選んだのか。誰を想いながら選んだのか。いつ、もらったのか。

大切に届けることで、日常の一膳のお箸を通して、その日の記憶まで思い出すことができます。

文化をつなぐというと、伝統を特別なものとして保存することを思い浮かべます。

けれど、本当は、暮らしのなかで大切なものを忘れずに、使い続けていくことなのかもしれません。

どこで買ったのか、誰からもらったのかを、思い出せるものを手に取り、「いただきます」と食事を始める。

そんな何気ない毎日の積み重ねが、ものにまつわる記憶をつなぎ、ひいては、お箸だけでなく、大切な文化を次の世代へと渡していくのだと感じました。


つくり手と使い手、南関町の内と外をつなぐ。

「拝啓」は、ヤマチクのお箸を入り口に、ものづくりの文化と背景にも出会える場所でした。


オンラインショップ

https://yamachiku.stores.jp/ 


公式Xアカウント

https://x.com/yamachiku_hashi


公式Instagram

https://www.instagram.com/takenohashidake/



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そんな時代だからこそ、我々株式会社HONEは地方に足を運び、先人たちが紡いできた伝統や、未来に残したい景色を記録します。


いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。


町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。

忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。


気づけば、地方が近くなる。


現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。



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HONEの流儀
HONEの流儀

HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。


学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。

自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。

誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。

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