匠宿 工芸村に、じんわりとにじみ出るつくり手の想いに触れて。【静岡県静岡市_株式会社創造舎(駿府の工房 匠宿)】
公開日:
2026年8月7日
最終更新日:
2026年8月7日

こんにちは。HONEインターンの石井です。
先日、静岡市の丸子地区にある「駿府の工房 匠宿」を、久しぶりに訪れました。以前も足を運んだことがあったのですが、今回改めて歩いてみると、前に訪れた時にはなかった場所がいくつも増えていました。
案内してくださったのは、指定管理をしている株式会社創造舎(以下、創造舎)のみなさんです。「駿府の工房 匠宿」での工芸体験を中心に、周辺を「匠宿 工芸村」として里山工芸・観光村づくりを進めています。
この記事では、創造舎が匠宿 工芸村づくりにどんな想いを込め、どんな工夫を重ねてきたのかをお伝えします。匠宿を訪れたことがある方、伝統工芸や文化の継承に関心がある方、地域に根差した事業に取り組んでいる方が、この記事を読んで気づきを少しでも持ち帰られたら嬉しいです。
「つくり手の想いが、受け取る側に伝わる瞬間とは、どんな瞬間なのだろう」と考えながら読んでみてください。
▼匠宿のホームページはこちら
情熱が形になるまで。匠宿 工芸村の歩み
創造舎は2021年に静岡市から指定管理事業を受託し、「駿府の工房 匠宿」の指定管理を始めました。1年間で5つの店舗を施設内にオープンし、以前に人宿町で藍染工房を運営していた経験を活かしながら、前年比で来場者数を3倍、体験者数を2倍にまで増えていったそうです。
約5年が経過した2026年8月現在、周りに新たな店舗や施設が加わり、現在運営されているのは下記の14か所です。
駿府の工房 匠宿
ギャラリーTetoTeto
コトコトSTORE
HACHI&MITSU
和食 OTE
和処 若松
The COFFEE ROASTER
蓬きんつば ときや
吾作商店
ふきさらし湯
Ocha Spa
工芸ノ宿 和楽
工芸ノ宿 和楽別邸
1HOTEL
5年間でこれだけの建物を整備し、同時に運営し続けるには、相当な実行力・資金力が必要だったはずです。
それでも一つひとつの場所にコンセプトを持ち、情熱を注ぎ続けてきたところに、創造舎らしさを感じます。人の想いやまち全体の構造を大切にする姿勢が、この場所の広がり方にそのまま表れているように思いました。
参考情報:
匠宿 - TRADITIONAL HAND CRAFT ARTS CENTER

徳川家康公が晩年を過ごした駿府の宿場町
匠宿がある丸子地区は、もともと東海道五十三次の宿場町「丸子宿」でした。宇津ノ谷峠の東側入口にあたり、峠越えの前後に旅人が一息つく場所だったといいます。
自然薯を使った料理が名物で、とろろ汁を提供する「丁子屋」は慶長元年(1596年)の創業から今も営業を続けている人気店です。

丸子宿の隣にあるのが匠宿のある「府中宿」です。徳川家康公が隠居したのち、駿府城や浅間神社、久能山東照宮の造営のために全国から職人が集められた土地でもあります。

当時磨かれた技術を紹介し、次の世代へつなげていくために静岡市が1999年につくった公共施設が、駿府の工房 匠宿の前身にあたる「駿府匠宿」でした。
工芸と出会う。手を動かし、目で見て、持ち帰るまで。
「駿府匠宿」からリニューアルオープンした「駿府の工房 匠宿」は、静岡の伝統工芸を継承し、魅力を発信する拠点となっています。
駿河竹千筋細工やお茶染め、陶芸、プラモデルなどを、職人さんと同じような材料・方法で体験でき、完成した作品は持ち帰ることができます。

▼体験メニューはこちら
工房のすぐ隣では職人さんが実際に作業をしていることも多く、静岡の伝統工芸を肌で感じられる場になっていました。自分の手を動かして作業の様子や完成品を見ると、一つのものができあがるまでの苦労や奥深さが、より身に染みわたります。

また、匠宿全体を巡ってみると、複数の場所で職人さんがつくった商品を購入できるようになっていました。
3つある伝統工芸の工房、タミヤ監修の模型工房、ギャラリーなど、それぞれの場所で体験内容に合った商品が販売されています。自分で作品をつくったあと、職人さんの作品を見て気に入ったものがあればその場で購入できるという流れになっていました。
玄関口には静岡にまつわるグッズや特産品も並んでいて、お土産や記念に買って帰れるようになっています。見学した際、静岡在住の私がしずおかキャップを、弊社の代表の桜井さんが竹千筋細工の風鈴を購入したように、「静岡のものをそばに置いておきたい」「せっかく買うなら静岡のものがいい」という地元の人の気持ちにも応えているように感じました。

工芸を軸に広がる村
今回案内していただいた匠宿 工芸村は、工芸だけでなく飲食店や宿泊施設も含めて展開されています。寺院、工房、宿泊施設、カフェと巡るなかで、関わるすべての人が心を落ち着かせ、笑顔になれる場所をつくろうとしていることが伝わってきました。
なかでも工芸ノ宿 和楽と1HOTELは創造舎らしさが際立っていました。
くつろぎの裏にある、丁寧なものづくり
1棟貸しの宿泊施設「工芸ノ宿 和楽」には、創造舎のこだわりが随所に詰まっています。
駿河竹千筋細工で組まれたライトをつけると、壁には細い線状の影が映るようになっています。

ベッドの枕元にも細やかな意匠があり、旅人たちのくつろぎを演出していました。

アクセサリーケースも職人さんの手づくりです。

室内着には浜松市の注染染めが使われていました。

一目見ただけでも工夫の数々が伝わってきたのですが、創造舎の鈴木さんは「こだわりを言い出したらキリがないくらい」と話してくれました。
目に留まりにくい部分まで丁寧に想いを込めてつくり上げることが、訪れる人を喜んでもらい、また来たいという気持ちにつながっていくのだろうと感じます。
1HOTELが叶える、犬との特別な時間
駿府の工房 匠宿の隣に位置するのが1HOTEL(ワンホテル)です。1HOTELはわんこと一緒に過ごせるホテル。伝統工芸を愛犬と体験できるのが特徴です。

犬の肉球をお皿に押したり、オリジナルデザインのキーホルダーやトートバッグをつくったりすることができ ます。

また、愛犬とのプリクラ撮影も可能です。

室内施設のなかにはペット同伴が難しい場所も少なくありませんが、1HOTELなら心置きなく犬を連れて過ごせます。他の場所では制限されがちなことも、気にせず特別な体験ができる。そんな点が、利用者の心が動くポイントになっているのだと思います。
想いが伝わる瞬間に気づいて
匠宿 工芸村を歩いて改めて感じたのは、創造舎のみなさんのこだわりと、空間に漂う居心地の良さでした。
案内していただいている間も、社員さんが敷地内で打ち合わせをしたり、ランチをとったり、パソコンで作業をしたりする様子が自然と目に入ってきます。
場をつくる方々の気持ちがそのまま来場者にも伝わり、和やかな空気のなかで静岡の伝統工芸に触れられる。それが匠宿 工芸村なのだと思います。
私は以前にも駿府の工房 匠宿を訪れたことがありましたが、今回初めて上の方にある宿泊施設や飲食店を知り、お話を聞くなかで新しい発見がいくつもありました。
これから地域に関わっていくときは、施設の「部分」を見るのではなく、周りの地理的な環境や建物、思想にも目を向け、関わる方々の想いに着目していきたいと思いました。
HONEインターン/石井
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