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もちはだ工場に息づく誠実なものづくり〜ワシオ株式会社工場見学〜【兵庫県加古川市】

公開日:

2026年1月11日

最終更新日:

2026年1月11日

もちはだ工場に息づく誠実なものづくり〜ワシオ株式会社工場見学〜【兵庫県加古川市】

2026年1月9日(金)、兵庫県加古川市にあるワシオ株式会社の工場を訪れ、製造現場の見学と、代表の鷲尾岳さんへのインタビューをさせていただきました。

防寒インナーブランド「もちはだ」が生まれる現場と、その技術を守り続ける理由。

工場見学と鷲尾社長へのインタビューを通して、その背景にある哲学を紐解いていきます。



ワシオ株式会社 鷲尾式起毛とは?


左が「編みもの」右が「織りもの」
左が「編みもの」右が「織りもの」

最初に案内していただいたのは、鷲尾社長ご本人による「もちはだ」の生地に関する解説でした。


「衣服って、大きく分けて2種類あるんですよ。『織り』と『編み』。その違い、ご存じですか?」

「もちはだ」は、編み物(ニット)に分類されます。

シャツやスラックスなどに使われる「織り」は、縦糸と横糸を格子状に密に組み合わせて構成された、伸びない生地。しっかりと形を保ちたい場面や、パリッとした印象を求めるときに使われます。


一方、「編み」は、糸をループ状に絡めながらつくる構造。

セーターやスウェット、Tシャツ、そして「もちはだ」のようなインナー類に多く用いられており、伸縮性に富み、身体の動きに優しく寄り添います。


そして、最大の特徴とも言えるのが「起毛」です。


「起毛」とは、生地の表面をふわっと毛羽立たせて、より多くの空気を含むようにすることで、保温性や肌ざわりを高める加工。

冬用のスウェットや毛布、フリースなどにもよく使われている技術です。

もちはだの「起毛」は、一般的な製法と、ワシオの「鷲尾式起毛」では、構造も仕上がりも、まるで違うものでした。



あたたかさの秘密、鷲尾式起毛は「編みながら、横にとかす」


鷲尾式起毛
鷲尾式起毛

鷲尾式起毛とは?


通常、起毛は「編んだあと」に行われる工程です。

ローラーに無数の針がついた機械で、生地を縦方向に削るようにして毛羽立たせます。


それに対して「もちはだ」は、編みと起毛を同時に行う特殊な機構。

ワシオ株式会社では、創業者の発明を起点に、靴下用の丸編み機を独自に改造し、「編んでいるそばから、横方向に起毛する」という工程を可能にしました。

これは、唯一無二の技術です。


一般的な起毛が「針で引っかいて、繊維を切断する」のに対して、

鷲尾式起毛は、ループを壊さず、撫でるように掻き出すのが大きな特徴です。


この「横向きの毛足」が肌に面で触れるため、

・チクチクしない

・モフモフした感触が長持ちする

のだそう。


見た目でもわかる「ふわふわ」の起毛の秘密なのです。

この横向き起毛が重なることで、生地の中に2つの空気層が生まれます。


パイル式起毛の説明

1層目:パイル(ループ)構造の内側にできる空間

2層目:その上に起毛で形成された、ふんわりした空気の膜


実は、空気はもっとも熱を伝えにくい物質だそうです。

これにより、体温だけで暖かさを保つ「魔法瓶のような構造」が完成します。


発熱ではなく保温。

化学的な反応で暖かくなるインナーとも異なり、「もちはだ」は身体が持つ熱を逃さず、優しく守ります。


起毛のイラスト
社内に貼られている起毛のイラストからも、人との繋がりを大切にされていることが伝わります。


「もちはだ」の源流。丸編み機を見せていただきました。


丸編み機
丸編み機

工場で見せていただいたのは、長年使い続けられている丸編み機でした。

年季の入ったその佇まいは趣すら感じさせますが、今もなお現役の製造機として活躍しているとのことです。

「もちはだ」の温もりは、この歴史のある機械と技術から生まれています。


現代の量産型編み機が、効率や柄表現の幅を広げる方向へと発展してきたなかで、

「もちはだ」の起毛技術は、あえてその流れには乗らず、技術と編み機を守りながら磨き続けてきました。

効率やデザインの自由度、量産性と引き換えに選んだのは、起毛の質と、着たときの体感、そして何より「あたたかさ」に真摯に向き合うことです。



機械修理や改良の作業場
機械修理や改良の作業場

作業場のマスクを持つ鷲尾社長
作業場のマスクを持つ鷲尾社長

社内には機械修理や改良の作業場があります。

もはやDIYの域を超えており、機械そのものが、もちはだ独自のものづくりと不可分な存在なのだそうです。

歴史ある機械において、修理や改良を加えるには、職人の手技がすべて。

この高いハードルを越えられるからこそ、「鷲尾式パイル起毛」という希少な技術が現場で継承されているのだと思います。



三代目社長・鷲尾岳さんが語る「覚悟」と「信念」


三代目社長・鷲尾岳さんは2016年に家業に戻られ、2024年に代表取締役社長に就任されました。

就任時、経営的には企業の存続そのものが危ぶまれる、予断を許さない状況にあったそうです。

しかし、創業から受け継がれてきた技術は本物で誇りがあるもの。

この価値を守るには、「自分がやるしかない」という強い想いが芽生えたのだとおっしゃいます。


就任されてから、楽天からの撤退や組織の改革正社員化なども実施されたそうです。

ものづくりの原点を見つめながら、問い続け、決断し、実行する。


創業者 鷲尾邦夫(わしお くにお)氏
創業者 鷲尾邦夫(わしお くにお)氏

鷲尾社長のお祖父様にあたる創業者の鷲尾邦夫氏の想いも、工場や職人の技術も、ブランドの哲学も、人のつながりもすべて自分の使命として引き受け、次の時代へと継いでいらっしゃる姿が印象的でした。


note:https://note.com/t_washio/n/ne74e3aa5c4ec



「もちはだ」はこの世にあった方がいい。


展示されているもちはだ製品
展示されているもちはだ製品

「もちはだは、この世にあった方がいい。」

鷲尾社長がふと語ったその言葉は覚悟に満ちたものでした。

創業者への最大のリスペクトであり、70年続く火を消さないという強い意志の継承でもあります。

鷲尾社長の言葉は、「今あるものを守ること」の尊さに気づかせてくれました。


社内の掲示物(植村直己氏が南極大陸大冒険で使用された掲示物があります。)
社内の掲示物(植村直己氏が南極大陸大冒険で使用された掲示物があります。)

工場の一角には、「もちはだ」の歩みを伝える資料や、登山家や極地探検家が使用した実物の展示もありました。


過酷な環境の中で身体を守るもの、衣類という枠を超えて「命を支える道具」として選ばれてきた歴史もあります。

衣類やインナーとしての機能はもちろんのこと、まとう人に「安心感」や「やさしさ」までをも届けられているのです。



あとがき 「誠実」というものづくりのかたち


考案中の編み機のペイントガチャ(ショップ前に楽しい仕掛けがあります。)
考案中の編み機のペイントガチャ(ショップ前に楽しい仕掛けがあります。)

今回の見学とインタビューを通じて感じたのは、もちはだは、単なる防寒インナーという枠では語れない存在だということです。


技術を守り、人を育て、暮らしに寄り添う。

今あるもの、続けてきたことを信じ抜く力を感じました。

それは、目まぐるしく変化する時代の中で、実は難しく、最も誠実だと思います。技術やブランドに魂を宿していく矜持が垣間見えた瞬間でもありました。


技術や歩みを知ると、製品に込められた想いのあたたかさが、より深く伝わってきます。ぜひ一度、触れてみてください。


鷲尾社長、ワシオ株式会社のみなさま、ありがとうございました。


公式ECサイト:https://washio-japan.com/

鷲尾岳さんX:https://x.com/washio_takashi


HONE/亀元

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