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降りしきる雪の中、足早に向かったのは、山形県でも有名な八百屋さん「クラッカー」でした。山形県河北町の白く染まった街並みで見つけた、地域に根ざした商いの在り方と、人々を惹きつける「遊び」がもたらす活気について綴ります。
活気と彩りが混じり合う風景

山形県河北町役場の向かい側に、ユニ ークな八百屋さん「クラッカー」があります。扉を開くと、外の雪景色とは対照的な、生命力に満ちた温かい光景が広がっていました。新鮮な野菜や果物が所狭しと並ぶ中、特に目を引くのは、八百屋という言葉からは想像もつかないほど色鮮やかなデザートたちです。

旬の果物が詰め込まれたフルーツサンドや、ソフトクリームが主役のデザートカップ。なかでも、遊び心たっぷりにデコレーションされたチョコバナナは、この店を象徴する存在のように感じられました。私も一ついただきましたが、甘いバナナとチョコレートの調和は絶品でした。

この店名の由来は、昭和初期にクラッカー煎餅の自動焼き機の販売権を持ち、自らも販売を行っていた歴史に遡るそうです。かつての新しいもの好きな姿勢が、今の時代にも形を変えて受け継がれている。その歴史の奥行きが、今の賑やかな店構えを支えているのかもしれません。
詰め放題に宿る商いの面白さ

クラッカーの名物といえば、デザートだけではありません。店内の一角で行われていた野菜の詰め放題は、まさに圧 巻の一言でした。大根とキャベツが324円、人参は540円。この価格設定からも、地域の人々に喜んでもらいたいという、商いとしての潔さが伝わってきます。
私は人参の詰め放題に挑戦してみました。ルールは「袋に人参が触れていればいい」という気前が良すぎるどんぶり勘定。袋が破れんばかりに、無我夢中で詰め、最終的に手に入れたのは、4kg近い人参の山。このお得感はもちろん嬉しいものですが、それ以上に、袋に詰めるという行為そのものが一つのエンタメとして成立していることに驚かされました。

単にモノを売買するという事務的なやり取りではありません。どうすればより多く詰められるか、お店の方とそんな言葉を交わしながら過ごす時間は、地方の現場ならではの距離感に満ちていました。機能的な便利さを超えた先にある、心が浮き立つ体験こそが、遠方からも人々を呼び寄せる力となっているのでしょう。
地域の日常を照らす場所

山形の友人にこの日の出来事を話すと、真っ先に「チョコバナナは食べた?」と聞き返されました。地元の誰もが知っていて、共通の話題になる。それは、このお店がただの小売店ではなく、地域の人々の記憶に深く刻まれている場所であることの証だと思います。
こうした場所は、一朝 一夕に生まれるものではありません。日々の丁寧な商いと、訪れる人を驚かせたいという少しの茶目っ気。それらが積み重なることで、地域のインフラとしての機能を超え、愛着の対象へと変わっていくのだと感じました。地方には、まだ私たちが知らない魅力が至る所に眠っています。
雪深い山形で見つけたクラッカーの姿は、まさに私が大切にしたい活動そのものでした。効率的で経済性のあるものではなく、暮らしの中の遊びと会話。その積み重ねが、結果として周囲を動かしていく。そんな商いの原点を、山形の真っ白な雪の中で改めて見つめ直したような気がします。
あとがき

地方を歩いていると、こうした「数字だけでは測れない力」に出会うことがあります。効率や正解だけを追い求めれば、八百屋がチョコバナナをここまで本気で作る必要はないのかもしれません。しかし、その余白と遊びこそが人の心を動かし、また足を運びたいと思わせる唯一無二の価値を生み出しているのだと思います。
HONEインターン/森


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