
2026年春、姫路駅の西側に新しいお茶屋さんが誕生します。
「白鷺茶房(しらさぎさぼう)」です。
店主は赤松佳幸さん。
姫路の老舗茶舗を家業に持ちながらも、家業お茶屋の枠にとらわれず、
お茶をただ「飲む」のではなく、「感じる」場所を新たにつくろうとされています。
今回はひと足早く、赤松さんが提供する「茶歌舞伎」を体験しながら、
白鷺茶房に込められた想いを伺いました。
茶歌舞伎とは?日本茶の「違い」を楽しむ遊び

茶歌舞伎とは、名を伏せて出された複数のお茶を飲み比べ、その種類や産地を当てる、日本の伝統的な飲み当て遊びです。
通称「闘茶(とうちゃ)」とも呼ばれ、鎌倉時代末期に中国・宋から伝わり、
室町時代には武家や公家、僧侶の間で広く楽しまれてきました。
現代では、全国13の茶業青年団体が出場する茶審査技術競技大会の種目のひとつとして正式に競技化されています。
各団体から出場できるのは10名のみ。
人気産地・静岡などでは出場倍率も非常に高く、
「お茶の甲子園」と呼ばれるほどの大会なのだそうです。
「違いがわかるって、面白い」茶歌舞伎がひらく、日本茶の入口

実際に体験して、まず驚いたのは香りの違いの豊かさでした。 同じ「煎茶」であっても、見た目も、香りも、違います。
赤松さんによると、 お茶の違いを見分けるポイントは大きく3つあると教えてくださいました。
色:煎茶はやや黄色、深蒸し茶は濃い緑、かぶせ茶は鮮やかな緑
形状:深蒸し茶は細かく粉っぽく、普通煎茶や玉露は葉が整っている
香り:産地や製法によって個性が現れる、もっとも重要な 要素
「香りだけでお茶を識別するなんて、本当に分かるもの?」 体験前は、正直そう思っていました。
けれど実際にやってみると、 「あ、これさっきのと違う」と、違いを感じ取れる瞬間が訪れます。
正解かどうかよりも、自分の感覚が違うぞと、少しずつひらいていくことそのものが楽しい。それが、茶歌舞伎の魅力だと感じました。
日本茶の「香り」にも共通言語がある。

ここで赤松さんに教えてもらったのが、日本茶の香りを表す共通言語。 たとえば、こんな言葉があります。
みるめ香:新茶に感じる、若々しく青い香り。
火香(ひか):仕上げの火入れで生まれる、香ばしく甘い香り。
かぶせ香:遮光栽培された茶葉に出る、青のりのような香り。
今回、宇治・本山・霧島の3種類の煎茶を飲み比べさせてもらいました。
宇治茶:黄色がかった水色。ほんのり香ばしい。
本山茶(静岡):火香が強く、後味はすっきり渋め。
霧島茶(鹿児島):かぶせ香が際立ち、甘味も豊か。
時間が経つと味覚は慣れてしまう(収斂する)けれど、香りは最後までヒントを与えてくれるということ。だからこそ茶歌舞伎では、香りに注目するのだそうです。

赤松佳幸さんのこれまで


これだけお茶に詳しい赤松さんですが、
もともとは「お茶に興味なんてなかった」と語ります。
大学卒業後は東京でフィットネスクラブに就職。
ハードワークの日々のなかで、「一度帰ろう」と家業に戻る決断をしました。
実家は姫路の老舗茶舗。
家業に入る中で、出会ったのが、大阪茶業青年団でした。
茶審査技術競技大会にも挑戦されたそうですが、最初は火香やかぶせ香といった言葉すら曖昧で、産地ごとの特徴もほとんど分からなかったとのこと。
それでも、先輩たちに教 わりながら、
何度もお茶を飲み、香りに鼻を近づけ、
色や形といった情報を一つひとつ確かめていくうちに、少しずつ「違い」が見えるようになっていきました。
「お茶って、こんなに違いがあるんだ。
しかも、その違いは、ちゃんと分かるようになるんだ。」
その気づきこそが、
赤松さんをお茶の世界へ引き込んでいった原点だったそうです。
赤松さんの心を動かした、お茶の時間

赤松さんが、お茶を「楽しい」と感じるようになったきっかけは、決して特別な体験だったわけではありません。
お茶へのまっすぐな姿勢から始まる想いが、心に残りました。
最初に心を動かされたのは、 家業で扱っていた、ごく身近なティーバッグのお茶を飲んでいる時 だったそう。
日常的に手に取れる価格で、特別な淹れ方をしなくてもおいしい。
冬の朝にその一杯を飲む時間が、楽しみになる。
「お茶って、こんなに素敵な飲み物なんだ。」
そう感じたのが、最初の一歩だったとおっしゃいます。
やがて、茶業青年団での経験を通して、
お茶の「違い」が感覚として分かるようになっていきました。
この「違いがわかる」体験を茶歌舞伎という形でお客さまに届けたとき、
もうひとつの喜びが生まれます。
「わかった!」そう言って、ぱっと表情が明るくなる瞬間。
その顔が嬉しくて忘れなられないと言う赤松さん。
大阪や岡山、長野など、遠方から足を運んでくれる人がいることもあるそうで、
お茶を知ることは、人の心を動かす力があるのだと実感したそうです。
自分が感じた楽しさが、誰かの「わか った」と輝く表情に変わる。
その連なりこそが、赤松さんにとっての原動力なのだと感じます。
「お茶の多様性を楽しめる人を増やす」

白鷺茶房のコンセプトは、「お茶の違いを楽しめる人を増やす」こと。
「私自身が体験してきたような、
『お茶って違いがあるんだ!』という瞬間を、
ここに来てくださる方にも味わってもらえたら嬉しいです。」
知識がなくてもいい。
正解を知らなくてもいい。ただ、香りや色の違いに気づいてみる。
白鷺茶房は、そんな感覚がひらく時間を大切にした場所なのだと感じました。
白鷺茶房Instagram:https://www.instagram.com/shirasagi_sabou/
残していきたい文化を自分だからできるカタチで。

「白鷺茶房」という名前は、 姫路城の別名 「白鷺城」 に由来しています。
お祖父さまも姫路でお茶屋を創業し、その家系に生まれ、これから自分自身も姫路でお茶屋を営まれる赤松さん。
「大切にしたいからこそ、新しく踏み出す」という選択なのだと感じました。
姫路という土地に根を張り、家業というルーツを受け取りながらも、自分の感じたことを体現できる場所を作る。
残したいお茶の文化「自分だからこそ、できるカタチで届ける。」赤松さんの純粋な想いと挑戦を聞かせてもらえました。
茶歌舞伎は、自分なりの「感じる」を大切にし、言葉で表現することで楽しさに変わります。茶歌舞伎の体験を通して、私も「わからなかったものが、わかるようになる」感覚に、すごくわくわくしました。白鷺茶房は、そんな気づきの場になるお店なのではないかと思います。
お茶のことを何も知らない人ほど、きっとここでの体験に心が弾むはずです。
2026年春のオープンが、今からとても楽しみです。
赤松さん、ありがとうございました。
HONE/亀元

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