
2026年2月18日〜20日、長崎県雲仙市にて、一般社団法人長崎県地域おこし協力隊ネットワーク(NCN)さまが開催する長崎県地域おこし協力隊向け研修「ローカルライフデザインラボ」に研修講師として参加してきました。
私自身は初めての「雲仙・小浜」。大地のエネルギーを活用した温泉蒸しの観光地で観光地ではないある建物に目を奪われました。
和洋折衷のモダン建築「小浜公会堂」が教えてくれた、リゾートの土壌
温泉街を歩いていて、ひときわ目を引いたのが「小浜公会堂」でした。

今回の研修会場としてお借りした場所なのですが、和洋折衷のとても素敵な建物なんです。
日本の伝統的な瓦屋根(入母屋造り)なのに、壁は西洋風の下見板張り、そして縦長の大きな窓。まるでキリスト教会のような、どこか厳かでモダンな雰囲気を漂わせています。
「なぜ、温泉街にこんなハイカラな建物が?」
と思って調べたところ、その答えは、小浜が歩んできた「国際的なリゾート地」としてのルーツがありました。
この小浜公会堂が建てられたの は昭和9年(1934年)。奇しくも、雲仙が日本で最初の「国立公園」に指定された年だそうです。
明治時代から、雲仙・小浜エリアは上海や香港などに駐在する欧米人が夏場に訪れる避暑地として大いに栄えており、外国人居留地や教会のデザインといった海外の文化が、地域の公共施設にも自然と溶け込んでいった結果生まれたのが、この「和洋建築」というわけです。
地域に外部の血(グローバルな視点)が入り込み、地元の文化と混ざり合う。現代の地域づくりでも「よそ者・若者・ばか者」が地域を変えると言われますが、小浜はすでに100年近く前から、多様な文化を受け入れて独自の価値に変換する土壌を持っていたわけです。
「雲仙地獄」のエネルギーと、隠れキリシタンの凄惨な歴史
少し山側へ登ると、今度は「雲仙地獄」と呼ばれるエリアが広がります。モクモクと立ち上る噴気と硫黄の匂い。西暦701年に開かれた仏教の霊場であり、その荒涼とした風景から「地獄」と名付けられました。

「地獄」とは単なる比喩ではなく、「現実の地獄」として使われた非常に重い歴史を持っています。
江戸時代初期(1627年〜1632年)、島原藩主の命により、キリスト教の信仰を捨てていない信者(通称:隠れキリシタン)たちがこの地に連行されました。
そして、この100度近い煮え滾る熱湯を使った「雲仙地獄責め」という過酷な拷問が行われ、30名以上がここで殉教しています。

大地の凄まじいエネルギーが、ある時は仏教の修行場となり、ある時はキリシタン弾圧の凶器となる。そして明治以降は、皮肉なことにキリスト教圏の欧米人たちを癒やすリゾート地へと姿を変えていく。
土地の持つポテンシャル(資源)は、使う人の意志や時代背景によって、これほどまでに残酷にも豊かにも変化するのだなと感じました。地域資源をどう解釈し、どう使うか。その重みと責任を突きつけられるような、歴史の転換点を目の 当たりにしました。
参考情報:
湯はあっても水がない。「六角井戸」に見るインフラの渇望
海沿いにひっそりと立つ「弘法大師像」も、「小浜」という土地のリアルな課題を映し出しています。

延暦9年(790年)、諸国を巡っていた弘法大師(空海)が小浜を訪れた際、村人が「飲料水がなくて苦しんでいる」のを見かねて、持っていた六角の杖で大地を突き、清水を湧き出させたという「六角井戸」の伝説があるそうです。

豊富な熱湯(温泉)が湧く一方で、生活に最も不可欠な「冷たくて安全な真水」の確保が極めて困難な地形だったのです。この問題は当時の人々にとって死活問題でした。
ちなみにこの弘法大師像は昭和61年(1986年)に「小浜町商工会青年部」の手によって建立されたそうです。
地域の「ないもの(弱点)」や「かつての苦労」を隠すのではなく、むしろ語り継ぐべきストーリーとして顕在化させる。地域ブランディングのお手本のようなモニュメントだと感じました。
究極のエコシステム「温泉蒸し」の強み
そして最後は、食の魅力です。街のあちこちから湯気が上がる「蒸し釜や」の風景は、小浜・雲仙のポテンシャルを最も象徴的に表しています。

小浜温泉の強みは、なんといっても日本一の熱量(源泉温度105度)です。
あり余るほどの大地エネルギーをそのまま調理熱として活用するのが「蒸し釜」の文化。燃料代ゼロという究極のエコシステムとも言えます。
特筆すべきは小浜の泉質が「ナトリウム-塩化物泉(食塩泉)」であること。高温の蒸気に微量の塩分が含まれているため、海鮮や野菜を蒸すと、ただ火が通るだけでなく、「温泉の塩分で絶妙な味がつく」のです。

調味料ではなく、その土地に湧き出るエネルギーと成分そのもので味付けをする。これぞ、他の地域には絶対に真似できない強烈な「独自価値」です。
最後に:大地のエネルギーと様々な信仰が交差するまちを体験して
田舎に行くと、田んぼがあり、海があり、電車があり、空が高く、古民家がある、いわば「日本っぽい場所」がたくさんあります。
しかし長崎県に至ってはどこを訪れても「日本っぽくない」景色が広がります。小浜・雲仙においてもキリスト教からの教えだったり、海外富裕層の文化だったりと、異なる文化が交差し、敵対するのではなく、混ざり合っているようにも見えました。
古くから外の往来が多かったことで、交わること・異なることに対する耐性がついているのかな?という仮説も立ちました。もっとゆっくりして休みたくなる、そんな温泉街でした。
HONE / 桜井
ほねろぐとは
AIの急速な台頭により、私たちの世界は、目紛しい変化を遂げています。効率化が進むその影で、古きよき日本の文化や風景、人との繋がりが失われつつあるのも、悲しい現実です。
そんな時代だからこそ、我々株式会社HONEは地方に足を運び、先人たちが紡いできた伝統や、未来に残したい 景色を記録します。
いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。
町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。
忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。
気づけば、地方が近くなる。
現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。
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