
2026年5月29日から31日、静岡県静岡市の青葉シンボルロードと葵スクエアで開催された「術-JUTSU-」を現地レポート。
青葉シンボルロードが位置する呉服町周辺は、もともと徳川家康が整備した駿府城下町の商業地区にあたります。築城のために連れてきた職人たちの技が伝統工芸として今に残り、当時の鷹匠が暮らした場所は「鷹匠」という地名として街に刻まれています。
参考情報:
(HONEインターン/石井)
術-JUTSU-とは?
術-JUTSU-は庭師と空師が主催しているイベントです。庭師は庭園や緑地の設計・施工・管理を、空師は高い木に登っての伐採などを普段の業務としています。以前は東静岡駅近くや静岡競輪場で開催されたこともあるようですが、今回は昨年に引き続き青葉シンボルロードでの開催となりました。庭に限らず、磨かれた「術」を持つ多様なジャンルの方々が集まる、クリエイティブ・ギャザリングです。
インスタグラムには来場した方も写真や動画を投稿しています。「静岡の本気を見せられた」、「アートと自然が融合し た、芸術的イベント」と、開催期間を超えて盛り上がりました。
マルシェのつもりで来たら、別世界が広がっていた
会場へ向かう前、私はよくあるマルシェのような様子を想像していました。タ ープテントで区切られたブース、旗を立てたキッチンカー、気になったお店に立ち寄る来場者。しかし実際に目にしたのは、木や石、竹で組まれた建造物の数々と、キラキラした目で会話する人々の姿でした。それぞれの出店者が解き放つ「術」が来場者を引き込み、会場全体をひとつの世界観で包み込んでいました。

庭師がデザインする会場が、一体感を生む
会場の一体感を生み出すポイ ントのひとつは、同じジャンルに就く人が会場全体をデザインしていることです。ブースや通路にある作品にはすべて、作庭した方のインスタグラムを表示するQRコードが設置されていました。会場の色や雰囲気に極端な違いがないため統一感があり、どこを歩いても落ち着いた気持ちでいられます。

また、地域に根付いた方が出店していることも魅力です。この日はとても暑かったので、私はかき氷を食べることにしました。海風農園さんのかき氷はイチゴ100%で、静岡県御前崎市の自 社農園で採れたイチゴを急速冷凍してフワフワに削り出したもの。最後には練乳をたっぷりかけてくれました。

気づけばブースの中へ。人と人として交わる設計
来場者が出店者と交流しやすい設計も重要です。会場の中にはどこかしらに気を取られるものがあり、そこから出店内容へと引き込まれていきます。「さてまずは一通り回ってみようか」と会場に入ると、知り 合いがギターを弾いていました。よく話を聞いてみると、持っていたのは桐ギターです。ギターは一般的に外国の木材が使われますが、こちらは国産の桐で、軽量であることが特徴とのことでした。気づけば「弾いてみてもいいですか?」と声を掛け、弾き心地や普段の活動などを話しながら、出店者からギターについて紹介してもらい、いつの間にかブースの中に入り込んでいました。「術-JUTSU-」では、出店者が前に構えることなく庭の中に溶け込んでおり、出店者と来場者という関係が、好きなことや気になることを共有できる人と人の関係になっていました。

ブースの裏側にあった、出店者同士の響きあい
ブースでお話を聞いてみると、出店者同士でのつながりも見えてきました。普段、心理カウンセリングをしているという方のブースは、竹で囲われ、おしゃれな古タンスが置かれていました。素敵なブースだなと何の違和感もなく見ていましたが、デザインは別ブースで出店している庭師の方が手がけたとのことです。他のブースも同様で、全面に木の皮が貼られた存在感のある建造物は、庭師のWood stockさんが作庭し、居酒屋メニューを販売するCHAOS Lab.さんが出店していました。

出店者が隣のブースに自社の商品を渡したり、お昼ごはんをイベント内の出店者から買ったりと、出店者同士の距離の近さも、この場ならではでした 。
ジャンルは違えど根は同じ、すべての 術 が響きあう。
「ジャンルは違えど根は同じ、すべての 術 が響きあう。」
パンフレットに書かれていたこの言葉が、会場を歩くうちに腑に落ちてきました。知り合いのミニライブに足を止め、出店者と話し込み、あの空間でかき氷を食べる。予定にないことが次々と起き、気づけば長い時間を過ごしていました。「やらなきゃ」で追われる日常の時間が、ゆるやかな流れに変わっていたのです。
コンセプトに合う出店者を集めることと、一体感のある場をつくることは同じようで異なります。術-JUTSU-では、庭師たちが会場全体の風景を設計し、その中に出店者が存在していました。だから来場者はブースを巡るの ではなく、一つの世界観の中を歩くことになります。イベントの魅力は個々の出店内容だけでなく、それらをどう響きあわせるかによって大きく変わる。そのことを実感した3日間でした。
かつて徳川家康公がこの街に職人を集め、産業を起こしたように、現代の職人たちもまた、自らの「術」で新たな文化の風景を街中に作り出しています。静岡の歴史的な背景と見事に合致したこのクリエイティブな熱量は、これからもこの街を面白くしていきそうです。

【開催情報】
術 -JUTSU-
2026/05/29-31 11:00-21:00
静岡県静岡市青葉シンボルロード
B1~B5、葵スクエア
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