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私たちを知ってほしい。製造現場が届ける技術と、物語に触れる一週間。【静岡県浜松市_Makers Market 2026】

公開日:

2026年6月28日

最終更新日:

2026年6月28日

私たちを知ってほしい。製造現場が届ける技術と、物語に触れる一週間。【静岡県浜松市_Makers Market 2026】

2026年6月24日、遠鉄百貨店 新館6階特設会場で開催されている催事、「Makers Market 2026-日本の製造現場から-」を訪れました。


会場に並んでいたのは、蝶番や缶など、私たちの暮らしに身近な製品ばかり。しかし、その多くを手がける企業は、普段は企業向けに製品を供給するBtoBメーカーです。私たち生活者は、製品には日々触れていても、それをつくる企業や技術に目を向ける機会は、決して多くありません。


だからこそ、この催事には特別な意味があります。長年培ってきた技術を、一般向けのプロダクトとして届け、製造現場の魅力や背景を直接伝える場となっていました。



Makers Market 2026とは?


「Makers Market 2026 -日本の製造現場から-」は、2026年6月24日から30日までの1週間、遠鉄百貨店 新館6階特設会場で開催される、体験型ポップアップイベントです。

会場には、企業向けの製品を手がける、全国8社が一堂に集結。本記事では、その中から特に印象に残った5社をご紹介します。本業で培った技術を生かし、バッグや羽釜、名刺入れに食器などを、生活者向けに開発したライフスタイルブランドを展示・販売しています。

コンセプトは、”工場ってカッコイイ”。


企業名が表に出ることの少ない製造現場ですが、そこには長年磨き続けてきた高い技術と、それを受け継いできた人たちの誇りがあります。Makers Marketは、製品だけを届ける場ではなく、その背景にある技術や物語、ものづくりへの想いまで生活者へ直接届けることを目指した催事です。


工場を「部品をつくる場所」ではなく、「暮らしを支える価値を生み出す場所」として知ってほしい。そんな想いが、会場全体に込められています。


プレスリリースはこちら:【ものづくりの街・浜松で開幕】自動車部品から老舗傘まで、製造業・町工場の「技=ワザ」が仕立て上げたライフスタイルブランド「Makers Market 2026」遠鉄百貨店にて6月24日(水)より開催





「蝶番」という製品をつくる/有限会社伊藤金属総業


名刺入れ「TunagaR」
名刺入れ「TunagaR」

創業80年の有限会社伊藤金属総業は、事業区分としてはプレス加工業に分類されますが、一貫して蝶番づくりに向き合ってきたメーカーです。


ドアや家具、電化製品に街中の信号機まで。私たちの暮らしの中には、数え切れないほどの蝶番が使われています。普段は意識することのない存在ですが、暮らしを支える重要な製品です。


同社が今回初めて店頭販売したのは、真鍮製の蝶番と伊豆の鹿革を組み合わせた、名刺入れ「TunagaR」。伊豆の革職人との出会いから生まれたこのプロダクトは、蝶番そのものを主役にした一品です。重厚感のある真鍮製の蝶番と、しなやかな鹿革が見事に調和しています。滑らかに開閉するたび、ものづくりの技術を味わえます。


名刺入れ「TunagaR」特別色
名刺入れ「TunagaR」特別色

印象に残ったのは、代表である伊藤さんの「私たちが作っているのは、プレス加工『部品』ではなく、蝶番という『製品』なんです。」という言葉でした。


加工はあくまで手段であり、向き合ってきたのは蝶番そのもの。その誇りがあるからこそ、この名刺入れは単なる雑貨ではなく、自分たちのものづくりを知ってもらうための、新たな挑戦でもありました。



家族の「宝箱」をつくる/側島製罐株式会社


側島製罐のブースに足を運ぶと、まず目に飛び込んできたのは、思わず立ち止まりたくなる温かい展示でした。子どもの思い出を保管するデザイン缶「Sotto」と、スマートキーを収納する缶製キーケース「AcarN」。創業120年の老舗缶メーカー・側島製罐が展開するブランド「側島心具製造所」のプロダクトです。


思い出を保管するデザイン缶「Sotto」
思い出を保管するデザイン缶「Sotto」

「Sotto」の缶には、手紙や子どものおもちゃ、写真などが大切そうに収められていました。子どもの成長の記録や、大切な人からの手紙など、「いつか見返したいもの」をそっとしまっておくための缶です。物を収納する道具ではなく、思い出を未来へつなぐ「宝箱」として提案していました。


一方、「AcarN」は、スマートキーが発する微弱な電波を遮断し、盗難を防ぐ缶製キーケースです。高い機能性はもちろん、毎日持ち歩きたくなる愛らしいデザインも魅力でした。車を持っていない私でさえ、「この缶なら欲しい」と思ってしまうほどです。


缶製キーケース「AcarN」
缶製キーケース「AcarN」

親子の大切な思い出を残すために。愛車を守るために。同じ「缶」でも、そこにしまうのは物ではなく、大切な時間や安心感でした。工業製品として缶だけをつくるのではなく、「何を大切にしまいたいか」という体験までデザインする。その発想は、120年にわたって缶づくりと向き合ってきたメーカーだからこそ生まれたものなのだと感じました。


そんな側島製罐は、創業120周年を記念し、「雑誌のように読める社史」を制作するクラウドファンディングにも挑戦しています。缶の歴史だけでなく、日本のものづくりや文化を未来へつなぐ試みです。ぜひその挑戦ものぞいてみてください。


参考記事:缶を愛するすべての人へ。歴史と魅力が詰まった、老舗缶屋の美しき社史。【側島製罐_愛知県大治町】



「消費のない世界」をつくる/共和レザー株式会社


静岡県浜松市を代表する産業の一つ、自動車。そのシート素材を長年手がけてきた共和レザー株式会社が展開するブランドが「Sobagni」です。


バッグを手に取ってまず驚いたのは、その軽さでした。そして表面に触れた瞬間、「どこかで触れたことがある」と感じる質感があります。それもそのはず。使われているのは、自動車のシートにも採用される合成皮革をベースに開発された素材です。


「Sobagni」
「Sobagni」

一般的な合成皮革は、時間の経過とともに加水分解によってひび割れやべたつきが生じることがあります。しかし、「Sobagni」に使われる素材は、10年以上経っても加水分解しにくく、軽量で、水や汚れ、傷にも強いことが特長です。会場では一般的な合成皮革との耐久試験も展示されており、その高い耐久性を実際に見ることができました。


耐久試験の展示
耐久試験も展示

ブランドが掲げるのは、「消費のない世界」。


壊れたら買い替えるのではなく、一つのものを長く使い続ける社会を目指しています。

買い替えることを前提とするのではなく、良いものを長く使い続ける。その考え方は、耐久性の高い素材を長年追求してきた、共和レザーだからこそ説得力があります。


毎日何気なく座っている自動車のシート。その技術が今度はバッグとなり、暮らしに寄り添う存在へと生まれ変わっていました。

技術的な性能の高さだけではなく、「良いものを長く使ってほしい」という想いを形にしていること。それこそが、共和レザー株式会社がBtoBで培ってきた技術を、生活者へ届ける理由なのだと感じました。



「技術」を食卓に届ける/株式会社イハラ製作所


創業65年、浜松市で輸送用機器の製造を手がける株式会社イハラ製作所が挑戦したのは、「最高においしい白米を炊くこと」でした。


会場で展示されていたアルミ製羽釜「アラ火」は、自動車部品の製造で培ってきた、アルミ鋳造技術を生かし、開発されたプロダクトです。アルミの高い熱伝導率を生かした急速加熱により、短時間で米の旨みを引き出す「早炊き」を実現。料理人と共同開発し、家庭でもプロの炊き上がりを目指した一台です。


アルミ製羽釜「アラ火」
アルミ製羽釜「アラ火」

「技術には自信がある。でも会社の名前は知られていない。」

普段は輸送用機器を製造していますが、自社の技術を消費者へ直接届けたい。その想いから誕生したのが、このアルミ製羽釜「アラ火」です。


目の前にあるのは炊飯道具ですが、その本質は「アルミ鋳造技術」の結晶でした。自動車産業の街・浜松で磨かれたものづくりの技術が、今度は毎日の食卓を支える道具へと姿を変えていました。



「使い続けたい一本」をつくる/株式会社藤田屋


創業1919年、静岡市の老舗傘メーカー・藤田屋が手がける新ブランド「LUMINOUS」は、晴れの日も雨の日も一本で使える晴雨兼用傘です。


新ブランド「LUMINOUS」
新ブランド「LUMINOUS」

最高等級の撥水性能を備え、水滴は生地の上を転がるように流れ落ちます。さらに、高い耐水圧により激しい雨にも対応。晴れた日には紫外線を遮り、強い日差しの下でも木陰に入ったような涼しさを生み出します。機能性はもちろん、シンプルで上品なデザインも魅力的でした。


会場では、浜松注染そめや遠州綿紬、静岡挽物の持ち手を組み合わせるセミオーダーの日傘も展示されており、静岡のものづくりが一つの傘に詰まっていることを実感できます。


セミオーダーの日傘
セミオーダーの日傘

今ではコンビニや駅でも、傘は手軽に買える時代です。その手軽さゆえに、「また買えばいい」と考え、私自身も今年に入って2本の傘をなくしてしまいました。

だからこそ、今回は「LUMINOUS」の折りたたみ傘を購入しました。作り手の想いや技術、素材へのこだわりを知った上で選んだ一本だからこそ、「今度は大切に使いたい」という気持ちが自然と湧いてきます。


ものづくりの背景を知ることは、製品との付き合い方を変えてくれるのかもしれません。いつもは少し憂鬱だった雨の日も、この傘を差せると思うと少し楽しみになりました。



あとがき


今回の「Makers Market 2026」には、紹介した企業のほかにも、時計や食器、マウスパッドなど、日本各地の製造現場から生まれたプロダクトが数多く並んでいました。



Mawal/Owan エフピー化成工業株式会社
Mawal/Owan エフピー化成工業株式会社

取材を通して最も印象に残ったのは、多くの出展者が口をそろえて話していた「もっと私たちのことを知ってほしい」という言葉です。普段はメーカーを支え、自社の名前が表に出る機会は決して多くありません。普段は他社の製品づくりを裏側から支えているため、自社の名前が表に出る機会はめったにありません。


私たちもその技術の恩恵を日々受けながらも、誰が、どんな想いでそれを生み出しているのかを知る機会は決して多くはないはずです。

しかし、その技術やものづくりへの誇りは、どの企業にも共通していました。今回展示されていたプロダクトは、その技術を直接届けるための新しい挑戦でもあります。


「工場ってカッコイイ。」


この催事のコンセプトは、単に製造技術の高さを伝える言葉ではありません。ものづくりの背景を知ることで、普段何気なく使っている道具の見え方が少し変わり、その向こう側にいる「つくり手」の存在を思い浮かべるようになる。そんな体験を届けてくれる一週間でした。ぜひ会場へ足を運び、日本の製造現場が持つ技術と、その想いに触れてみてください。


HONEインターン / 森



ほねろぐとは


AIの急速な台頭により、私たちの世界は、目紛しい変化を遂げています。効率化が進むその影で、古きよき日本の文化や風景、人との繋がりが失われつつあるのも、悲しい現実です。


そんな時代だからこそ、我々株式会社HONEは地方に足を運び、先人たちが紡いできた伝統や、未来に残したい景色を記録します。


いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。


町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。

忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。


気づけば、地方が近くなる。


現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。



株式会社HONEについて


HONEの流儀
HONEの流儀

HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。


学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。

自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。

誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。

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