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静岡市から車を走らせること30分。いつのまにか視界は深い緑に包まれ、心地のよい静寂の中、ウグイスの鳴き声が響き渡ります。そこは、都会の喧騒とつかず離れずの距離にある、藤枝市の穏やかな山間地域でした。
今回私たちは、この場所で新たな挑戦を始めようとしている地域おこし協力隊のお二人のもとを訪ねました。
藤枝市の地域おこし協力隊のお二人
今回、空き家を活用した民泊の相談を寄せてくださったのは、藤枝市の地域おこし協力隊として活動する玉手翔吾さんと、冨山瞳さんのお二人です。
玉手翔吾さん

玉手さんは岩手県奥州市のご出身。前職では柔道整復師や保育士として、人の心と身体に寄り添う仕事をしてきました。藤枝の澄んだ空気や山々の景色に故郷の面影を重ね、お子様を育てる環境としてもこの地に魅力を感じたそうです。持ち前の専門知識を活かし、住民の健康を支える体操教室や、農山村活性化施設での交流イベントを企画されています。
冨山瞳さん

神奈川県出身の冨山さんは、なでしこリーグや海外でもプレーした元プロサッカー選手です。高校三年間を藤枝順心高校で過ごした彼女にとって、このまちは青春の記憶が詰まった特別な場所。引退後、再び縁あって藤枝に戻り、現在は観光協会と連携しながらスポーツツーリズムの企画やSNSでの発信に奔走しています。
藤枝市ってどんな場所?
藤枝市は、静岡県の中部に位置する人口約14万人のまちです。
北部は南アルプスを背負う豊かな山々に囲まれ、南部には志太平野が広がっています。古くから東海道の宿場町として栄え、現代では全国にその名を知られるサッカーのまち、そして良質な「藤枝茶」や有機農業の先駆けとしても知られています。都市の利便性と豊かな自然が調和した、暮らしができる地域です。

記憶が眠る、築五十年の邸宅

現地へ向かう道中、代表の桜井と私は「この立地での民泊は、少し難しいかもしれない」と話していました。駅から遠く、かといって秘境と呼べるほどの遠さでもない。目的がなければ、なかなか通りかかることのない場所だったからです。

しかし、丘の上に佇む築50年を超えるであろう二階建てを目にした瞬間、その懸念は期待へと変わりました。歴史を感じる梁、6畳4間の大広間、薪で温めるお風呂。かつてこの場所で営まれていたであろう豊かな暮らしを、今も留めていたのです。

二階に上がると、当時の面影を残す茶箱が静かに並んでいました。かつてこの斜面で茶葉を育て、大切に加工していた農家の誇りが伝わってきます。母屋の周辺にはいくつもの「はなれ」があり、可能性を秘めた納屋が至るところに広がっていました。
目の前の急斜面には、茶畑だったと思われる耕作放棄地と、深い竹林。その圧倒的な風景は、ここをただの「宿泊所」ではなく「目的地」へと変える力がありました。
逆転の発想で「滞在」をデザインする

弊社代表の桜井が運営する民泊は、基本的に「駅から徒歩圏内」を条件としています。それは地方で生き抜くための1つの戦略ですが、今回のような山間部では、異なる戦略が必要になります。
立地が悪い宿の勝ち筋の定石は「高級路線で初期投資を数千万円かける」か、立地の不利を逆手に取った独自の「意味」を持たせるか。桜井は、この場所でしかできない体験をパッケージ化した「連泊・延泊」前提のスタイルを提案しました。

近所には著名人もお忍びで訪れる筍(タケノコ)名人がいて、裏山にはハイキングコースが続いています。朝は霧のかかる山々を見ながら内省を行い、昼は陶芸や農作業、筍掘りに汗を流す。そんな、時間の流れを能動的に変える過ごし方ができるのではないか?と考えました。

加えて、元アスリートである冨山さんの感性を活かし、「アスリートが心身を見つめ直すリトリート」や、「地域の工芸に深く触れる農泊」といったコンセプトを掛け合わせることで、この宿は唯一無二の存在になります。利用する入り口を多角的に用意することで、遠く離れた場所からでも「あそこへ行きたい」と思わせる勝ち筋が見えてきました。
あとがき

見学を終える頃には、最初抱いていた不安は消え、お二人とこれからの展開を語り合う時間になっていました。田舎の空き家は、ただ古い建物というだけではありません。そこにはかつて誰かが生きた証があり、その土地固有の豊かさが眠っています。
それをどのように現代の価値として翻訳し、訪れる人の心に届けるか。玉手さんの柔らかな物腰と、冨山さんのアスリートらしい芯の強さ。お二人の個性がこの邸宅と溶け合ったとき、藤枝の山あいに新しい風が吹くことは間違いありません。
帰り道の車窓から見える桜並木が、行きよりもずっと鮮やかに見えた一日でした。
HONEインターン / 森
ほねろぐとは
AIの急速な台頭により、私たちの世界は、目紛しい変化を遂げています。効率化が進むその影で、古きよき日本の文化や風景、人との繋がりが失われつつあるのも、悲しい現実です。
そんな時代だからこそ、我々株式会社HONEは地方に足を運び、先人たちが紡いできた伝統や、未来に残したい景色を記録します。
いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。
町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。
忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。
気づけば、地方が近くなる。
現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。
株式会社HONEについて

HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。
自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。

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