.png)
2025年11月9日、小倉南区を案内してくださった区役所の方とともに、私は平尾台を訪れました。北九州の自然を巡る中で、最も心に残ったのが、「羊の群れ」のような石灰岩が広がる草原と、開発で切り出される山々でした。
自然との出会い

平尾台カルストは、日本三大カルストのひとつ として知られています。
国の天然記念物であり、北九州国定公園にも指定されている、貴重な景観が広がる場所です。
標高約370〜710mの台地には、ピナクル(石灰岩柱)と呼ばれる奇岩が点在し、その風景は「羊の群れ」のようだとたとえられてきました。
※カルスト台地とは、石灰岩が雨水や地下水によって溶けることで形成される地形のことを指します。
私は1年前、友人たちと観光で訪れています。ここに来ると、キャッチャー・イン・ザ・ライが頭に浮かぶのです。全国あらゆる地域を巡ってきましたが、平尾台の雄大な自然は、忘れられない場所の一つになっています。
過去と現在、その両方を抱えて

カルスト台地を前にすると、時間の流れが重く感じられ、「自分がいかにちっぽけなのか」が分かります。 平尾台の石灰岩は、約3億4千万年前の海中生物の死骸が、堆積してできたものだと言われています。雨や風で削られ丸みを帯び、地下には鍾乳洞が形成されています。その長い地球の歴史が、この一帯の地形を形づくっています。

そんな雄大な台地の奥に目をやると、人間の営みの痕跡が見えました。開発によって切り出された山肌。石灰岩はセメントの材料にもなり、地域の産業とも密接に結びついています。
平尾台では、景観保護と鉱業の両立をめぐって、昔から調整が行われてきた場所でもあります。地域が抱える課題と向き合い続けた歴史が、風景の奥に隠れていました。
研究者の間では、現在も自然保護と利用のバランスを探りながら、「保護地域」「緩衝地域」「産業地域」に区分されたゾーニングが進められているそうです。その線引きは、単なる地図上の境界ではなく、地域の未来を見つめるための試行錯誤でもあります。
心の中の問い

私が峠から 平尾台を眺めたとき、2つの景色が重なって、心に問いを投げかけてきました。どこまでを守り、どこまでを使うのか。単純に開発を否定することはできません。なぜなら、開発と資源があってこそ、私たちの暮らしや地域社会があるからです。
一方で、この風景は時間をかけて自然が育んできたもので、未来につなげる価値と責任があります。そんな思いが交錯しました。1年前に訪れたときには、景観の背後にある対立や調整の歴史を知る由もありませんでした。開発と保全の分岐点は、意外と身近にあるのかもしれません。
持続のかたち

平尾台のような場所こそ、 私たちがじっくり考えるべき、「持続」の姿を示している気がしました。自然公園として観光資源になるだけでなく、地域の産業資源としても機能しています。そこに住む人、働く人、訪れる人、みんなが関係を持ちながら歩みを重ねていくことが求められています。
地域や自治体、企業が対話を続け、共通のビジョンを見いだすこと。それが、平尾台を未来へつなぐ鍵なのではないかと思います。
あとがき

今回、HONEの活動記録「ほねろぐ」のなかでも、平尾台のような地形と社会が交差する場所について書きたかったのは、この地に対する個人的な思い入れと、それを深く考えさせられたためです。
自然の美しさに惹かれるのはもちろんですが、背後にある人の生活や葛藤を知ることで、景色はより深く見えてきます。地方に関わる私たちが大切にするべき視点は、まさにその奥行きなのではないかと感じています。これからもHONEとして地域に根ざした現場を訪れ、「ほんと」を丁寧に記していきたいです。
HONEインターン/森

.png)
.png)
.png)