
広島市の「おりづるタワー」を訪れました。
2016年にオープンしたこの場所は、原爆ドームの東側に建つ、人々の願いや未来をテーマにした複合商業施設です。
屋上展望台からは原爆ドームや平和記念公園、広島の街並みを一望でき、折り鶴を折って投入する体験もできます。
過去の記憶を伝えるだけでなく、これからの平和のあり方を考える場。
民間主導(おりづるタワー株式会社)で運営されています。
事前に書籍を読んでおり、惹かれていました。
書籍紹介:「2045年、おりづるタワーにのぼる君たちへ」松田哲也 (著)
おりづるタワーWebサイト:https://www.orizurutower.jp/
おりづるタワー誕生の物語

おりづるタワーは、2016年に原爆ドームの東側に誕生した複合商業施設です。
その裏側には、7年に及ぶ構想と挑戦がありました。
仕掛け人は、広島マツダ代表取締役会長兼CEO(現・ヒロマツホールディングス株式会社代表取締役会長兼CEO)の松田哲也さん。
売りに出されていたビルの内覧で屋上に上がった瞬間、その景色に「恋に落ちた」と書かれています。
原爆ドーム、そして焼け野原から70年以上かけて復興した街のたくましさ。
「この風景を見せることが、私の使命なんだ」
原爆ドームという過去だけに頼るのではなく、
自分たちの世代でも新しい価値を生み出したい。
観光の回遊動線をつくり、街を元気にしたい。
この想いから始まったプロジェクトは、決して順風満帆ではありませんでした。
行政の補助金はうまくいかず、自社でやり切る決断。
想定の3倍の費用。完成まで7年かかったそうです。
それでも前に進めた理由の一つが、松田さんの言葉にあります。
「人生は7勝8敗でいい。
負け越してもいいから挑戦する。」
一方で、 地域を代表する企業の一族としての責任も背負っています。
「おりづる」というモチーフに込められた想いは、
平和とダイレクトに言わずとも伝わり、解釈は訪れる人に委ねるような思想です。
物語を知ってから立つ「ひろしまの丘」

まずはエレベーターで屋上展望台「ひろしまの丘」へ。建築家 三分一博志さんによる建築です。
ヒノキの香りがあります。
足元はなだらかな坂で、外との仕切りはネットだけ。
ガラス張りの展望室とは違う、本で読んだイメージ通りの開放感です。
そして目の前に、原爆ドーム。想像以上に近く感じました。
原爆ドームをはじめとする平和記念公園、元安川を行き交う舟、路面電車が通る広島の街並など、広島の景観がひろがります。
「この風景を見せることが使命」
書籍の松田さんの言葉です。
風や音や匂いを通して広島を感じることができました。
路面電車が走る音を聞きながら、街の位置関係を把握しました。
展望台にいるスタッフから、場所の説明があるのもおりづるタワーの特徴とのこと。
ほどよい距離感で、その人に合わせたマニュアルがない接客をされているのだそうです。
知ることでまた体験も想像力も広がり素敵だなあと思いました。
おりづるの壁


館内には、折り鶴を折るスペースがあります。
おりづるタワーの象徴ともいえるのが、 「おりづるの壁」です。
専用の折り紙で折った折り鶴を、壁に投入することができます。

ここでは、「折る」という行為と、「投入する」という行為が一つの体験として設計されています。
世界中から集まった平和への想い、祈り。
それらが少しずつ積み重なり、折り鶴で「平和への祈り」が形づくられていきます。
平和を祈る気持ちに、日本人であるかどうかは関係ありません。
祈りは目に見えないものですが、折り鶴を見ることで、そこにいるはずのたくさんの「人」を感じることができます。
散歩坂を下りながら思うこと
帰りはエレベーターではなく、スパイラルスロープ「散歩坂」を通って下りました。
このエリアは、おりづるタワー東側にある9層構造のらせん状スロープで、
1階から屋上展望台までを散歩気分で歩いて上り下りできます。
全長は約450m。歩くにつれて、見える景色や感じる空気が少しずつ変わっていきます。
スロープ沿いには、2045年(原爆投下から100年後)への願いをテーマにしたウォールアート作品が並びます。
過去を創ってきた世代、現在を生きる世代、未来を創る世代。
世代を超えたアーティストたちが、それぞれの視点で未来を描いていました。
アートの良さは、「説明不要」であることだと思います。
ウォールアートについて
https://www.orizurutower.jp/wallart/
人間の強さと優しい未来 を感じる場所

館内にあるメッセージです。
私たちの願い〜 人間の強さと優しい未来 を感じる場所 〜
私たち広島マツダは、1933年、当時原爆ドーム一帯に位置した猿楽町で創業。しかし、1945年の原子爆弾の投下によって、全社員を失い、社屋も倒壊。その後、草木も生えないと言われた廃墟から、広島の復興と共に、今日まで成長してきました。
この地でしか伝えられない「哀しみ」があり、この地でしか感じられない「希望」がある。おりづるタワーは、試練を乗り越えてきた「人の強さ」を、何より「優しさあふれる未来」を、ひとり一人の瞳に描いてほしい。
これが、広島で育ち、広島に育ててもらった、私たちの願いです。同じ想い を持ったたくさんの仲間と、積み上げて誕生したこの空間。ひとりでも多くの人に。おりづると共に。
空を翔け 時を超え 心に届け 2016/07/11 株式会社広島マツダ 代表取締役会長兼CEO
松田 哲也
このメッセージには、歴史と場所に対する敬意を感じます。私たちは、戦争も原爆も体験していません。
平和教育として学び、話を聞き、写真を見てきました。けれど、見たことのない景色を、私たちは本当の意味で思い描くことはできません。焼け野原の匂いも、音も、熱も、想像しきれないままです。
想像しきれないからこそ、そこにある言葉の意味を考えます。「人の強さ」と「優しい未来」。とくに、「ひとり一人の瞳に描いてほしい」という一文が、心に残りました。
受け取った人の内側に、未来を描いてほしいと願うこと。何かを強く押しつけるのではなく、委ねること。その姿勢そのものが、平和なのかもしれないと思いました。
空を見上げ、川を眺め、人の行き交いを追いながら、「今が続いていること」を確かめる。そのために、過去の展示が静かに置かれているのではないか、と感じました。
また違う季節に訪れ、違う風を感じてみたいです。
美しいと思えること。誰かを思いやること。忙しさに流されると、私たちは簡単に自分の言葉を失います。時と場所を感じながら生きていくことを、これからも忘れずにいたいと思います。
HONE/亀元
ほねろぐとは
株式会社HONEは地方に足を運び、先人たちが紡いできた伝統や、未来に残したい景色を記録しています。
いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。
町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。
忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。
気づけば、地方が近くなる。
現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。
株式会社HONEについて

HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。
自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。




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