“フロンティア”としての挑戦。小高パイオニアヴィレッジで体験した、新しい可能性の見つけ方【福島県南相馬市】
公開日:
2026年4月30日
最終更新日:
2026年4月30日

福島県南相馬市小高区。
2011年3月に発生した東日本大震災に伴う原子力発電事故により避難指示区域となり、町の暮らしや経済活動が一度止まった場所です。(その後、2016年7月に避難指示が解除)
現在は、「何もないからこそ、自分たちで社会を創れるフロンティア」として、チャレンジ精神や起業家精神を持つ人々を惹きつける場所になっています。
今回は、2026年4月25・26日に小高で実施されたプログラム「ゼロの旅」に参加。
どのように小高が創造的復興を歩んできたのか。
2日間を通して、“フロンティアの新しい可能性”に向き合いました。
ゼロの旅とは?
ゼロの旅はOWB株式会社が提案する小高を舞台にした体験プログラムです。
人口、経済、地域社会、すべてが一度「ゼロ」になった状態から、いかにして今の小高が紡がれていったのか。
小高を「フロンティア」と見立てたその軌跡を辿り、自らの生き方や社会への視点を見つめ直すきっかけをくれる特別な旅です。
2026年4月から6月まで、3つの異なるテーマで開催されます。
4月:創る 小高の住民主体のまちづくりを体感する旅
5月:遺す 震災の記憶と土地の文化を未来に遺す旅
6月:すさぶ 余白と遊びで、地域の活力を自ら生み出す旅
フロンティア(Frontier)とは、元来「国境」「辺境」を指す英語です。
現代では、学問・技術の「最先端分野」や、新事業・未知の領域といった「未開拓の可能性」を指す比喩としてよく使われます。どんな可能性があるのだろうと参加してみました。
Day1のテーマは縄文寄りの身体知

会場はコワーキングスペース「小高パイオニアヴィレッジ」。
まずは簡単に参加者で自己紹介や挨拶をしながらチェックイン。
次に、いま自分が抱えている葛藤や矛盾を紙に書き出すミニワークをしました。
翌日に見返したとき、捉え方に何か変化があるのか。1日発酵させてみます。
そして早速、アクティビティのスタートです。
村上海岸の満月相撲

満月の夜に海岸で相撲を楽しむという、本イベント運営者(只野福太郎さん)が以前より生み出していた「満月相撲」。
相撲はルールが簡単なうえ、参加者の経験値格差が少ないケースが多く、みんなで楽しめるスポーツとしてはじまりました。
発祥の地である村上海岸に赴き、帯を巻いて、四股名を呼んでもらい、いざ取り組み開始です。

数秒で勝負が決まる試合もあれば、拮抗する試合もありますが、いずれも目の前の相手とのバランスや力加減などをどうするか、没頭状態に入ることになります。
そうして肉体と集中力を研ぎ澄まして取り組んだ相手とは、何とも言い尽くせない、「相撲を取った仲」として関係が深まる瞬間が味わえました。
ただのレクリエーションではなく、肩書きや立場をいったん外し、身体ひとつで他者と向き合う時間でした。
ガラスアクセサリ ー体験

次は、アクセサリーブランド「iriser-イリゼ-」の工房兼店舗を訪問。
魅力的な仕事があれば、若者が増える。若者や女性が集まれば、地域が盛り上がる。まずはそれらの層に魅力的な仕事や職場をつくろうという考えでスタートしたブラントです。
世界に一つだけのマイガラスストローを作れるということで、さっそく体験。
満月相撲の余韻が強く残っていたため、月と力士、そして海をイメージしたデザインにしました。

今後使う際には、ゼロになった地域だったからこそ生まれたアイテムであることや、満月相撲を思い出させてくれそうです。
ものづくりが「地域に仕事を生み、つながりを広げていくもの」であると実感しました。
モルックをして晩御飯

続いては、地域活性化や復興・再生を目的にした市の施設「小高交流センター」の内側へ移動。
施設内ではシニア 層の方がバドミントンをしていたり子どもが活動していたりと、幅広い年齢層に活用されている様子が伺えました。
天然芝の屋外広場もあり、そこでモルック対決をすることに。

モルックも、比較的簡単なルールで、かつ体力差や経験値による影響が少なく、みんなで楽しみやすいスポーツです。
以前屋内で簡易的にやったことはありましたが、芝生の上では またモルック(投げる棒)が跳ねる軌道も違ったりと、新鮮な体験でした。
夕飯は、みんなで買い出しに行って、小高パイオニアヴィレッジでおでんづくり。

アクティビティ中にお話しした方や現地で事業している方々も加わり、にぎやかな会になりました。
Day2のテーマは現代を生きる人間寄りの言語知

プログラム2日目はOWB株式会社の代表取締役 和田智行さんから、避難指示区域となったあとも小高に戻って活動することにした背景や思いを伺いました。
内容の詳細はOWBで提供している講演や他のメディアに譲りますが、私が特に印象に残ったのは、避難区域となった小高住民の何重もの苦しみです。
震災時、小高は避難区域となり住民には賠償金が支払われました。同じ南相馬市内でも区分が異なり、国からの補償に差 がでたことで、それまで仲良くしていた近隣住民同士が賠償金の有無で分断され、不公平感や嫉妬心により深い溝ができてしまったそうです。
遠くからニュースで知るだけでは想像しきれない実情があり、そうした声を一つひとつ汲み上げるように事業を創ってこられたのだと感じました。
Day1で事前に「iriser-イリゼ-」を訪れ、事業立ち上げの事例にも触れていたことで、事業や活動がロードマップに沿うように進み、新しい小高に向かっている印象も持ちました。
最後のワーク
いよいよ最後のワークです。前日に挙げた抱えている葛藤や矛盾への捉え方に何か変化はあったかを振り返り、参加者同士でシェアしました。
このワークをもって、2日間のプログラムは終了です。


まとめ
体験プログラムに参加して、小高は今、単に被災を経験した場所ではなく、いくつもの新しい挑戦が集まる希望の地へ進化していると感じました。
ここは、完成された答えを見つけに行くためというより、自分の中にある、言語化できていない問いを抱えた人が惹かれて訪れる場所ではないかと感じました。
地域で何かを始めたい人はもちろん、自分の中にある葛藤や矛盾と向き合っている人にとっても、小高で過ごす時間は、新しい可能性に出会うきっかけになると思います。
自分の内側にある「未完成な問い」を大切にしたい方、小高の空気を感じてみたい方は、随時開催されている体験プログラムをぜひチェックしてみてください。
プログラム運営者視点の記事はこちら。ぜひ合わせてお読みください。
HONE/神田
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