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2025年12月3日、新潟県湯沢町で、空き家にもう一度火を灯そうとしている若者に、出会いました。ゲストハウス「軒の灯(ノキノヒ)」を、ゼロからつくる國部智之さんです。
大学を卒業後、金沢大学院で地方創生を学び、全国50以上のゲストハウスを巡りながら、研究を重ねたそうです。大学院修了後にたどり着いたのが、新潟県湯沢町。地域おこし協力隊として移住し、2年間にわたって、地域に入り込む暮らしを始めました。

湯沢町は、豪雪の冬と澄んだ春が訪れる町です。温泉やスキー、フジロックなど観光資源は豊かですが、高齢化や空き家の増加、季節による人の流れの偏りなど課題も抱えています。そんな湯沢で、國部さんがやりたかったことは、「人が自然とつながる宿をつくりたい」という想いです。
旅人、地元の方、移住者が同じテーブルを囲み、言葉が交わり、知らない世界が広がっていく。学生時代、ゲストハウスに心を動かされたことが原点だと話してくれました。実は私も、全国を巡るほどのゲストハウス好きで、同じ宿に泊まったことがありました。思わぬ共通点に、距離が縮まります。

國部さんが協力隊として挑んだのは、空き家探しです。可能性のありそうな物件を訪ね、聞き込みを行いました。ですが、思うように見つからず、気づけば1年半が経過していました。
「このまま何も残せないかもしれない」という焦りが募るなか、転機は突然訪れました。地元の方が偶然、空き家の所有者を紹介してくれたのです。空き家の様子を見に、県外から帰省したタイミングでした。その場に居合わせた幸運と、人のつながりが重なり、國部さんは築70年の元豆腐屋兼アパートという建物と出会いました。

玄関を開けると、豆腐屋時代の名残が色濃く残る広い土間がありました。現在改装中ではありましたが、歴史を感じる柱を見ることができました。床下には 雪国ならではの設備、流雪溝(りゅうせつこう)も発見。

流雪溝とは、道路下に設置された水路に、雪を投げ込み、水の流れを利用して雪を排出する溝です。2階には、アパート棟の和室が並び、障子越しの光が静かに差し込む空間が広がります。古びてはいますが、ゲストハウスの温かさを想像できる建物でした。
ここを舞台に、國部さんは「軒の灯(ノキノヒ)」という屋号を掲げました。張り出した軒はこの家の象徴であり、「灯」には空き家に再び火を灯し、人がともる場にしたいという願いが込められています。
コンセ プトは、「ひとがともる、町の軒下」。宿泊者がふらりと立ち寄り、地元の人と自然につながり、何気ない会話のなかからまちの魅力がにじみ出るような場所を目指しています。

現在、國部さんは2月の開業に向けて、リノベーションの真っ最中です。雪が屋根に積もる冬の日も、冷たい空気の中で空き家を訪れ、少しずつ空間の未来を形にしています。
ゲストハウスには不思議と、宿主の雰囲気や生き方がそのまま場の空気として滲み出ます。「ここは温かいな」「少しゆったりしているな」と感じる独特の空気感です。軒の灯もきっと、國部さんの優しさや、まっすぐな挑戦心がそのまま形になると思います。

印象的だったのは、國部さんの「どうせなら目立ちたくない?」という一言。東京では挑戦が人混みに埋もれてしまうけれど、地方の地域ではその一歩がちゃんと輪郭を持ちます。
私自身も地域に足を運びたくなる理由のひとつに、「私を見てくれる」という実感があります。「若いね」と思われるかもしれませんが、肩書きや年齢ではなく、一人の「人」として向き合ってもらえることが、堪らなく嬉しいのです。
豪雪のまちに小さく灯る火は、やがて誰かの旅の思い出になり、地域の未来につながるかもしれません。軒の灯が灯すのは、建物の明かりだけではなく、湯沢を訪れた人々の心です。雪国の暮らしに寄り添いながら、ここ にどんな光を灯せるのか。湯沢町で挑む若き宿主の物語は、静かに、しかし確かに前へ進んでいます。
HONE インターン / 森

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