
2026年3月中旬に足を運んだ島根県の離島「隠岐の島町(道後)」にて三大杉を巡りました。
フェリーを降りて出会った巨木、神社、島の風景から、神々と自然が重なる土地の生命力をたどります。観光情報だけでは見えない島の空気を記録しました。
(HONE/桜井)

フェリーを降り立った瞬間から、本土とは違う濃密な空気と、圧倒的な自然のエネルギーを感じる「神秘の島」でした。
今回は、現地で直接触れた独自の歴史や文化、そして心を打たれた景色について、少しだけ長くなりましたが、書き留めてみました。
圧倒的な生命力。隠岐の「三大杉」と歴史
隠岐の島を語る上で外せないのが、島内にそびえ立つ巨木たちです。
特に「隠岐の三大杉」と呼ばれる八百杉(やおすぎ)、かぶら杉、乳房杉(ちちすぎ)の姿は圧巻の一言。 今回は三大杉をすべて間近で拝んできました。

はじめに訪れたのが支柱に支えられながらも生き抜く玉若酢命神社(たまわかすのみことじんじゃ)の八百杉。
玉若酢命神社は、島根県隠岐の島町にある隠岐国総社で、島後の開拓神・玉若酢命を祀る古社です。1793年築の最古の隠岐造り本殿(国重文)や樹齢約2000年の「八百杉」が名高く、50代以上続く社家・億岐家が宮司を務める歴史の深い神社です。(出典:しまね観光ナビより)
続いて足を踏み入れたのは中村のかぶら杉。

樹齢約600年、隠岐の天然記念物で根本付近から6本の幹にわかれており、標高約40mと高さにも圧倒されます。複数に分かれる形態は約2万年前の氷河期を経て、約1万年前に島となった隠岐の環境の中で独自進化を遂げた姿だそうです。
名前の「かぶら」の由来は矢の鏑や、野菜の蕪など諸説あると聞きました。

最後に訪れた乳房杉は島後の最高峰である大満寺山を登る道中にありました。
樹齢約800年。島根県指定天然記念物となっています。20数個の巨大な鍾乳(しょうにゅう)石状の乳根が下がっていることから乳房杉と呼ばれています。
森の奥深くで異様なほどの生命力を放ちながら空へ伸びる杉の前に立つと、何百年、何千年という気の遠くなるような時間を生き抜いてきた「根の深さ」を見せつけられます。
同じく道中に足を踏み入れた壇鏡の滝(だんぎょうのたき)へと続く木漏れ日の参道も、まさに神域と呼ぶにふさわしい空間でした。

隠岐は古くから、後鳥羽上皇や後醍醐天皇をはじめとする貴人たちの配流の地でした。
都の雅な文化と、過酷な自然と共に生きる島民の力強さが混ざり合い、独自の深い歴史を形成しています。巨木たちが静かに見守ってきた島の時間の重みに、思わず背筋が伸びる思いでした。
地球の鼓動を感じる「ジオパーク」と奇跡の生態系
隠岐は島全体が「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されています。

日本列島が大陸と陸続きだった時代、湖だった時代、深海だった時代…。気が遠くなるような地球の変化の痕跡が、断崖絶壁や地層にそのまま残っています。
さらに驚くべきは、その生態系です。
南方系の植物(ナゴランなど)と北方系の植物が同じ場所で共存し、さらには「オキノウサギ」や「オキタンポポ」といった独自の進化を遂げた固有種たちが暮らしています。


異なるルーツを持つ命が交じり合い、環境に適応して進化を遂げていく姿は、地域づくりやビジネスにおける「多様性と適応」のヒントそのものだと感じました。
島民の魂がぶつかり合う「隠岐古典相撲」
隠岐の文化で特に私の心を揺さぶったのが、「隠岐古典相撲」です。なんとこの相撲、夕方から始まって夜通し行われるそうなんです。

神社の遷宮など特別な祝祭の際に開催され、勝負は「二番勝負」。
つまり一度勝った力士は、二番目には必ず相手に勝ちを譲る「人情相撲」の側面を持っています(そんなカルチャーがあるんだと私自身、初めて見聞きしました)。

土俵上でのぶつかり合いは真剣そのもの。最高位の力士には賞品とし てなんと「神社の柱」が贈呈されるという規格外のスケールにも驚かされます。
夜を徹して土俵を囲み、島中が熱狂する。その底知れぬエネルギーに、地方が持つ本当の「熱量」と独特の「文化」をまざまざと見せつけられた気がしました。
意外なソウルフード? 隠岐の「ちゃんぽん」文化
そして、旅の楽しみといえばやっぱり食。
隠岐で面白かったのが「ちゃんぽん」が 独自のソウルフードとして根付いていることです。

離島の食事といえば海鮮のイメージが強いですが、地元の方々が日常的に愛してやまないのが、野菜や具材がたっぷりのった「隠岐ちゃんぽん」。
細めのストレート麺に旨味たっぷりのスープが絡み、一口食べるごとにホッと心が解けるような味わいです。
外から来た人間には見えにくい、こうした「地元で本当に愛されているローカルフード」に触れる瞬間こそ、地域を深く知る第一歩だと改めて感じました。
おわりに
今回の隠岐の島町(道後)への旅は、ただの観光ではなく、歴史、自然、そして人々の熱量という「地域の持つ底力」を肌で感じる時間になりました。
何千年も生きる杉の木のように根を張り、異なる環境を受け入れて独自の進化を遂げる。そして、夜通し熱狂できるほどの情熱を共有する。この島には、私たちがこれからの時代を力強く生きていくためのヒントが数多く隠されているような気がしてなりません。
皆さんも、機会があればぜひ隠岐の島へ足を運んでみてください。きっと、日常の凝り固まった視界を大きく広げてくれる、素晴らしい出会いが待っているはずです。
HONE / 桜井

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