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こけしが息づく温泉街に生まれた、心をつなぐ「連結」プリン(福島県福島市_土湯温泉)

公開日:

2025年9月10日

最終更新日:

2025年11月8日

こけしが息づく温泉街に生まれた、心をつなぐ「連結」プリン(福島県福島市_土湯温泉)

9/5〜7にて福島県福島市にある、土湯温泉へ行ってきました。


目的は「土湯温泉マーケティング会議2025~地域・街にとってのマーケティングの可能性を探る~」に登壇するためです。


土湯温泉は遠刈田、鳴子と並ぶ三大こけし発祥地と言われています。こけし工人の手によって何の変哲もない一片の木の塊が削られ、磨かれ、描かれ、少しずつ生命を吹き込まれながら美しく優しい表情のこけしに生まれかわります。


優しく見つめてくれるような独特の表情と、素朴な木の手触りを持つ「土湯こけし」は今も昔も変わることなく多くの人の心を和ませてくれます(文章・画像流用:土湯こけしとは


土湯こけしとは
土湯温泉HPより流用


土湯温泉マーケティング会議2025~地域・街にとってのマーケティングの可能性を探る~とは?


本会議では、地域資源を価値へ変えるための「実践プロジェクト事例・生の知見」をセッション・ワークショップ形式で行われました。


実際に土湯温泉に集まり、温泉にも浸りながら、参加者の皆さんが関わるプロジェクトや考え、想いなどを共有することで、地域・街にとって「必要なマーケティングとは何か」を探り、それぞれの実践につながる時間にすることが目的です。


皮切りのセッションは「福島を代表するお土産をつくるプロジェクトの裏側」をテーマに、JR東日本福島統括センター様 / 株式会社森山 代表取締役 森山雅代様による新しい定番土産「JR福島駅新幹線連結湯庵プリン」開発までの道のりをお話いただきました。


土湯温泉マーケティング会議


駅に降りる理由がないのなら「創る」


お話を聞くところによると、土湯温泉のある福島市の中心にある福島駅は「通り過ぎられてしまう」という課題を抱えていました。実は私の地元である静岡市の中心地にある静岡駅も同様に途中下車しない駅として同様の課題を抱えていました。

 

お話を聞き、主な理由は以下の通りだと推察してみました。


  • 乗継前提の認知

    • 福島=東北新幹線を“抜ける”、静岡=東海道を“抜ける”地点としての刷り込み・習慣がある


  • “降りる理由の欠如”

    • 駅マエ・駅ナカの30–90分で「その土地・その地域らしさ」を体感できる“短尺パッケージ”が弱い


  • 荷物制約(大きな荷物があると“降りない”心理バリア)

    • 「手ぶら観光」整備で解ける課題


今回、JR東日本福島統括センター様 / 株式会社森山様がチャレンジしたのが土湯温泉の新名物をつくり、福島駅で販売し、新しい名物をつくって思い起こしてもらうきっかけをつくること。そしてまた降りてもらえるような理由を創ることでした。


それが、「JR福島駅新幹線連結湯庵プリン」開発の背景でした。


JR福島駅新幹線連結湯庵プリン
JR福島駅新幹線連結湯庵プリン

 

なぜ連結プリンなのか?


商品名は「JR福島駅新幹線連結湯庵プリン」。


そもそも、なぜ連結なのか?というと、福島駅で見ることができる新幹線「やまびこ」と「つばさ」の美しい連結シーンがモチーフになっているそうです(実は、新幹線の連結・切り離し作業が見られるのは全国でも福島駅と盛岡駅だけ)。


福島駅は交通の結節点であり、歴史的・文化的な「境界」や「交差点」でもある場所・意味を伝えたいという意味合いから商品開発は進んでいきました。

noteより


JR福島駅新幹線連結湯庵プリン
画像はnoteより流用

福島が新幹線の連結拠点であり、東北の経済・文化拠点でもあることを、もっと多くの人に知ってもらいたい。


特に温泉地へのアクセス拠点としての機能が魅力的あり、奥州三名湯の一つである土湯温泉、飯坂温泉、高湯温泉への玄関口であることを知ってもらいたいという想いから連結プリンが生まれました。



お土産に繋げる「体験」を創ることが至上命題


福島駅は通り過ぎてしまう、ではそのためにお土産を開発する、というところまでは素晴らしい取り組みだと思っています。しかしながら、まだ足りていないところがあるなとも感じました。


それはお土産を買う「前」を設計しなければならないということです。お土産はあくまでも降りた最後に購入するものであり、お土産が目的化するのはお土産そのものがかなり有名になってからだと思っています。


では何が必要なのか?というと、私は駅ナカの体験設計だと思っています。


土湯温泉
福島駅・土湯温泉は素敵な場所だけど、その前の体験設計が必要

体験とは何か?本来は観光地のPRなどを考えるのですが、それよりもっと手前の「駅の中で短時間で楽しめる体験」があると良いと思います。


サイクルとしては、


駅にたまたま降り立った→次の電車まで30分ある→少し遠出するわけでもなく駅ナカで時間を潰そう→カフェで過ごすのではなく、30分で地域理解・地域の魅力を考えられる場所をつくり、体験してもらう


といったイメージです。


駅ナカ30分の観光体験サイクルをつくる


通り過ぎないための5つのポイント


どんな場所が通り過ぎない場所になるか?についてですが、個人的に通り過ぎてしまわないための5つのポイントを考えてみました。


  1. 手ぶら化:観光案内所・駅ナカで当日配送/預かり導線を可視化(英中含むサイン)

  2. 駅前に地域の体験価値をつくる

    1. 静岡駅:茶・海・駿河らしさを30分で味わうセット(急須ワーク+飲み比べ or おでん小路ハシゴ1軒)を改札から片道徒歩5分圏で完結

    2. 福島駅:“湯前菜”(足湯・こけし・エビ)体験の駅発70分パック(荷物預け→往復バス→湯愛舞台→足湯→駅)

  3. “降りた人だけの特典”をつくる:駅改札でQR配布→当日だけ使えるミニ特典(足湯タオル、こけしステッカー、茶一煎)で降車の動機づけ

  4. “乗継の合間”の体験期間をつくる:新幹線発車までの残り時間×推奨体験を推奨

  5. 口コミ着火:駅体験の写真1枚で割引(ハッシュタグ指定)→可処分時間の“駅前分母”を増やす


と、色々と書いてみましたが、簡潔にいうと、駅ナカの30分程度の体験で「あれ?なんか良さそうな地域だぞ」と思ってもらうこと。目的地じゃなかったとしてもちょっとした時間でその地域の良さを感じてもらうことが大切なんだと思います。



30分の観光体験ができる駅「新潟・ぽんしゅ館」


じゃあどうすれば「通り過ぎない駅」にならないか?のお手本は越後湯沢駅・新潟駅・長岡駅ナカにある「ぽんしゅ館」だと思っています。



新潟全酒蔵の唎酒を通じて、新潟清酒の幅広さや奥深さを体験でき、各蔵を代表する銘柄だけでなく、時節に応じた季節酒や希少なお酒も品揃えています。


受付で500円を支払うと貸出おちょことコイン5枚がもらえ、ズラリと並んだ唎酒マシンからお好みの地酒を選ぶスタイル。最大でおちょこ5杯分の唎酒を楽しめます。



ラストワンマイルを繋ぐのは玄関口になる場所


今回の事例は土湯温泉で生まれたお土産、JR福島駅新幹線連結湯庵プリンを発端に通り過ぎられてしまう福島駅にどう降りてもらえるか?そしてそこから土湯温泉にどう訪れてもらうのか?という課題をテーマに考えてみました。


現時点での私の結論では「駅ナカ・30分で地域の観光擬似体験ができる場所をつくる」ことが地域観光における入り口となるはずだと信じています。


主要駅だけでなく、空港・港なども同様です。その地域の玄関口となる場所で体験機会をつくる。旅の始まりと終わりに接する場所だからこそ、こだわっていきたいポイントだと思いました。


HONE / 桜井貴斗

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