
2025年12月10日、冬にしては珍しく暖かい陽気に包まれながら嬉野温泉に向かいました。
嬉野温泉には九州旅客鉄道(JR九州)西九州新幹線の嬉野温泉駅があります。2022年9月に開業、嬉野市唯一の鉄道駅であり、また、西九州新幹線の停車駅の中では唯一の新幹線単独駅です。
嬉野市の人口は24,359人 (推計人口、2025年11月1日)とコンパクトながら、嬉野温泉と古い町並みが混在していて見応えのある町でした。

値上げを忘れた町中華

本日の目当ての和多屋別荘に行く前に腹ごしらえを、と思い近くの町中華に入りました。嬉野市の国道34号線沿いにある老舗の町中華「峰園(ほうえん)」さんというお店なのですが、メニュー表を見てびっくり。安すぎるのです。

量が少ないのかな?と思いつつ、ちゃんぽんを注文したのですが、しっかり一人前、そして塩ベースのスープがおいしい。近くにあったら通うんだろうなぁと思いつつ、満足して和多屋別荘へ向かいました。
和多屋別荘を知ったきっかけ
和多屋別荘(わたやべっそう)とは、嬉野温泉にある、2万坪の広大な敷地を持つ老舗の温泉旅館です。
嬉野川が敷地内を流れ、日本庭園や月見台などがある日本の伝統美とお茶をはじめとした文化体験が魅力的な施設です。歴史は江戸時代からのはじまり、薩摩藩・島津家ゆかりの地でもあり、美しい日本庭園を眺めながら温泉(美肌の湯として知られる重曹泉)や、数奇屋造りの別邸「水明荘」での滞在、茶道・写経・サウナなどの体験が楽しめる複合型施設です(和多屋別荘HPより)。

和多屋別荘さんとの出会いは、和多屋別荘代表の小原さんが静岡県のプロジェクトとして本格始動した「静岡茶ブランディングプロジェクト」の戦略アドバイザーを務めていただいていることもあり、そのご縁でご挨拶をさせていただいたことがきっかけとなりました。
その際に嬉野温泉のブランドづくりをご丁寧に解説いただき、大変学びになりました。
▼2025年10月23日に静岡で行われた小原氏・岩本氏の「静岡茶ブランディングプロジェクト」トークセッションのレポートはこちらから
お茶を再定義し価値を上げる

小原さんの以前のお話では2016年、温泉・お茶・肥前吉田焼という三文化が同一市町に揃う稀有な地・嬉野で、地域内の当事者が自ら考え行動する「嬉野茶時」が始動したとお伺いしました。
「無料が常識」だった旅館のお茶を一杯800円へ価格設定するところからプロジェクトはスタート。「お茶は無料で飲めるもの」といういわば価値が「ゼロ」からイチへ動いた象徴的な一歩だといいます。
私自身も静岡で暮らしてきたからこそわかるのですが、お茶は毎日飲めるものであり日常に溶け込んでいます。逆に言えば、溶け込みすぎているため、わざわざ高いお金をかけてまでお茶を飲まない、というジレンマがあります。
人は普段は体験できないような「非日常」にお金に出すものの、いつでも体験できるような「日常」にはお金を払いづらい。ここを変えようとしたのが嬉野茶時です。

体験をベースに多様な商品を展開
施設内にはお茶と読書を愉しむための書店「BOOKS &TEA 三服」があります。
「お茶」「暮らし」などのテーマにあわせた、知的好奇心を刺激する約1万冊の書籍をセレクト。うれしの茶農家「副島園」のテイクアウトティーと共に、本との出会いが楽しめます。書店員歴20年以上の、知識豊富なスタッフによる選書サービスもあるそう。
ちなみに一服じゃなくて三服である理由は「せっかく嬉野までお越しくださったのですから、一服だけじゃなく、二服、三服と、気の向くまま、心ゆくまで。」だそう。とても粋です。

お茶以外にも手拭いや陶器、お香などの「一服」をテーマにした商品が多数展開されていて、自宅用、ギフト用に思わず手に取りたくなるような商品がたくさん並んでいました。


書店コーナーの案内板が茶箱になっていたり、少しの工夫ですが細部にお茶の文化が垣間見えます。


あとがき
今回は時間の関係でティーツーリズムまで体験できず残念でしたが、次回はリベンジしたいと思います(宿泊もしてみたい)。

ただお茶の「味」にフォーカスするのではなく、お茶の味わいを最大化するための工夫がたくさん散りばめられていました。
お茶は味だけだとなかなか差別化が難しい商品だと感じています。だからこそ、お茶を「一服できるひととき」と捉え、1杯数百円のお茶から数万円のお茶体験まで昇華し、お茶の体験価値を高め続けている嬉野にはとても学ぶものがありました。
私自身も静岡出身として、静岡茶のあるべき姿を今一度考えていきたいと思います。
HONE / 桜井


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