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山形県西川町の豪雪が生んだ幻想的なイベント、月山志津温泉「雪旅籠の灯り」。かつての宿場町を雪で再現した風景の中に、地域の歴史と力強く生きる人々、そして冬を楽しむ知恵を見つけました。厳しい自然を価値に変える、地域の挑戦の記録です。
雪が降る。その当たり前の日常が、ある場所では非日常的な景色に変わります。私が今滞在している山形県西川町で出会った、温かい冬の物語をお届けします。
雪を掘り、歴史を刻む

皆さんは、雪まつりといわれて想像するのはどこですか?
北海道の札幌雪まつりでしょうか。私は違います。私の中で、雪まつりといえば、山形県西川町の、月山志津温泉「雪旅籠の灯り」です。山形市からは離れた、人口4,300人ほどの小さな町に、毎年幻想的な旅籠を求めて多くの人々が訪れます。

西川町はかつて、出羽三山を目指す行者たちが、身体を休めた宿場町でした。6メートルもの雪が積もる日本有数の豪雪地帯だからこそできること。そ れは、降り積もった雪を壁のように残し、そこを掘り進めて当時の旅籠を再現することでした。

かつての街並みが雪の中に立ち現れる様子は、まるで時代を遡ったかのよう。年男である私にとって縁深い「馬」の文字や、節目を感じさせる「2026」の数字が雪壁に刻まれ、その圧倒的な存在感に思わず足が止まりました。
2年前の出会い「厳しさを知る」

2年前、私はこの旅籠づくりの手伝いに参加しました。。静岡という雪のない環境で育った私にとって、それは想像を絶する作業でした。氷点下の寒さ、吹き荒れる風。その中でチェーンソーを扱い、緻密に雪を削り出していく工程は、決して華やかなだけではありません。
その年は雪が少なく、旅籠を形づくるのにも苦労しました。自然を相手にするからこそ、思うようにいかないもどかしさがあり記憶に残っています。
しかし、だからこそ今年のように立派な旅籠が立ち並ぶ姿を見ると、胸に迫るものがあります。

高さ3メートルを超える雪の壁は、ただの自然現象ではなく、地域の方々が寒さに耐え、汗を流して作り上げた「執念」の傑作なのです。厳しい環境を嘆くのではなく、それを資源として捉え直す姿勢に、地域で働くことの真髄を見た気がしました。
かまくらで味わう地域の酒

寒さを堪えて歩いた先に現れたのは、怪しげに青く光る巨大なかまくら。実はこれ、雪で作られたBAR「アイスバー」なんです。
中に入ると、西川町の人気ラーメン店の娘であり、サウナを愛する「爆熱麺娘」安達さくらさんが迎えてくれました。
さくらさんは、地元・西川町のまちづくり会社「株式会社月と山」の社員の一人。
日々地域に向き合い、この日はアイスバーの切り盛りを担っていました。

氷のカウンターに、ズラリと並ぶお酒に瓶コーラ。ホットワインを注文すると、かまく らの中にフルーティーで甘い香りが一気に広がりました。冷え切った指先をカップで温めながら一口啜れば、身体の芯からじわじわと熱が灯っていくのがわかります。

お酒を飲む人も飲まない人も、同じ雪の下で笑い合える。この温かな場のあり方こそが、地方の豊かさそのものなのかもしれません。五感のすべてで地域を味わう体験は、何よりの贅沢だと感じました。
あとがき

「ないものねだり」ではなく「あるもの磨き」。西川町の雪旅籠を見ていると、そんな言葉が浮かんできます。厄介者扱いされがちな大雪を、四百年続く歴史と掛け合わせ、ここにしかない価値へと昇華させる。そのプロセスには、多くの苦労と、それ以上の郷土愛が詰まっていました。
厳しい冬があるからこそ、春を待つ心が育まれ、人の温もりがより一層愛おしくなる。そんな西川町の空気感を、この記録を通して少しでも身近に感じていただければ幸いです。
HONEインターン/森
イベント情報
会場:山形県西川町志津地区 月山志津温泉街内
開催期間:2026年1月31日(土)~2月23日(月・祝) (一般来場は土日祝のみ、平日は宿泊者限定)
協力・引用:[月山志津温泉 雪旅籠の灯り 公式情報]


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