伝統を次世代へ。アトツギ甲子園ファイナリスト6名の本気のプレピッチ。
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2026年2月13日、静岡市コ・クリエーションスペース(コクリ)にて開催された、「第6回アトツギ甲子園」関東・中部ブロック決勝大会に向けた、本番前公開プレピッチ壮行会。
地方企業のマーケティングを支援し、その魅力を最大化させる株式会社HONEの桜井が審査員として参加した熱い夜をレポートします。伝統ある家業の経営資源を使い、いかにして現代の課題を解決する新規事業を創出するのか。
2月27日の全国決勝大会を目前に控えた、ファイナリスト6名の物語がここにあります。
本気の「壁打ち」を支えるゲスト審査員
今回のプレピッチでは、全国大会を控えたファイナリストたちのビジネスモデルをより強固なものにするため、多角的な視点を持つ3名の審査員が登壇しました。

長坂 善人さん(株式会社長坂養蜂場 代表取締役社長)
地域に根ざした経営とファンづくりのスペシャリスト。アトツギとしての経験から、経営者の心構えを鋭く説きます。

徳田 祐希さん(世界へボカン株式会社 代表取締役社長/CEO)
海外マーケティングのトップランナー。グローバル市場を見据えた視点から、ビジネスの拡張性を評価します。

桜井 貴斗(株式会社HONE 代表取締役)
地域に根ざしたマーケティングを実装。独自の経営資源(強み)をどのように市場のニーズに接続するか、戦略面からフィードバックを行いました。
株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。
目次
産廃で技術と職人を守る 鋳造屋の世界初への挑戦
石の価値を全ての人に届ける石屋の挑戦
祈りの文化を磨いて、仏壇リメイクの新たな選択
縫製工場が挑むサステナブルなビーズクッション
聞こえづらさをなくす新しい会話のインフラ「耳音(みみおと)」
飴屋じゃない、飴屋の挑戦
「負の資産」を「独自の強み」へ転換する
「戦う市場」をスライドさせ、予算の出所を変える
信頼を起点とした「ハブ」への進化
家業の未来を拓く、挑戦者たちの熱きピッチを目撃せよ!

「アトツギ甲子園」は、中小企業庁が主催する、全国の中小企業の後継者(アトツギ)が新規事業アイデアを競い合うビジネスコンテストです。
今回のプレピッチは、関東・中部ブロックを勝ち抜いたファイナリストたちが、本番さながらのプレゼンテーションを行い、ゲスト審査員からのフィードバックを受けて最終調整を行う「壁打ち」の場。
会場の「静岡市コクリ」には、地域のアトツギ、経営者、支援者が一堂に会し、挑戦の火種を共有する熱い時間が流れました。
革新と伝統が交差するピッチ
産廃で技術と職人を守る 鋳造屋の世界初への挑戦

有限会社モールドモデル 佐藤 賢さん(山梨県)
家業である石膏鋳造において、使用後に「白い山」となって積み上がる廃石膏。その処分費高騰は経営を揺るがす死活問題でした。有限会社モールドモデルは、この危機を「逆転の発想」で解決に導きます。
佐藤さんは、これを何かに活用できないかと、論文を読み漁ったそうです。そうして辿り着いたのが、1本の論文でした。20年前の論文を自ら解析し、廃石膏をカルシウム液体肥料に再生する世界初の技術を開発しました。この肥料は、山梨のブドウ農家を悩ませる「果実の割れ」を防止する画期的な価値を持ちます。
処分費というコストを利益へと変えることで、高利益率と農家への安価な提供を両立させました。祖母の死をきっかけに継承を決意した佐藤さん。現場の技術を循環型モデルへと進化させ、地域の農業と共に未来を拓く挑戦を続けています。
石の価値を全ての人に届ける石屋の挑戦

有限会社稲垣石材店 稲垣 遼太さん(愛知県)
「なんで石屋に戻ったの?」という周囲のネガティブな声を覆すべく、有限会社稲垣石材店の稲垣遼太さんは石材業界の再定義に挑んでいます。
稲垣さんは、石の端材を活用した高級石製食器ブランド「INASE(イナセ)」を展開し、伝統技術を高級レストラン市場へと繋げました。さらに、加工時に発生する石の粉から有効成分を抽出し、飲料やサプリメントとして活用する「飲料化プロジェクト」をスタートアップと共に推進しています。
また、石切場を体験型アクティビティの場に変えるなど、墓石に頼らない新たな収益柱を次々と構築。普段触れることがないので、私も参加してみたいなと思いました。石を「重くて古いもの」から「価値ある資源」へと変え、健康市場を含む多角的な領域で石の新たな価値を創造しています。
祈りの文化を磨いて、仏壇リメイクの新たな選択

有限会社稲垣塗装所 稲垣 亘佑さん(静岡県)
住宅事情の変化で「大きな仏壇を置けない」という切実な課題に、有限会社稲垣塗装所の稲垣亘佑さんは独自の視点で挑みます。5歳で母を亡くした稲垣さんにとって、仏壇は手を合わせることで心が救われる大切な場所でした。
その原体験から生まれたのが、既存の仏壇を手のひらサイズにリメイクするサービス「結壇(ゆいだん)」です。この事業は、介護施設への入居時に「仏壇を持ち込めない」と断られる問題を解決します。
開始2年で100件以上の実績、売上3,000万円超を達成しました。さらに、仏壇が残っていることで家を手放せない空き家問題の解決にも寄与しています。
稲垣さんのピッチは、聞いている人を引き込む力があります。仏壇に手を合わせ、救われた原体験が、祈りの文化を未来へ繋ぐ確かな力となっています。
縫製工場が挑むサステナブルなビーズクッション

有限会社タキコウ縫製 滝川 昇吾さん(愛知県)
ヒット商品である、「着るビーズクッション」を着て登場した滝川昇吾さん。会場からは笑いが巻き起こります。
有限会社タキコウ縫製は、愛用者の「へたり」や「廃棄」に関する悩みに真摯に向き合っています。かつては業界の負債とされていたこれらの課題を解決するため、滝川さんは循環プロジェクト「SDBs」を立ち上げました。
強みは、国内唯一の自社工場での補充サービスに加え、世界初となるビーズの「再発泡技術」を確立した点です。へたったビーズを再度膨らませて再利用する仕組みにより、環境負荷を劇的に低減。
さらに、新品の配送時に古いクッションを回収する独自のモデルも構築しました。「最後まで気持ちいいクッション」を新たなブランド価値に据え、持続可能なものづくりの未来を切り拓いています。
聞こえづらさをなくす新しい会話のインフラ「耳音(みみおと)」

新協電子株式会社 中西 雄大さん(東京都)
介護現場の利用者の9割が難聴という現実に、新協電子株式会社の中西雄大さんは「話し手側」からのアプローチで挑みます。
中西さんが開発した会話支援機器は、従来の「聞き手が身につける」補聴器の煩わしさを解消し、「話し手が操作する」という全く新しい発想のデバイスです。私の祖父も難聴ですが、補聴器を嫌がって着けなかった場面を見ているので、より自分ごととしてスッと入ってきます。
技術面では超音波を応用し、大声を張り上げなくても音がはっきりと届き、周囲への音漏れも最小限に抑えます。既存の主力事業であるインカムの販路を強みに、競合製品の半額以下という圧倒的な低価格を実現。
補聴器を敬遠しがちな層にも受け入れられやすく、施設だけでなく家庭への普及も視野に入れています。音声通信のプロとして、難聴による孤立を防ぎ、会話のインフラを再構築することを目指しています。
飴屋じゃない、飴屋の挑戦

株式会社ナカムラ 中村 慎吾さん(愛知県)
「飴を飴として売らない」と言い切る株式会社ナカムラの中村慎吾さんは、飴を「コミュニケーションツール」へと昇華させました。中村さんは、日本初のオーガニック・カーボンニュートラルキャンディを開発し、飴一粒に新たな価値を宿しました。
戦略の柱は、名古屋鉄道との熱中症対策プロジェクトです。オーガニック塩飴を「広告・安全衛生予算」の受け皿としてリ・ブランディングし、従来の菓子予算とは異なる販路を開拓。これにより、働く人の健康管理と環境貢献を同時に実現するインナーブランディングツールとしての地位を確立しました。
世界でも数少ないオーガニック製造技術を武器に、グローバル市場も視野に入れた戦略的なマーケティングで、飴の可能性を広げ続けています。
アトツギが勝つための3つのポイント

今回のプレピッチを通じて、地方企業が学ぶべき本質的なマーケティング戦略が見えてきました。審査員の声を併せ、その重要ポイントを深掘りします。
「負の資産」を「独自の強み」へ転換する
佐藤さんの廃石膏、滝川さんの廃ビーズ、稲垣遼太さんの石の粉。これらに共通するのは、これまで業界で「捨てるためにお金を払っていたもの」を「価値を生む資源」に変えた点です。
これは「リソースの再定義」です。 通常、新規事業は外部から資源を調達するためコストがかさみますが、アトツギは既に社内にある「負の遺産」を活用することで、圧倒的な低コスト・高利益率を実現できます。
この「自社にしかできない理由」こそが、スタートアップには真似できない地方企業の強みとなります。
「戦う市場」をスライドさせ、予算の出所を変える
中村さんの飴の事例は、戦略として非常に洗練されています。飴を「お菓子」として売れば、大手メーカーとの価格競争に巻き込まれます。
しかし、「企業の福利厚生(熱中症対策)」や「広告ツール」として再定義することで、戦う土俵を菓子市場から「企業の安全衛生予算」や「広報予算」へとスライドさせました。
市場をスライドさせることで、競合の性質が変わり、単価やリピート率が劇的に改善します。自社の商材を「誰の、どの財布(予算)」に向けて提案するかを再設計するだけで、既存のプロダクトでも爆発的な成長が見込めるのです。
信頼を起点とした「ハブ」への進化
稲垣亘佑さんの仏壇リメイク事業で注目すべきは、その波及効果です。相談に訪れる顧客の約8割が「空き家にある仏壇」に悩んでおり、仏壇を通じた信頼構築が、結果として遺品整理や空き家解体(不動産案件)の相談・獲得に繋がっています。
このように、他人が入り込みにくい「家族の深い悩み」に寄り添える立場を活かし、周辺の深刻な課題を解決するハブ(窓口)となるモデルは、地方ビジネスにおける一つの理想形と言えます。
審査員の総評

今回登壇した6名は、共通して「家業への深いリスペクト」と「現状への強い危機感」を併せ持っていました。特に、現場の技術を客観的に捉え直し、現代の社会課題(SDGs、高齢化、空き家、農業支援)に接続する力は、多くの地方企業の模範となるものです。
地方のアトツギが直面するのは、スケーラビリティを追求するスタートアップ的な成長か、あるいは地域に根ざしたゼブラ企業として持続性を重視するのかという選択です。どちらが正解ということではなく、自分たちが「誰のために、何を守るのか」というスタンスを明確にすることが、採用や販路開拓における最大の武器になります。
本番の全国決勝大会(2月27日)では、この熱量がさらに研ぎ澄まされ、日本中のアトツギに勇気を与えることを確信しています。
HONEでは、こうした挑戦するアトツギをマーケティングの力で支援し、地域の知見を必要としている方へ届ける活動を続けてまいります。
今後のスケジュール
決勝大会(FINAL):2026年2月27日(金)(大手町三井ホール)
皆様もぜひ、オンラインや現地でアトツギたちの勇姿を応援してください!
HONEのサービスについて
HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。
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株式会社HONE
インターン / マーケター見習い 森勇人
静岡生まれ、静岡育ち。 大学3年次、1年の休学をして全国36都府県を巡る。山形県西川町では3ヶ月の地域おこし協力隊インターンを経験。 復学後、ご縁があり株式会社HONEにてインターン/マーケター見習いとして奮闘中。








