コンセプトの検証方法とは?【即実践できるコンセプトシート付き】
- 亀元梨沙子

- 7月17日
- 読了時間: 12分
更新日:9月27日

マーケティングで成果を出すには、企画の土台となる「コンセプト」が欠かせません。
「なぜこの商品を出すのか?」「自社のらしさとは何か?」が明確になれば、広告やPRがよくワークしてお客様の心にもっと届くようになるはずです。
本記事では、マーケティングの課題を抱える事業者や自治体の方向けに、コンセプトの基本からコンセプトシートの作り方、そして検証の方法までを解説します。
記事の最後には、実務で使えるコンセプトシートのテンプレートもご用意しましたので、ぜひ実践に役立ててください。
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目次
「ミッション・コンセプト・ビジョン」との違いは?
コンセプトの位置づけは、アプローチによっても異なる
なぜコンセプトシートが必要なのか?
コンセプトシートの基本項目
コンセプトとは?その重要性をおさらい

コンセプトとは、本来「心の中で考えられる何か」「思想」「概念」と訳される抽象的な言葉です。マーケティングにおけるコンセプトは「誰に、どんな価値を、どう伝えるか」を明確にするもの。
つまり、「その商品・サービスが、どんな便益(ベネフィット)を顧客にもたらすのか」「その価値をどう表現するのか」を示す設計図です。
ブランドコンセプトが定まっていれば
消費者にとってそのブランドがどういう価値を持つのか
その商品を選ぶと何が良いのか
といった「選ばれる理由」が明確になります。
「ミッション・コンセプト・ビジョン」との違いは?

コンセプトは、企業の理念や未来像とも密接に関係しています。
ミッション:そもそも私たちはなぜ存在するのか(存在意義・理由)
コンセプト:今やるべきこと(顧客との約束)
ビジョン:次に目指すもの(今後、実現したいこと)
つまり、コンセプトは今、顧客と交わす約束ともいえるのです。
コンセプトの位置づけは、アプローチによっても異なる

マーケティングやブランディングのプロセスにおいて、コンセプトの定義や登場タイミングは異なるケースがあります。
たとえば下記のような2つのアプローチです。
A:戦略設計から段階的にコンセプトを立てるパターン
→ MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)→市場分析→ブランド理解→コンセプト策定→施策展開へと進行
B:顧客起点でアイデアを発想するパターン
→ 顧客ヒアリングから始まり、コンセプトを早期に定めて、ブリーフ・デザイン・施策へと展開
どちらが正解というわけではなく、事業の性質やプロジェクトの立ち上がり方に応じて柔軟に設計することが大切です。
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コンセプトハウスとは?フレームワークで軸を作る
コンセプトハウスとは、新しいアイデアや事業コンセプトを「誰に、何を、どう伝えるか」という構造で整理し、チーム内外にわかりやすく伝えるためのフレームワークです。
コンセプトを家の構造に見立て、屋根(コアアイデア)・柱(根拠)・中心(ベネフィット)を順に埋めていくことで、顧客視点に立った、説得力あるストーリーを構築することができます。
コンセプトハウスの構成要素

コンセプトハウスは以下の要素から構成されます。
CORE IDEA(屋根)
コンセプトの中核となる「一言メッセージ」。
どんな価値観・世界観を顧客に提示するのか、商品やブランドの方向性を端的に表します。
例「日常の新しいご褒美」「挑戦する人を応援する企業」
Top Benefit(家の中心)
消費者が最も魅力を感じる便益(ベネフィット)です。
「この商品・サービスを通じて、どんな嬉しさが得られるのか?」を明確にした、伝える核となる価値提案です。
例 「罪悪感なく楽しめるクラフトコーラ」「気軽に新たなステップに進める」
RTB(Reason to Believe|柱部分)
Top Benefitを支える具体的な根拠やエビデンス。
信頼性や差別化ポイントを補強し、「この商品なら納得できる」と感じてもらう要素を並べます。
例「無添加・農薬不使用」「多様なアレンジレシピで飽きない」

上記のようにコンセプトハウスを用いることで、コンセプトの核(CORE IDEA)と訴求ポイント(Top Benefit)、支える根拠(BTR)を一本の筋道にまとめることができます。
フレームワークに沿って整理することで抜け漏れが防げるだけでなく、社内でもコンセプトを共有しやすくなるメリットもあります。
コンセプトシートとは?役割と基本構成
コンセプトシートとは、企画の考えの軸を一枚にまとめたドキュメントです。
商品やサービスに込めた狙いや価値、ターゲット像などを整理し、プロジェクト全体の思考の指針として機能します。
なぜコンセプトシートが必要なのか?
アイデアや意図を頭の中だけで進めていると、いつの間にか目的がぶれたり、ターゲット像が曖昧になったりすることがよくあります。
そんなとき、立ち返る軸となってくれるのが、コンセプトシートです。考えが脱線したときに軌道修正できるだけでなく、プロジェクトの精度を高め、判断の一貫性を保つ効果もあります。
コンセプトシートの基本項目

形式は自由ですが、どのプロジェクトでも押さえておきたい主要項目は以下の4点です。
① 企画意図(背景・目的)
なぜその企画を立ち上げたのか? どんな課題や市場ニーズがあるのか?
必要に応じて、業界トレンドや顧客インサイトなども交えて説得力ある背景を記載します。
② ターゲット
誰に向けた商品・サービスかを明確にします。
性別・年齢といった基本属性だけでなく、価値観・行動・悩みまで踏み込むと、訴求力のある内容になります。
③ 提供価値と訴求メッセージ
ターゲットに対して、何を価値として提供するのかを一言で表します。
また、その価値をどう伝えるのか(媒体やトーンなど)も合わせて記載すると、実行フェーズまで一貫性が保てます。
④ 商品名・価格
提供する商品やサービスの名称(仮称でも可)と、想定する販売価格や料金体系を記載します。価格は、ターゲットの購買感覚に合っているか、提供価値とバランスが取れているかを意識して設定すると良いでしょう。
併せて、容量やセット内容、サブスクリプションの有無なども明記しておくと、商品像がより具体化します。
※プロジェクトによっては、ここに「予算・スケジュール」「関係者体制」なども加えることがあります。ただし初期段階では、価値設計とターゲット理解に集中することが重要です。
コンセプトを検証するには?
コンセプトシートが完成したら、次に取り組みたいのが「そのコンセプトは本当に伝わるのか?」を確かめる検証(テスト)です。
いくら魅力的に思えるコンセプトでも、実際にターゲットに響くかどうかは別問題。市場の反応を確かめずにリリースすれば、「思ったほど響かなかった」という事態になりかねません。
検証プロセスの基本ステップ

候補案を3〜4案に絞る 最初に複数の案がある場合は、ワークショップやブレストなどで有望なものに絞り込みます。
社外テスト(市場検証)を実施する 社内での整理が終わったら、実際の市場での検証に進みます。代表的な方法は次の2つです。
検証手法①|定量調査(アンケート)
目的:多数のターゲットに対し、「どれだけ魅力を感じるか」を数値で測る
方法:選択式や5段階評価などで「共感度」「購入意欲」などを質問
活用例:「このコンセプトは魅力的だと思うか?」「買ってみたいと思うか?」など
⟶ 数値で比較できるため、社内の意思決定にも説得力が生まれます。
検証手法②|定性調査(インタビュー)
目的:少人数から深いインサイトを得る
方法:グループインタビューや1対1のデプスインタビューで、感想や違和感を深掘り
活用例:「どの言葉が響いた?」「どこに違和感がある?」「この価値をどう感じる?」
⟶ 顧客の言葉や感情のニュアンスから、思わぬ発見や改善のヒントが得られます。
社内フィードバックも有効
市場だけでなく、社内メンバーの視点も検証に活用できます。
営業チーム:「実際の現場でこの価値は伝わりそうか?」
サポートチーム:「ユーザーの声として違和感がないか?」
開発チーム:「実現性はあるか?誤解される表現になっていないか?」
部署をまたいだフィードバックは、机上の空論からの脱却に役立ちます。
コンセプト検証を成功させるポイント

1. コンセプトシートをそのままテストに使う
検証の際には、作成したコンセプトシートをそのまま資料として活用しましょう。
「このコンセプトのどの部分に魅力を感じましたか?」
「逆にピンとこなかった部分はありますか?」
「なぜそう感じましたか?」
という質問を通じて、強み・弱みを明確化できます。
2. ネガティブな声こそヒントにする
「分かりにくい」「自分には必要性を感じない」などの声は、つい避けたくなりますが、 その中にこそ改善のヒントが隠れています。表現が伝わっていないのか、価値自体が刺さっていないのか。 冷静に見極めて、必要ならコンセプト自体の見直しも検討しましょう。
3. 早く・小さく・繰り返す
検証は、できるだけ早い段階で実施するのが理想です。 試作段階であれば修正もしやすく、大きなコストをかけずにPDCAを回せます。
1回のテストで終わりにせず、 「修正 → 再テスト → 再修正」と段階的に精度を上げていくことが、 コンセプトの確度を高める最短ルートです。
コンセプト策定事例:地域発「ブロッコる?」誕生の背景

実際のコンセプト策定・検証プロセスの参考として、静岡県のJA(農協)が開発した冷凍ブロッコリー商品「ブロッコる?」の事例をご紹介します。
「3分で食べられるブロッコリー」

「ブロッコる?」は、「電子レンジで3分温めるだけで手軽に食べられる」という、シンプルでわかりやすいコンセプトを掲げた冷凍野菜商品です。
開発のきっかけは、「ブロッコリーは筋トレ層に売れるのでは?」という仮説でした。
ブロッコリーは栄養価が高く、ボディメイクを意識する層に好まれる食材である一方、調理の手間がネックという課題もありました。
潜在ニーズを探る市場調査
この仮説を裏付けるため、次のような観点で市場調査を実施しました。
健康志向によるブロッコリー需要の変化はあるか
消費者が求める“手軽さ”とは具体的にどんな調理方法か
筋トレ層・主婦層など、潜在的なターゲットの行動特性
この調査を通じて見えてきたのは、主に2つのインサイトでした。
①「料理の手間を減らしたい」主婦層のニーズ
②「すぐに食べられて栄養価が高いものを求める」筋トレ層のニーズ
コンセプトハウスに当てはめてみると

この2つのニーズを踏まえて策定された商品コンセプトは、以下のように整理できます。
CORE IDEA(屋根):3分で食べられるブロッコリー
Top Benefit(中心):調理の手間ゼロで、健康的なブロッコリーがすぐ食べられる
RTB(柱): - 冷凍技術で鮮度と栄養をキープ - カット済み・小分けパックで使いやすい - 管理栄養士監修で味付け不要・そのまま食べられる
これらの要素は、消費者の「手間をかけたくないけど健康的なものを摂りたい」というニーズにフィットしています。
この「ブロッコる?」は、商品開発の背景や着眼点が日経クロストレンドなどのメディアにも取り上げられ、地方発ながら全国的な注目を集めました。市場調査を通じて潜在ニーズを的確に捉え、それを一言で伝わるコンセプトに落とし込んだことが成功の鍵といえるでしょう。
他のプロジェクトにも応用できる視点
この事例から学べるのは、次のようなポイントです。
仮説→調査→インサイト→コンセプト化という流れの重要性
シンプルかつ共感しやすい表現に落とし込むことの強さ
「届けたい相手のリアルな課題や欲求に、どう応えるか」
それを言葉と構造で整理し、伝わるカタチにすることが、コンセプト策定の本質です。
実際に作ってみよう:コンセプトシートでアイデアを形にする

今回の記事では、すぐに使えるコンセプトシートのテンプレート項目もご用意しています。
Step 1 ターゲットと課題の洗い出し
テンプレートに沿って、まずは誰に届けたいのか、その人はどんな課題を抱えているのかを明確にします。
「子育てと仕事の両立に悩む30代女性」
「地元産野菜の消費拡大を目指す自治体職員」
など、具体的に書き出すのがポイントです。
Step 2 提供価値(コンセプト)の言語化
そのターゲットの課題を自社の商品・サービスがどう解決できるのかを一言で表現してみましょう。 これは、コンセプトハウスで言うCORE IDEA(コアアイデア)にあたる部分です。
はじめは抽象的でも構いません。 「一言で伝えるならどう表現する?」という問いかけから始めてみてください。
Step 3 ベネフィットと根拠の肉付け
そのコンセプトが具体的にどんな嬉しさ(ベネフィット)をもたらすのか、その価値を信頼してもらうための裏付け(RTB)を整理します。
ベネフィット:「手間なく、健康的な食事がとれる」
根拠(RTB):「冷凍で鮮度キープ」「管理栄養士が監修」など
「なぜこの価値が信頼できるのか?」を自問してみると、深みが出てきます。
Step 4 フィードバックを得る
書き終えたら、チーム内でレビューや調査などでフィードバック検証をしてみましょう。
第三者が読んでも納得できる内容か?
主観に偏っていないか?
表現がわかりやすいか?
社外の関係者やターゲットに近いユーザーにも意見をもらえるとベストです。
Step 5 フィードバックをもとにブラッシュアップ
フィードバックを受けて、必要に応じて表現を修正しましょう。
「伝わりづらい」と言われた部分は、言葉を置き換えてみる
「魅力が伝わらない」と感じたら、視点や切り口を変えて再構築する
この磨き上げの工程は、コンセプトをリアルに近づけていくプロセスです。
まとめ
コンセプトの基本構造(コンセプトハウス)、整理に役立つシート、検証手法までを実践的に紹介しました。
テンプレートを活用しながら、自社ならではの「選ばれる理由」を見つけてみてください。
地方の事業者こそ、「コンセプト設計」と「検証」に力を入れてみませんか?
弊社は全国各地の自治体・中小企業・地域ブランドの伴走支援を行ってきました。
私たちが現場で何度も感じてきたのは、
地方には「光る素材」も「良いプロダクト」もたくさんある。
けれど、「誰に、どう届けるか」が整理されないまま進んでしまい、
せっかくの魅力が埋もれてしまうケースが非常に多いということです。
だからこそ、最初の一歩として「コンセプトを整理する」「検証によって届く言葉に磨き上げる」「社内全体で軸を共有する」、この3ステップに取り組むことで、プロジェクトの成功確率は大きく高まります。
「検証のやり方がわからない」「ちゃんと届くか不安」
そんなときこそ、ぜひご相談ください。
\こ相談はこちらから/
【記事を書いた人】

株式会社HONE
マーケター 亀元梨沙子








