top of page

弱者の法則を逆手に取る地方版「メンタル・フィジカルアベイラビリティー」の戦略

  • 執筆者の写真: 桜井 貴斗
    桜井 貴斗
  • 1 日前
  • 読了時間: 10分

更新日:21 時間前

弱者の法則を逆手に取る地方版「メンタル・フィジカルアベイラビリティー」の戦略

地方都市は都市部と比較して「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源が少なく、このため、都市部と同じマーケティング戦略では成功しにくいため、再現性の低い施策を続けることは経営のリスクとなります。


では地方都市の企業や自治体はどんな取り組みを行えば良いのか?


本記事では、南オーストラリア大学アレンバーグ・バス研究所のバイロン・シャープ教授の提唱するブランディングの核心である「物理的かつ精神的なアベイラビリティー(フィジカルアベイラビリティー・メンタルアベイラビリティー=手にいれられる度合い)を高める」 という原則を、地方特有の事情を鑑みながら実務に落とし込む方法を記事にしました。


ぜひ最後までご覧ください。



\お役立ち資料はこちらから/


株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料



メンタルアベイラビリティ、フィジカルアベイラビリティとは


メンタルアベイラビリティ、フィジカルアベイラビリティとはバイロン・シャープ著「ブランディングの科学」に記載されている用語の一つです。


※ブランディングの科学とは?(本書より引用)P&Gなど成功企業のブランディングに影響を与えたマーケティングの名著『How Brands Grow: What Marketers Don't Know 』の日本語版がついに発売。コトラーなどのマーケティング主流派に異を唱え、従来のマーケティング理論や常識を検証し、新しい視点からマーケティングやブランドの育成方法を提案する。本書の特徴は、ともすれば理論が先行しがちなマーケティングにおいて、エビデンスに基づいた理論の実践の重要性を説いていることです。マーケティングはアート(感性)とサイエンス(科学)の両方が必要、あるいはそのバランスが重要だと語られることが多いのですが、アレンバーグ・バス研究所で教授を務めるバイロン・シャープ氏のマーケティング理論は、一貫してエビデンスに基づいて科学的であることを何よりも大切にしている点において、他のマーケティング理論とは一線を画しています(「序文」より)。

ブランディングの科学とは?

メンタルアベイラビリティとは、消費者が特定のブランドや商品を思い浮かべやすい状態を指します。これは、消費者の心の中にブランドがどれだけ強く根付いているかを示す指標であり、マーケティング戦略を実装する上でも非常に重要な要素となります。


メンタルアベイラビリティとは

消費者が特定のニーズや状況に直面した際に、最初に思い浮かべるブランドのことを「第一想起」と呼びます。第一想起が高いほど、消費者はそのブランドを選ぶ可能性が高くなります(例:炭酸飲料といえば→コーラ、ミネラルウォーターといえば→いろはす、など)。


一方、フィジカルアベイラビリティとは、消費者が実際に商品を手に取りやすい、または購入しやすい環境を指します。具体的には、商品の配荷状況、パッケージデザイン・サイズ、店舗の棚などが含まれます。


フィジカルアベイラビリティとは、消費者が実際に商品を手に取りやすい、または購入しやすい環境を指します。具体的には、商品の配荷状況、パッケージデザイン・サイズ、店舗の棚などが含まれます。

「消費者が商品にアクセスする際の物理的な障壁を低くすること」を目的としており、それは単に配荷率を上げることだけでなく、手に取りやすいサイズ感であることことや、バッグの中に入りやすい携帯であることなども購買意欲を高める重要な要素となります。


メンタルアベイラビリティー・フィジカルアベイラビリティーのより詳しい記事は以下をご覧ください。




なぜ地方のブランドにアベイラビリティーが欠かせないのか?


極端に言えば、どんなに評判が良い商品だとしても、消費者にとって日頃の行動範囲から離れていれば入手が難しく、売上になることはないから、というのが答えになります。


例えば、とても美味しいコーヒー豆があったとして、どれだけSNSで話題になっていたとしても、車で3時間かけてしか行けない場所に店舗があり、通販もやっていない、ということであれば収益を上げることはできません。


つまりブランドが想起(思い出してもらえる)だけではなく、実際に手に取れる・購入しやすい状況を作る(オンライン・オフラインを含め)ことが収益を上げることにつながるのです。



弱者の原則:成長の源泉は「浸透率」にある


小さなブランドにとって、成長の大部分は顧客基盤の拡大(浸透率)からもたらされ、ロイヤルティ(愛着や信頼や共感)を先に高めようとしても、浸透率を増やさずにロイヤルティだけを高めることはできない、という原則=「ダブルジョパディの法則」があります。


ダブルジョパディの法則は、ブランドがどれだけ多くの人に購入され認知されているか(浸透率)と、そのブランドをどれだけ頻繁に買うか(購買頻度)の関係を説明する理論です。


提唱するバイロン・シャープ教授によると、知名度が低いブランドは、購入する人が少ないだけでなく、購入頻度も低くなると証明されています。


ダブルジョパディの法則のより詳しい記事は以下をご覧ください。



このため、地方ブランドはまず、ターゲットではないライトユーザーも含めた新規顧客に対し、いかに想起され、買い求めやすい状況を作るかに注力する必要があります。



メンタルアベイラビリティーの鍵:「CEP(カテゴリー・エントリーポイント)」で「買う必然」を作る


カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは、新しい市場に参入する際や新商品・サービスを展開する際に、消費者の心に強く印象を残すための戦略的なアプローチを指します。


具体的には、消費者が「特定のカテゴリー(シーン)」を思い浮かべたときに、最初に頭に浮かぶブランドや商品・サービスを目指すことです。これにより、消費者の購買意欲を高め、行動変容に繋げていくことで競合他社との差別化を図ることができます。


CEPの重要性は、消費者が商品を選ぶ際の意思決定プロセスに深く関わっている点にあります。わかりやすい例で言えば、炭酸飲料を購入する際に「コーラ」が真っ先に思い浮かぶように、CEPを効果的に活用することで、消費者の選択肢の中で自社の商品が優先されるようになります。


カテゴリー・エントリーポイントのより詳しい記事は以下をご覧ください。



CEPを設計することで、「誰(ターゲット)が、どんな時に(オケージョン)、何に対して(プレファレンス)であれば、プレミアム価格(価格差別化)で買うか」という「買う必然」を生み出すことができます。



事例:RAKURAKU OIMO


RAKURAKU OIMOとは「罪悪感なし(ギルトフリー)なお芋のおやつ」をコンセプトにした、小粒のキューブタイプで持ち歩けるパッケージで、「手軽に」「どこにでも持ち歩きたくなる」ほしいもおやつです。


開発秘話などはこちらのnoteをご参照ください。



調査の結果から、ほしいものユーザーは大きく分けて4パターン存在していることを把握しました。


  • 小さな子ども向け

  • 持ち歩き用

  • 仕事中のお供

  • グルテンフリー(ダイエットユーザー)


実際に購入者層も同様であることがわかってきました。


RAKURAKU OIMOのユーザー層

それにより、設定したCEPは以下の通りとなります。


ターゲットごとに具体的にどんなシーン(オケージョン)があるか?またそのオケージョンの際にどんなプレファレンス(価値)を提供すれば販売につながるか?を設計しました。


RAKURAKU OIMOのCEP
RAKURAKU OIMOのオケージョン

4つのターゲット・オケージョン・プレファレンス


  • 「子どものいる主婦」×「お出かけの際の子ども向けのおやつ」×一口大で食べられる(バッグに入れられる)

  • 「ダイエット中の人」×「小腹が空いたとき、グミやチョコだと罪悪感がある」×「無添加・グルテンフリーで罪悪感がなく小腹が満たせる」

  • 「仕事中のOL」×「仕事中、小腹を満たしたいが、添加物・糖分が多いお菓子だと抵抗感がある」×「無添加・グルテンフリーで罪悪感がなく小腹が満たせる」

  • 「グルテンフリーユーザー」×「グルテンフリーのおいしいおやつに巡り会えない」×「無添加・グルテンフリーで罪悪感がなく小腹が満たせる」


以上のようにメンタルアベイラビリティーとはどんな想起を設定し実践まで繋げていくか?を考えるプロセスであることがわかると思います。



フィジカルアベイラビリティーを実現する地方の販路戦略


続いて、フィジカルにアプローチする方法についても解説をしていきます。


フィジカルアベイラビリティーにて大切なのはターゲットが「いつでも・どこでも購入できる」を実現するためのチャネル選定にあると私は考えています。


ここで大切なのはターゲットは誰か?という問題と、そのターゲットの普段の行動範囲の中に自分たちのブランドがきちんと配荷されているか?という点です。


例えば、野菜の「ブロッコリー」を購入したいと思った際に購入する場所はどこを思い浮かべますか?多くの人のメイン販路はスーパーマーケットではないかと思います。通販で購入する方もいるかもしれませんが、大多数はスーパーだとすると、メインストリームの販路で勝負した方が売上が上がります。


その時点で販路の第一は「スーパーマーケット」であり、フィジカルアベイラビリティーにアプローチするにはここを避けては通れません。


弊社の事例:JAハイナンさま(ブロッコリーの共同開発)



地方ブランドは、まずはクラファンで、ECやイベント販売でテストマーケティング、というスタートだとしても、スーパーやコンビニといった消費者にとっての主流な物理的販路への配荷を諦めずに開拓することが求められます。



デザイン・パッケージを決める


フィジカルアベイラビリティを高めるためには、商品のデザインやパッケージも要素の一つとなります。消費者が商品を手に取る際、最初に目に入るビジュアルもフィジカル要素です。魅力的なデザインは、消費者の注意を引き、購買意欲を刺激する要素となります。


デザインはブランドのアイデンティティを反映するものであり、「色彩、フォント、ロゴ」などが一貫していることで、消費者がブランドを認識し、信頼感が醸成されます。また、ターゲット市場に合わせたデザインを考慮することも重要となります。


弊社にてお手伝いさせていただいた「RAKURAKU OIMO」はほしいもをキューブ型にした商品ですが、手に取りやすいパッケージ、カバンに入れやすいサイズ感、一口サイズのキューブ型など、フィジカルアベイラビリティを意識した商品にしています。


RAKURAKU OIMO
RAKURAKU OIMO

創業一〇〇年、静岡県の老舗茶農家・五代目が作る静岡産さつまいもを使用した新商品開発株式会社ヤマウメ様のオリジナルさつまいもブランド「紅金波(べにきんぱ)」を使用したほしいも製品のブランド戦略策定〜実行支援を行いました。静岡県沿岸の日照時間は2500時間超え!お日さまパワー詰め込んだ糖度五八度超のさつまいも使用した静岡県産の紅金波(べにきんぱ)を使用。 罪悪感なく食べられる「持ち運べるほしいも」を3000人の声を聞いて商品開発しました。

最後に


以上が地方におけるメンタル・フィジカルアベイラビリティーのアプローチ例となります。ぜひみなさんの現状に合わせたマーケティング戦略のアプローチとしてご検討いただけたらと思います。


弊社HONEでは現状に応じたマーケティング支援も行っておりますので、迷子になってしまった際はお気軽にお声がけいただけたらと思います。


\こ相談はこちらから/



HONEのサービスについて


当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。


HONEのサービスについて

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。


学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。


誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。


\こ相談はこちらから/


HONEサービス一覧
voicyはじめました。
youtube はじめました


その他、気軽にマーケティングの相談をしたい方のための「5万伴走プラン」もスタートしました。詳細はバナー先の記事をお読みください!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


5万併走

\こ相談はこちらから/



【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

bottom of page