top of page

地方でブランド認知を高めるには?「メンタルアベイラビリティ、フィジカル・アベイラビリティ」入門

  • 執筆者の写真: 桜井 貴斗
    桜井 貴斗
  • 3月23日
  • 読了時間: 14分

更新日:3月30日

地方でブランド認知を高めるには?「メンタルアベイラビリティ、フィジカル・アベイラビリティ」入門

人口減少や競争激化に直面する地方自治体、中小企業、観光事業者に従事されている方は自分たちの“ブランド”がちゃんと選ばれているか自信はありますか?


「商品や地域の良さには自信があるのに、名前を出しても『それ何?』と言われてしまう…」「遠くからわざわざ買いに来てもらえない…」そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。


本記事はブランド構築の重要概念である「メンタルアベイラビリティ(心の中で思い出してもらいやすさ)」と「フィジカルアベイラビリティ(手に入れやすさ)」を地方の文脈で噛み砕いて解説し、成功事例と具体的な取り組み方をご紹介します。初心者にもわかるコラム+事例+How-to形式で展開しますので、ぜひ最後までお読みください!




株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料・アーカイブ

▼目次





地方ブランドの鍵「メンタルアベイラビリティ」「フィジカルアベイラビリティ」とは?


まずは基本となる2つの「アベイラビリティ(利用可能性)」という考え方を押さえていきましょう。


メンタルアベイラビリティとは、一言でいうと「あるブランドが消費者の記憶にどれだけ刷り込まれていて(想起されていて)、行動・購入する際に真っ先に(または候補として)思い出してもらえるか」という指標です。


例えばコーヒー好きの人が「コーヒー飲みたい」と思ったとき、最初に頭に浮かぶブランドが「スターバックス」なら、そのブランドはその人にとってメンタルアベイラビリティが高いということになります。


真っ先に想起されるブランドは当然ながら選ばれる確率も高まるため、結果的に収益を上げることができます。


一方、フィジカルアベイラビリティとは「消費者がそのブランドをいざ買おうと行動をとっった際、実際に(物理的・操作性含め)アクセスしやすいか」という指標です。


極端な例を言えば、どんなに評判が良いコーヒーでも日頃の行動範囲から離れていれば集客は難しいですし、どれだけSNSで話題になっていたとしても、スーパーやコンビニ・ドラッグストアに置いていなければ収益を上げることはできません。


つまりブランドが想起(思い出してもらえる)だけではなく、実際に手に取れる・購入しやすい状況を作る(オンライン・オフラインを含め)ことが収益を上げることにつながるのです。


「メンタルアベイラビリティ」「フィジカルアベイラビリティ」における地方ビジネスの課題とは?


地域のビジネスや地域産品が抱える課題は、まさにこの両輪が弱いことにあります。多くの地方ブランドは「知名度が低く、販路もまだ整っていない」という二重のハンデを負っています。


せっかく良い商品や観光資源があっても、消費者の心に想起されなければ選ばれませんし、仮に名前を知っていても身近で買えなければ機会損失につながります。裏を返せば、地方発のブランドでもこの「メンタル」「フィジカル」両面のアベイラビリティを高めることで飛躍のチャンスが生まれるのです。


【あわせて読みたい】

地方ブランドが大手メーカーの事例を真似してもうまくいかない理由について。

では、実際に地方でこの考え方を活用し成功している例を見てみましょう。



【事例①】ゆるキャラで全国区に!くまモンが示した「心に残る」強さと波及効果


熊本県のゆるキャラ「くまモン」は、地方発でも爆発的なブランド認知を獲得した好例です。


くまモンランドより
くまモンランドHPより

2011年の誕生当初は熊本県内のPRマスコットに過ぎませんでしたが、「ゆるキャラグランプリ」での優勝を機にテレビや新聞で全国的に露出し、一躍有名になりました。くまモンの顔がプリントされたお土産や衣類が日本中で販売され、その結果、2011~2013年の2年間で熊本県にもたらした経済効果は1244億円にのぼり、メディアに取り上げられた広告効果も90億円超と試算されています。


まさに「心に浮かぶ可愛さ」と「どこでも買える身近さ」を両立させた成功例と言えます。


この事例から学べるのは、わかりやすいイラストがメンタルアベイラビリティの構築となり、地方ブランドを全国区に押し上げる原動力になることです。


くまモンはその愛らしさと話題性で消費者の記憶に刷り込まれ(ブランド想起)、さらにグッズ展開によって日本中どこでも目にする存在になりました。自治体職員の方にとっては、「地域のシンボル」を育て上げることで地域全体の認知度向上と経済効果が得られる好例でしょう。


結果、観光客も増加し、熊本県への観光客が2年間で約18.8万人増えたとの報告もあります 。「思い出してもらえる」「会いに行ける・手に入れられる」状態を作ることが、地方活性化に直結するのです。



【事例②】絶滅危機から復活!今治タオルが証明した「手に取れるブランド」の力


今治タオルは、愛媛県今治市周辺で生産されるタオルで、吸水性や肌触りの良さが特徴です。日本だけでなく世界中で人気があります。


今治タオル工業組合
今治タオル工業組合ホームページより

しかし愛媛県今治市のタオル産業は、一時は海外製品の台頭で産地消滅の危機に瀕していました。かつて600社近くあったメーカーが100社程度に激減し、「安いタオル=外国産」という認識の陰で今治の名は消えかけていたのです。


ここから「今治タオルプロジェクト」と銘打ったブランド戦略が始動することとなります。今治商工会議所やタオル工業組合、今治市が連携し、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏の指揮のもとでブランド再構築をスタートさせました。


「パッと見てわかりやすい」赤・青・白のブランドロゴマークの制定、独自の「厳しい品質基準」をクリアした製品にだけロゴを付与する仕組み、そして「白い高級タオル」を旗艦商品に据えて品質の良さを直感させる戦略などを打ち出しました。


今治ブランドマニュアルより
今治ブランドマニュアルより

独自の品質基準をクリアしたタオルだけが名乗ることのできる 「今治タオルブランド商品」という確かな品質
独自の品質基準をクリアしたタオルだけが名乗ることのできる「今治タオルブランド商品」という確かな品質

この一連の施策によって、今治タオルはブランドとして確立され、今や誰もが知るブランドへと成長しました。


私自身は今治タオルのイケウチオーガニックさんと佐藤可士和さんの書籍(今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略)にて今治タオルの存在を知ったのですが、知れば知るほど、抜かりなくブランド戦略を構築〜実行していったのだと感じています。


以前は無名に等しかった今治の名前が、高級タオルの代名詞として全国の百貨店やギフト市場、ECで扱われている結果となっています。


今治タオルの復活劇は、中小企業や地場産業にとってフィジカルアベイラビリティを改善する重要性を示しています。


ブランド認定事業によって認定を受けた製品が全国どこでも入手できるようになり(流通チャネル拡大)、統一ブランドでPRすることで消費者の記憶に刷り込まれていったのです。


認定マークの使用規定(組合ホームページより)
認定マークの使用規定(組合ホームページより)
今治ブランドマニュアルより
今治ブランドマニュアルより

結果として「探さなくてもそこにあるブランド」になれば、価格競争ではなくブランド価値で選んでもらえるようになります。


地元企業が連携してブランドを育て上げた今治タオルの事例は、地方の中小企業にとって協力してブランド認知を高め、販路を整備すれば市場で戦えることを示しています。



【事例③】火山を味方に!アイスランドのUGC観光キャンペーン


日本国内の地方ではありませんが、小国アイスランドの観光業もまた「メンタルアベイラビリティ」「フィジカル・アベイラビリティ」の側面で成果を上げた興味深い例です。


2010年、アイスランド南部の火山噴火により世界中にネガティブなニュースが流れ、観光客が激減する危機に陥りました。


 Inspired by Iceland: Successful Tourism Promotion Campaign | .TR
アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル氷河の下で火山が噴火のニュース

通常であれば「旅行先として危ない」というメンタル面のイメージダウンが尾を引きそうな状況でしたが、アイスランドはここで大胆なキャンペーンを打ち出します。それが「Inspired by Iceland」と名付けられたプロモーションです。


このキャンペーンでは、アイスランド政府や観光局だけでなく航空会社や地元企業など約80の関係者が結集し、「アイスランドは今まで以上に元気ですばらしい体験ができる場所だ」というメッセージを発信しました。


注目すべきはその手法で、アイスランド国内の一般の人々や火山訪問者に自分の体験談や思い出を世界に向けて発信してもらうというUGC(User Generated Content)主体の戦略を取ったことです。


キャンペーン開始日の「アイスランドアワー」には国民の3人に1人が参加し、世界中の友人知人に向けて数万通ものメッセージを送信し、アイスランドの魅力を語った動画を共有しました。


著名人も次々と応援メッセージを発信し、その結果キャンペーン動画サイトは数ヶ月で300万ビューを記録。この波及効果は絶大で、暗雲が立ち込めていた同年の観光シーズンは蓋を開けてみれば前年並みの観光客数まで回復し、キャンペーン後の10月には前年比12%も訪問客が増加するという劇的な成果を収めました。


USAトゥデイ紙が「2011年に行くべき旅行先」にアイスランドを選出するなど、世界中の人々の心にポジティブなイメージを刷り込み直すことに成功したのです。さらに航空各社との協働により、実際に旅行しやすいツアーや経由便の整備(フィジカル面の対応)も進められました。


このアイスランドの事例は、日本の地方観光にも転用可能です。逆風下でも創造的な発信とユーザー参加型のキャンペーンでブランドのメンタルアベイラビリティを高め直せること、そして地域の人々自らが語るコンテンツ(UGC)が信頼と共感を生むことを証明しました。


SNS全盛のいま、ご利用のお客さんにハッシュタグを付けて発信してもらったり、地元のファンを巻き込んで情報発信する仕掛けは、コストをかけずにブランド想起を強化する有力な手段となります。


加えて、現地アクセスのハードルを下げるために旅行ツアーパッケージを検討することができればフィジカルアベイラビリティの向上にもつながります。「人に語りたくなる魅力」を演出し、それをみんなで広めてもらうことで遠い場所でも行ってみたくなるブランドを作れるのです。



今日からできる!地方で“想起されやすく・買われやすい”ブランドを育てる3つのステップ


ここまでの事例を踏まえて、自治体や企業が自分たちのブランドのメンタルアベイラビリティ&フィジカルアベイラビリティを高めるには具体的に何をすれば良いんだろう・・・と悩む方もいるかと思います。


最後にここではすぐに実践できる3つのステップを提案します。



1:現状診断:まず「想起されやすさ」と「入手しやすさ」を把握する


自社商品や地域名をターゲット層に聞いたとき、どれくらい思い浮かべてもらえるでしょうか?また、初めて知った人が自分たちの製品やサービスを手に入れようとしたとき、すぐ入手できるチャネルがあるでしょうか?


アンケートや身近な声を通じて、まずメンタル面・フィジカル面それぞれの現状を棚卸ししてみましょう。「〇〇といえば△△!」と即答してもらえないなら認知不足だと思いますし、購入方法について質問が多いなら流通不足となります。まずはこのギャップを把握することが出発点です。


【あわせて読みたい】

メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティとは?具体的な定義と考え方を解説します。


2:想起される工夫:心に残る一貫した発信とフック作り


メンタルアベイラビリティを高めるには、ブランドを想起するきっかけ(カテゴリーエントリーポイント)を意識した発信が有効です。


【あわせて読みたい】

カテゴリーエントリーポイント(CEP)とはなにか?事例、参考になる本/書籍を紹介

例えば「〇〇市といえば絶景の夜景」「△△のケーキといえば◯◯味」といった具合に、消費者が何か行動を起こす際にパッと連想できる紐づけを作ることが重要です。


そのために、ストーリー性のあるキャッチコピーやビジュアルを一貫して打ち出したり、SNS・ブログで役立つ情報と絡めて意図的に露出を増やすことが有効となります。


また、既存顧客のクチコミやUGCを促すしかけ(ハッシュタグキャンペーンやフォトコンテスト等)も、信頼性の高い認知拡大策になります。「話したくなる(トーカブルな)体験」を提供し、それが顧客自身の発信で広がれば理想的です。



3:買ってもらえる工夫:すぐ手に入る販売チャネルと接点づくり


フィジカルアベイラビリティの向上策として、販売チャネルの見直しは避けて通れません 。


地元の店舗だけでなく、首都圏やオンラインで商品を買えるようにする、観光客が帰宅後でも購入できるECサイトを整備する、店舗がなければポップアップ出店やイベント出展で露出するなど、「欲しい」と思った時にすぐ手が届く環境を整備していきましょう。


加えて、店頭での商品配置や見せ方を工夫することも効果的です。例えば目立つ陳列やPOP類の整備、試食・試用体験コーナーの設置、あるいは観光地なら案内所やホテルとのタイアップで情報にアクセスしやすくするといった工夫です。


自治体ならふるさと納税やアンテナショップを活用するのも一法です。「どこで買えるの?」という声を生まないよう、チャネルを広く深く確保することが大切です。



以上の3ステップを継続的に実施しPDCAを回すことで、少しずつではありますが確実に自社・地域のブランドは「選ばれやすい」状態へと近づいていきます。


特に地方の場合、地元のファンや関係者と一緒になってブランドを育てていく視点が重要です。地元住民自身がそのブランドのアンバサダーとなり発信してくれるようになれば、認知拡大と信頼獲得の両面で大きな力となるでしょう。



ブランドは一日にして成らず、まずは一歩前進を。


地方でのブランド構築は挑戦の連続ですが、適切な手法を押さえて地道に取り組めば必ず道は開けます。本記事で紹介した「メンタル/フィジカル・アベイラビリティ」の視点は、すでに他地域でも多くの成功を生んでいます。


北海道ニセコ町は「パウダースノーの聖地」というイメージ戦略で国際的リゾートに躍進し (地域ブランディングの成功事例10選 - ブランディング会社|株式会社チビコ | CHIBICO)、香川県直島町は現代アートを核に世界中から観光客を集めています (自治体向け:地域ブランディングとは?デジタルを活用した成功・失敗事例を紹介)。


皆さんの地域や企業でも、きっと眠っている魅力や強みがあるはずです。それらをしかるべき手法で磨き上げ、届ける努力を続ければ、ブランドの未来は大きく拓けるはずです。


ブランドは一朝一夕には育ちませんが、正しい方向で積み重ねた努力は必ず資産になります。あなたの地域発ブランドが、いつの日か全国の人々の心に真っ先に思い浮かぶ存在になることを願い、今日からできる一歩を踏み出してみましょう。



HONEのサービスについて


当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。


私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだ「3つのサービスプラン」をご用意しており、お悩みや解決したい課題に合わせてサービスを組んでいます。ご興味のある方は、ご検討いただければと思います。


サポートプラン
伴走プラン
研修プラン

またサービスのリンク先はこちら↓



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


5万伴走


【記事を書いた人】


桜井貴斗

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。



※本記事は一部AIを活用して執筆しています。

Comments


Commenting on this post isn't available anymore. Contact the site owner for more info.
bottom of page