私たちHONE社は「地方に骨のあるマーケティングを。」という理念のもと、静岡県を中心に、全国の地方のデジタルマーケティングを支援しています。
その中で核となるキーワードが「DX(デジタル化)」です。
「DX」とは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、ITやデジタル技術を用いて、マーケティングをはじめとしたさまざまなビジネス課題を解決していくことを指します。
現在、この「DX」という言葉は日本中のあらゆる現場におけるバズワードとなっており、地方においてはより一層注目されています。
なぜなら、地方の事業者さんは今も電話やFAX、郵送DMといったアナログな手法によって販路を拡大しているケースが多く、デジタル活用に未知の可能性を感じてくださっているからです。
しかし、これまでアナログな手法に慣れていた事業者さんの現場に、デジタルな手法をいきなりもち込んんでしまうと現場が大きく混乱します。
新しい手法を試すには、学ぶコストやツールを導入するコストだけでなく、慣れ親しんだ習慣から乗り換えるという大きな行動コストが発生するからです。
(現場によっては、PCの操作から学んでいただくといったケースなども存在します)
そのため、デジタル化を推進する側には「デジタルに慣れていない人たちが少しずつデジタルに慣れるためのサポート」が求められます。
デジタル化を進める際は、現場をいきなりまるっとデジタルに置き換えてはいけません。
これまでアナログでおこなわれていた業務を把握したうえで、優先してデジタル化すべき領域はどこなのかの当たりをつけ、事業者さんのペースに合わせて進めていくことが大切です。
そこで重要となるのが、「アナログなコミュニケーション」です。
現場に足を運ぶ、対面で話す、デジタルツールを使わずにあえて紙やホワイトボードを用いる、といったアナログな行動がデジタル化を後押しします。
デジタル化を推進するはずなのに、なぜ、アナログなコミュニケーションに力を入れるの?と疑問をもたれるかもしれません。
今回の記事ではまさに、その理由をお話しします。
デジタルを含めたマーケティング全体を支援している当社HONEが、アナログなコミュニケーションを重視するに至った理由、そこには現場に足を運ぶから見えてきた「地方ならではの事情」が関わっていました。
また、そのアナログなコミュニケーションに力を入れる中で、私たちは、現場の課題を吸い上げつつ現場の士気を上げる「ヒアリングスキル」も鍛えられることとなります。
そこでこの記事では、私たちが身につけた「HONE流ヒアリング手法」の極意についてもご紹介します。
地方のデジタル化に尽力している人たちの参考になれば幸いです。
※本記事はアドビ社のPR企画「みんなの仕事術」に参加して執筆しています。
目次
【理由1】慢性的にリソースが不足しているため、現場のモチベーションが続かない
【理由2】習慣や慣習が深く根付いているため、容易に習慣を変えられない
【理由3】そもそも、デジタルツールに慣れていないため、デジタル化に抵抗がある
1.対面で顧客の「真の課題=本音」を引き出す
2.相手の不安や疑問は、持ち帰らずに現場で一緒に解決する
3.あえて紙やホワイトボードを用いて、あらゆる課題を可視化する
資料編集の現場でも役立つAcrobat オンラインツール
地方企業でデジタル化が進みにくい3つの理由
冒頭で、地方の事業者さんの多くが「DX(デジタル化)」に興味をもっているとお話ししました。
現に私たちのもとには、地方の事業者さんからのデジタル化の問い合わせが多数届きます。
(具体的には、デジタルマーケティングに力を入れたいという内容が多いです)
しかし、実際にデジタル化を進めようとすると、幾つかの障壁の存在に気付くようになりました。
その障壁は大きく3つあります。
【理由1】慢性的にリソースが不足しているため、現場のモチベーションが続かない
地方だけの課題ではありませんが、デジタル化が進んでいない事業者さんは業務効率化が進んでおらず、人材や時間といったリソースが慢性的に不足しています。
また、地方の場合、人口減少や少子高齢化といった課題を抱えており、採用難による人材不足が深刻です。
そのため、デジタル化を推進する専任のメンバーを選びづらかったり、デジタル化に十分に時間を割けない場合があります。
その結果、デジタル化をやり遂げるモチベーションが維持できず、結局アナログな手法に逆戻りしてしまいやすいのです。
この課題を解決するためには、特定のメンバーにデジタル化を任せるのではなく、組織(チーム)全体で一丸となってデジタル化に取り組むといったことが必要になります。
そして、その「組織が一丸となる」ためには、外部からのアナログな働きかけ(アナログなコミュニケーション)こそが重要となるのです。
その理由は後述します。
【理由2】習慣や慣習が深く根付いているため、容易に習慣を変えられない
これはマーケティングの相談を受ける際に多いケースですが、事業者さんの中には、電話・FAX・郵送DMといったアナログな手法によって販路を拡大してきたケースがあります。
このアナログな手法は、電話やFAXを「送る側」だけでなく、それを受け取る側にも浸透していることが多く、事業者さん側がデジタル化を推進したとしても、顧客である「お得意さま側」が「メールで連絡されても困る」「これまでと同じようにFAXでお願いしたい」といった状況に陥る場合があります。
そういった状況において、強引にデジタル化を進めるのは得策ではありません。
昔からのお得意さまを手放すことになる可能性があるからです。
しかし、アナログな手法に頼り続けるのも、業務効率化の観点からはリスクです。
よって最終的には、事業者さん側だけでなく、お得意さま側にもデジタル化に慣れていただくという覚悟も必要です。
そして、事業者さん側がなぜデジタルツールに移行したいのかを、事業者さん自らお得意さまに説明し、納得してもらう力も必要となります。
つまり、デジタル化を推進する際には、自分たち自身がまずデジタルツールに慣れなくてはいけないという「内圧」的なプレッシャーと、デジタルに拒否反応を示すお得意さまからの「外圧」的なプレッシャーという、2つのプレッシャーと向き合わなければならないのです。
この課題を解決するためには、すべてをデジタル化するのではなく、アナログな手法もある程度残しておくという選択肢が必要になるかもしれません。
そして、良い塩梅の選択肢を考えるためには、デジタル的な思考に縛られないことが重要です。
私たちHONE社がデジタル化をアナログなコミュニケーションを通して支援する理由には、その良い塩梅を感じ取れる感度を大切にしたいということもあります。
【理由3】そもそも、デジタルツールに慣れていないため、デジタル化に抵抗がある
地方企業でデジタル化が進みにくい大きな理由として、そもそも、デジタルツールに慣れていないというものもあります。
たとえば、普段はPCをあまり使わず紙ベースで仕事をしている人に、「これからは紙は使わずにPCで仕事をしてください」と伝えると、本人は困惑してしまうでしょう。
慣れ親しんだ業務スタイルをいきなり大きく変えようとしてしまうと、最悪の場合、現場崩壊のリスクも出てきてしまいます。
そのため、デジタルツールに不慣れな人が多い現場であればあるほど、デジタルツールの強引な導入は避けるべきです。
アナログツールからデジタルツールへの切り替えを提案する際は、段階的でグラデーションを意識した提案をしましょう。
上記のように、地方の現場において実際にデジタル化を進めようとすると、さまざまな障壁の存在に気付きます。私たちHONE社では、こういった障壁を乗り越えるために、「アナログなコミュニケーション」を大切にしています。そこには事業者さんの「課題」を、対話やディスカッションといった「アナログなコミュニケーション」で丁寧にヒアリングすることも含まれます。
丁寧にヒアリングをすれば、課題の裏に潜む「真の課題=本音」を見つけられます。
そうして、「優先してデジタル化すべき領域」と「そうでない領域」とを分けるのです。
たとえば、ヒアリングをする中で「電話対応をする人が減っていて、電話対応の負荷が重くなっている」という課題が出てきたとします。その課題を払拭するためには、メールやチャットでの対応強化や、Webサイト上のFAQを増やすといった提案をおこないますが、実は「メールやチャットに移行したいが、そもそもPCを触ったり、タイピングしたりするのが苦手」といった本音が隠れているかもしれません。
オンライン会議などのデジタルツール上だと、どうしても皆の背筋がシュッと伸びてしまい、本音を言いづらい。
だからこそ、そういった「真の課題=本音」はアナログなコミュニケーションでしかつかめない場合があるのです。
それではここからは、私たちHONE社が地方の事業者さんを支援する中で磨きあげてきた「アナログなコミュニケーションにおけるヒアリング手法」をお教えします。
題して、HONE流ヒアリング手法です。
HONE流ヒアリング手法 3つの極意
私たちは、アナログなコミュニケーションにおいて、以下の3つのヒアリング手法を重視しています。
対面で顧客の「真の課題=本音」を引き出す
相手の不安や疑問は、持ち帰らずに現場で一緒に解決する
あえて紙やホワイトボードを用いて、あらゆる課題を可視化する
どれも一見シンプルな手法に思われるかもしれませんが、それぞれの手法を用いるのには明確な理由があります。
また、それぞれの手法を実行してみると予想外の効果に驚かれるかもしれません。
ひとつずつ説明していきます。
1.対面で顧客の「真の課題=本音」を引き出す
デジタルツールがこれだけ普及している現代でも、対面でのコミュニケーションでしか信頼関係を築けない場面があります。
前述したように、オンライン会議などのデジタルツール上だと、どうしても皆の背筋がシュッと伸びてしまい、本音を言ってもらいにくい。
また、オンライン会議だと、相手の表情や声のトーンの変化を敏感に感じ取ることができません。
そこで私たちは現場に直接足を運び、事業者さんと膝を突き合わせて対話することを大切にしています。
私たちが事業者さん側に訪問することで、相手との心の距離が物理的に近づきます。
その結果、事業者さんが本当は何に悩んでいるのか、本音はどうなのか、といったことに気付きやすくなるのです。
そもそも、事業者さんは言語化のプロではありません。
自分たちの課題や不安を的確に言語化できるケースは少ないのです。
だからこそ、対話によって「相手は本当は何を言いたいのか?」ということを察することが求められます。
その察知のために必要なのが、相手との「物理的な近さ」なのです。
私たちがデジタル化を進める際は、「デジタル化を進める中で、相手が漠然と感じている不安」をできるだけ察するようにします。
そのうえで、不安の正体を言語化し、課題として明文化します。
その後、事業者さんと一緒に解決の糸口を探ります。
ちなみに以下の写真は、ある企業さんのデジタルマーケティング支援におけるワークショップの一コマです。
上記の写真のように、私たちは事業者さんと一緒にワークショップを実施することがよくあります。
このようなワークショップでは、皆が集まり、同じ目的に向かって意見を交換します。
ただ、参加する皆が皆、意見を言うのに慣れているかというと、そうではありません。
そのため、第三者である私たちが中立な立場として入ることで、壁打ち的な存在を引き受けます。
壁打ち相手がいれば、仲間内だと言いづらい本音も言いやすくなります。
こうしたワークショップを実施する際も、やはりオンラインではなく、対面での実施が望ましいでしょう。
先ほども言ったとおり、相手との心の距離が物理的に近づくからです。
2.相手の不安や疑問は、持ち帰らずに現場で一緒に解決する
対面でコミュニケーションする中で、事業者さんの不安や疑問が出てくることがあります。
特に多い不安が「デジタルツール導入のメリットはわかったが、使いこなせるかわからない」といったものです。
その不安に対する対応として、最も良くないのは「一度社に戻って、良い解決策がないか探ります」という返答をしてしまうことです。
事業者さんは、ただでさえデジタル化という未知のチャレンジに不安を感じているのに、自分たちが抱いたちょっとした不安がその場ですぐに解消されないという状況は、より一層の不安材料になってしまいます。
そのため私たちHONE社では、事業者さん側からの想定質問に対する回答を用意したうえで、事業者さんが感じた不安や疑問に、できるだけその場で答えるようにしています。
先述したように、事業者さんは言語化のプロではありません。
自分たちの不安や疑問を的確に言語化できるケースは少ないのです。
だからこそ私たちは、対話によって「相手は本当は何に悩んでいるのか?」ということを言語化したうえで、「それはつまり、こういうことで悩んでいるのですよね?」と逆質問するように心がけています。
もし、一度持ち帰ってしまうと、相手の不安や疑問を精微に言語化する機会を逃してしまいます。
私たちはデジタルツール導入で発生するさまざまな不安や疑問に、できるだけその場で答えることをモットーとしています。
デジタル化に前向きになっている事業者さんのモチベーションを少しでもくじかないように支援する。
それが私たちHONE社の強みでもあります。
3.あえて紙やホワイトボードを用いて、あらゆる課題を可視化する
HONE式ヒアリング手法では、顧客と一緒に「課題を可視化」することを大切にしています。
たとえば大きな模造紙に課題をどんどん書き込んだり、ホワイトボードを用いたり。
ワークショップを実施する際は、参加者の方々に付箋紙を渡し、そこに各人の意見を書いてもらい、それらを模造紙やホワイトボードに貼り付けます。
こうすることによって、あらゆる課題を可視化でき、客観的に課題と向き合えます。
その結果、思わぬ気付きや課題解決のヒントが生まれることも多々あります。
特に普段から紙ベースで仕事をしている人たちにとっては、この手法は喜ばれます。
デジタル化を進めなければならないからといって、必ずしもデジタルツールでワークショップをする必要はないのです。
デジタルツールを使う必要はないと言いましたが、せっかくなら、このワークショップの段階で少しはデジタルツールへの抵抗を無くしてもらいたいところです。
そこで、私たちが工夫していることとして、ヒアリングやワークショップの内容をPDFで共有することを積極的に勧めています。
PDFというファイル形式は、デジタルに疎い方でも知っているような、業務におけるデファクトスタンダードです。
PDFであれば、移動中にスマートフォンなどでさくっと内容を確認できます。
また、編集もできますし、気になった内容にコメントを残すこともできます。そして何より、機密情報を守るためのパスワード保護も心強いです。
たとえば、ワークショップで使ったホワイトボードの内容をスマホで撮影し、その写真を「Adobe Acrobat オンラインツール」の「画像をPDFに変換」機能でPDFに変換すると便利です。
写真をPDF化すれば、その内容に対して、いろいろな方からのコメントを集めることができます。アップロードするだけでPDFに変換でき、電子データとして扱いやすくなります。
(また、Adobe Scanを用いれば、撮影と当時にPDF化することが可能です)
Acrobat オンラインツールが便利なのは、アプリのダウンロードが不要で、ブラウザからすぐに使えることです。
PDFへの変換やPDFの編集といった、さまざまな機能が利用できるのですが、その中で私が特にオススメしたいのが「編集機能」。この編集機能にはコメントを残せる機能も入っており、PDFファイルの共有リンクを発行することで、複数人からのコメントを集めることができます。
資料編集の現場でも役立つAcrobat オンラインツール
クライアントが用意してくれた資料が、PDFデータしかなく、Wordやパワーポイントでの編集が必要になった場合に、これらの機能を用いれば、なんとWordやパワーポイントで編集可能なデータに変換できます。
「PDF資料を作成した前任の担当者が辞めてしまって、元データがどこにあるかわからない」
という事態に役立つツールとして、ぜひおぼえておいてください。
さいごに
今回は、地方のデジタル化を支援するために必要な「アナログなコミュニケーション」のノウハウについて取り上げました。
すっかりバズワードとなった「DX(デジタル化)」という言葉ですが、DXが上手くいっている現場はそう多くないと聞きます。
特に、これまでアナログな手法に慣れていた事業者さんの現場に、デジタルな手法をいきなりもち込んでしまうと現場が大きく混乱します。
だからこそ今、「アナログなコミュニケーション」を通じたデジタル化支援が必要なのではないでしょうか。
私たちも今回ご紹介したHONE流ヒアリング手法を用いながら、地方の事業者さんとアナログな姿勢で向き合い続けたいと思います。
HONE社では地方のマーケティング課題に向き合っています
当社では地方企業さまを中心にマーケティング・ブランド戦略の伴走支援をおこなっています。
事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からのお手伝いが可能です。
私がこれまで身につけてきた知識・経験を詰め込んだ「ブランド戦略サポートプラン」は全5回のカリキュラムでマーケティングの勝ち筋を学べるものになっています。
ご興味ある方は、ぜひご検討ください。
その他、マーケティングやブランディングに関するお問い合わせも、お気軽にどうぞ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】
株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。
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