まちづくり事例8選|成功の仕組みと、地域で取り入れる条件を考える
更新日:10月17日

まちづくりの事例を探すと、アート、移住、観光、地域産業など、さまざまな取り組みが見つかります。そこで知りたいのは、「何をしたか」に加えて、自分たちの地域でも取り入れられるのか、ということではないでしょうか。
例えば、観光客が増えた事例でも、施設を整備した人、日々運営する人、地域で受け入れる人がいます。その関係まで見ていくと、参考にしたい点が具体的になります。
この記事では、全国8地域のまちづくりを、自治体や運営者の公式情報から紹介します。
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8つのまちづくり事例を比較する
以下の「検討したい条件」は、各地域の取り組みをもとにしたHONEの考察です。
地域・取り組み | 事業の仕組み | 地域で検討したい条件 |
岡山県真庭市・木質バイオマス | 木材の調達から燃料化・発電までをつなぐ | 原料の安定供給、設備投資、運営する事業者 |
宮崎県綾町・自然生態系農業 | 条例、栽培基準、認証などで取り組みを支える | 生産者との合意、基準の運用、販売先 |
香川県直島町・家プロジェクト | 集落の空き家などを改修し、作品として公開 | 建物、作品の維持管理、暮らしとの調整 |
徳島県神山町・移住と仕事 | アート、移住支援、仕事や拠点を組み合わせる | 仕事、住まい、受け入れる人の関係 |
岐阜県飛騨市・ヒダスケ! | 地域の困りごとを、参加できるプログラムにする | 作業の切り出し、受け入れ、継続する調整役 |
島根県隠岐島前地域・大人の島留学 | 一定期間、地域で暮らし働く機会をつくる | 仕事と住まい、マッチング、滞在中の支援 |
大阪府東大阪市・SEKAI HOTEL FUSE | 商店街の店や場所を、宿泊体験につなぐ | 宿泊運営、協力店、案内と精算の仕組み |
岐阜県可児市・チャンバラ合戦 | 歴史資源を参加体験や複数会場への来訪へつなぐ | 地域との関係、運営、次に訪れる理由 |
1.真庭市|木を使う産業を、エネルギーまでつなぐ
真庭市では、木材産業と結びついた木質バイオマスの取り組みが進められています。市の資料によると、真庭バイオマス発電所は2015年4月に稼働を始め、市内の木材会社、森林組合、市などが出資する会社が整備しました。[1]
施設だけで事業が成り立つわけではありません。市の資料には、木材関連企業・団体による燃料の安定供給の仕組みや、集積・チップ化を担う事業も記載されています。売電という収入の仕組みと、原料を調達する仕組みを合わせて見る必要があります。
地域で参考にしたいのは、大きな設備を建てることそのものより、地域にすでにある産業のつながりです。使われていない資源があっても、集める費用や品質、供給量が合わなければ事業にはなりません。自分たちの地域で考えるときも、資源の量と、その流れを担う人から確かめたいと思います。
2.綾町|自然を大切にする考えを、農業の基準と運用へ
宮崎県綾町は、1988年に「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定しています。その後、有機農業開発センターを開設し、基準や審査、認証方法を整えてきました。[2]
この事例は、地域の理念を掲げるだけでなく、生産や表示の仕組みまでつないでいる点が参考になります。「自然豊かな地域です」と伝える場合も、何をもってその価値を説明するかが問われます。
他地域で取り入れるなら、最初に必要なのはキャッチコピーづくりではなく、生産者と基準を共有することかもしれません。栽培の負担、認証の運用、販売先の理解までを考えることで、地域の考え方が事業の判断に使えるようになります。
3.直島町|空き家を、集落を歩く目的につなぐ
直島の本村地区で展開する「家プロジェクト」は、1998年の「角屋」から始まりました。ベネッセアートサイト直島の公式情報では、点在する空き家などを改修し、住まいの記憶を含む空間を作品化していると紹介されています。[3]
建物が一か所に集まっていないため、作品に出会うまでに集落を歩く体験が生まれます。ここからはHONEの考察ですが、空き家の活用を建物単体で終えず、周囲の風景や日常との関係まで考える視点が参考になります。
もちろん、空き家にアートを置けば同じ効果が生まれるわけではありません。作品や建物の維持管理、公開方法、住民の日常への配慮が必要です。来訪者に見せたいことと、暮らす人が大切にしていることを、継続して調整できる体制を考えたいところです。
4.神山町|移住の入口に、仕事と人のつながりを重ねる

徳島県神山町では、アートプロジェクトをきっかけに、移住推進の考え方であるワークインレジデンスや、滞在型の学び、サテライトオフィスなどへ取り組みが広がってきました。NPOグリーンバレーと町が協働し、2016年には神山つなぐ公社も設立しています。[4]
「IT企業が来たまち」として一つの施策だけを見ると、こうした積み重ねが抜け落ちます。移り住む人が何をしたいのか、地域にはどんな仕事や住まいがあるのか。その接点をつくる活動も、事例の一部です。
他地域で考えるなら、企業誘致と移住募集を別々に進めるだけでなく、来た人が仕事や地域との関係を築けるかまで見ていきたいです。拠点の整備と、それを使う人の活動を支える仕事を、一緒に検討する必要があります。
5.飛騨市|地域の手伝ってほしいことを、参加の入口にする

「ヒダスケ!」は、地域の人との体験を通じてつながり、参加後に「オカエシ」を受け取るプログラムです。公式サイトでは、地域通貨のさるぼぼコインなどを使った仕組みが紹介されています。[5]
募集されるのは、地域の日常にある作業や活動です。参加者が取り組める内容と日時、集まる場所などが具体的になっていることで、地域に知り合いがいない人にも参加の入口ができます。
地域で参考にするなら、まずは「人手が足りない」を、参加しやすい仕事へ分けてみる方法があります。ただ募集を出すだけではなく、当日の説明や道具の準備、受け入れる人との調整も必要です。何度も参加したくなる関係をつくるには、その調整を担う人の負担まで考えておきたいと思います。
6.大人の島留学|暮らしと仕事を、一定期間試せる形にする
隠岐島前地域の「大人の島留学」は、若者が一定期間、島で暮らし働く制度です。公式サイトでは、運営を担う財団、行政、受け入れ事業者、参画者の役割を紹介し、仕事のマッチングや研修、住まいなどを組み合わせています。[6]
ここで参考になるのは、「地域に来てください」という募集の先に、滞在中の仕事と暮らしが用意されていることです。観光で好きになった地域でも、働き方や住まいが分からなければ、長く関わる判断は難しくなります。
同じ取り組みを考える際は、受け入れる人数から決めるより、仕事を任せられる事業者と生活面を支える体制を確かめたいです。また、一定期間の滞在であれば、終了後もその地域とどんな関わり方を続けられるかを考える余地があります。
7.SEKAI HOTEL FUSE|宿泊の体験を、商店街へ広げる

大阪・布施のSEKAI HOTELは、商店街に点在する客室と地域の店をつなぎ、まち全体を楽しむ宿泊体験を提供しています。公式サイトでは、空き家を改修した客室、地域を歩くための地図やパスなどの仕組みを紹介しています。[7]
宿泊の価値を客室の中だけで考えず、まちの店や人との接点まで広げている点が特徴です。宿泊者にとっては地域で過ごす理由になり、お店にとっては新しい来店のきっかけになります。
地域で応用するなら、すぐにホテルを増やす必要はありません。既存の宿と近隣の店で、営業時間や利用方法を共有することからも始められます。紹介した日に店が開いているか、初めての人でも利用しやすいかなど、案内の先まで確認することが欠かせません。
8.可児市|歴史を知る入口に、体験と次の来訪理由を置く

岐阜県可児市では、市内のイベントと組み合わせた「チャンバラ合戦-可児市の乱-」が案内されています。市の公式ページでは、参加に応じたバッジや、複数日の参加につながる企画も紹介されています。[8]
歴史や城跡に詳しくない人にとっても、体験をきっかけに地域の資源を知る入口になります。ここからは応用の視点ですが、一回の来場だけでなく、次に訪れる理由を設計する考え方が参考になります。
ただし、イベントの開催と地域への経済効果は同じではありません。地域の店を利用したか、城跡へ足を運んだか、その後も訪れたかを別に確認することで、企画を続ける理由や改善点を考えられます。
成功事例から取り入れるのは、手法と、その手法が働く条件
事例を見ると、「アートを使おう」「移住者を募集しよう」と手法に目が向きます。ただ、その手法が機能する条件は、地域によって異なります。
例えば、観光で地域にお金が落ちるには、訪問先だけでなく、営業する店、予約できる体験、移動の方法などが必要です。地域に人を呼ぶ取り組みなら、受け入れる人が無理なく続けられるかも考えなければなりません。
自分たちの地域で検討するときは、次の順番で整理してみてください。
誰に、どんな変化が起きてほしいのか
その変化につながりそうな仕組みは何か
地域の中で、誰が運営を担うのか
始める費用と、続ける費用をどう確保するか
何を記録すれば、取り組みの良し悪しを判断できるか
成果の指標は、観光客数や移住者数だけとは限りません。参加した人が再び来る、地域の事業者に収益が残る、新しい担い手が仕事を引き継ぐ。地域が目指す変化に合う指標を選ぶことで、事例の使い方も変わります。
地域にすでにあるものから、始め方を考える
同じ規模の施設や、同じ予算を用意できなくても、事例から取り入れられる考え方はあります。地域の困りごとを参加できる仕事にする、宿泊者と近くの店をつなぐ、地域の考えを事業の基準にする。目の前の人や場所に合わせることで、始め方は見つかります。
HONEも、ばあちゃん喫茶の開設準備など、現場に関わりながら地域事業に取り組んでいます。地域の可能性を、実際に続けられる事業へつなげたい方は、事業伴走プランをご覧ください。
目的と活動、成果のつながりを整理する際には、ロジックモデルの解説と作成キットもお使いいただけます。
出典・参考
[5] ヒダスケ!「ヒダスケ!とは?」
[6] 大人の島留学「制度について」
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。



















