「破壊的イノベーション論」の提唱者である、ハーバード・ビジネス・スクール教授、クレイトン・M・クリステンセンの最新刊を読んでみました。
備忘録としてここに書き残しておきます。
ジョブ理論とは?
ジョブ理論とは、ユーザーのジョブ(欲していること)を雇用する(それに応えるプロダクト・サービス)、という考え方です。
例えば、
ジョブ例: 通勤中、私の目を覚まさせ、運転に専念させるものがほしい。さらに、10時から始まる会議のあいだに空腹を感じないように、小腹を満たせるものがいい。 雇用例: ミルクシェイク、バナナ、ドーナツ、ベーグル、スニッカーズ、コーヒー
ジョブ理論の定義
ジョブ理論の定義として、著者は以下の2点を挙げています。
①「ジョブ」を形容詞や副詞で説明しない └例えば“便利な”や“もっと正直に”はジョブではない └ジョブは“動詞と名詞”で表現ができる ②「ジョブ」には適切な抽象度が必要 └求めるプロダクトの構造が同種のプロダクト群しか満たされない場合、 そこに片づけるべきジョブはない └ジョブを片付ける候補はすべて異なる製品カテゴリに属している
↑少しまわりくどい言い方ですが、要するにユーザーが「困っていること」がジョブで、それをプロダクト・サービスで解消できるものが「ジョブに雇われる」という言い方をしていると解釈しました。
顧客がなぜそのプロダクトを買っているのか?
第1部:ジョブ理論の概要部分で語られている「ミルクシェイク」の例は有名なので知っている人も多いかもしれません。
プロダクトが売れたから、よし!ではなく、なぜそのプロダクトは売れているのか?具体的にはどんなジョブ(顧客の困っていること)を解消しているのか?に目を向けることこそがジョブ理論の第1歩だとしています。
ミルクシェイクの事例は↑の記事に詳細が載っているため、ここでは割愛しますが、「朝にミルクシェイクが売れている理由」は味やトッピングではなく、「20~30分程度の通勤時間の暇つぶし」であったというのはわかりやすい話ではないかと思います。
つまりどれだけプロダクトそのものを質を上げていったとしても「暇つぶし」を目的に購入している人にとって売上を伸ばすことができないからです。
顧客はどんな状況にいるのか?
ジョブの定義には「状況」が含まれます。
例えば以下のような要素です。
マクロ視点
ライフステージ
誕生日、晴れの日、卒業、入学、出産、引っ越し、異動、昇進 など
家族構成
既婚、未婚、離婚、親の介護、乳幼児がいる など
財政状況
給料日前・後、ボーナス前・後、転職前・後、昇進前・後 など
ミクロ視点
今どこにいるか
自宅、車内(車・電車)、会社 など
誰と一緒か
何をしているときか
30分前は何をしていたか
次は何をするつもりか
「どんな」ユーザーが、「どんなときに」接点を持つか、を想定したコミュニケーションが取れているかどうかがとても大事になってきます。特定の商品・サービスでジョブを雇用してもらうためには、顧客の状況を逆算した売り方をしなければならないでしょう。
顧客が望む進歩とはなにか?
顧客が成し遂げようとしている進歩はなにか? 例えば、歯磨き粉を雇った人にとってのジョブとはどんなものでしょうか?
「仕事やプライベートでとびきりの第一印象を与えたいため」なのか「虫歯の未然予防のため」なのかによって、どこで・誰に・どんな魅力を・どんな伝え方でするかは、全く違ってくるはずです。
進歩を検討するポイント
その人が成し遂げようとしている進歩はなにか
苦心している状況はなにか
進歩を成し遂げるのを阻む障害物はなにか
不完全な解決策でガマンし、埋め合わせの行動をとっていないか
よりよい解決策をもたらす品質の定義はなにか
隠れた競合「無消費」とは?
企業は他社から市場シェアを奪い取ることばかりに気をとられがちで、目に見えない需要が大量に眠っている場所のことは考えないと言われています。
事例:エアビーアンドビー
例えばエアビーアンドビーでは「借り手であるゲストの40%」はエアビーアンドビーがなければ旅行に出かけなかったか、家族の家に泊まった、と回答しています。 また貸し手であるホストもほぼ全員が、エアビーアンドビーが出現する前は、一部屋だけにいろ、家一軒にしろ、人に貸そうなどとは思ったこともなかったでしょう。つまりエアビーアンドビーはユースホステルや旅館と競合するのと同時に、無消費とも競ってきた、ということです。
マーケティングフレームで言うと所の「3C」のコンペティターや、「5F」の代替品の脅威などにも、この「無消費」が入ってくるのかもしれません。
「無消費」を前提とした事例
本書の中で「無消費」を前提とした好事例があったのであわせて明記しておきます。
▼事例 CVSミニッツ・クリニック(旧クイックメディックス) └予約なしの患者をその場で診察できる └33の州で1,000を超えるCVSミニッツ・クリニックの店舗がある └主には大手ドラッグストアチェーンのCVS薬局の中に設けられている 分かり切った病気でも病院の待合室で延々と待ちたくない、という顧客が、病院に行くことを雇用しない(無消費になってしまう)心理を逆についた素敵なサービスだと思います。
ググらせるブランドになるためには?
スターバックスやグーグルなどパーパスブランドになった数多くのブランドはたいして広告を打っていない。にもかかわらず、顧客に「ググらせる」強い力を持っています。
これらが成功した要因は、それぞれが明快な目的に結びついていたからだ、と結論づけています。
スターバックスであれば「サードプレイス(第3の居場所)を提供している」こと、グーグルであれば「どんな言葉でも正確な回答が得られること」など、プロダクト・サービスそのものが明確なジョブに対する雇用となっています。
これも逆に考えると、顧客にとって「どんな目的で使って欲しいか」を考えてプロダクト・サービスを提供しなければならない、ということです。
ジョブ理論を組織化するためには?
ではジョブ理論を組織の中で浸透させるためにはどんなメリットがあるのか?について、以下のように書かれています。
ジョブ理論:組織化のポイント
明確な目的を共有し、意思決定を分散できる—組織の全社員が、ジョブにフォーカスした適切な決断を、創造力豊かに、しかも自律的に下すことができる。
重要なことに資源を配分し、重要でないことからは資源を開放できる。
社員のやる気を引き出し、彼らが好きなことをできるような文化をつくり上げる
顧客の進歩、社員の貢献、意欲など、重要な点を測定できる。
顧客の片づけるべきジョブに集中すると、単発的な改善のアイデアにとどまらず、持続可能でブレないイノベーションの種が生まれると思います。
そして自社ブランドの解消すべきジョブが共有されることで、場当たり的なシューティングオペレーションをしなくても済むため、マネージャーにとっても組織を運営していくのがとても簡単になるんじゃないかとも感じました。
↑のジョブが社員一人ひとりにとってブレていると「売上を上げたい」「誰にも迷惑をかけたくない」「ミスなく1日を終えたい」などの内向きなミッションに終始し、チームに統一感はなくなってしまいます。
だからこそ会社・組織の目的を共有・統一し、それに向けてであればある程度の権限をメンバーに移譲させる、というのは組織に目的を浸透させる上でとても大事なことだと思います。
顧客の人生を向上させているか?
ここまで、企業側のプロダクト・サービスは「顧客にとって雇用されるべきジョブ」とはどんなものか?そのために企業・組織はどう変わっていくべきか?について記載しました。
しかし大切なのはジョブとして雇用されることだけではなく、そのジョブで本当に顧客の人生を向上させられているかどうか?だと思います。
ジョブとして雇用されるまでの数値はある程度測定できると思います。しかし、雇用してもらった後のことはなかなか分からない。だからこそ購入後の顧客やファンと継続的な関係を築くこと、というのはとても大事な設定になってくるのだと思います。
↑となると、その次はファンベース・ファンマーケティングに繋がってくるのかな、と思っています。
ファンベースとは
ファンを大切にしファンをベースにして(ベースには土台や支持母体の意味があります)、企業や商品の持つ価値や売上げを中長期的に伸ばしていこうとする考え方です。 私はファンのことを、企業や商品の持つさまざまな価値を支持している人と定義しています。
以上、ジョブ理論の中で個人的に気なった部分をまとめてみました。
HONE社提供:マーケティングリサーチプランについて
「自分たちが進むべき市場を決め、勝ち筋を見つける」。
商品開発や新規事業開発における一丁目一番地は「市場を知る・顧客を知る」ことだと思っています。市場規模はどのくらいか?どんな消費者が購入しているのか?どんなことに価値を感じているか?具体的にどのくらいお金を使っているか?を把握し、アイデアに根拠を作ることができます。
HONEでは「仮説構築〜調査設計〜実施〜ローデータの提供〜レポーティング(示唆出し)」までをパッケージ化いたしました。
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私がこれまで学んできた経営学、マーケティング/ブランド戦略に加え、この数年間、地方での現場で対峙してきた経験を詰め込みました。
単にリサーチを行うのではなく、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)〜マーケティング戦略〜コンテンツ・クリエイティブ制作に一貫性を持たせた調査設計を行わせていただきます。
弊社ミッションは「日本の地方にマーケティングを実装すること」です。
田舎だから、零細企業だから、という理由でマーケティングを実行することを諦めてほしくないと思っています。ありとあらゆる地域にマーケティング思考・戦略が実装されればメイドインジャパンはもっと強くなれるはず。
だから、地方に点在するブランドが手の届きやすい価格でサービスを提供することを第一に考えています。都内のマーケティング会社に比べると提供価格は安いかもしれませんが、地方にとってマーケティングに予算を投じるということはとても稀です。
これからも地方にマーケティングを実装すべく、日々奔走していきたいと思っています。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
【記事を書いた人】
Takato Sakurai / 桜井 貴斗
HONE Inc. 代表取締役/マーケター
札幌生まれ、静岡育ち。大学卒業後、大手求人メディア会社で営業をしたのち、同社で新規事業の立ち上げ等に携わる。「売り手都合の営業スタイル」に疑問を感じていた矢先に、グロービス経営大学院にてマーケティングに出会い衝撃を受ける。その後、新たな新規事業の立ち上げを経て、2021年に独立。現在はクライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営などを手掛けている。
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