“支払意思額(WTP)”とは?〜WTP(Willingness To Pay)起点で考える、地域ブランドの価値と価格のつくり方〜
- 桜井 貴斗

- 6 日前
- 読了時間: 10分

「価格を上げたい。でも上げたら売れなくなるのが怖い。」
ブランド運営・事業を営む方なら、一度はこの壁にぶつかったことがあると思います。
値上げは、ただの“金額変更”ではありません。
その根底にはいつも「お客さんが、いくらまでなら喜んで払ってくれるか」という問いがあり、ここを間違えてしまうと、どれだけ丁寧に品質を上げても、価格は上げられません。
そこで重要になるのが、マーケティング用語でいう「支払意思額(WTP:Willingness To Pay) 」です。
本記事では、WTPの定義と使い方、さらに業界別の事例を通して、地域ブランドにおける「価値と価格の設計」を整理していきたいと思います。
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目次
① 価格改定(値上げ・値下げ)
② 商品設計(オプション・バンドル)
③ カテゴリー移動(財布を変える)
① インタビュー(定性調査)
② アンケート(定量調査)
③ 実購買データ
A. 観光・宿泊:WTPは「非日常」と「記憶」で高まる
B. 農産物・食品:WTPは「用途」と「ギフト性」で高める
C. 嗜好品・工芸品:WTPは「ストーリー」と「所有価値」で決まる
D. 地域サービス:WTPは「継続」と「安心」が決め手
支払意思額(Willingness To Pay)とは何か?
支払意思額(WTP=Willingness To Pay)とは、顧客が「この商品・サービスなら、この金額までなら喜んで支払える」と考える上限額のことです。
言い換えると、顧客視点での“価値の金額換算”とも言えます。
ここで重要なのは、WTPは「原価」や「市場相場」から決まるものではなく、顧客が感じる価値によって決まるという点です。
つまり、地域事業者が価格を決める時に重要なのは、
原価に利益を上乗せする
競合と価格を合わせる
だけではなく、顧客はこの価値に、いくらまで払うのか?という“価値から価格を逆算する視点”です。

なぜWTP(Willingness To Pay)が重要なのか?
WTPを理解する最大のメリットは、「値上げの議論」が“得体の知らない怖さ”から“戦略設計”に捉え方が変わることです。
値上げに失敗するケースとは一体どんなケースなのか?というと、大きく以下の2つに分かれると思っています。
価値を上げたつもりでも、顧客のWTPが上がっていない(価値が伝わっていない)
そもそも顧客が払うお財布(カテゴリー)が違う
というケースです。
つまり、商品・サービスの価値を高めることと同時に、顧客のお財布の限度額(WTP)を知り、どの財布から支払ってもらえるか?を設計することが重要になります。
特に「どの財布(予算)から支払ってくれるか?」は、地域でブランド運営をしている方にとっては特に重要です。
例えば、日常の“食費”は「月5万円」と決まっていても、非日常の“旅行費”は「長期連休の月は10万円」と可変する場合、食費ではなく旅行費の中から食事の予算をとりにいく、というようなイメージです。

WTPの具体的な使い方
WTPは、次の3つの意思決定で特に役立ちます。

① 価格改定(値上げ・値下げ)
顧客のWTPが価格より十分高い場合、値上げしても購入は落ちにくいと判断します。逆に現状の値付けがWTPを超えているなら、どれだけ品質が良くても売れません。
② 商品設計(オプション・バンドル)
WTPは“全員が同じ価格設定ではない”ことが重要です。同じ商品でも「こだわり層」と「お試し層」ではWTPが異なります。そのため、松竹梅の価格帯をつくる/オプションをつける/セット化する、などで売上を伸ばせる可能性があります。
③ カテゴリー移動(財布を変える)
「食費のお財布」では3,000円が高く感じても、「旅行のお財布」では3,000円は安く感じることがあります。同じ商品でも、“どんなカテゴリーとして買ってもらうか”でWTPは変わります。
WTPはどう測るのか?
WTPの測定方法は複数ありますが、事業者さんが取り組みやすい順に整理すると次の通りとなります。

① インタビュー(定性調査)
「買うとしたらいくらまで払えるか?」を顧客となりうる人に直接聞く方法です。ただし、人は“本音より低く言う”傾向もあるため、「なぜそう思うのか」「誰に買ってほしいのか」など背景まで掘るのがコツです。
② アンケート(定量調査)
選択式で価格を複数出し、「安い/妥当/高いけど買う/高すぎる」などを取る方法が有効です。集計は最低でもn400程度を集められるとより妥当性の高いデータになります。
③ 実購買データ
ECで価格を変えてテストをしてみる、イベントで価格帯を変えて出展してみるなど、“実際のデータ”が最も有効であり、信ぴょう性が高いです。
業界(財布)別に見るWTPの違いと事例
WTPが変わる最大要因の一つは、「支払いがどのカテゴリ財布から出るか」です。ここでは4つの業界事例をご紹介したいと思います。

A. 観光・宿泊:WTPは「非日常」と「記憶」で高まる
宿泊は比較されやすい一方で、“旅の体験価値”として設計できればWTPは伸びる業界です。
たとえば、同じ1泊でも、
ビジネスホテルのような「寝るための場所」→ 価格比較されやすい
旅館や観光ほてるのような「土地を体験する場」→ 価格が上がる
と価格変動の理由が異なります。
この差を生むのは、部屋の広さではなく、“ここでしかできない経験”です。
事例:ディズニー
宿泊や入園料は高いのに、払う人が絶えないのは“思い出を買っている”から(価格ではなく記憶価値でWTPが成立している)。
地域の事例:地域での文化体験が組み込まれた宿
漁師町で「朝の漁体験+朝食」などをセットにすると、同じ宿泊でも“旅行のお財布”から支払われることになり、WTPが上がる
B. 農産物・食品:WTPは「用途」と「ギフト性」で高める
食品は日常の食費のお財布だと、WTPが比較的低くなります。しかしここで効くのが「用途の変換」です。
日常食材 → WTPが低い
贅沢品(ご褒美) → WTPが上がる
贈答品 → WTPがさらに上がる
事例:スターバックス
コーヒーの原価ではなく、“自分にとってのご褒美”としてWTPが成立
地域の事例:産直品のギフト化
同じお茶でも、日常用は1,000円が限界でも、ギフト箱+ストーリー+季節性を加えると3,000〜5,000円のWTPが生まれる(お財布が「食費」から「ギフト費」に移動するため)

C. 嗜好品・工芸品:WTPは「ストーリー」と「所有価値」で決まる
嗜好品・工芸品は価格比較ではなく、“欲しい理由”があるかどうかでWTPが大きく変わります。
事例:Apple
スペック比較ではなく、「自分がどうありたいか」「世間からどう見えるか」に価格が支払われている
地域の事例:地域工芸の“生活道具化”
工芸品を「オブジェ」ではなく「日常で使う道具」として提案し、さらに作り手の背景や土地の文脈を伝えることで、WTPが“モノ”から“情緒と機能を両立したモノ”へ移動する
D. 地域サービス:WTPは「継続」と「安心」が決め手
地域の体験サービスやコミュニティ型サービスは、単発だとWTPが低い一方で、「継続の価値」をつくると強くなります。
事例:月額制の体験・定期便
毎月の農産物定期便や地域体験の会員制は、“安心して楽しめる”という価値でWTPが成立しやすい

まとめ:WTPは「値上げの技術」ではなく「価値のメタ認知」
WTPを理解すると、価格は「怖いもの」ではなくなります。
なぜなら、価格とは顧客が価値を金額に翻訳した結果であり、その翻訳を設計できるからです。
地域ブランドが今すぐ始めるべき3つのこととは、
自社の価値を再定義する(どんな価値があるのか言語化する)
どの「お財布」を狙うのかを設計する
そのカテゴリーのお財布のWTPを把握する
この3点です。
ぜひ実践してみてください。

HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。
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地方に必要なのは、「地域理解」
こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。

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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。








