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“支払意思額(WTP)”とは?〜WTP(Willingness To Pay)起点で考える、地域ブランドの価値と価格のつくり方〜

  • 執筆者の写真: 桜井 貴斗
    桜井 貴斗
  • 6 日前
  • 読了時間: 10分
【独自調査】マーケティングの胡散臭さの正体とはなんなのか?──マーケティングに関する実態調査について(2025年12月)】

「価格を上げたい。でも上げたら売れなくなるのが怖い。」

ブランド運営・事業を営む方なら、一度はこの壁にぶつかったことがあると思います。


値上げは、ただの“金額変更”ではありません。

その根底にはいつも「お客さんが、いくらまでなら喜んで払ってくれるか」という問いがあり、ここを間違えてしまうと、どれだけ丁寧に品質を上げても、価格は上げられません。


そこで重要になるのが、マーケティング用語でいう「支払意思額(WTP:Willingness To Pay) 」です。


本記事では、WTPの定義と使い方、さらに業界別の事例を通して、地域ブランドにおける「価値と価格の設計」を整理していきたいと思います。



株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料

目次


支払意思額(Willingness To Pay)とは何か?


支払意思額(WTP=Willingness To Pay)とは、顧客が「この商品・サービスなら、この金額までなら喜んで支払える」と考える上限額のことです。


言い換えると、顧客視点での“価値の金額換算”とも言えます。


ここで重要なのは、WTPは「原価」や「市場相場」から決まるものではなく、顧客が感じる価値によって決まるという点です。


つまり、地域事業者が価格を決める時に重要なのは、


  • 原価に利益を上乗せする

  • 競合と価格を合わせる


だけではなく、顧客はこの価値に、いくらまで払うのか?という“価値から価格を逆算する視点”です。


なぜ価格設定は難しいのか?
なぜ価格設定は難しいのか?


なぜWTP(Willingness To Pay)が重要なのか?


WTPを理解する最大のメリットは、「値上げの議論」が“得体の知らない怖さ”から“戦略設計”に捉え方が変わることです。


値上げに失敗するケースとは一体どんなケースなのか?というと、大きく以下の2つに分かれると思っています。


  • 価値を上げたつもりでも、顧客のWTPが上がっていない(価値が伝わっていない)

  • そもそも顧客が払うお財布(カテゴリー)が違う


というケースです。


つまり、商品・サービスの価値を高めることと同時に、顧客のお財布の限度額(WTP)を知り、どの財布から支払ってもらえるか?を設計することが重要になります。


特に「どの財布(予算)から支払ってくれるか?」は、地域でブランド運営をしている方にとっては特に重要です。


例えば、日常の“食費”は「月5万円」と決まっていても、非日常の“旅行費”は「長期連休の月は10万円」と可変する場合、食費ではなく旅行費の中から食事の予算をとりにいく、というようなイメージです。


「どの財布(予算)から支払ってくれるか?」
「どの財布(予算)から支払ってくれるか?」


WTPの具体的な使い方


WTPは、次の3つの意思決定で特に役立ちます。


WTPを事業の意思決定に活かす3つの場面
WTPを事業の意思決定に活かす3つの場面

① 価格改定(値上げ・値下げ)


顧客のWTPが価格より十分高い場合、値上げしても購入は落ちにくいと判断します。逆に現状の値付けがWTPを超えているなら、どれだけ品質が良くても売れません。


② 商品設計(オプション・バンドル)


WTPは“全員が同じ価格設定ではない”ことが重要です。同じ商品でも「こだわり層」と「お試し層」ではWTPが異なります。そのため、松竹梅の価格帯をつくる/オプションをつける/セット化する、などで売上を伸ばせる可能性があります。


③ カテゴリー移動(財布を変える)


「食費のお財布」では3,000円が高く感じても、「旅行のお財布」では3,000円は安く感じることがあります。同じ商品でも、“どんなカテゴリーとして買ってもらうか”でWTPは変わります。



WTPはどう測るのか?


WTPの測定方法は複数ありますが、事業者さんが取り組みやすい順に整理すると次の通りとなります。


WTPはどう測るのか?
顧客のWTPはどう測るのか?

① インタビュー(定性調査)


「買うとしたらいくらまで払えるか?」を顧客となりうる人に直接聞く方法です。ただし、人は“本音より低く言う”傾向もあるため、「なぜそう思うのか」「誰に買ってほしいのか」など背景まで掘るのがコツです。


② アンケート(定量調査)


選択式で価格を複数出し、「安い/妥当/高いけど買う/高すぎる」などを取る方法が有効です。集計は最低でもn400程度を集められるとより妥当性の高いデータになります。


③ 実購買データ


ECで価格を変えてテストをしてみる、イベントで価格帯を変えて出展してみるなど、“実際のデータ”が最も有効であり、信ぴょう性が高いです。



業界(財布)別に見るWTPの違いと事例


WTPが変わる最大要因の一つは、「支払いがどのカテゴリ財布から出るか」です。ここでは4つの業界事例をご紹介したいと思います。


業界(財布)別に見るWTPの違いと事例


A. 観光・宿泊:WTPは「非日常」と「記憶」で高まる


宿泊は比較されやすい一方で、“旅の体験価値”として設計できればWTPは伸びる業界です。


たとえば、同じ1泊でも、


  • ビジネスホテルのような「寝るための場所」→ 価格比較されやすい

  • 旅館や観光ほてるのような「土地を体験する場」→ 価格が上がる


と価格変動の理由が異なります。


この差を生むのは、部屋の広さではなく、“ここでしかできない経験”です。



事例:ディズニー

宿泊や入園料は高いのに、払う人が絶えないのは“思い出を買っている”から(価格ではなく記憶価値でWTPが成立している)。


地域の事例:地域での文化体験が組み込まれた宿

漁師町で「朝の漁体験+朝食」などをセットにすると、同じ宿泊でも“旅行のお財布”から支払われることになり、WTPが上がる



B. 農産物・食品:WTPは「用途」と「ギフト性」で高める


食品は日常の食費のお財布だと、WTPが比較的低くなります。しかしここで効くのが「用途の変換」です。


  • 日常食材 → WTPが低い

  • 贅沢品(ご褒美) → WTPが上がる

  • 贈答品 → WTPがさらに上がる


事例:スターバックス

コーヒーの原価ではなく、“自分にとってのご褒美”としてWTPが成立


地域の事例:産直品のギフト化

同じお茶でも、日常用は1,000円が限界でも、ギフト箱+ストーリー+季節性を加えると3,000〜5,000円のWTPが生まれる(お財布が「食費」から「ギフト費」に移動するため)


体験と用途で価値を再定義する


C. 嗜好品・工芸品:WTPは「ストーリー」と「所有価値」で決まる


嗜好品・工芸品は価格比較ではなく、“欲しい理由”があるかどうかでWTPが大きく変わります。


事例:Apple

スペック比較ではなく、「自分がどうありたいか」「世間からどう見えるか」に価格が支払われている


地域の事例:地域工芸の“生活道具化”

工芸品を「オブジェ」ではなく「日常で使う道具」として提案し、さらに作り手の背景や土地の文脈を伝えることで、WTPが“モノ”から“情緒と機能を両立したモノ”へ移動する



D. 地域サービス:WTPは「継続」と「安心」が決め手


地域の体験サービスやコミュニティ型サービスは、単発だとWTPが低い一方で、「継続の価値」をつくると強くなります。


事例:月額制の体験・定期便

毎月の農産物定期便や地域体験の会員制は、“安心して楽しめる”という価値でWTPが成立しやすい


所有と継続で価値を深める


まとめ:WTPは「値上げの技術」ではなく「価値のメタ認知」


WTPを理解すると、価格は「怖いもの」ではなくなります。

なぜなら、価格とは顧客が価値を金額に翻訳した結果であり、その翻訳を設計できるからです。


地域ブランドが今すぐ始めるべき3つのこととは、


  • 自社の価値を再定義する(どんな価値があるのか言語化する)

  • どの「お財布」を狙うのかを設計する

  • そのカテゴリーのお財布のWTPを把握する


この3点です。


ぜひ実践してみてください。


地域ブランドが今すぐ始めるべき3つのこと
地域ブランドが今すぐ始めるべき3つのこと

HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。


日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。


地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。


HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。


▼HONEにできること


語られていない価値の「骨」を探す

商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。


現場に入り、五感を使って「骨」を磨く

戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。


手を動かしながら、「骨」を強くする

支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。


文化となる「骨格」を、未来へ残す

目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。


▼HONEにできること


▼HONEの強み


01/一貫サポート

戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。


02/現場主義

デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。


03/全国実績

北は北海道、南は沖縄まで、一次産業から観光、教育、行政、ベンチャー、スタートアップ、アトツギなど、多種多様なプロジェクトに携わってきました。たくさんの地域を見てきたからこそ、それぞれの良さに気づくことができます。そして土地に根付くその事業の「らしさ」を、より鮮明に見つけることができます。全国各地で積み重ねた知見を、次の挑戦に活かします。


04/産学官連携

企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。


▼HONEの強み


なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。


制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。


なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


地方に必要なのは、「地域理解」


こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。


地方に必要なのは、「地域理解」

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【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

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