ジョブ理論は現代の課題にも通用するのか?-実戦で使えるフレーム付き-
- 桜井 貴斗

- 10月2日
- 読了時間: 9分

ジョブ理論とは「破壊的イノベーション論」の提唱者である、ハーバード・ビジネス・スクール教授、クレイトン・M・クリステンセンの著書です。
また本書に登場する「ミルクシェイク」の話はとても有名ですが、ミルクシェイクの話だけがジョブ理論ではありません。
本記事ではジョブ理論のエッセンスを振り返りつつ、ジョブ理論以降(2017年〜)のトレンドや機能的・感情的・社会的ジョブの3タイプに基づくフレームワークを用いて、日々の活動に役立つ実践的な視点をまとめました。
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目次
Netflixのライバルはワイン?異業種との競争
ZOOM – リモートワークのジョブを雇う
ChatGPTが叩き台役 – 生成AIがもたらす新たなジョブ解決
ジョブ理論の種類(機能的ジョブ、感情的ジョブ、社会的ジョブ)
ステップ1:状況とジョブを特定する
ステップ2:競合と代替を横断的に考える
ステップ3:ジョブを3つの視点で整理する
ステップ4:仮説を検証し、学習を継続する
ジョブ理論とは何か
ジョブ理論を初めて聞く方のためにもまず、ジョブ理論とは何か?から説明します。
ジョブ理論
ジョブ理論は、特定の状況で人が成し遂げたい結果を「ジョブ」と呼び、顧客がそのジョブを片づけるために製品やサービスを「雇う」という考え方です。

ジョブは形容詞や副詞では説明せず、「動詞+名詞」で表現すること、そして同種の製品群に閉じない抽象度で考えることがポイントとされています。例えば「朝の車通勤の退屈を紛らわせる」というジョブに対してはバナナやドーナツではなく、ミルクシェイクが選ばれる、といった格好です。
製品の品質を高めても、顧客のジョブを捉えていなければ売り上げは伸びません。そのため、顧客のライフステージや家族構成、財政状況といったマクロ要因に加え、今どこで何をしているか、誰といるかといったミクロ要因も含めて捉えていきます。
こうした状況の理解が、いつ・どこで・誰に・どのような魅力を届けるべきかを決める鍵になります。

現代トレンドで読み解くジョブ理論
上記のようにジョブ理論の代表的な事例はミルクシェイクですが、なぜ朝の通勤客がミルクシェイクを購入し、他の商品を選ばなかったのでしょうか。
結論、バナナやドーナツは手が汚れたりすぐ食べ終わってしまうため「解雇」されたのです。大切なのはドライブ中の退屈を紛らわし、空腹感を抑えるもの、でした。
それでは現代に置き換えるとどのような事例が考えられるでしょうか?いくつか考えてみました。
Netflixのライバルはワイン?異業種との競争
動画配信サービスのNetflixはストリーミング事業に転換する際、「家でリラックスした時間を過ごしたい」というジョブを仮定します。
競合は他の動画ストリーミングサービス(Amazonプライムビデオ・YouTubeなど)だけではなく、オンラインゲームやお酒などのあらゆる「リラックスできる手段」が考えられそうです。

ジョブ理論では異なる市場の製品や体験もライバルになります。顧客が求める便益(例えば自宅で気兼ねなく楽しむこと)に焦点を当てれば、提供価値の設計がより明確になります。
ZOOM – リモートワークのジョブを雇う
パンデミックによって拡大したリモートワークでは、「(オフィス以外の)離れた場所でも会議を行いたい」というジョブが生まれました。
ビデオ会議ツールのZOOMはコロナ禍よりサービス利用が拡大し、安定した音声・映像とセキュリティを提供することでこのジョブを解決し、他のビデオ通話サービスを凌ぐ成長を遂げています。
商品名が代名詞(オンラインミーティングをしよう、ではなくズームしよう)になるほど普及した本例は、顧客のジョブに対して最適な解決策を提示できた証拠といえるでしょう。

UberとiPhone – 深いジョブへの洞察
配車サービスUberは「いつでも、どこでも、簡単かつ確実に目的地まで移動したい」という深いジョブを捉えました。
スマホアプリで近くの車を呼び、到着予定時間や料金を事前に把握できる仕組みやキャッシュレス決済などを設計し、タクシー業界が解決できていなかった不安や不便を取り除いたのです。結果として、人々の移動のあり方を変えるほどのインパクトを与えました。

同様に、AppleのiPhoneは「通話」だけでなく「いつでもどこでも情報やエンタメにアクセスし、生活を豊かにしたい」という複数のジョブを統合したデバイスです。
音楽プレーヤーやカメラ、インターネット通信を一体化し、App Storeを通じてユーザーのジョブに合わせて機能を拡張できるようにしたことで、単なる携帯電話以上の価値を提供しました。

ChatGPTが叩き台役 – 生成AIがもたらす新たなジョブ解決
生成AIの台頭は、ジョブ理論の活用にも変化をもたらしています。
ChatGPTを筆頭とした生成AIのビジネス活用によってデータリサーチ、分析、企画案のアイデア出しなどの「いつでも・どこでも・手軽に叩き台をつくってくれる」というジョブを担っています。

AIを活用することで、顧客のジョブを満たす企画立案と効果測定を効率化できる点が新しいトレンドとなっています。
ジョブ理論を見つけるには?
ここまで読んで「自分たちの業務のジョブ理論を見つけていきたい」という思いに駆られ始めてきた頃だと思いますので、ここからはジョブ理論の種類と具体的な活用方法について解説していきたいと思います。
ジョブ理論の種類(機能的ジョブ、感情的ジョブ、社会的ジョブ)
ジョブには大きく分けて機能的ジョブ、感情的ジョブ、社会的ジョブの3種類があります。
機能的ジョブは「○○するために△△したい」といった具体的な成果を指し、感情的ジョブは「安心したい」「誇りを持ちたい」といった気持ちや心理的ニーズを満たし、社会的ジョブは「仲間とつながりたい」「評価されたい」といった社会的な役割を満たすためのニーズを捉えます。

3つの種類を俯瞰的に見ることで、顧客が製品やサービスを「雇う」際に、どのようなジョブを抱えているかを把握できることにあります。
機能的、感情的、社会的ジョブは互いに重なり合うこともあり、どれか一つだけに応えるのではなく総合的に進歩を支援することが重要です。日々の業務の中で顧客インタビューやデータ分析を行う際は、まずこの3つの視点でジョブを分類し、それぞれのジョブに対してどのような施策を打つべきかを検討すると効果的かと思います。
ジョブ理論を日常業務に活かす4つのフロー
最後にジョブ理論を見つける・考えるための4つのフローを解説していきます。

ステップ1:状況とジョブを特定する
まず、自社の顧客がどのような状況に置かれているのか、どんなゴールを成し遂げたいのかを観察し、ヒアリングします。定量アンケートだけでなく行動をつぶさに観察し、表層的なニーズの背後にある本音を掘り下げることが大切です。
ライフステージや環境、感情的な要因を含めて「状況」を描写したうえで、動詞+名詞で表現できるジョブを言語化しましょう。
ステップ2:競合と代替を横断的に考える
ジョブ理論では、競合は同じ業界だけに存在するわけではありません。Netflixがワインやビデオゲームと競合すると考えたように、顧客の目的を阻む代替手段や異なるカテゴリーのサービスも競合になり得ます。
広い視野で代替手段を洗い出し、顧客が解決策を「解雇」する理由を理解しましょう。
ステップ3:ジョブを3つの視点で整理する
特定したジョブと競合分析をもとに、自社の提供価値を機能的・感情的・社会的の3つの視点で整理します。
機能的な価値では顧客が進歩を遂げるために必要な基本機能やサービス品質を整え、感情的な価値では安心感や満足感を得られるストーリーや体験を設計し、社会的な価値ではコミュニティや共有体験、口コミを通じて社会的な役割を高めていきます。
3つの視点で整理することで、顧客が抱える複合的なジョブへの対応策が一覧化され、チームで共有しやすくなります。
ステップ4:仮説を検証し、継続する
整理した仮説は定量的に検証できる仕組みを設計し、コミュニケーション戦略やプロモーションに落とし込みます。継続的な改善のためには、KPIを設定して効果を測定し、顧客からのフィードバックを反映するプロセスが必要となります。
まとめ
今回の記事ではジョブ理論の定義から他業種の具体的な事例、ジョブ理論を見つけかた、日行業務に活かすためのフローをまとめました。
ジョブ理論は、顧客の「目的」を中心にビジネスを設計するための強力な視点です。そして物質的な価値だけでなく感情的・社会的な側面や状況を捉えることが大切です。
本記事で紹介した3つのジョブタイプと4つのフローを活用して、顧客がなぜ自社を選ぶのか/選ばないのかを構造化し、提供価値を見える化していってもらえたらと思います。
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。








