地方ブランドが「クラファン止まり」になる理由とは?スモールビジネスの罠から救う「4つのリンク」【独自のブランド資産構築の運用】
- 3 日前
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地方の中小企業や、アトツギ(事業承継者)の方々と新規事業やブランド立ち上げの相談を受けたり、プロジェクトをご一緒する中で、よく目にする「あるある」な光景があります。
それは、「クラウドファンディングでのスタートダッシュは切れたけれどその後に売り上げが続かない」という現象です。
「目標比300%を達成しました!」「地元のメディアにも取り上げられました!」と、船出は華々しいものの、いざ自社ECサイトで通常販売に切り替えると、パタリと売れなくなる。
数ヶ月後には、在庫の山を前に「やっぱり営業力が足りないのかな」「広告費がかけられないから仕方ない」と頭を抱えてしまう…。
こうした、せっかくの新ブランドが「局地的なスモールビジネス」で頭打ちになってしまう原因は、本当に営業力や広告予算のせいなのでしょうか?
結論から言えば、根本的な原因はそこではありません。
最大の原因は、ブランドを消費者の記憶に定着させるための「DBAs(独自のブランド資産)」「ブランド・エクイティ」「CEPs(カテゴリー・エントリー・ポイント)」「浸透施策(広告・SNS)」という4つのパーツが、バラバラに分断されていることにあります。
今回は、少し長くなりますが、地方ブランドがスモールビジネスの罠を抜け出し、長く愛される事業へと成長するための「4つのリンクの繋ぎ方」について、徹底的に解説したいと思います。
なぜ「クラファン後」に売れなくなるのか?【独自のブランド資産構築の運用の必要性】
クラウドファンディングのプラットフォームは、言うなれば「新しい物語や応援シロを探している人たちが集まる場所」です。そこでは、ブランドの熱い想いや、開発の苦労話といった「物語(ブランド・エクイティ)」がダイレクトに支援者の心を打ち、購買に繋がります(いわゆる応援消費というものです)。
しかし、日常の買い物(スーパーの棚や、何気なく見ているInstagramのフィード)は全く違います。消費者はブランドの長い物語を読んでくれるほど暇ではありません。たった「5秒」で買うものを決める世界もあったりします。
クラファンが終わった後も、多くのブランドは「自分たちの想いやこだわり(中身)」を発信し続け、消費者が日常生活の中で「あ、あれ買おう」と思い出すための「きっかけ(CEPs)」や、見つけ出すための「目印・旗印」を用意することはできていません。
だから、どれだけ良いものを作ったとしても忘れ去られてしまうのです。クラファンと同じ戦い方をクラファン後もやってしまってはいけないのです。これを防ぐためには、マーケティングの科学に基づいた「4つのパーツ(ブランド・エクイティ、DBAs、CEPs、浸透施策)」を理解し、一本の線で繋ぐ必要があります。

ブランドを記憶に根付かせる「4つのパーツ」を解説
では、この4つのパーツ(ブランド・エクイティ、DBAs、CEPs、浸透施策)がそれぞれ何を意味しているのか?を整理してみたいと思います。
① ブランド・エクイティ(中身・物語)
「どんな『物語・意味・価値』を伝えたいのか?」
「職人が一つひとつ手作りしている」「地元の規格外野菜を使って環境に優しい」「100年続く伝統の技術で作られた」といった、ブランドの持つ本質的な価値やストーリーです。
クラファンで最も輝くのはこのあたりの意味や物語ですが、クラファンの1歩外を出ると競合他社も同じように「高品質」「手作り」を謳っているため、この強み単体では同質化し、埋もれてしまいます。
② DBAs(独自のブランド資産 / 器・目印)
「『何』で識別されたいのか?」
DBAsとは、例えブランド名を知らなくても「あ、ウチで使っているいつものアレだ」と気づいてもらうための感覚的な記号です。
視覚: ブランド独自のカラー(例:特定の黒と金色の組み合わせなど)、ロゴ、特徴的なパッケージの形、決まったフォントなど
聴覚・人物: いつも動画で流れるBGM、社長本人の顔、イメージキャラクターなど。 ブランド・エクイティが「中身」だとしたら、DBAsはそれを包み込む「器」であり、記憶から引き出すための「取っ手」となるような存在です
③ CEPs(カテゴリー・エントリー・ポイント / きっかけ)
「どんな『きっかけ』で思い起こされたいのか?」
消費者の生活とブランドを繋ぐきっかけとなる瞬間・シーンのことを指します。
「高品質な伝統工芸品が欲しい」というフワッとした想起で買い物をする人はいません。消費者の行動変容の瞬間はもっと明確です。例えば、「目上の人へのお中元を探している時」「金曜日の夜に1週間分の脳疲労を癒やしたい時」「ちょっと気の利いた手土産を持っていきたい時」などです。この具体的なシチュエーション(箱)の設定がCEPsです。
④ 浸透施策(広告・SNS / アンプ)
「どんな広告・SNSを発信するのか?」
上記3つ(① ブランド・エクイティ・② DBAs・③ CEPs)をターゲットの脳内に浸透するための拡声器=戦術です。
地方ブランドの駆け出しの場合はスモールビジネスであることが多いため、莫大なTVCMは打てません。そのため、Instagram、X(旧Twitter)、店頭POP、地道なイベント出店などで浸透していく必要があります。それらの行動の総称がこの浸透施策となります。

地方ブランドのエラーはどうして起こるのか?
うまくいかないブランドは、この4つが以下のように分断しているケースが多いです。
【分断している残念なSNS運用の例】
エクイティ: 「100年続く伝統の技術」を謳っている製品
DBAs: 投稿ごとに文字のフォントが違う。パッケージも汎用の茶色い段ボール
CEPs: 「良い製品できました!」と言うだけで、いつ・どんな時に使えばいいか提案がない
浸透施策(SNS): 「今日はスタッフでランチに行きました!」という身内ネタや、ただの発売情報を発信
これでは、消費者の頭の中で何も結びつかないのがわかりますよね。
「なにか頑張ってる地元の会社」というふんわりした印象で終わってしまい、いざギフトが必要な時には、結局いつもの見慣れたブランドを買ってしまいます。
自分たちのブランドが選ばれるためには、消費者が【CEP(きっかけ)】が発生した時に、【DBA(独自の目印)】を通じて、【エクイティ(価値・物語・意味)】が詰まった自社商品が選ばれるために、SNSや広告を使って4つを「リンク(接続)」させなければならないのです。

地方ブランドのための「4つのリンク」実践ステップ
では、リソース(人手・製品・予算)が限られている地方ブランドが、この4つをより早く、正確に繋いでいくためにはどうすればいいのでしょうか。ここでは4つに分けてステップを紹介したいと思います。
Step 1|「誰に」ではなく「どんな時に(CEP)」でセグメントする
「ターゲットは30代の感度の高い女性」といった年代や属性のペルソナ設定はいったん置いておきましょう。それよりも、「お客様のどんな日常の瞬間に、自社商品を思い出してほしいか」を定義するように心がけてみてください。
例えば、老舗の茶農家が新ブランドを作るなら、「1本1万円最高級のお茶です」ではなく、「深夜2時、企画書づくりで行き詰まった時の、脳をリセットする一杯」というような利用シーンが明確になるように定義します。
Step 2|狂気的なまでに「ルール(DBA)」を絞り込む
大企業のように多彩なクリエイティブを作る予算がない地方企業にとっての最大の武器は「制約」です。
ブランドのテーマカラーを1色決め、ロゴを決め、使うフォントを1つに絞り込んでみましょう。Instagramの投稿画像も、商品に同梱するサンクスカードも、イベントののぼり旗も、発送用の段ボールのテープも、すべて同じ「色とフォント(DBA)」で統一します。この「飽きる・呆れるほどの一貫性」こそが、地方ブランドが生き残るための命綱となります。
Step 3|自分自身の「顔」をDBAにする
地方スモールビジネスの最大の強みは、「作り手の顔が見えること」です。
ブランドを運営する経営者・責任者本人が、一貫した服装(ブランドカラーの服やエプロンなど)で、一貫した熱量で語り続けること。あなた自身の顔とキャラクターが、最も強烈で模倣不可能なDBA(独自のブランド資産)になります。恥ずかしがらずに、ブランドのアイコンになりきってください。
Step 4|SNSは「日記」ではなく「回路を繋ぐ作業」と心得る
SNSや広告を発信する際のルールは 【CEP(具体的に利用する状況・シーン)】+【DBA(視覚の目印)】+【ブランド・エクイティ(価値)】をワンセットで出し続けることです。
先ほどの深夜のお茶ブランドの例なら、 「深夜2時のPC作業の風景(CEP)」の画像に、「いつものブランドカラーと決まったフォント(DBA)」で、「独自の焙煎によるスッキリ感(エクイティ)」を乗せて投稿するようなイメージです。
これを100回、200回と繰り返すのです。すると消費者の脳内に「あ、夜中に行き詰まったら(CEP)、あの色のパッケージの(DBA)、あのブランドのお茶だ(エクイティ)」という強固な回路(メンタル・アベイラビリティ)が完成するはずです。

終わりに|マーケティングは魔法ではなく「配線工事」のようなもの
「クラファンで売れたのに、その後が売れない・続かない」原因は商品の魅力がないからでも、熱意が足りないからでもありません。
ただ単に、お客様の脳内に続く「配線(リンク)」が繋がっていなかっただけなんだと私は思っています。
今回解説した独自のブランド資産構築の運用方法である、
「何」で識別されたいのか
「どんな意味」を伝えたいのか
「どんなきっかけ」で思い出してほしいのか
これら答えを明確にし、すべての発信・訴求でそれぞれのパーツを繋ぎ合わせていく。一連の作業は地味で、根気のいるものです。しかし、これらの作業から逃げず、一貫性を貫いたブランドだけが、一過性のブームやスモールビジネスの罠を抜け出し、地域に、そして消費者の生活に長く根付く「強いブランド」へと進化していくはずです。
HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。
日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。
地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。

▼HONEにできること
語られていない価値の「骨」を探す
商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。
現場に入り、五感を使って「骨」を磨く
戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。
手を動かしながら、「骨」を強くする
支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。
文化となる「骨格」を、未来へ残す
目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。

▼HONEの強み
01/一貫サポート
戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。
02/現場主義
デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。
03/全国実績
北は北海道、南は沖縄まで、一次産業から観光、教育、行政、ベンチャー、スタートアップ、アトツギなど、多種多様なプロジェクトに携わってきました。たくさんの地域を見てきたからこそ、それぞれの良さに気づくことができます。そして土地に根付くその事業の「らしさ」を、より鮮明に見つけることができます。全国各地で積み重ねた知見を、次の挑戦に活かします。
04/産学官連携
企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。

なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか
マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。
制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。

地方に必要なのは、「地域理解」
こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。







