大手ブランドと同じ土俵に立たない。「メンタルマーケットシェア」の広げ方【地方企業向け】
- 3月22日
- 読了時間: 11分

日本国内の人口が減り、購買力も縮んでいく。
そんな時代に「どうすれば売上を維持・成長できるか」という問いに直面している企業は、地方を中心に増えています。
かつてのように広告費を積んで認知を広げれば解決する時代ではありません。圧倒的な資本力を持つ大手ブランドと「認知率の競争」を繰り広げることは、リソースが限られた企業にとって現実的ではないのです。
では、マス・マーケティングに頼れない企業にとっての勝ち筋はどこにあるのでしょうか。
その鍵となるのが、「メンタルマーケットシェア(MMS)」 という考え方です。
本記事では、この概念の基本から、売上を左右する「ネットワークサイズ」の広げ方まで解説します。
※本記事は、書籍『"未"顧客戦略 消費者の無関心から逃げない「習慣×記憶」の科学』を参考に、非リーダー企業の戦略として解釈し執筆しています。
メンタルマーケットシェアとは

メンタルマーケットシェア(MMS)とは、消費者の記憶の中で、自社ブランドがどれだけ「想起(思い出し)」されるかの割合を指します。
より正確に言えば、「全てのCEPを通して見たときに、自社ブランドにたどり着く想起経路が全体の何割を占めるか」 という「想起のシェア」です。
▼参考:カテゴリーエントリーポイント(CEP)とはなにか?事例、参考になる本/書籍を紹介
「今日のランチ、どこにしようか?」「実家のリフォーム、どこに頼もうか?」が頭に浮かんだ瞬間、真っ先にあなたの会社が思い浮かぶかどうか。この「思い出される確率」こそが、購買の入り口です。
項目 | マーケットシェア (実売) | メンタルマーケットシェア (記憶) |
測定対象 | 売上高・販売数量など過去の実績 | 消費者の記憶における想起の量と質 |
時間軸 | 過去〜現在の結果指標 | 未来の購買確率を示す先行指標 |
主な取得方法 | POSデータ・出荷統計など | 消費者調査(自由想起・助成想起) |
影響要因 | 価格・流通・プロモーション | 体験・口コミ・ブランド資産 |
注目したいのが、MMSと実際の市場シェアには高い相関関係があるという点です。つまりMMSは、実際の売上に先行する「未来の売上を左右する先行指標」であり、CEPマネジメントにおけるKGI(重要目標達成指標)として機能します。
いくら品質が良くても、名前だけは知られていても、思い出されなければ選択肢にすら入りません。
メンタルマーケットシェア(MSS)はどう決まるのか

① 想起の浸透率(Mental Penetration)
カテゴリーユーザーの中でブランドを最低1つ以上のCEPに結びつけている人の割合、いわば「想起の浸透率」。「どれだけ多くの人が、そのブランドを思い出せるか」という、記憶の広さです。
② 想起経路の数(ネットワークサイズ)
ブランドが平均的にいくつのCEPと結びついているかを示す指標。ブランドがより多くのCEPと関連付けられているほど、カスタマージャーニーの中で想起される可能性が高まります。「どれだけ多くの場面や文脈で、そのブランドが思い出されるか」という、記憶の多点数です。
資本力のある大手は、莫大な広告費で①「広さ」を圧倒的に押さえていく方法が良いと思います。しかしリソースが限られた企業が注力すべきは、②「ネットワークサイズ(想起のきっかけ)」の精度と数が必要となります。
▼参考:CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)の整理と優先順位
ネットワークサイズを広げる「CEP」の設計
大手と同じ広報合戦を避け、特定の生活文脈に深く根ざしたCEPを設計すること。
単に「知っている」状態から、「〇〇な時には、あの会社だ!」という紐付けを増やすことがゴールです。
連想カテゴリー | 内容の説明 | 具体的な設計例 |
利用シーン | いつ・どこで使うか | 「週末の家族ランチ」「法事の後の集まり」「帰省時のお土産」 |
特定の悩み | どんな困りごとがあるか | 「冬の結露がひどい」「急に法事の仕出しが必要になった」 |
感覚的属性 | 味・香り・見た目など | 「あのモチモチした食感」「あの木の香りのショールーム」 |
感情・気分 | どんな気分になりたいか | 「絶対に失敗したくない」「地元を感じて安心したい」 |
視覚的資産 | ロゴ・カラーなど | 「国道沿いのあの緑の看板」「あの筆文字のロゴ」 |
メンタルマーケットシェア拡張の例

解説してきたCEPの考え方を、実際のビジネスに落とし込むとどうなるでしょうか。
ポイントは2つです。まず1つ目は「王道のCEP」を想起を土台として固めること(そのために調査を実施し、実態を確認します。次のセクションでなぜ大事かを解説しています)。
2つ目はそこから生活の文脈に沿った「新規のCEP」へと網を広げていくこと。
日常のどんな場面で思い出してもらえるかを丁寧に設計することが、メンタルマーケットシェアを少しずつ積み上げていきます。
以下に、イメージしやすいように例に挙げます。
【例1:地元の工務店】
CEPの拡張:「家を建てたい時(王道)」だけでなく、「子供が独立して部屋が余った時」や「親の足腰が弱くなってきた時」を狙う。
入り口の設計:「手すり一本からのバリアフリー相談」という気軽なCEPを用意することで、まだ大規模リフォームを考えていない層の記憶に先に入り込む。
【例2:老舗の和菓子店】
CEPの拡張:「お盆の供え物(王道)」に加え、「仕事帰りに自分へのご褒美」という日常の文脈をつくる。
商品による接点: どら焼きをバラ売りし、「小腹が空いた時」という日常的な場面に潜り込む。
CEPを設計するための「ダブル・ジョパディの法則」とは?

CEPを設計するにあたり、知っておきたいのが、ダブル・ジョパディの法則です。
ダブル・ジョパディの法則 は、マーケティング研究者のバイロン・シャープらが実証した法則で、「購入者数が少ないブランドは、顧客一人あたりの購買頻度(ロイヤルティ)も低くなる傾向がある」というものです。
この法則が示すのは、ロイヤルティ(リピーター)を増やすことがブランド成長につながるのではなく、新規を増やすこと(浸透率を高めること)が結果的にロイヤルティを高めていくことである、ということです。
<仏壇の例>
よくある打ち手:「〇〇専用の仏壇」という極めて限定的なCEPだけで戦う。限定的な結果、新規の浸透率が高まらず、認知・売上共に伸び悩む
浸透率を高める打ち手: まず「仏壇・仏具(王道のCEP)」で地域一番の想起を目指す。その上で「ペット供養」や「手元供養」といった関連するCEPへネットワークを拡張していく。
市場が大きい「王道の場面」での想起を土台にしながら、そこから網の目のように想起経路を増やしていくのが、CEP設計の基本的な考え方です。
▼参考:ダブル・ジョパディの法則
「無関心層」にどのようにして浸透率を高めていくか

よくあるマーケティング活動は、「今すぐ客」への販促に終始しがちです。
しかし、メンタルマーケットシェアを広げるには、「今は必要としていないが、将来その場面(CEP)に直面する人」の記憶に種をまいておく必要があります。
まだ自社を必要としていない無関心層に対しては直接的な売り込みはほとんど効果がありません。大切なのは、「売りこまず、記憶に残してもらう」活動です。
具体的には以下のようなコミュニケーション施策が考えられます。
人となりを伝える発信: 日々の仕事風景やスタッフの想いをSNSで届ける。代表インタビュー、スタッフインタビュー。
地域社会への関わりの発信: お祭りや地域行事への協力、地域に根ざしたプロジェクトの発信。スポンサー活動など。
こうした「直接的な売買」以外の接点も、消費者の記憶の中にブランドを定着させていきます。「何かあったら、あの会社に頼もうかな」という淡い記憶のストックをどれだけ積み上げられるかが、長期的に必要な視点です。
まとめ
広告費をかけられず、「知っている人の数」を増やすことが難しい企業にとってはまずは以下を整理してみてはいかがでしょうか。
王道のCEPが何なのか、実態を知る
実態をもとに関連するCEPへネットワークを広げる
無関心層にも、売り込まないアクションで記憶の種をまく
この3つの積み重ねが、数年後のメンタルマーケットシェアをつくっていくはずです。
大手と同じ土俵ではなく、「生活の文脈」という自分たちの土俵で戦うことが、リソースが限られた企業にとっての一つの戦略になり得るでしょう。
もしこの記事を読みながら、「興味がある」「一度相談したい」などと感じることがあれば、HONEにお気軽にご相談ください。
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なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか
マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。
制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。

地方に必要なのは、「地域理解」
こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。

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【記事を書いた人】

株式会社HONE
マーケター 亀元梨沙子











