top of page

カテゴリーエントリーポイント(CEP)の整理と優先順位付けをするには?〜W’sフレームワーク活用法〜

  • 執筆者の写真: 桜井 貴斗
    桜井 貴斗
  • 7月19日
  • 読了時間: 13分

更新日:1 日前

中小企業のためのブランディング手法ガイド─ゼロから始めるブランドづくり

マーケティング課題に直面するブランド・地方自治体にとって、自社ブランドが「顧客に思い出してもらえる瞬間」を増やすことは重要なテーマとなります。


その解決策として注目されるのが、南オーストラリア大学エレンバーグ・バス研究所のジェニー・ロマニウク教授が提唱するカテゴリーエントリーポイント(CEP)とW’sフレームワークです。


顧客が特定のカテゴリーを思い浮かべるきっかけを体系的に洗い出し、ブランドと結びつけるこの手法は、ブランド想起率を高め、競争力強化にも寄与するフレームとなります。


本記事では、W’sフレームワークとは何か、なぜ有効なのかを解説し、7つの視点にもとづくCEPの整理方法や「3つのC」による優先順位付けの考え方、さらに具体的な社内ブレストや調査・インタビューの進め方をご紹介します。


最後に、HONEが提供できる支援内容と、すぐに実践できるチェックリストのダウンロード案内も掲載しています。




株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料



カテゴリーエントリーポイントを明確にする「W’sフレームワーク」とは?


W’sフレームワークとは、消費者行動の文脈を分析してCEP(カテゴリーエントリーポイント)を特定するための枠組みです。


エレンバーグ・バス研究所のジェニー・ロマニウク教授
W’sフレームワーク(エレンバーグ・バス研究所のジェニー・ロマニウク教授)

南オーストラリア大学エレンバーグ・バス研究所のジェニー・ロマニウク教授によって提唱されました。簡単に言えば、「顧客がどのような状況でそのカテゴリーの商品やサービスを思い出すのか」を多角的に洗い出すための7つの問いかけから成るフレームワークとなります。


7つの「W」──Why/When/Where/While/With(for Whom)/With What/How(Feeling)の切り口で質問を投げかけ、消費者がカテゴリーを想起する様々なシチュエーションを漏れなく整理します。


この7つの質問に沿って発想を広げていくことで、消費者が特定のカテゴリーやブランドを想起する具体的な文脈(CEP候補)を洗い出すことができます。企業はこのフレームワークを活用することで、自社ブランドと顧客の行動文脈を結びつける具体的なCEPを発見し、マーケティング戦略に活かすことが可能になります。


▼あわせて読みたい🙌

カテゴリーエントリーポイント(CEP)とはなにか?事例、参考になる本/書籍を紹介


なぜW’sフレームワークを使うのか?


ブランド成長の鍵は、多くのCEP(利用文脈)をつくることだと言われています。特定のターゲットへの差別化に注力するよりも、幅広い状況で思い出されるブランドほど成長しやすいというエビデンスもあります((Dawes et al., 2022; Graham & Kennedy, 2022; Hossain et al., 2023; Sharp et al., 2024))。


例えばアイスクリームのハーゲンダッツは、「食事の後にデザートを食べたい時」「一日の終わりにリラックスしたい時」「少し贅沢をしたい気分の時」「ストレスを感じて落ち込んだ時」など、非常に多彩なシチュエーションで想起されるブランドです。


ハーゲンダッツのオケージョン
ハーゲンダッツのオケージョン

上記のような多様なCEPを多数持つことで、より多くの顧客ニーズに応えられ、「ハーゲンダッツを買おう」と思ってもらう機会を増やしています。


逆に言えば、特定の文脈と結びついていないブランドは、そもそも顧客の購入検討リストに入らない可能性すらあります。


消費者は常に何らかの状況や目的をきっかけにブランドを想起します。文脈なしにブランド名だけが突然頭に浮かぶことは稀です。


別の代表的な事例として挙げられる「ポカリスエット」が、典型的に「スポーツをしている時」や「風邪をひいた時」に想起されるのは、そのカテゴリー需要の文脈(CEP)をしっかり捉えているからだと考えられます。


ポカリスエット
出典:ポカリスエット

必要な場面で自社ブランドが想起される状態を作り出すことこそ、ブランドが選ばれる第一歩となります。


実際、ロマニウク教授も「CEPを理解することでカテゴリーの主要な購買状況とブランドを結び付けられ、買い手がカテゴリーに入る瞬間に自社ブランドが想起される可能性が高まる」と指摘しています。


W’sフレームワークを使えば、重要なCEPを網羅的に洗い出し、ブランドのメンタル・アベイラビリティ(心的な購買可能性)を高める戦略につなげることができるのです。


▼あわせて読みたい🙌

メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティを最大化するオケージョン仮説のプロセスとは?


7つの視点:W’sフレームワークの質問一覧


W’sフレームワークでは、以下の7つの問いを検討していきます。それぞれの「W」が意味する内容は次の通りです。


項目

補足

Why(なぜ)

顧客はなぜそのカテゴリーの商品・サービスを使うのか?どんな目的・ゴールを達成したいのか。

When(いつ)

その商品カテゴリーを購入・使用するのはいつか?(時間帯や曜日、週・月・季節のタイミング、平日か休日か等)。

Where(どこで)

そのカテゴリーの商品・サービスはどこで使用されることが多いか?(利用シーンとなる場所)。

While(どんな時に)

どんな行動をしている最中またはその前後に、そのカテゴリーのニーズが生まれるか?

With/for Whom(誰と・誰のために)

誰が購入し、誰が利用するのか?利用する時に一緒にいる人はいるか?あるいは誰かのために使うのか?

With What(何と一緒に)

そのカテゴリーの商品・サービスと一緒に使われる他のカテゴリーはあるか?もしそれが使えない場合、代わりに何で対応するか?

How (Feeling)(どんな気分で)

利用する前はどんな気分や感情か?利用後にはどんな風に気分が変わるか?利用中にはどんな感情を抱くか?


例えば、このフレームワークを使ってマクドナルドのハンバーガーの利用シーンを考えると、While(家事で疲れている時)やWith Whom(家族みんなで)といった視点から「平日の忙しい日に料理をする気力がない時」「家族団らんで手軽に食事を楽しみたい時」など、新たなCEPを発見できます。


このように普段何気なく感じているポイントでも、改めて言語化してみると見落としている文脈があるかもしれません。W’sフレームワークを用いることで体系立てて洗い出すことが可能になるのです。



3CでCEPの優先順位をつける


W’sフレームワークによって自社に関係しそうなCEPを網羅的にリストアップできたら、次はどのCEPに注力するか優先順位を決める必要があります。リソースには限りがあるため、すべてのCEPに一度に対応しようとするのは現実的ではありません。


そこで、ロマニウク教授はCEPの価値を見極めるために影響する3つの要因、「3C」を提唱しています。本フレームはB2B向けに提唱されているフレームですが、C向けにも応用ができると考え、ご紹介します。


これらは Credibility(信頼性)、Competitiveness(競合状況)、Commonality(共通性) の3つです。それぞれの視点でCEP候補を評価し、優先度の高いものを絞り込んでいきましょう。


項目

補足

Credibility(信頼性)

自社ブランドにとってそのCEPは現実的かつ信頼できる文脈かどうかを評価します。 自社のこれまでの製品ラインナップやブランドイメージから見て無理がないか、顧客が「その状況でこのブランドもありだ」と思ってくれそうかを確認します。 もし自社の過去・現在の提供価値とかけ離れたCEPであれば、現状では信憑性に欠けるため優先度を下げるべき。逆に少し商品の改良やメッセージの工夫で適合できるものは、新たなチャレンジ領域として検討します。

Competitiveness(競合状況)

CEPにおける競合の強さを評価します。既に複数の競合ブランドがその状況で積極的に広告展開をしていたり、顧客の心中で強く結び付いているCEPであれば、競合が激しい領域です。 そうした「混雑した」CEPは、自社が新たに訴求軸に据えても埋もれてしまう可能性が高いため、優先度を下げる判断につながります(あるいは差別化できる切り口を工夫する必要があります)

Commonality(共通性・頻度)

CEPが顧客全体の中でどれほど一般的か(頻度が高く市場規模が大きいか)を評価します。 たとえば年に一度しか起こらないような特殊なシチュエーションよりも、毎週・毎日のように発生する状況を押さえた方がビジネスインパクトは大きくなります。 あるCEP自体の発生頻度が低かったり、売上規模が小さいと見込まれる場合、そのCEPは他に比べて優先度を下げる判断も考えられます。 反対に、多くの顧客が直面する日常的なシチュエーションであれば、そのCEPを攻略する価値は高いと言えます。


上記の3つの基準で自社のCEP候補を評価していくと、狙うべきCEPと捨てるべきCEPが見えてきます。


このフェーズでは不要な選択肢を消去し、自社ブランドにとって不利・不向きなCEPを除外することで、より確度の高い選択肢を浮かび上がらせていくことにあります。


中小規模のブランドであれば、まずは最も重要度の高い1~2個のCEPに絞って施策に落とし込むことをおすすめします。自社の強みを活かせ、かつ市場インパクトの大きいCEPから順に着手し、成果を検証しながら徐々に対応する文脈を広げていくと良いでしょう。



実践方法:CEPの発見から活用まで


では実際に、自社のCEP(カテゴリーエントリーポイント)をどのように見つけ、活用していけばよいのでしょうか。ここでは社内ブレスト、データ調査、顧客インタビューの3つのアプローチに分けて、具体的な進め方をご紹介します。



1. 社内ブレスト(ブレインストーミング) 


まずは自社内でアイデアを出し合い、考えられる限りのCEP候補を洗い出しましょう。マーケティング担当者だけでなく、営業や商品開発、カスタマーサポートなど他部署も交えたワークショップ形式にすると、現場視点の気づきが得られやすくなります。


W’sフレームワークの7つの質問をガイドラインに据え、ホワイトボードなどに自由に意見を書き出していきます。例えば「Why(顧客の目的)は何か」「When(いつ必要か)」…と順に議論することで、網羅的かつ構造的に文脈を洗い出せます。


部署を横断したブレストにより「現場の顧客からよく聞く課題」や「過去のヒット商品の利用シーン」など社内に蓄積された知見も共有され、新たな発見につながるでしょう。



2. データ調査・分析 


次に、データに基づくリサーチでCEPのヒントを探ります。顧客がインターネット上でどんな情報を探しているかを調べることで、有望な文脈を見つけることができます。


具体的には、検索エンジンのキーワード分析ツール(Googleキーワードプランナー等)を活用して、自社商品・サービスに関連する検索キーワードのボリュームや関連語を調査します。


検索ボリュームの大きい語は多くの顧客ニーズを反映しており、有力なCEP候補と言えます。また、検索エンジンのサジェスト機能に出てくる関連キーワードや、Yahoo!知恵袋のようなQ&Aサイトに投稿された質問内容もチェックしましょう。そこには顧客が実際に抱えている具体的な悩みや状況が表れており、新たなCEPの発見につながります。


このようにWeb上のデータを分析することで、言葉の裏にある顧客の状況や目的を推測し、リストアップしたCEP候補を補完・拡充できます。



3. 顧客へのインタビュー


顧客本人に直接聞くことも、CEP発見には欠かせません。自社の商品・サービスについて、実際のユーザーや見込み顧客にインタビュー調査を行い、利用シーンや動機を掘り下げていくことも効果的です。


質問の仕方としては、「どんな時にそれが必要だと感じますか?」「このサービスを利用する前はどんな課題がありましたか?」「誰と一緒に使うことが多いですか?」といったオープンな問いかけが有効です。


例えば「どんな時に必要と感じますか?」という質問に対して「仕事で疲れて帰ってきた日の夜に、使いたいと思った」といった回答が得られれば、それは「自分へのご褒美」というCEP候補になります。


このようにインタビューを通じて得られた生の声は、定量データからは見えない顧客の真の動機や具体的エピソードの源泉となります。現在の顧客だけでなく、離れてしまった過去顧客やこれから獲得したい層にも話を聞くことで、それぞれの立場から多角的にCEPを洗い出すことができます。


以上のような社内での発想展開(ブレスト)と外部データの分析、顧客への直接ヒアリングを組み合わせることで、漏れのないCEP候補のリストを作成できます。それらを前述の3Cで評価することで、自社が注力すべきカテゴリーエントリーポイントが明確になるはずです。



HONEが支援できること


  • 自社にとってのカテゴリーエントリーポイントを見極めたいが、社内だけでは発想に限界がある

  • 具体的にどのような調査をしていいかわからない

  • 洗い出したCEPをどうマーケティング施策に落とし込めば良いか分からない

そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひHONEにご相談ください。


HONEは地方企業や自治体のマーケティング支援に豊富な実績があり、CEPの発見から優先順位付け、施策への実装まで一貫してお手伝いできます。


▼あわせて読みたい🙌

【HONE】5つのマーケティング研修プランについて解説します。

HONEではW’sフレームワークを用いた社内ワークショップのファシリテーションを行い、多様なCEPアイデアの創出を支援も行っています。


また、必要に応じて市場調査のプロフェッショナルが消費者インサイトを収集し、客観的なデータに基づいてより確度の高いCEPも特定することが可能です。さらに、見極めたターゲットに対して具体的なマーケティング戦略や施策に落とし込む段階までサポートいたします。


広告コミュニケーションでどのようにその文脈を訴求するか、商品開発やサービス改善にどう活かすか、といった具体策まで含めて伴走することで、社内のリソース不足も補いながら効果的な実行につなげます。


HONEのサービス提供する「マーケティングリサーチプラン」や「事業伴走プラン」では、今回ご紹介したような最新のフレームワークやエビデンスに基づく分析手法を活用し、クライアントの課題解決を支援しています。


自社でCEP戦略に取り組む時間や専門知識が不足している場合も、HONEのチームが寄り添ってサポートいたします。お問い合わせいただければ、貴社の状況に応じた最適な支援内容をご提案しますので、どうぞお気軽にご連絡ください。



マーケティングリサーチサポートプラン
事業併走プラン
マーケティング研修プラン


まとめ/チェックリストのダウンロード


ここまで、カテゴリーエントリーポイント(CEP)をW’sフレームワークで洗い出し、3Cで取捨選択することで、「どんな時に・どんな場所で・どんな状況なら自社ブランドが選ばれるのか」が明確になるプロセスについてまとめてみました。


CEPを起点に据えたマーケティング戦略によって、貴社ブランドはより多くの顧客の記憶に入り込み、必要とされる瞬間に真っ先に思い浮かぶ存在になれるはずです。


ぜひ本記事の内容を参考に、社内で自社ブランドならではのCEPをリストアップしてみてください。


その際に役立つよう、7つのW質問をまとめたチェックリストをご用意しました。から無料でダウンロードできますので、ぜひ実践にお役立てください。


さらにプロの視点でアドバイスが必要な際は、HONEまでお気軽にお問い合わせください。エビデンスに基づくマーケティングで、貴社のブランド成長を全力でサポートいたします。



Googleスライドはこちらから



【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。


※本記事は一部AIを活用して執筆しています。

bottom of page