『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』を読んで。「5秒で選ばれる」ための記憶と仕組みの作り方【書評】
- 5 日前
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朝日新聞出版から出版されている「ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇」。
本記事では桜井が心に残ったパートを一部抜粋して、ビジネスや生き方に転用できる点、そして凝り固まった思考をほぐしてくれる気づきとしてまとめてみました。
『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』—「5秒で選ばれる」ための記憶と仕組みの作り方
日頃、地域の中小企業やローカルビジネスのマーケティング支援に入る中で、必ずと言っていいほど直面するのが「ブランディング」という言葉の曖昧さです。かっこいいロゴを作ること、おしゃれな世界観を作ること、といった表層的な理解にとどまってしまうケースは少なくありません。
そんな中、私たちが日々の支援で重要視している「メンタル・アベイラビリティ(頭の中の思い出しやすさ)」や「カテゴリー・エントリー・ポイント(CEP:思い出すきっかけ)」という概念について、極めて科学的かつ実践的に解説してくれているのが、ジェニー・ロマニウク氏の著書『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』です。
今回は本書の中から、私が特に現場の肌感とリンクし、心に残った3つのポイントを抜粋しながら、これからのローカルビジネスに必要な「真のブランド資産」について考察してみたいと思います。
1. そもそもブランディングとは何か?(3つの役割)
ブランディングとは何か?という捉えどころのない概念に対して、本書では非常にクリアな定義をしています。
【抜粋】 (第3章 独自のブランド資産の重要性 より) ブランディングには主に3つの目的がある。 まず、ブランドの所有権を商標として表すこと(オーナーシップ)。 次に、購買客の記憶ネットワークの中に望ましいブランド連想を定着させること(アンカー)。最後に、個々の異なるマーケティング活動をつなぐことだ(ブリッジ)。これらはブランド名と独自のブランド資産の開発に応用されている。
「オーナーシップ」「アンカー」「ブリッジ」。
この3つの機能は、限られた予算で戦う地域の中小企業にこそ不可欠な視点だと感じました。
例えば、ある伝統工芸品のプロモーションを行う際、SNS、展示会、店頭POP、チラシと様々な施策を打ちます。
しかし、それらのクリエイティブに一貫した「独自のブランド資産(色、ロゴ、形状など)」がなければ、消費者の頭の中で「あのブランドだ」と繋がることはありません(=ブリッジの欠如)。
ブランディングとは、単に自分たちの想いを表現することではなく、消費者の記憶という海に「錨(アンカー)」を下ろし、バラバラの活動を一つの資産へと繋ぐ「橋(ブリッジ)」を架ける作業なのだと、改めて気付かされました。

2. 「1つの強みに絞る」というポジショニングの罠
従来のマーケティング理論では、「ターゲットを絞り、たった1つの独自の強み(ポジショニング)を研ぎ澄ませ」と教えられてきました。しかし、本書はその常識に鋭くメスを入れています。
【抜粋】 (第4章 独自のブランド資産でメンタルアベイラビリティを構築する より) ブランドのCEPが多いほど、ブランド記憶の引き出しが増えていく。これは、従来のブランド戦略のように1つの属性(あるいは1つのCEP)を持つことを目的にするよりも、CEPネットワークを拡大充実させることを目的にするブランド戦略のほうが効果的であることを意味する。 (中略) この調査では、市場シェアの大きいブランドと小さいブランドの間では、購買客が各ブランドに持つCEPの数の差が大きいことが明らかになった。
私自身、現場で支援をしていて非常に痛感するポイントです。
「ウチの商品はギフト用としての高級感に特化する!」と1つの属性に絞り込みすぎるあまり、日常使いや、ちょっとしたお土産、自分へのご褒美といった「その他の思い出すきっかけ(CEP)」を自ら捨ててしまっているケースをよく見かけます。
売上(市場シェア)の差は、商品の品質の差というよりも、「どれだけ多くのシーンで思い出してもらえるか(CEPの数)」の差です。
「ビジネス出張にも、家族旅行にも、一人旅にも使える」というように、自社ブランドが消費者の脳内にアクセスできる「入り口」をいかに増やし、ネットワーク化していくか。これが、シェアを拡大していくための絶対条件になります。

▼参考:カテゴリーエントリーポイント(CEP)とはなにか?事例、参考になる本/書籍を紹介
3. 顧客は「5秒」も考えていないという残酷な現実
私たちがどれだけ製品への愛やこだわりを語って、CEPを増やそうと努力しても、店頭における消費者の反応は極めてドライです。
【抜粋】(第5章 独自のブランド資産でフィジカルアベイラビリティを構築する より) 購買客がスーパーマーケット内のすべての通路を通って買い物することはめったにない。購買客の主動線は店内外周の運動場のトラックのような形をした通路であり、彼らは不要な売り場を避け、どの売り場に行くべきかを判断しながら進んでいる。 (中略) 店内の購買客を観察したいとくつかの研究によると、どの製品カテゴリーであれ、購買客がその売り場に到着してから去るまでに要する時間は12〜17秒だ。購買客の46%は商品の選択に5秒もかけていない。
スーパーマーケット内では 「12〜17秒で売り場を去り、半数近くが5秒以内で選ぶ」という非常にタイトな事実を前にしたとき、「商品の裏面をじっくり読んでもらえれば、良さが伝わるはずだ」という作り手側の期待がいかに脆いものかが分かります。
消費者はスーパーの通路をレーストラックのように駆け抜け、無意識のオートパイロット状態で商品を買い物かごに放り込んでいきます。
この「わずか数秒の勝負」を制するためには、遠くからでも、チラッと視界の端に入っただけでも、「あ、ウチのいつものアレだ」と一瞬で認識させる強烈なシグナルが必要となります。
だからこそ、理屈やキャッチコピーの前に、「色」「形」「ロゴ」といった感覚的で独自のブランド資産(DBAs)を構築し、それを何十年も一貫して使い続けることが、フィジカルアベイラビリティ(=買い求めやすさ)を最大化する鍵となるのです。

▼参考:メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティとは?具体的な定義と考え方を解説します。
まとめ:記憶のショートカットを作る戦い
『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』を読み解くと、ブランディングとは決して物語作りや雰囲気作りではなく、「消費者の記憶の構造を理解し、購買という行為の摩擦を極限まで減らすための科学」であることが分かります。
ブリッジとアンカーを機能させ、すべての活動を資産に変える
狭いポジショニングに逃げず、CEP(思い出すきっかけ)の数を愚直に増やす
5秒で選ばれるための「独自のブランド資産(視覚的・感覚的シグナル)」を研ぎ澄ます
「良いものを作れば売れる」という時代はとうの昔に終わり、今は「思い出され、すぐに見つけられるものが売れる」時代となりました。
自社のブランドは、お客様の記憶の中でどんな「入り口」を持ち、どんな「記号」で認識されているのか。
ローカルビジネスを一段上のステージへ引き上げるためのバイブルとして、手元に置いておきたい一冊です。ぜひ、自社のブランド資産を棚卸しするきっかけにしてみてください。

HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。
日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。
地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。

▼HONEにできること
語られていない価値の「骨」を探す
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現場に入り、五感を使って「骨」を磨く
戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。
手を動かしながら、「骨」を強くする
支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。
文化となる「骨格」を、未来へ残す
目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。

▼HONEの強み
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デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。
03/全国実績
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04/産学官連携
企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。

なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか
マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。
制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。

地方に必要なのは、「地域理解」
こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。

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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。









