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【確率思考の戦略論を紐解く】ブランドの命運を握る「プレファレンス」はどのように高めるのか?

  • 4 時間前
  • 読了時間: 12分
【確率思考の戦略論を紐解く】ブランドの命運を握る「プレファレンス」はどのように高めるか?

「新規獲得のCPAが高騰しているから、既存顧客のLTVを上げよう」

「優良顧客(ヘビーユーザー)向けに、まとめ買いの割引キャンペーンを打とう」


マーケティングやブランドの担当者であれば、社内の会議で一度はこういった会話をした(あるいは聞いた)ことがあるのではないでしょうか。


もちろん、既存顧客を大切にすることは間違いではありません。


しかし、目先の「購入頻度」だけを無理に引き上げようとする施策は、長期的にはブランドを疲弊させ、売上の底を抜いてしまう危険性をはらんでいます。私自身、日々の支援現場で、多くの企業がこの「目先の数字を追う罠」に陥っているのを目にしてきました。


今回は、名著『確率思考の戦略論』でも語られている数学的モデル「負の二項分布」における「MとK」の理論、そしてマーケティングの原理原則である「プレファレンス(好意度)」の重要性を紐解いていきます。


一時的なカンフル剤ではなく、中長期で売れる必然をどう創り出すのか。本質的なブランド成長のヒントをお伝えします。





「M(プレファレンス=好意度)」とはなにか?


書籍:確率思考の戦略論の書籍の中でも登場しますが、マーケティングにおいて消費者の購買行動を確率論で捉える考え方、それが「M」と「K」という2つの変数です。



Mとは何か?


その市場に存在するすべての消費者がある期間中において買ったすべての購入回数を、そのすべての消費者の頭数で割ったもの。その市場にいる消費者1人あたりの平均購入回数なので、つまりそのブランドに対する消費者プレファレンスそのもの。


Kとは何か?


Kは確率分布の分散のカタチを決めている変数。KはMが決まると自動的に決まってしまうMの従属変数。従って、負の二項分布の式中の本当の変数はMのみ。消費者プレファレンスであるMが決まればどれだけ売れるかは自動的に決まってしまう。


流用:確率思考の戦略論よりHONEにて作成
流用:確率思考の戦略論よりHONEにて作成

例:ヘアケア市場におけるMとKとは


例として、「ヘアケア市場」におけるMとKで説明してみましょう。


あるシャンプーブランドの1ヶ月の平均購入回数が1回(M=1)だったとします。しかし、現実の消費者は全員が月にピッタリ1回買うわけではありません。


  • 「0回の人: 今月はまだストックがある」

  • 「1回の人: 平均的なペースで消費している」

  • 「3回の人: 家族が多い、またはジムや出張用にも複数買っている(ヘビーユーザー)」


など、「0回の人が何%いて、1回の人が何%いて、3回以上のヘビーユーザーが何%いるのか」という顧客の分布の広がり(裾野の広さ)を決めている変数が「K」です。


通常、販促を考える際は「ヘビーユーザー(たくさん買う人)をもっと増やそう!」と、ロイヤル顧客専用の施策(まとめ買い割引やポイント制度など)を考えがちです。つまり、K(分布のカタチ)を直接いじろうとする行為です。


しかし、消費財(ヘアケアなど)の購買データにおける数学的な真理として、「ブランドへの好意度(プレファレンス=M)が高まれば、自然とヘビーユーザーの割合(K)も決まった比率で勝手に増える」ということが証明されています。



▼Kではなく「M」を高める努力をする


マーケターが捉えるべきは、「KはM(選ばれる確率)を上げれば自然に最適なカタチに落ち着く結果(オマケのようなもの)」だということです。


ヘアケアのマーケティングを考える際、「どうやって1人に複数個買わせるか(Kを変えるか)」ではなく、「どうやって自社ブランドを好きになってもらい、1回でも買ってもらう確率(プレファレンス=M)を上げるか」というただ1点にリソースを集中すればよいということです。


個人的には「まずは小手先の顧客囲い込みにコストを使ってもまた元通りになってしまうため、純粋に選ばれる確率(M)を上げることに集中しましょう」という結論に至っています。



売上をつくる5つの要素と「プレファレンス」の影響力について


では、選ばれる確率である「プレファレンス(M)」をマーケティングの全体像の中でどう捉えればよいのでしょうか。


プレファレンスを語る上でその大概念である「売上」について少し説明をします。確率思考の戦略論では、売上は以下の5つの要素の掛け算で構成されていると記載されています。


売上をつくる5つの要素と「プレファレンス」の影響力について

【売上をつくる5つの要素】


  1. 市場(どのカテゴリーで戦うか)

  2. 認知(ユーザーがブランドを知っている、思い出せる状態)

  3. 配荷(気軽に情報を得られる、または足を運べる・購入できる状態)

  4. プレファレンス(製品・価格・好意度の組み合わせ。どう思われているか)

  5. 客単価(プレファレンスを高めることで向上する結果)


この中で、認知や配荷の向上は、いわば「治水工事」です。川幅を広げ、水が流れやすいインフラを整えるようなイメージで、ブランドの「量的な成長」をもたらす効果があります。


しかし、いくら川幅を広げても、水そのものが流れてこなければ意味がありません。水の勢いを生み出すもの、それこそが「プレファレンスの向上」であり、例えるなら「川の傾斜を作ること」です。


プレファレンス(選ばれる確率)を高めることはブランドの「質的な成長」であり、流れる勢いには無限の可能性があります。


マーケティングの役割とは「売れる必然」をつくることであり、そのためには水の勢いをつくる=「プレファレンスを上げること」にフォーカスしていく必要があります。


治水工事と傾斜をつくること
治水工事(左)と傾斜をつくる工事(右)


プレファレンスを高める「3つの要素」


では、具体的にどうすればプレファレンス(川の傾斜)を高めることができるのでしょうか。


プレファレンスは主に以下の3つの要素で構成されます。


プレファレンスを高める「3つの要素」

①プロダクト・パフォーマンス

消費者価値につながる製品の機能のこと。日用品などのリピートビジネスにおいては、製品機能が重視されます。一方、ラグジュアリーブランドや化粧品のように、必ずしも「機能」だけがプレファレンスに寄与するとは限らないカテゴリーも存在します。


②プライシング

一般論として、価格とプレファレンスは反比例しますが「安くすればプレファレンスが上がる」という単純なものではありません。ブランドの価値に見合った価格、あるいは中長期的な成長を見据えたプレミアム・プライシングができるかどうかが腕の見せ所となります。


③ブランド・エクイティ

最も重要なのがブランド・エクイティです。ブランド・エクイティとは「消費者の頭の中にあるブランドに対するイメージ」であり、消費者に選ばれる強い理由になっているものです。プレファレンスを支配する最重要な要素と言っても過言ではありません。


ここでのポイントは、商品・サービスが「単にモノが良い」だけでなく、消費者にとって深いインサイト(無意識の欲求)に刺さる便益(WHAT)を提供できているか?という点が抑えられているかということです。


例えば、ある地方の素晴らしい技術を持ったメーカーさんが「他社より洗浄力が高い洗剤」を作ったとします。しかし「洗浄力が高い」は単なるの製品機能です。消費者の「毎日頑張っている家事への感謝に気づいてほしい」というインサイトを見抜き、「家族が私の努力に気づいてくれる仕上がり」という便益(WHAT)に昇華できたとき、初めて強固なブランド・エクイティが構築され、プレファレンスが跳ね上がるといったイメージです。



自分たちのこだわりではなく、消費者の課題に向き合う


私は普段、多くの企業の現場に入り、マーケティングやブランド構築の支援を行っています。


その中で強く感じるのは、「良いものを作れば(あるいは安くすれば)選ばれるはずだ」という作り手側の思い込みがいかに根強いか、ということです。


もちろん、製品への誇りや技術へのこだわりは素晴らしいものばかりです。しかし、消費者は企業のこだわりにお金を払うのではなく、「自分の課題を解決してくれる価値(WHAT)」にお金を払います。


目先の「K(購入頻度やヘビーユーザーの囲い込み)」をいじるテクニックに走る前に、まずは自社の「M(プレファレンス)」と真正面から向き合う必要があります。


  • 自社が戦っている市場の構造はどうなっているか?

  • ターゲットのインサイトをどこまで深く理解できているか?

  • 消費者の頭の中に、自社を選ぶ明確な理由(ブランド・エクイティ)が構築できているか?


これらの問いに対する答えが不明確なまま、How(広告手法やキャンペーン施策)にリソースを投下しても、砂漠に水を撒くようなもの。無駄に終わってしまいます。



おわりに:自社の「プレファレンス」はどこにあるか?


「CPAが合わない」

「LTVが上がらない」

「施策が頭打ちになっている」


もしあなたが今、マーケティングの現場でこのような短期的な壁にぶつかっているのなら、それは「How(戦術)」の限界ではなく、「What(戦略・プレファレンス)」がうまく言語化できていないサインかもしれません。


小手先のテクニック(Kへのアプローチ)から脱却し、ブランド全体を底上げする「選ばれる確率(M)」を高めるためには、客観的な市場分析と、深い消費者理解に基づいたブランド・エクイティの再構築が不可欠となります。


自社の本当の強みはどこにあるのか。

消費者にどんな便益を約束すべきなのか。


HONEでは、表面的なプロモーションの代行ではなく、事業の根幹となる「ブランド戦略・マーケティング戦略」の策定から伴走し、中長期的な売れる必然を共に創り上げていきます。


「うちのブランドが選ばれる理由、そろそろ本気で見直したい」 そう思われた方は、ぜひ一度HONEにご相談ください。あなたの会社の「川の傾斜」をどう作るか、一緒に議論しましょう。



もしこの記事を読みながら、「興味がある」「一度相談したい」などと感じることがあれば、HONEにお気軽にご相談ください。


▼無料壁打ちはこちら


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HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。


日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。


地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。


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▼HONEにできること


語られていない価値の「骨」を探す

商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。


現場に入り、五感を使って「骨」を磨く

戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。


手を動かしながら、「骨」を強くする

支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。


文化となる「骨格」を、未来へ残す

目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。


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01/一貫サポート

戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。


02/現場主義

デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。


03/全国実績

北は北海道、南は沖縄まで、一次産業から観光、教育、行政、ベンチャー、スタートアップ、アトツギなど、多種多様なプロジェクトに携わってきました。たくさんの地域を見てきたからこそ、それぞれの良さに気づくことができます。そして土地に根付くその事業の「らしさ」を、より鮮明に見つけることができます。全国各地で積み重ねた知見を、次の挑戦に活かします。


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なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。


制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。


なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


地方に必要なのは、「地域理解」


こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。


地方に必要なのは、「地域理解」

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

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