国立社会保障・人口問題研究所の推計データから読み解く「地方の未来」
- 梨沙子 亀元
- 2025年12月31日
- 読了時間: 7分
更新日:6 日前

「人口減少は避けられない」
こうした言葉は、もはや説明を要しないほど浸透しています。
しかし本当に大切なのは、その中身を理解することです。
国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」は2020年の国勢調査を基準に、出生・死亡・人口移動といった要素を積み上げて算出された、信頼性の高い公的データのひとつです。
本記事では、2050年という約25年後の日本、そして地方がどのような人口構造の中に置かれるのかを、論文に基づいて読み解いていきます。
参考:「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」
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この論文は何を目的としているのか

国や地方自治体における各種地域計画等の施策立案や将来の行政需要を見通す上で、地域人口の規模や構成の将来動向を的確に把握することは基本的要件となっている。 とくに近年では、地方創生に関連して地方自治体に「地方人口ビジョン」、「地方版総合戦略」の策定が義務づけられるようになり、その基礎資料として地域別将来人口推計は広く利用されているところである。
今回の推計結果が多方面で活用され、政策の形成やその実現、人口問題の理解等に資すれば幸いである。
ポイントは政策・意思決定の前提条件として利用してほしい資料だと明言されている点です。
行政が人口推計を前提に政策を組み立てるということは、
その影響を地域の企業や事業者、生活者が必ず受けるということです。
公共投資がどこに入るか
医療・交通・教育がどこに残るか
どの地域に人が集まり、どこが縮むのか
これら、民間の事業環境やマーケットサイズも左右する要因になります。
推計の前提と方法
論文では、以下の3要素を用いて将来人口を推計しています。
推計の基本構造
出生(年齢別出生率)
死亡(生命表)
移動(国内移動・国際移動)
これらを、都道府県別・市区町村別・年齢階級別に積み上げています。
日本全体の人口問題|2050年、どうなっているのか?

まず、日本全体の姿から確認してみましょう。
推計によると、日本の総人口は
2020年:約1億2,615万人 → 2050年:約1億469万人
へと減少します。
2020年を100とした場合、2050年には83.0まで縮小する計算です。
30年間で約2,146万人が減少すると予測されています。
参考までに、この減少数は現在の近畿地方(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀)の総人口を上回る規模となります。
この人口推計は、「地方」に人が消滅するカウントダウンとも言えます。
推計された「近畿地方以上の人口減少」という事実を、今までのやり方を見直し、経営・事業戦略を再設計するきっかけにできたらと思います。
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都道府県別|増えるのは東京だけ

象徴的なのは2050年まで人口が増加すると予測されている都道府県は、東京都のみだということです。
東京都の2050年人口は、2020年比で102.5%。
全国47都道府県の中で、唯一「増える地域」です。
一方で、多くの地方では人口減少が急速に進みます。
特徴的な都道府県を抜粋した比較です。
都道府県 | 2050年総人口(千人) | 人口指数 |
東京都 | 14,399 | 102.5 |
沖縄県 | 1,458 | 99.3 |
神奈川県 | 8,524 | 92.3 |
埼玉県 | 6,634 | 90.3 |
岩手県 | 783 | 64.7 |
青森県 | 755 | 61.0 |
秋田県 | 560 | 58.4 |
沖縄県がほぼ横ばいに近い一方で、
北東北(青森・秋田・岩手)は3~4割以上の人口減少が見込まれています。
この数字だけをみても、「地方が一様に厳しい」のではなく、地域ごとに全く異なる構造ができていることを示しています。
高齢化の実態|構造の人口問題

日本全体の高齢化率(65歳以上人口割合)は、
2020年:28.6% → 2050年:38%
へと上昇します。特に深刻なのが秋田県で、2050年の高齢化率は48.4%。県民のほぼ2人に1人が65歳以上という社会です。
推計データによると、東京都、神奈川県、大阪府といった大都市圏をはじめ、ほとんどの都道府県で2050年の高齢者人口は2020年を上回ると予測されており、医療や介護サービスの需要が全国的に増大することが見込まれます。
生産年齢人口の変化

生産年齢人口とは社会を支える側の人口です。
生産年齢人口(15~64歳)の割合は、
2020年:59.5% → 2050年:52.9%
まで低下と推計されています。
この減少にも大きな地域差があります。
2050年・東京都:60.4%
2050年・秋田県:44.2%
両者の差は16ポイント以上。注目すべきなのは、2050年の東京都の水準が、2020年の全国平均を上回る点です。労働力・人材・経済活動が、構造的に東京へ集中し続ける未来を示唆しています。
推計が示す未来と向き合う
国立社会保障・人口問題研究所の推計をまとめると4点です。
日本全体の人口は、30年で約2,146万人減少する
東京一極集中は続き、地方との格差は拡大する
高齢化は全国で進み、高齢者の絶対数も多くの地域で増加する
生産年齢人口は減少し、社会の担い手不足が深刻化する
2050年は、決して遠い未来ではありません。
小学生が社会人に、若手社会人が中堅に、今働き盛りの30-40代は次世代へのバトンを考える年齢になっています。
いつかではなく、いま進行している現実なのです。
だからこそ、まずは現実を直視することが大切だと思います。
データに基づいて現状を理解することで、初めて適切な危機感が生まれ、意識へとつながります。
この推計は、あくまで現在の出生率や死亡率、国際人口移動の動向が続いた場合に描かれる未来像です。地方といえど、一枚岩ではありません。
人口減少のスピードも、構造も、地域ごとに異なります。それを知ることが、地域の未来と向き合うことでもあります。
「自分の地域はどうか?」
「現状が似ている他地域と、将来の推計にはどんな差があるのか?」
そんな視点で、あらためて見つめ直してみてください。
まとめ
地域別の将来人口推計を読むと、都市部と地方との間に明確な人口動態の分岐が浮かび上がります。
この差は、雇用創出、産業維持、地域サービスの担い手不足など、経済・社会の構造を根本から揺るがすインパクトを持ちます。
今後、地域間での生産年齢人口の格差はさらに広がり、それに伴って財政的な再分配や、意図的な集中投資の戦略も現在進行形で進んでいます。
こうした是正は「お金」を起点に組み立てられ、人は「数」としてカウントされています。
しかし、お金が起点の是正であっても、数の目標であっても、数字の多寡だけで判断するのではなく、そこで暮らす人の想いと実感に基づいて考えていくことを大切にしたいと思います。
そして、何を次世代に手渡したいのか。
想像しながら、私たち自身が選び取っていくことが重要だと思います。
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【記事を書いた人】

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