「パーセプションフロー・モデル」とは?地方・中小企業で活かせるアイデアと効果
- 梨沙子 亀元
- 10月5日
- 読了時間: 8分

今回ご紹介する「パーセプションフロー・モデル」は、消費者の認識(パーセプション)がどう変化していくかを8つのステップで可視化した、マーケティングのフレームワークです。
大手企業だけでなく、地方の老舗企業や小規模事業者でも、この考え方を取り入れることで、SNSやEC、店舗づくり、採用活動といった各施策に一貫性が生まれます。「伝える」から「伝わる」へ、その転換を後押ししてくれるフレームです。
本記事では、書籍『The Art of Marketingマーケティングの技法―パーセプションフロー・モデル全解説』の内容を参考に、地方でも実践できる活用法を解説していきます。
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目次
8つのステップで「行動の変化」を設計する
パーセプションとは?
ファブリーズのパーセプションフローモデル
パーセプションフロー・モデルとは?
8つのステップで「行動の変化」を設計する

パーセプションフロー・モデルでは、以下のような8段階の流れが提示されています。
現状(無関心・課題の自覚)
→ 認知
→ 興味
→ 購入
→ 使用
→ 満足
→ 再購入
→ 口コミ(発信)
たとえば、商品やサービスの存在を知らない段階から、広告や口コミを通じて存在を知り、興味を持ち、購入し、使ってみて満足し、繰り返し購入し、誰かに勧める、という一連の流れが視覚的かつ論理的に整理されています。
このモデルを使うことで、マーケティング担当者は「消費者がいまどの段階にいるのか」を捉えやすくなり、適切な施策を精度高く打つことが可能になります。
パーセプションとは?

マーケティングにおける「パーセプション(perception)」とは、単なる知覚ではなく、「感じ取ったことが、頭の中で意味づけされている状態」を指します。
具体的には、
知覚:消費者が頭で理解したり、心に思ったりしていること
認識:消費者が五感などを通して感じとること
この2つが組み合わさって初めて、「パーセプション」が生まれます。
つまり、感覚器で捉えた「知覚」を脳が解釈し、意味を理解した状態こそが、パーセプションなのです。
このように、商品やサービスの情報が届いただけでは不十分で、「意味づけされて記憶に残る」ことが重要だという視点が、パーセプションフロー・モデルの根幹にあります。
ファブリーズのパーセプションフローモデル
ステージ | 認識(Perception) | 認識を変える要素(知覚刺激) | 接点(例) |
無関心 | 「自分の家は臭くない」「消臭剤なんて必要ない」 | 家族や他人が指摘する「ニオイ」映像やストーリーで“無自覚なニオイ”に気づかせる | TV CM(盲臭テスト)Web動画広告 |
関心喚起 | 「もしかしてウチも臭ってる…?」 | 客観的な視点で“見えないニオイ”の存在を示す共感できる日常の例 | SNS広告記事広告動画CM |
検討 | 「本当に消臭できるの?」「安全?効果は?」 | 科学的根拠や使い方の解説他製品との違い(抗菌、香り、無香料など) | 比較記事ECの商品ページ店頭POP |
試用 | 「とりあえず試してみよう」 | 初回限定・サンプル配布口コミ・レビュー | 店頭サンプルキャンペーンモニター投稿 |
体験・納得 | 「本当に臭わなくなった!」「毎日使いたい」 | 使用後の快適さ「誰かにすすめたい」と思える体験 | リピート導線定期便SNS共有促進 |
拡散・定着 | 「ウチの常備品です」「プレゼントにもいいかも」 | 家庭内ルール化、買い置きの習慣化プレゼント・ギフト訴求 | 定期購入ブランドメッセージ広告ギフト提案 |
このようにファブリーズの事例では、
「無関心→関心喚起」の壁を超える設計(臭いに対する「自覚」を促す)
情緒的な納得→機能的な理解→再購入へつなげるストーリー
自発的な拡散や定着までの体験設計
が一貫して設計されていました。
カスタマージャーニーやファネルモデルとの違い
「注目されること」ではなく「課題の自覚や無関心の打破」から始まる点です。
カスタマージャーニー・マップ | パーセプションフローモデル | |
注目点 | 行動と接点(コミュニケーション・流通チャネル) | 認識の変化(行動や接点も含む) |
4Pとの関係 | 主にプロモーションとプレイス | プロモーション、プレイスに加え、プロダクト(製品)やプライス(価格)を含む4P全域 |
時間軸 | 過去から現在の記述が中心 | 現在から未来への設計に重点 |
役割 | 現状の課題解決や取りこぼし対策に有効 | 市場創造やブランドの意味構築に必要 |
対象範囲 | 製品カテゴリごと | ブランド固有の設計(ブランドごとに作成) |
ファネルやジャーニーが「どれだけの人に届けて、何人が買うか」という数的な視点に重きを置いているのに対し、パーセプションフロー・モデルでは「何を感じた結果、どう認識が変わったか」という心の動きと流れのデザインに注目しています。
また、「試用→満足→再購入→発信」といった購入後の体験設計にも対応しており、KPIとセットで可視化・運用できるのも特徴です。
なぜパーセプションフロー・モデルの視点が必要なのか

カスタマージャーニーでは、ユーザーの「行動」が可視化されます。
SNSを見た、広告をクリックした、店舗で試した、といった行動の点をつなげていく設計です。しかし、どのタッチポイントが最も効果的だったかを追っても、「なぜその人が動いたのか?」という意思決定の本質にはたどり着けません。
人の行動の起点は「認識(パーセプション)」の変化にあります。行動に至る前に、その人が持っていた価値観や意味の受け取り方が変わっているのです。
現代の市場では、商品の情報は簡単に比較されます。ブランドの本質的な意味が伝わらないまま、値段やスペックだけで選ばれるリスクが高まっています。だからこそ、SNSやLPといった接点を改善するだけではなく、「認識をどう変えていくか」を起点とした、全体の設計です。
「この商品は、誰の、どんな認識を、どう変えたいのか?」
認識変容のストーリーを設計する必要があります。
パーセプションフローモデルは、ファネルやカスタマージャーニーを否定するものではなく、補完する考え方です。「どこで離脱したか」ではなく、「どこで興味や意味の捉え方が切り替わったのか」を捉える。その視点こそが、これからのマーケティングに欠かせない視座となります。
小さなチームでも始められる「可視化と分担」

書籍を読むと、大きな会社が作成するフレームワークと感じるかたもいらっしゃるかと思いますが、パーセプションフロー・モデルのような流れを捉えるフレームこそ、小さなチームにこそ役立つものです。
「何を、誰が、どこまでやるのか」がクリアになるからです。やみくもに頑張るのではなく、各施策に役割と順序があると分かれば、少人数でも的を絞って動けるようになります。
1 .「販促=売る人」ではなくなる
販促担当の役割は、単に売るためのキャンペーンを考えるだけではありません。
たとえば、「まだ商品を知らない人」に知ってもらう施策なのか、 または「既に興味を持っている人」に背中を押すものなのかで、伝えるべき内容もタイミングも変わります。
同じチラシでも、「認知をつくるためのチラシ」なのか、「再購入につなげるチラシ」なのか。 その違いを可視化できれば、施策がより意味を持ったアウトプットに変わります。
2. 「SNS=フォロワーを増やす場所・再生数を伸ばす」ではなくなる
SNS運用も同じです。フォロワー数やインプレッションに目が行きがちですが、 「どの段階のパーセプションを変えるための投稿か」を意識すると、投稿の中身も優先順位も変わってきます。
【認知フェーズ】 知らない人に見つけてもらう投稿(共感・拡散性重視)
【興味フェーズ】 詳しく知ってもらう投稿(機能や物語の紹介)
【再購入フェーズ】 「あのとき良かった」を思い出させる投稿(体験の共有・レビュー紹介)
本質に迫るコンテンツの企画がしやすくなります。
3. 「接客=現場対応」ではなくなる
店舗や接客スタッフの役割も、パーセプションフローで捉えると役割が広がります。
たとえば、店頭での接客が担っているのは「試用」や「満足」のフェーズです。 実際に商品に触れたり、スタッフと話すことで、顧客の認識を変える伝え方を作成できます。現場対応をブランドの体現者として、認識を変える役割を担うのです。
単なる行動の羅列ではなく、ブランドの価値やストーリーを、認識の変化に合わせてどう段階的に開示していくかという戦略的なコミュニケーション全体を設計する指針となります。
パーセプションフロー・モデルを1枚の図にして作成することで、チームの動きが変わるかもしれません。
全体最適のマーケティングへ
パーセプションフロー・モデルの強みは、マーケティング施策を「流れ」として俯瞰できることにあります。
個々の施策をそれぞれ最適化するのではなく、「今どの段階にボトルネックがあるのか?」「どの認識を動かすことが最も効果的なのか?」という因果関係と優先順位を明らかにしながら、チーム全体で戦略を組み立てていくことができるのです。
ぜひ、マーケティングやブランドづくりに取り入れてみてください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
マーケター 亀元梨沙子






