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農産物のマーケティング思考 知っておきたい「価格弾力性」【調査で紐解く】

  • 執筆者の写真: 亀元梨沙子
    亀元梨沙子
  • 9月23日
  • 読了時間: 6分
農産物のマーケティング思考

農産物の価格は、天候や季節、物流コスト、供給量など、さまざまな要因によって日々変動します。加えて、農産物は一般的に、価格弾力性が高い(=価格に対して敏感で、安さに流されやすい)とされています。


そんな中で、どうすれば価格を上げられるのか?あるいは、どのようにして「価格ではなく価値で選ばれる」商品をつくっていけるのか?


本記事では、実際に弊社で行った消費者アンケートのデータも交えながら、農産物マーケティングにおける「価格」と「価値」の設計について考えていきます。




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価格弾力性とは?


価格弾力性とは

価格を上げたとき、買われ続けるかどうかの「反応度」を測るもの

価格弾力性とは、価格が変化したときに、需要(=購入量)がどれくらい変わるかを示す経済学上の指標です。



価格弾力性の2つのパターン


■ 弾力性が大きい(価格に敏感)

→ 少し値上がりしただけで、購買を控えたり、他の商品に切り替えられやすい。

  • よくある例:お菓子・日用品・代替がきく野菜や果物など


▼ 価格を上げると需要が大きく減る

(=価格を上げにくい)

  • カテゴリーヘビーユーザー(必ずしもロイヤルではない)

  • Utilitarian消費(機能的で合理的な購買)

  • 個人的な日常消費

  • 普段の生活文脈(スーパーでの価格比較など)


価格を上げると「他の選択肢に流れる」可能性が高くなります。



■ 弾力性が小さい(価格に鈍感)

→ 値段が多少上がっても、変わらず購入されやすい。

  • よくある例:社会的消費、生活必需品、特別な贈り物など


▼ 価格を上げても需要が減りにくい

(=価格を上げやすい)

  • 既存顧客のプレファレンスに合ったPOD(独自の強み)

  • Hedonic消費(楽しさ・快適さ・ご褒美目的)

  • 社会的消費(応援・ギフトなど)

  • 特別なオケージョン(旅行先・贈り物・記念日)

  • 感情的なブランド構築ができている


価格を上げても「欲しい理由」が強く、需要はあまり落ちません。



農産物はなぜ、価格弾力性が高くなりやすいのか?


農産物はなぜ、価格弾力性が高くなりやすいのか?

多くの農産物は、構造的に「価格に対する感度が高くなりやすい」傾向があります。

主な理由は以下の3つです。


1. 代替品が豊富

たとえば、ほうれん草が高ければ小松菜に、レタスが高ければキャベツに。似たような栄養価・調理用途の食材が多く、簡単に切り替えができます。


2. 鮮度・保存性に限界がある

生鮮野菜や果物は長期保存が難しく、収穫後は市場に出荷せざるを得ません。

このため、価格が安くても売るしかなく、供給量を柔軟に調整することが困難です。


3. 生産期間の長さと制約

農産物の生産は、作物の種類にもよりますが、種まきから収穫までに数ヶ月から1年かかることもあります。このため、市場価格が上がっても、すぐに生産量を増やすことができません。逆に、価格が下がっても、すでに植えてしまった作物をすぐにやめるわけにもいかず、供給量を急に減らすことも困難です。



とある果実に見る「価格と価値」の二層構造


弊社が実施したとある果実に関する全国調査からは、農産物市場における価格と価値の二重構造が明らかになりました。


▼ 日常消費層の傾向

  • 喫食経験率: 過去1年間でその果実を食べた人は全体の57.95%。高齢層ほど喫食率が高く、日常的な消費習慣が根づいています。

  • 購入価格帯: 自家用の価格帯は501〜1,000円/kgが中心で、38.8%を占めます。

  • 購入チャネル: スーパーでの購入が76.4%と主流。

  • 重視点: 「味・甘さなどの品質」(68.4%)と「価格の手頃さ」(54.1%)が上位。 

    → 手頃さ×品質の両立を重視するボリュームゾーンが約7割存在。


▼ 高価格許容層(価値重視)の傾向

  • 価格受容: 1,001円/kg以上でも購入意欲のある層が25.6%(4人に1人)。

  • 重視点: 高支出層は「品質」を最重視し、あわせて「ブランドや産地」「栽培方法や生産者の想い」といった付加価値にも強く反応。


調査結果から、農産物市場では「手頃価格を求める層」と「高付加価値を求める層」が共存する二層構造となっていることが見えてきます。



価格弾力性をふまえたマーケティング設計とは?


価格弾力性をふまえたマーケティング設計とは?

価格弾力性をマーケティングに活かすうえで重要なのは、 「誰が、何に対して、どんなときに財布のひもをゆるめるのか?」を見極めることです。


▼ 弾力性が小さい(価格感度が低い)=価格を上げても売れる場合

  • 特別なオケージョン(お祝い・季節の贈り物など)

  • 生産者や産地への信頼感・共感

  • SNSなどで支持を集めている商品・ブランド

  • 「ここでしか買えない」「糖度保証つき」など、明確な差別化要素(POD)がある商品


▼ 弾力性が大きい(価格感度が高い)=価格を上げると売れにくい場合

  • 毎日の買い物・献立で使う汎用的な食材

  • 価格比較が容易で、代替手段が複数ある商品

  • ブランドが確立されておらず、ストーリーが伝わっていない商品



価格を上げる/価値を高める戦略アイデア


価格を上げる/価値を高める戦略アイデア


価格を上げるには「価格に見合った理由」をきちんと設計することです。


● 価格を上げるには

  • 糖度保証や農園限定など、規格の明確化

  • 数量・季節・流通チャネルを限定し、特別感を演出

  • 贈答用パッケージや熨斗・メッセージカードなどの付加価値を加える


● 価値を高めるには

  • 生産者のストーリーや地域性をコンテンツ化して発信

  • 「健康」「縁起」「環境」など、意味ある文脈と結びつける

  • 定期便・少量パックなど、使いやすい形で提供する

  • 「贈る相手」「使うシーン」などの提案をセットで伝える


「誰にとって、何が価値なのか」をデータで確かめることが重要です。

調査は、感覚を確信に変えるためのプロセスとして、価値ある価格設定のために、まずは選ばれる理由を紐解いていくために実施します。



まとめ


価格に対して反応が異なる複数の層が共存している農産物市場では、

それぞれの消費者が「何を重視しているのか」「どのような文脈で選んでいるのか」を理解することが欠かせません。


そのためには、消費者インサイトを捉えるための調査設計と分析が極めて重要です。

購買動機、用途、価格帯、選択基準などの相関を丁寧に見ていくことで、価格戦略や商品企画の根拠が見え、価値で選ばれる農産物を設計するヒントが得られます。

値下げに頼らず、きちんと価値を伝える。そんなマーケティングを実装するために、まずは消費者の声に耳を澄ませるところからはじめてみてはいかがでしょうか。



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当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。


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マーケター 亀元梨沙子




















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