売れる商品をつくるマーケティング実践プログラム -第2回 市場リサーチ編-
- 森勇人

- 10月27日
- 読了時間: 7分

2025年10月23日、静岡市のコ・クリエーションスペースにて、「売れる商品をつくるマーケティング実践プログラム」が開催されました。
主催は株式会社HONEであり、代表の桜井貴斗が伴走支援者として、3ヶ月にわたり全6回の実践講座を行います。静岡県内で自社ブランドやサービスを持つ事業者を対象に、マーケティング戦略を刷新していくことを目的としています。
第2回のテーマは、市場リサーチです。フレームワークを用いながら、自社を取り巻く環境をどう把握し、どのように勝ち筋を見出すのかを、豊富な事例とともに学ぶ内容となりました。
ぜひ最後までご覧ください。
株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。
目次
LINEの5C分析
任天堂「Wii」市場を創造した逆転の発想
文脈で市場を拓いたポカリスエット
「味」ではなく「味わい」をデザインする

冒頭では、同日行われていた静岡お茶まつり2025の、トークセッションの内容が共有されました。
静岡茶の価値をどう再定義するか。
印象的だったのは、「味ではなく“味わい”をつくる」という言葉です。 味そのものよりも、「どんなシチュエーションで体験するか。」が価値を決めます。たとえば、「山頂で食べるカップラーメン」が美味しく感じるように、文脈によって同じ商品がまったく違う価値を持ちます。
静岡茶も同様に、飲む場所・時間・人との関わりをデザインすることで、商品の魅力を何倍にも引き出すことができます。これこそが、地域ブランドの味わい設計です。
価値の文脈化


続いて、嬉野茶の取り組みが紹介されました。かつて0円で提供されていた茶体験を、10年かけて「1杯1万円」の体験価値にまで高めた成功例です。背景には、文化的文脈を商品価値に転換するプロセスがありました。
桜井は「地域ビジネスにおいては、文化をつくる基盤と、実際に売るための仕組みの両輪が必要」と言います。 事業としての収益性と、文化としての価値創出を両立させることが、持続的なブランドの条件です。
「ほっとするお茶の価値を高めるには、まず“ほっとしない体験”を設計せよ」という逆説的な発想も紹介されました。緊張や非日常を経て飲む一服が、何よりも深い安心をもたらします。体験設計によって価値が生まれることを、茶道の哲学になぞらえて解説しました。
▼あわせて読みたい🙌
市場を読む5C分析とは

今回の講座では、3C分析を発展させた、5C分析がテーマになりました。
5C分析は、頭文字のCからきており、
Consumers(顧客):消費者の深層心理について理解する
Competitors(競合他社):市場シェア、企業の規模、売上高
Company(自分):自社の強み・弱み
Community(景気・世論):社会的な変化・法規制・人口変動・世論・景気など
Customers(関連業界の動き):販売店、流通等、自社と消費者の間に入っている存在
の5つの要素を分析するフレームワークです。世論や関連業界の動きの視点を取り入れることで、より包括的な市場環境の全体像を把握し、マーケティング戦略を立てる際に役立ちます。これにより、企業は単なる競合比較にとどまらず、社会トレンド・関連業界・取引構造までを、俯瞰することができます。
LINEの5C分析

5C分析の実例では、LINEを紹介。利用者9,700万人を誇り、学生から社会人まで幅広く利用されています。
メッセージアプリであるSlackや、ダイレクトメッセージ機能があるXなどと比較。それらと比べてLINEは、無料で通話・スタンプ送信などが可能であり、連絡ツールとして、日常生活の中に浸透しました。
スタンプクリエイターや企業も参入し、広い経済圏を形成しています。LINEは単なるSNSではなく、社会的環境と連動した生活インフラとして進化した好例といえます。
桜井は、「市場からどんな勝機があるかを見出すことが大切」と話します。生成AIを活用すれば、基礎データの収集は容易になった今こそ、どこで勝つかを判断する力が問われます。
文脈の再設計で市場を開く

多くの競合が乱立する中で、自社の強みだけを訴える手法では、差別化が難しくなっています。そこで重要になるのが「文脈の再設計」です。
同じ商品でも、「どんな状況で」「どんな気持ちで使われるか」という体験の文脈を変えることで、新しい市場が生まれます。
文脈を設計し直すことは、既存の枠組みの外に新たな価値を見出す行為でもあります。
実際に文脈を再定義することで、市場を広げた企業の事例を見ていきます。
任天堂「Wii」市場を創造した逆転の発想

ゲーム市場を例に、桜井は任天堂「Wii」の戦略を紹介。 当時、ゲーム機は高難度化し、初心者や子どもが離れていました。任天堂は、あえて非ゲーマー層に焦点を当て、誰でも感覚で操作できる設計を導入しました。
また、ヨガやスポーツなどの健康志向を取り入れ、母親層も味方につけました。その 結果、子どもから高齢者まで楽しめる新市場を開拓し、発売60週で2,000万台突破という記録を打ち立てました。
桜井は、「 市場分析の目的は、競合に勝つことではなく、競合のいない場所を見つけることにある」と話しました。
文脈で市場を拓いたポカリスエット

続いて、文脈を再設計して市場を広げた事例として、大塚製薬のポカリスエットが取り上げられました。
発売当初の昭和時代、甘い清涼飲料が珍しかったことから「甘すぎる」と敬遠され、販売は苦戦しました。その後、「風邪の時に母が買ってくる飲み物」として一定の地位を得たものの、成長の限界に直面します。
参加者は、課題に直面したポカリが、どのように新しい市場に展開できたのかを考えるワークに取り組みました。

同社が2010年代後半から進めた、「中高生の青春を応援する飲料」へと広告文脈の転換でした。味も価格も変えず、「病気」から「挑戦」へと意味づけを変えたのです。
特に「ポカリダンス」プロジェクトはその象徴であり、ポカリは飲み物から青春を支える存在へと進化しました。
競合を三層で捉える ― カテゴリー/ジョブ/タイム

プログラムの後半では、「競合の三分類」が解説されました。
カテゴリー競合 … 同業他社(例:ポカリとアクエリアス)
ジョブ競合 … 同じ価値を提供する異業種(例:コーヒー、サプリメントなど)
タイム競合 … 可処分時間を奪う存在(例:アイスやグミなど)
企業は往々にして同カテゴリー内しか見ていません。しかし、顧客が払うのは、お金だけではなく時間でもあります。たとえば、移住促進を考える場合、競合は他県だけでなく「週末旅行」「ワーケーション」「高級ホテル滞在」なども含まれます。
同じ時間とお金を奪い合う存在を特定することが、真の市場理解につながります。
まとめ 市場を見る目を養う

今回の市場リサーチ講義は、分析手法の学習を超え、市場をどう捉えるかという思考法の転換を促す内容でした。
静岡茶の味わいの話に始まり、全国ブランドの成功事例へと展開する中で、共通していたのは「文脈を設計する力」です。数字を読むだけでは市場は動きません。消費者の感情、体験、生活文脈を読み解くことが、マーケティングの本質なのです。
HONEのサービスについて
当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。
地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。

\こ相談はこちらから/
またサービスのリンク先はこちら↓
その他、気軽にマーケティングの相談をしたい方のための「5万伴走プラン」もスタートしました。詳細はバナー先の記事をお読みください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

株式会社HONE
インターン/マーケター見習い 森勇人
静岡生まれ、静岡育ち。 大学3年次、1年の休学をして全国36都府県を巡る。山形県西川町では3ヶ月の地域おこし協力隊インターンを経験。 復学後、ご縁があり株式会社HONEにてインターン/マーケター見習いとして奮闘中。








