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【レポート】「アイデアで天下統一!マーケティングプレゼン対決」~徳川家康を活かし、観光・採用・新規事業で静岡市を活性化せよ!~

  • 執筆者の写真: 和貴 浅見
    和貴 浅見
  • 3 時間前
  • 読了時間: 8分
レポート】「アイデアで天下統一!マーケティングプレゼン対決」

2025年11月21日、静岡マーケティングサロンと徳川みらい学会が 「アイデアで天下統一!マーケティングプレゼン対決」が開催されました。


「徳川家康公を活かして、静岡市を活性化せよ!」のミッションの下、集結したのは静岡の最前線で戦う30代・40代の現役マーケターたち。


「観光・採用・新規事業」の3つをテーマに、地域資源を単なる歴史談義ではなく「稼げる資産」へと変えるマーケティング戦略が競われました。


「歴史×マーケティングでまちは本当に変わるのか」という問いに本気で挑んだプレゼンバトルの全貌をレポートします。




登壇者紹介


桜井貴斗

桜井 貴斗 (株式会社HONE)

「地方に骨のあるマーケティングを実装する。」をミッションに、全国の地域企業を支援。現場主義と独自フレームで、伝統と市場をつなぐマーケティング実践者。


静岡県内を中心に第一線で活躍する経営者・マーケター計8名が登壇されました。

各プレゼンターの氏名および会社名につきましては、以下のチラシ画像よりご確認いただけます。


プレゼン対決イベントのチラシ


株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料




あなたの街が観光客に素通りされてしまう理由


セミナースライドに「ランドマークとはその地域を特徴づける目印となる物」と映っている
弊社HONE代表の桜井は「静岡市のランドマーク」に注目しプレゼンを行った

弊社HONE代表の桜井が静岡市の課題として指摘したのは「ランドマーク…つまり、この街の顔の不在」です。


静岡市のランドマークを聞いても、久能山東照宮、三保松原、静岡おでん……答えがバラバラになることこそが、この街の弱点でした 。


そして、日本の国内旅行消費額は年間25兆円を超えるのに対して、そのうち静岡県に落ちているお金はわずか「0.18%(約469億円)」


静岡県の旅行消費額、訪問者数などをまとめたスライド
47都道府県のなかでも、静岡県の旅行消費額や訪問者数などが低い位置づけにある

なぜなら、統一されたアイコンがないため、観光客が「わざわざ行く理由」を持てず、素通りしてしまうからです。


この状況を打破する答え。それが、駿府城天守閣を再建し、名実ともにこの街の「ランドマーク」に据えるという大胆な提案でした 。



城に18億円投資し「6,300%」のリターンを生む


18億円投資し大改修を行った「岡山城」
※岡山市資料より抜粋

天守閣の再建というと、「人口減少の時代に、今さらハコモノ?」 と思うかもしれません。

しかし、桜井さんが提示したのはロマンではなく、岡山城の成功事例を根拠とした強固なロジックでした。


静岡市とほぼ同規模の予算(約4000億円)を持つ岡山市は、城の改修に「約18億円」を投じました 。 その投資は、劇的な数字となって返ってきました。


  • 年間来場者数:約 43万人(改修前の2倍超)

  • 経済波及効果:約 113億7000万円

  • 費用対効果: 約6317%

  • 雇用創出:約2,000人


18億円の投資で、単年で113億円のリターンを生む 。 それだけではありません。 工事や案内、交通整理のスタッフなど、このプロジェクト一つで約1000人もの新たな雇用が生まれるのです 。



成功の鍵は「顧客の体験価値」


静岡市には、総工費62億円をかけた「歴史博物館」があります。素晴らしい施設ですが、昨年の来場者は目標を割り込み、現在は約3億円規模の運営課題を抱えているのが現実です 。


なぜ、62億円の博物館が苦戦し、18億円の城(岡山城)が成功するのか。

そのヒントは、「顧客のインサイト」にありました。


岡山城の訪問者における、高評価の口コミ
岡山城における、高評価の口コミを分析した

岡山城の口コミを分析すると、高評価の約6割が、博物館としての展示内容ではなく「天守閣という建物そのもの」に向けられていたのです 。


多くの観光客が求めているのは、詳細な歴史の勉強ではなく、まずは一目でわかる「シンボル」でした。


さらに「稼ぐ」という点では、愛媛県の大洲城がモデルになります。 ここは行政予算だけでなく一般寄付を募って建設されました。


最大の特徴は、天守閣を貸し切る「キャッスルステイ」です。



その価格はなんと1泊100万円 。 超高単価ですが、特別な体験を求める富裕層を惹きつけ、周辺の宿泊事業を含めると年間約4,500人の滞在客を生んでいます 。


ただ「箱」を作るのではなく、人が集まるシンボルを作り、そこでしかできない「高単価な体験」を売る。 これが、税金に頼らない持続可能な観光投資の正体です。



夢物語で終わらせない実現方法


ここまでの例も鑑みて、駿府城天守閣の再建で期待される効果は以下の通りです。

・観光客数:約50万人増加

・雇用創出:約2,000人

・経済効果:約100億円規模の実現


一見、あまりに理想的な話に映るかもしれません。しかし、この壮大な構想を単なる夢物語で終わらせず、実現へと導く『確かな鍵』が一つだけ存在します。

それが、「行政と民間」が協力・連携したまちづくりです。


 かつて岡山の礎を築いたzが「武家(行政)」と「商人(民間)」を融合させたように、現代においてもこの両輪が噛み合った時、街は劇的に動きます 。


そして、資金調達の方法は、税金だけではありません。


「行政と民間」の協力・連携が実現の鍵

企業版ふるさと納税、クラウドファンディング、市民ファンド、企業スポンサーシップ……などマーケティングの視点があれば、民間から資金を集めるスキームは様々な形で描けるのです。



【観光編】日帰り客をどう「宿泊客」に変えるか


観光編:観光客の滞在時間の短さが焦点に

観光編のテーマは「徳川家康を活かして静岡市の観光を活性化させよ」


交通アクセスが良い反面、多くの旅行者が「日帰り」で通過してしまい、宿泊費などの大きな消費が生まれない静岡市。


この「滞在時間の短さ」という課題に対し、2名のプレゼンターは「空間」と「時間」という対照的なアプローチで解決策を競い合いました。


  • 田畑 峻幸 さん 「謎解き×街歩き」を提案。謎解きを目的に訪れた人を商店街へと誘導する導線を設計し、エリア内での人の流れを生み出すことで、地域全体を活性化させる計画です。


  • 伊藤 浩二 さん 「ナイト&モーニングエコノミー」を提案。 「家康おでん」や「家康薬湯」で夜の魅力を、「家康ウェルネス御膳」や「モーニングルーティーン」で朝の体験を創出。夜と朝の両方にコンテンツを用意することで、滞在時間を強制的に延ばし、観光客にとって「宿泊」を必須化させる戦略を提示しました 。



【採用編】歴史を現在の採用活動・組織作りに活用


採用編:歴史と「企業採用」を結びつける

採用編のテーマは「徳川家康公を活かして、静岡企業の採用を活性化せよ」


「歴史上の人物」と「現代の採用活動」という一見相容れないこの二つを結びつけるため、2名のプレゼンターはそれぞれ全く異なるアプローチで解決策を提示しました。


  • 鈴木 悠資 さん  「駿府人材学府」を提案。採用難の根本原因はテクニックではなく「経営者の覚悟」にあるとし、家康の組織運営(家臣を家族のように扱う愛と厳しさ)をトップに叩き込む合宿プログラムを提示。「採用=統治である」と定義づけました。


  • 曽根田 光 さん

     「家康式HRテック」を提案。若者に流行中のMBTI診断と徳川四天王を掛け合わせ、「あなたは榊原康政タイプ」と相性を可視化するアプリを考案。歴史を教訓としてだけでなく、「組織のミスマッチを防ぐ機能」として実装しました。



【新規事業編】歴史資産を「現代の課題」に繋げる


新規事業編:歴史資産を「現代の課題」に繋げる

新規事業編のテーマは「徳川家康公を活かして静岡市に新たな産業や事業を生み出す」


ここで鍵となったのは、ゼロから新しいものを発明するのではなく、既存の歴史資産を「誰が切実に求めているか」を見極めるマッチングの視点でした。


2名のプレゼンターは、それぞれ「教育現場」と「世代間」という異なる領域の課題に家康公を接続させ、新たなビジネスモデルを提示しました。


  • 野田 拓志 さん

    「探究学習プログラム」を提案。徳川みらい学会が持つ「知識や人脈」を、指導やネタ不足に悩む「学校の先生」に提供する仕組みです。 専門家が学校に出向くことで、先生の負担を減らしつつ、持続的に収益を生み出すビジネスモデルを企画しました。


  • 安藤 悟 さん

     「世代間交流型 謎解き事業」を提案。「次世代に貢献して幸福感を得たい中高年」と「親孝行や上の世代に対する道徳心」のある若年層をマッチングし、経済的価値を生むことを企画しました。



まとめ


今回のプレゼン対決を通じて示唆されたのは、歴史資産の新たな可能性です。


歴史とは、博物館で大切に保存されるべき「守る宝」であるだけでなく、現代の地域課題(雇用・収益・教育)を解決へ導く「有効なソリューション」になり得るということです。


皆様の地域にも、「古い昔話」として眠っている武将や偉人、あるいは産業の歴史があるのではないでしょうか。 それらを、今回登壇したマーケターたちのように、今一度多角的な視点で捉え直してみてはいかがでしょうか。


過去を懐かしむだけでなく、新たな光を当てることで、歴史は現代を生き抜くための強力な資産へと変化します。

そうした視点の転換こそが、地域活性化への確かな一歩となるはずです。



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動画編集・ライター 浅見和貴

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