【TSUGU SHIZUOKA|イベントレポート】全国の出場者に聞く、アトツギ甲子園のリアル〜全国の歴代出場者が語る、応募・ピッチ・その後について〜【2026.10.30】

一般社団法人TSUGU SHIZUOKAは2026年10月30日(金)、静岡市コ・クリエーションスペースにて、事業後継者や後継予定者、そのサポーターを対象としたイベントを開催しました。
今回は、過去の「アトツギ甲子園」に出場した4名が静岡に集結。「全国の出場者に聞く、アトツギ甲子園のリアル」をテーマに、出場までの準備や出場後の変化について、トークセッション形式でお話しいただきました。
本記事では、4名の経験を通して見えてきた、アトツギ甲子園が社内にもたらす変化を紹介します。
株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。
TSUGU SHIZUOKAとは

一般社団法人TSUGU SHIZUOKAは、2026年6月1日に静岡で生まれた、事業後継者(アトツギ)とその候補者のためのコミュニティです。

前回のイベントレポートも合わせてご覧ください。
▼参考:【TSUGU SHIZUOKA|イベントレポート】アトツギ甲子園、その挑戦は何を変えたのか?〜家業の見え方が変わり、ともに挑む仲間ができるまで〜【2026.09.25】
アトツギ甲子園とは
アトツギ甲子園は、全国各地の中小企業・小規模事業者の後継予定者が、既存の経営資源を活かした新規事業アイデアを競うピッチイベントです。
挑戦資格は、39歳以下で、代表権を持つ前の後継予定者であること。地方大会を勝ち抜いた出場者が、決勝大会で競い合います。
イベント登壇者紹介

株式会社ナカムラ丨中村慎吾 氏(愛知):第6回中部ブロック優勝、ファイナリスト選出。愛知県アンバサダー
有限会社モールドモデル丨佐藤賢 氏(山梨):第6回経済産業大臣賞受賞。山梨県アンバサダー
有限会社稲垣石材店丨稲垣遼太 氏(愛知):第6回優秀賞受賞。過去最多の4回エントリー、3回決勝進出。TSUGU SHIZUOKAのイベント皆勤賞
株式会社岡崎竜城スイミングクラブ丨大森玲弥 氏(愛知):第5回優秀賞受賞。史上最年少での受賞
外からの評価が、社内の見方を変える

今回のトークセッションで特に印象的だったのが、出場後の社内の変化に関する話題です。私はアトツギ甲子園を外に向けた発信の場だと思っていましたが、実は社内にも良い影響を与えていたのです。
有限会社モールドモデルの佐藤さんは、経済産業大臣賞の受賞をきっかけに、 社内の雰囲気が明るくなったと話します。
会社全体に挑戦を肯定する空気が生まれ、工場長をはじめとするチームが、新規事業により力を注げるようになったそうです。

株式会社岡崎竜城スイミングクラブの大森さんが挑戦をしたきっかけは、広報の必要性を感じたからでした。水泳を教える現場では水着になるハードルもある中で人手不足が課題となっており、採用活動を進めるにあたって出場を決めました。
しかし、社内の反応は決して好意的なものばかりではありませんでした。ただし、結果を残したことで社内の空気が変化したと言います。
「認められたもの勝ち。結果を残せば、事実は事実。」
スイミングクラブの会員さんが優秀賞受賞を喜んでくれて、新聞記事や祝福の言葉を社員に送りました。会員さんの喜びも、社内の雰囲気に変化をもたらす大きな後押しになりました。外部の反応を通して社員のみなさんからの理解を得られるようになり、広報活動に対する疑問の声が以前より減ったと言います。

ピッチの準備を通して、自社の本質的な強みが言葉になる
アトツギ甲子園への準備は、自社を見つめ直す機会にもなります。
株式会社ナカムラの中村さんは、飴を単なる食品として売るのではなく、会話のきっかけになる「コミュニケーションツール」と捉え直しました。
そうして生まれたのが、ロゴやメッセージを入れられる「まいあめ」です。「食べられるチラシ」として、広告や採用など様々な相談が寄せられるようになり、1万を超える企業や団体と取引をしています。
さらに、日本初のオーガニックキャンディで、CO2を44%削減し、残りをJクレジットでオフセットした「カーボンニュートラルキャンディー」を生み出しました。

出場後は、地方大会が終わって短期間で、サプライチェーン全体で脱炭素を進めたい製造業や海外のOEMなどから、様々な問い合わせが届いたそうです。
「公を味方にすると、民がついてくる。」
国が認めた場で評価されることは、取引先にとっても安心材料になります。中村さんは、アトツギ甲子園を営業の機会としても捉えていました。
さらに中村さんは、相手に合わせて言語化する能力が鍛えられると言います。審査員向けに磨いた言語力は、銀行や従業員、家族、取引先にも使えるスキルです。

佐藤さんは挑戦を重ねる中で、「多品種」に対応するため、社員一人ひとりが”独自に”動けることが強みだと気づきました。同業他社だけでなく、製造業以外の現場にも足を運び、他との違いに着目しながら自社の特徴を探していったそうです。
佐藤さんは、第6回で経済産業大臣賞を受賞していますが、最初から順調だったわけではありません。「結果的に3カ年計画だった。」と話してくれました。
1年目は技術的な説明に終始してしまい、書類落ち。2年目には地方大会に進出し、3年目には「産廃で技術と食を守る、鋳物屋の世界初への挑戦」というテーマで決勝大会に進出しました。産業廃棄物として埋め立てられている鋳造に使う石こうという素材の再資源化への取り組みを発表して、見事決勝大会でチャンピオンに輝いたのです。
また、複数回出場している有限会社稲垣石材店の稲垣さんによると、事業のアイデアは毎回まったく変わるわけではなく、挑戦を重ねるごとに少しずつ進化していくとのことです。

大会に向けた準備は、単なる発表資料づくりではありません。自社の強みを見つけ、事業そのものを磨いていく時間でもあるのです。
全国に仲間ができる
アトツギ甲子園の魅力は、社内や事業の変化だけではありません。全国に仲間ができることも、大きな価値の一つです。
稲垣さんは、アトツギ甲子園で100人の友達ができたと言います。
「1回の出場で約25人、4回出場すれば100人の仲間ができますよ。」と。挑戦を通して、会社経営への想いや考え方に共感できる人とのつながりが広がっていくのでしょう。

大森さんは、小中高をアメリカで過ごし、祖父の病気をきっかけに日本へ帰国、2021年に家業へ入りました。そんな大森さんにとって、出場者同士のコミュニティは居場所であり、ガス抜きができる場だったそうです。
また、「こういう素敵なアトツギがいるから何か一緒に仕事をしたい。」というアプローチで、これまでにないコラボレーションが生まれる面白さもあります。実際に、スイミングクラブの子どもたちを稲垣さんの石切り場へ連れていき、石で遊ぶイベントを行ったこともあるそうです。
HONEでは、全国の事業承継者・予定者400名を対象に徹底調査を行いました。『事業承継(アトツギ)実態調査レポート』は下記のリンクからご覧ください。
これから出場を考えている方へ
最後に、これから挑戦する方へのメッセージをいただきました。
稲垣さんは「出場にはメリットしかない。」ときっぱり。変えたい想いがあるなら、まずは一歩踏み出してほしいと話しました。
佐藤さんからは、「たとえ甲子園球児のまま終わってもいい。」という言葉がありました。佐藤さんが家業に入るきっかけは、祖母との死別でした。お通夜に集まった社員たちを見て、彼らとともに家業を支えていこうと考えました。アトツギ甲子園に向き合う中で、大きな成功を収めた人と同じ道を目指さなくても、自分にしかできないことがあると気づきました。自分が果たすべき、人生の使命を見つけたのです。
「ほんとに継ぎたいの?」
その問いに自分なりの答えを見つけていく。アトツギ甲子園は、事業の可能性を広げるだけでなく、自分自身と向き合う機会にもなっているようです。

まとめ:外に出ることが、社内を変える入口になる
今回のトークセッションから見えてきた、アトツギ甲子園がもたらす変化は、大きく4つあります。
外からの評価が、社内の見方を変える。
準備を通して、自社の本質的な強みが言葉になる。
全国に仲間ができ、挑戦を続ける支えになる。
自分が家業を継ぐ理由に向き合える。
佐藤さんや大森さんの話からは、受賞や会員の反応が社内に届くことで、挑戦への理解が少しずつ変わっていく様子が伝わってきました。みなさんの踏み出す一歩が、社内を動かすきっかけになるかもしれません。

第7回アトツギ甲子園の応募のご案内
第7回アトツギ甲子園の応募は既に始まっています。
エントリーの締切は2026年11月25日(水)18:00、応募書類の提出締切は2026年11月27日(金)12:00です。
詳細は公式サイトをご確認ください。
次回イベントのお知らせ
静岡にも、アトツギを孤独にしない仲間がいます。TSUGU SHIZUOKAでは、これからもアトツギの皆さんが集まり、つながる場をつくっていきます。

次回のイベントはこちらです。
アトツギのためのMVV・人事評価制度設計ワークショップ
~「社長の感覚」から脱却し、共感で組織を動かす~
・日時: 2026年11月26日(木)18:30〜20:30
・会場: 静岡市コ・クリエーションスペース
自社の理念や人事評価制度について考え、共感で組織を動かすためのワークショップです。
事業を次の世代につないでいくために、組織づくりを見つめ直してみませんか?
アトツギのみなさんはもちろん、後継者を支える方もぜひご参加ください!
▶ 詳細・お申し込みはこちら
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
インターン 石井恭華
静岡県出身、大学在学中。経済学を専攻し、地域や産業をテーマにしたゼミに所属。
能登半島での復興支援や、静岡県内でのイベント運営などに関わる中で、地域の活動が「どうすれば人に届き、続いていくのか」に関心を持つ。
現在は株式会社HONEにてインターンとして、地域や企業の取り組みに関する記事を作成し発信している。













