【TSUGU SHIZUOKA|イベントレポート】伝統と革新の事業デザイン 〜地域のレガシーを次世代へ繋ぐ、アトツギの葛藤と挑戦〜
更新日:10月9日

一般社団法人TSUGU SHIZUOKAは2026年8月27日(木)、静岡県静岡市の葵タワー17階にあるトーマツセミナールームにて、事業後継者やそのサポーターを対象としたイベントを開催しました。
今回登壇したのは、株式会社鳥善の代表取締役である伊達善隆さんです。

「伝統と革新の事業デザイン 〜地域のレガシーを次世代へ繋ぐ、アトツギの葛藤と挑戦〜」というタイトルのもと、伊達さんの組織や事業に関する葛藤をトークセッション形式でお聞きしました。
当日はこれまでの苦悩やこれからの展望をTSUGU SHIZUOKAメンバーと伊達さんが語り合う場面もありました。与えられた環境の中で自分の心を持ち続け、周りと共に進むためにはどうしたらいいのか。
本記事では、伊達さんがどのような経験をしてきて、今何を考えているのか、組織や事業の運営を担う方のヒントになる考え方をご紹介します。
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TSUGU SHIZUOKAとは

一般社団法人 TSUGU SHIZUOKA(つぐ しずおか)は、2026年6月1日に静岡で生まれた、事業後継者(アトツギ)とその候補者たちのための新しいコミュニティです。弊社・桜井もTSUGU SHIZUOKAの代表理事を務め、「血の通ったアトツギカルチャーを静岡に」というミッションのもと、アトツギならではの悩みやリアルな情報を持った人が集まる機会を創り出しています。
TSUGU SHIZUOKAのホームページはこちら
2026年7月10日にはキックオフイベントが開催され、本格的に始動しました。下記の記事では、立ち上げメンバーの想いをレポートしています。合わせてご覧いただけますと幸いです。
参考:【レポート】TSUGU SHIZUOKA 創設イベント〜静岡のアトツギを孤独にしない、やさしく有機的な共創エコシステムの幕開け〜

登壇者・伊達さんの紹介

今回のイベントに登壇した伊達さんは、静岡県浜松市に生まれ、新卒で経営コンサルなどを経験した後に株式会社鳥善へ入社しました。2019年には、株式会社鳥善の6代目として代表取締役に就任し、婚礼事業を中心とした事業を行っています。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により経営状況が落ち込み、当時50名いた従業員は、料理長の1名が残り、他の49名は退職をしたという背景も抱えています。また、まちづくりを手掛ける株式会社HACKや、やらかしまいか株式会社の創業にも関わっている方です。

ただ前に進むだけの日々、コロナによって変わった景色

代表として会社の運営を任されたものの、先代や社員とのコミュニケーションは簡単なものではなかったと言います。周囲に後押しされながらも、コロナで事業がストップするまでは立ち止まって考える機会がなく、自分の強みが何かわからないまま進んでいたそうです。
コロナが落ち着いてからは、日本で働いているインド人向けのベジタリアン事業「ベジミール」や新川モールの空間プロデュースと管理のような地方創生・コミュニティ事業も展開しています。婚礼以外の事業が育った結果、コロナ前に7割を占めていた婚礼事業の割合は現在、全体の3割となっています。
「食と伝統とこの街から逃げない」。伊達さんが大切にしている姿勢の背景には、どのような葛藤と気づきがあったのでしょうか。
ビジョンの言語化と背中を見せる文化からの脱却

伊達さんは、「アトツギはラッキーなんだ」と話します。良い暮らしをしている場合が多く、良い業績や良い雰囲気のイメージを持ったまま会社に入ってしまうと言います。伊達さんが一社員として働いていた頃に見ていた景色と、社長になって売上なども背負うようになってからの景色は違っていました。
日本には「背中を見てわかってほしい」という価値観がありますが、実際には対話の時間が必要だったと伊達さんは振り返ります。
そのことに気づいてからは、実績や結果を示す数値だけを語るのではなく、事業によって「誰の何を豊かにするのか」という言葉に置き換えたことで、社員の共感が生まれ始めました。

1on1の時間を設け、お互いの考えを共有する時間も作っています。採用してもすぐに辞めていくという状況が5年間続き、苦しい時期もありましたが、次第に社員同士でも話し合いが行われるようになり、今も経営は続いています。
アトツギは頂き物だからこそ、先代が言葉でしていなかった価値も自分の言葉で見つけ直し、周りに還元していく。伊達さんはそのことを大切にしています。
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事業のコアと新規事業のバランス

「食を通じて、人と街の幸せと可能性に向き合う」
今の株式会社鳥善は、これを軸に事業を展開しています。
会社のコアにたどり着くまでには、どのようなプロセスがあったのでしょうか。
きっかけは、コロナの蔓延により“運良く”会社が止まったことだったと伊達さんは言います。慣性の法則のように、特別なことをしなくても動いていたものが一度ストップしたとき、大事にしたいことに気づいたそうです。
お客様がいることが嬉しいと身体で感じ、食を通じてまちを豊かにすることが自分の生きがいだと気づきました。
その後、空間プロデュースやインドベジ事業など新しい挑戦を重ねますが、まちづくりに関しては会社を分けて進めていきました。エネルギーはあったものの、自然に湧き出るものがなく、まずは視野を広げようと考えたからです。リスクはなるべく減らしたいと思いながらも、伊達さんは自分で事業をつくっていくR&D型経営者です。新しいことを始めるときには撤退基準を決めずに動き出すことが多く、今は基準づくりに取り組んでいる最中だと言います。
経験を積み重ねながら新しいことに取り組み、効果的な方法を考えていくプロセスが、会社や自分自身の芯を固めていくのだと思います。
株式会社鳥善の詳細はこちらをご覧ください。
まとめ
今回のイベントでは、伊達さんのお話から、主に組織と事業の2つの視点を学びました。どちらにも共通していたのは、正解がない中で自分と対話し続ける姿勢です。伊達さんは、入った環境をそのまま受け入れるのでも、すべてを変えようとするのでもなく、自分なりの方法を探り続けていました。

組織運営や事業承継に正解はありません。今いる環境で、あなたが大切にしたいことは何でしょうか。
伊達さんは、「地域で活動する価値は、地域の価値を上げる活動をしていると賛同者が集まること。やり方が多少間違っていても応援してもらえるのが地域です。」とも話しました。小さなことから一歩ずつ始めて事業基盤をつくり、拡大していくことができそうです。
葛藤は、事業を進める上で軸を形成していくために必要な過程です。TSUGU SHIZUOKAでは、今後も1か月に1回のイベントを予定しており、アトツギ当事者や支援者が共創する場をつくっていきます。
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
インターン 石井恭華
静岡県出身、大学在学中。経済学を専攻し、地域や産業をテーマにしたゼミに所属。
能登半島での復興支援や、静岡県内でのイベント運営などに関わる中で、地域の活動が「どうすれば人に届き、続いていくのか」に関心を持つ。
現在は株式会社HONEにてインターンとして、地域や企業の取り組みに関する記事を作成し発信している。











