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福岡県柳川市まちづくりワークショップ振り返り〜共通言語と仲間作りのプロセス〜【対談レポート】

  • 執筆者の写真: 梨沙子 亀元
    梨沙子 亀元
  • 22 時間前
  • 読了時間: 13分
福岡県柳川市まちづくりワークショップ振り返り〜共通言語と仲間作りのプロセス〜【対談レポート】

2026年1月28日、福岡県柳川市のまちづくりコンセプト策定ワークショップの舞台裏を語る対談を行いました。

実施された全3回のワークショップと、ワークショップ実施に至った背景、それを通じて生まれた「柳川らしさ」への向き合い方について、お話しします。

このレポートでは、ワークショップを共に設計・実施したHONE代表・桜井と、柳川観光協会DMOの氏家さんによる対談を、「まちのコンセプトをつくるとはどういうことか?」を、マーケティング実践者・地域プレイヤーの視点から振り返ります。



ワークショップの内容についてはこちらの記事をご覧ください。


柳川観光の未来を描く


株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料



登壇者紹介


氏家さんプロフィール

氏家 将利 氏

柳川観光協会DMO


1991年埼玉生まれ。SIXPADなどを展開する株式会社MTG、映像スタートアップ・セーフィー社を経てAI×リサーチ領域で起業。その後「本当に困っている現場」に向き合うべく福岡へ移住。2024年より柳川観光協会DMOに参画し、観光プロモーションや地域プロジェクトを推進中。



桜井さんプロフィール

Takato Sakurai / 桜井 貴斗

株式会社HONE / Astlocal株式会社

代表取締役/マーケター


静岡育ち。求人メディア企業での営業・新規事業経験を経て2021年独立。「地方に骨のあるマーケティングを実装する」を掲げ、地域特化のブランド支援、観光プロデュース、民泊経営、プロデューサー育成など幅広く活動。



柳川って、どんなまち?


柳川の紹介

柳川市紹介

福岡市の天神から電車でおよそ50分。

地理的には福岡都市圏に位置し、通勤・通学で市外に出る人も多い、いわばベッドタウン的な性格も持っています。 一方で、観光資源においては全国的にも「川下り」が有名な場所です。

約930kmに及ぶ堀割(ほりわり)のネットワークがまちを巡り、その上を小舟がゆっくりと進む光景は、柳川ならではの風情。そのほかにも、郷土料理の「うなぎのせいろ蒸し」、詩人・北原白秋の生家、立花藩の武家屋敷など、文化・歴史・食の資源がそろっています。



「方向性がバラバラでは、前に進めない」立場を越えた対話の必要性


柳川DMOさん資料
柳川DMOさん資料より抜粋

桜井さん:

今回ワークショップをご依頼いただいた背景を教えてください。


氏家さん:

私が柳川観光協会DMOに転職して、もうすぐ1年半になります。

国の観光戦略や地域計画といった枠組みはあるのですが、実際に現場で会議をすると、どうしてもHowの話が多く、つまり「どうやってやるのか?」から話が始まってしまうことが多いんです。

「誰がやるのか?」といった実行の話に終始してしまって、本来考えるべき「柳川として、何を目指すのか?」という部分に立ち返れないまま、しっくりこないな、と思うことがありました。実際に、自分でもそうしたやり方で動いてみて、うまくいかなかった経験があります。


柳川の象徴的な観光コンテンツである「川下り」についても、現場で感じた難しさのひとつです。

「静かに自然を感じてもらいたい」という事業者さんもいれば、「賑やかに楽しんでもらいたい」という事業者さんもいて、それぞれの価値観が大切にされていました。どちらが良い・悪いではないからこそ、全体としての方向性をまとめていくことの難しさを感じてきました。


こうした経験を通じて私が思ったのは、「個々の正解を尊重しながら、柳川全体としてこうありたいをどう描くか」を作れないかなと考えていました。


桜井さん:

「地域のベクトルを合わせる」って、よく聞きますが、実際めちゃくちゃ難しいですよね。その中で、最初からイメージはありましたか?


氏家さん:

最初は手探りでした。でも、HONEさんとのディスカッションの中で徐々にクリアになっていきました。「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を先に作らなきゃ」と思ってた時期もありましたけど、最終的にはまず「場をつくること」が一番重要だと感じたのでワークショップを開催しました。



データと対話をどう両立させたか?共通言語をつくる、ファクトベースの目線合わせ


コンセプト策定ワークショップ3回の流れ
柳川コンセプト策定ワークショップ3回の流れ

桜井さん:

ご依頼いただいた際に色々と考えたのですが、「ワークショップの前に調査から始めませんか?」と提案させていただきました。

地域の方と話していると、マーケティングや集客の解釈がバラバラで、抽象的な議論が空回りすることも多くて。

だから今回は、定量調査と外部環境分析(デスクリサーチ)をベースに、「満足している人」「不満がある人」はどういう人かを明らかにし、ファクトから対話が始められる設計にしました。


氏家さん:

抽象的な議論だけだと発散してしまう場面もありますし、今回ファクトがあったからこそ、目線が揃えやすかったです。

自分たちだけではできない調査だったので、本当にありがたかったですね。不満の要素まで定量的に見えたのも良かったですね。


桜井さん:

調査データによって、地域の皆さんの思い込みが解ける瞬間もありましたよね。


柳川のSWOT分析(ワークショップ資料より抜粋)
柳川のSWOT分析(ワークショップ資料より抜粋)
柳川の5F(フォース)分析(ワークショップ資料より抜粋)
柳川の5F(フォース)分析(ワークショップ資料より抜粋)

氏家さん:

それに、外部環境分析のフレームワークを説明していただくプロセスも、意義があったと思います。単に「枠を埋める」のではなく、ファクトを見ながら一緒に検討することで、話し合いの土台が整っていく感覚がありましたね。


桜井さん:

フレームワークって、つい「埋めること」が目的になってしまいがちなんですが、本当は「自分たちの強みや方向性を見つけるためのツール」なんですよね。


氏家さん:

資料だけを渡されてもなかなか読まれなかったりしますよね。

でも、あの場で説明を聞きながら、直接スライドや数字を見られたこともよかったと思います。切り口も多く、見解もたくさん出てきて、量は多かったけど、非常に価値ある時間でした。



さまざまなステークホルダーの参加者


第3回目ワークショップ集合写真
第3回目ワークショップ集合写真

桜井さん:

今回のワークショップ、かなり多様な方に参加いただきましたよね。


氏家さん:

はい、鉄道会社さん、観光事業者さん、水門メーカーの方、宿の方、教育関係者など、地域の多様なプレイヤーが集まってくださいました。

年齢層も幅広くて、それがむしろ良い効果をもたらしていたと思います。


トータルで60名ほどが参加してくださいましたが、「根本的な価値観」のような話では、自然と共通点が見えてくる場面も多かったです。それは、やはり最初の調査共有が大きかったですね。



「〇〇といえば柳川」センターピンをつくり、他の価値とつなげる構造を


カテゴリーとは
カテゴリー戦略とは?(ワークショップ資料より抜粋)
カテゴリー戦略
ワークショップで出た意見まとめ

桜井さん:

データの解説後の、カテゴリー戦略のディスカッションはいかがでしたか?

(カテゴリー戦略とは、すでに確立された市場で競合と戦うのではなく、自社にとって有利な独自のカテゴリー=戦う土俵を再定義し、その中で「1番」になることを目指す戦略です。)


氏家さん:

正直、「ひとつに決めきって本当に大丈夫かな」という不安はありました。「他にも魅力あるのに、それだけじゃない」と思っていたので。


でも、桜井さんから「センターピンを立てて、そこから他の価値につなげていく」という説明をいただいて、すごくしっくりきました。

「お客様に想起してもらうための起点」として捉えると、納得できたんですよね。


桜井さん:

よく聞くのが「絞るとそれしかないと思われるんじゃないかな」という不安です。でも、価値の階層の「最上位」にあるものは必ずあって。

それをカテゴリーエントリーポイント(CEP)として設計して、他の魅力ともつなげる構造にすればいいんですよね。「川下りだけのまちにしない」という視点も、まさにそういう議論の中から出てきた言葉です。


氏家さん:

実際に「〇〇といえば柳川」を参加者に出してもらったプロセスもよかったですね。

トップダウンで決めていたら、納得感は得られなかったと思います。



カテゴリーエントリーポイントから見える「柳川らしさ」


CEPを考える
柳川のCEPを考える(ワークショップ資料より抜粋)

桜井さん:

CEP(カテゴリーエントリーポイント)を考える中では、具体的なアイデアが出てきましたね。


氏家さん:

堀割はもともと観光のために作られたものではなく、生活のインフラなんです。それが結果として観光にも開かれている。だから、川下りをしながら、地元の人の暮らしが垣間見える。生活と観光が溶け合った、とてもユニークな体験になっていると思います。

たとえば「舟上同窓会」とか「記念日クルージング」みたいな利用の仕方も生まれていて、具体的なシーンで考えるとイメージしやすいなと感じました。

属性で「都市部の20代女性」などと言われるよりも、CEPのようにどういう瞬間を語るほうが、地域の人とも共有しやすいなと感じました。


桜井さん:

実際に私も体験してみて驚いたのですが、川下りって日本人全員が体験しているものではないんですよね。イメージで語られていることも多い。

でも、乗ってみたら一本の棒で漕いでくれる静けさがあって、舟からの景色は外の空間と隔たりがないんですよ。舟に乗る人同士が向き合って座って、自然と会話が生まれる。これは体験して初めて「なるほど、こういう価値があるのか」と気づけました。


桜井さん:

カテゴリー戦略で言うと、地域の事例で「寿司といえば富山」って最近記憶に新しい事例であります。でも、実際に富山へ行って「富山の寿司って何が違うのか?」を伝えるのって意外と難しいと感じました。魚介が美味しい地域は他にもあるし、差異化しづらいんですよね。

柳川の場合、「川下り」だけを聞いても最初はピンとこないかもしれない。

でも、ナイトクルーズや記念日、家族の時間などの利用シーンを具体化していくと、連想できるものがどんどん浮かんでくる。CEPとして広がりをもたせやすいと感じました。



ワークショップで実感した「仲間づくり」


桜井さん:

最後に、今回のプロジェクト全体を通じて、氏家さんが感じたことを聞かせてもらえますか?


氏家さん:

やってみて一番良かったのは、「仲間ができた」と思えたことですね。

参加された方たちと、ファクトデータから抽象的な話、具体まで一緒に議論してきたからこそ、今後あらためて抽象度の高い議論に戻ったときも、スッと戻れる感覚があります。

「お舟で〇〇」のようなアイデアをもう一度練って、実際の施策につなげていく段階に入っていけそうで、これからが楽しみです。



地域を巻き込むには?DMOとしての姿勢と工夫


桜井さん:

地域の巻き込み方について質問が届いています。氏家さんは、組織内外の調整や、地域との関係構築をどう進めてきたんですか?


氏家さん:

まずは、足を運ぶことを大事にしています。観光事業者さんや飲食店さんに、実際に顔を見せて会いに行く。まずはこちらが「話を聞く」ことが信頼づくりの第一歩だと思っています。あとは、DMOの中でも内部でしっかり関係をつくった上で、外へ出るようにしています。たとえば「こうしよう」ではなく、地域の皆さんの話を聞いて、それを実行に移す。その繰り返しです。



「正論」だけの専門家ではなく現場を大事にする姿勢


桜井さん: 

外部の専門家を選ぶ際に、大事にしていることはありますか?


氏家さん:

 やはり「現場にどれだけ来てくれるか」、そしてその人の「姿勢」が大事だと思います。一方的にアドバイスするのではなく、私たちと一緒に議論してくれる関係性でなければ、地域の方々も心を開いてくれません。


桜井さん: 

たとえば、どんな態度だと「一緒に議論できる関係性じゃないな」と感じますか?


氏家さん: 

すごく単純なことなんですが、たとえばレスポンスが極端に遅いとか、こちらの話に対してすぐ否定から入るとか。 「上から目線でアドバイスされている」「正論だけで押し通そうとしている」と感じると、「この人とは違うかもしれない」と思ってしまいます。

私自身が感じた違和感は、地域の皆さんはもっと敏感に察してしまうはずです。だからこそ、そうした印象を与えないような方を意識して選ぶようにしています。


桜井さん:

「正論」がわかっていても、その通りに進めるのが難しいこと、たくさんありますよね。状況や背景による葛藤もありますし。


氏家さん:

本当にその通りです。現場に寄り添って柔軟に考えてくれる方にお願いしたいと思っています。地域の人たちとともに、より良くしていこうという姿勢で、一緒に行動してくれる専門家の方にお願いしたいと思っています。


桜井さん:ありがとうございます。これからもまだまだ議論は続くと思いますが、私も柳川の可能性をすごく感じたワークショップでした。



研修・ワークショップについてはこちらをご覧ください。


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まとめ


今回のワークショップの背景には、「柳川の観光をよりよくしたい」「地域とともに進めていきたい」という、観光協会DMO・氏家さんの熱意と真摯な姿勢がありました。


観光コンセプトを考えるというと、キャッチコピーやスローガンづくりを連想してしまいます。

しかし今回の取り組みでは、「柳川らしさ」を真正面から向き合い、その可能性を丁寧に掘り下げていく参加者の皆さんの姿勢が、今後の実行フェーズにおける意義につながると感じています。


マーケティングのフレームワークやデータ分析も活用しながら、私たちが目指したのは「正しい答えを導き出すこと」ではありません。

地域の人たちの誇りを繋ぎ、同じ言葉で語れるようになること、その土台をつくることこそが、後の行動力と変化につながると信じています。

マーケティングやまちづくりにおいて本当に大切なのは、共に進めるための土壌と関係性を育てていくこと。あらためて実感できたプロジェクトでした。



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大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。


学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。


誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。


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