静岡茶を食体験の主役へ。老舗料亭・浮月楼でのフードペアリング研究会【株式会社浮月(静岡県静岡市)】
クライアント
浮月楼(株式会社浮月)
地域
静岡県静岡市
プラン
事業伴走プラン

静岡茶と和食の新しい関係性を、参加者とともに探っていく
2026年7月17日、静岡市の老舗料亭・浮月楼にて「静岡茶フードペアリング研究会」を開催しました。
今回のテーマは、料理の席で無料のお茶として提供されることも多い静岡茶を、食体験そのものを豊かにする「ペアリングの主役」へと変えられないか、という問いです。
HONEでは、研究会の企画設計から関係者との調整、参加者募集、研究シートの作成、当日の進行、アンケート分析、レポート制作までを一貫して担当しました。
単発の催事として終えるのではなく、実際に料理とお茶を味わった人の声を集め、今後のメニュー開発や継続的な研究会、さらには静岡を訪れる人へ届ける観光体験へつなげるための第一歩として設計しています。
徳川慶喜公の屋敷跡に立つ、静岡を代表する老舗料亭
浮月楼は、JR静岡駅北口から徒歩3分の場所にある料亭・催事場です。敷地は、江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜公が大政奉還後に約20年間を過ごした屋敷跡。明治24年(1891年)の開業以来、静岡の迎賓館として料理、婚礼、会食、催事など、人生や地域の節目となる時間を支えてきました。

街の中心部にありながら、門をくぐると池泉回遊式庭園と豊かな緑が広がります。庭園は国登録記念物、明輝館は国登録有形文化財となり、歴史、庭、建築、料理が重なり合うことが浮月楼ならではの魅力です。
静岡には、お茶、海産物、山葵、うなぎなど、土地の風土から生まれた食材があります。浮月楼の料理と空間に静岡茶を掛け合わせることで、単に食事を楽しむだけではなく、静岡の歴史や文化を五感で受け取る体験をつくれるのではないか。今回の研究会は、その可能性を実際の食卓で確かめる取り組みとなりました。
「この料理には、このお茶」という正解をあえて用意しない
企画にあたりHONEが重視したのは、提供側があらかじめ正解を決めすぎないことです。
当日は事前に用意した7品の和食と、公益社団法人静岡県茶業会議所の協力により集まった多様な静岡茶を用意。
参加者には、決められた一つの組み合わせを試してもらうのではなく、気になる料理と茶葉を自由に合わせてもらいました。

研究シートには、組み合わせた料理とお茶、味や香りの変化、印象に残った理由、メニュー化の可能性、誰に勧めたい体験かといった項目を設けました。点数をつけて終わる調査ではなく、参加者が何を感じ、どの瞬間に気持ちが動いたのかを言葉として残せる設計にしています。
HONEは、料理とお茶の準備順や会場内の動線、研究方法の説明、参加者同士の対話を含む当日の進行も担当しました。自由に試せる余白を残しながら、得られた声を次の開発に生かせる一次情報として蓄積していく。マーケティングリサーチと食の体験を一つの場に組み込んだことが、今回の研究会の特徴です。
鮪手毬寿司、遠州和え。現場から見えてきたペアリングの可能性
7品の中で「最も印象に残ったペアリング」として多くの支持を集めたのは、漬け鮪を使った「鮪手毬寿司」でした。

興味深かったのは、参加者が合わせたお茶が、香駿、くきほうじ茶、つゆひかり、くき茶など、一つに集中しなかったことです。特定の茶葉との相性だけではなく、鮪の旨み、酢飯の酸味、醤油の香りにお茶が重なることで生まれる、口の中の変化そのものが印象に残ったと考えられます。
一方、浮月楼らしいメニューとして特に可能性が見えたのが、うなぎと山葵漬けを合わせた「遠州和え」です。
うなぎ、山葵、お茶という静岡の食材が一皿の中でつながり、お茶によって脂や後味が整うことが評価されました。おいしさに加えて「なぜ、この場所で、この組み合わせを味わうのか」を伝えやすい点も、今後のメニュー化に向けた強みです。
さらに、「しらすと青菜浸し×くき茶」「白身紫蘇チーズ香煎揚げ×香駿」など、事前の仮説にはなかった組み合わせも参加者の試行錯誤から生まれました。現場で自由に選び、味わい、対話したからこそ得られた発見です。
一度のイベントで終わらせず、静 岡ならではの観光体験へ
アンケートで「この体験を誰に勧めたいか」を尋ねたところ、観光客やインバウンドを挙げる声が多く、次いでお茶好き、食好きという意見が集まりました。

