100年企業の事業承継。創業106年の傘屋のMVV策定【株式会社藤田屋(静岡市)】
クライアント
株式会社藤田屋
地域
静岡県静岡市
プラン
事業伴走プラン

1919年創業、静岡の傘文化を支える会社
株式会社藤田屋は、1919年に静岡市で和傘製造卸商として創業した、傘とレイングッズの会社です。1952年に和傘から洋傘の製造へ移行し、現在は雨傘、晴雨兼用傘、日傘の企画・製造・卸売・販売、レインウェアやレイングッズの取り扱い、OEM生産まで幅広く手がけています。
同社の特徴は、商品を企画・製造するメーカー、複数のブランドを扱う卸売、生活者と直接接する小売の三つの視点を持っていることです。静岡市中心部では、傘とレイングッズの専門店「Party Rain」を運営。用途や好みを聞きながら一本を選ぶ接客を通して、地域の暮らしを長く支えてきました。
オリジナル商品にも、藤田屋ならではのものづくりが表れています。一枚絵のようなデザインを傘全体へ表現できる「da mon de」や、静岡の伝統技術と職人の手仕事を取り入れた日傘「仁心 -nico-」など、雨や日差しを避ける道具にとどまらず、持つ人が天気や装いを楽しめる商品を提案しています。
100年以上続く歴史、商品の企画力、卸売で培った幅広い知識、専門店としての顧客接点。藤田屋には多くの資産がありました。一方、それらを次の時代へどうつなぎ、会社として何を目指すのかは、あらためて言葉にする必要がありました。

事業承継を前に、進む方向を示す旗印がなかった
ご相談の背景にあったのは、四代目として家業へ戻ることを決めた藤田大悟様の事業承継です。
藤田様は大学進学を機に静岡を離れ、大手自動車系サプライヤーで傘とは異なる分野の経験を積んでいました。当初は家業を継ぐ予定ではありませんでしたが、自分が継がなければ、会社も、地域に親しまれてきた店舗もなくなる可能性がある。そうした現実に向き合い、2024年に静岡へ戻ることを決断されました。
帰郷前から社内へのヒアリングや事業計画の作成を進めていたものの、課題は多岐にわたり、どこから手をつけるべきか分かりにくい状態でした。なかでも大きかったのが、創業時から受け継いできた思いと、これから目指す未来をつなぐ「旗印」が明確になっていないことでした。
長く続いた会社だからこそ、既存事業や社内の価値観を無視して新しい言葉を掲げることはできません。一方で、過去の延長だけでは、社員、取引先、顧客に対して、次の藤田屋がどこへ向かうのかを示せません。事業承継を単なる代表者の交代にせず、会社の存在意義と未来を考え直す機会にすることが求められていました。
全5回で、理念と市場を往復するブランド戦略を設計
HONEでは、静岡県産業振興財団の専門家派遣制度を活用し、全5回の支援を行いました。
当初のご相談は、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の作り方を知りたいというものでした。しかし、理念を言葉にするだけでは、事業や商品へ落とし込む際に再び迷いが生まれます。そこで、MVV策定に加え、市場調査、アンケート設計、顧客理解、BEP(ブランド・エクイティ・ピラミッド)の考え方まで、藤田屋の課題に合わせて内容を組み立てました。
まず、藤田屋が長年大切にしてきたこと、顧客や地域に提供してきた価値、これから変えたいことと変えたくないことを整理しました。そのうえで、経営側だけの理想に閉じないよう、市場や顧客の事実と照らし合わせながら、ブラン ドが目指す姿を検討しました。
顧客インサイトを考える場面では、思いつきの人物像や感情から始めず、アンケートや顧客接点から得られる事実を起点に仮説を組み立てることを重視しました。仮説を完璧に仕上げてから動くのではなく、一定の方向性が見えた段階で実証し、結果から更新していく。承継後も自社で考え続けられるよう、答えだけでなく判断の仕方を共有しました。
こうしたプロセスを通じ、藤田屋が傘を通して届けたい価値を言語化し、MVVとブランドの設計図を整えていきました。傘を雨よけ・日よけという機能だけで捉えず、自分らしさを表現し、愛着を持って使い続けられる生活必需品へ変えていく。その方向性は、その後の商品や発信、新規事業を考える際の基準になっています。
言葉を、次の行動へつなげる
MVVの役割は、きれいな言葉を掲げることではありません。迷ったときに戻る基準となり、新しい挑戦を社内外へ説明するための軸になることです。
藤田屋では、策定した考え方をもとに、アトツギ甲子園への出場、クラウドファンディング、アンブレラスカイの実施など、次の行動が生まれました。100年企業が守ってきたものを起点にしながら、これまで接点のなかった人にも傘の価値を届ける挑戦が続いています。
HONEの支援は、藤田屋の代わりに答えを決めることではなく、四代目と社員の皆さまが、自分たちの言葉で未来を語り、事業へ変えていける状態をつくることでした。事業承継という節目に、過去と未来、理念と市場、思いと行動をつなぐブランド戦略の土台づくりを支援し ました。
実施内容
● 事業承継に向けた課題・価値観の整理
● MVV策定のためのワークと伴走
● 市場調査・アンケート設計の助言
● 顧客インサイトの仮説設計
● BEP(ブランドエクイティ・ピラミッド)を用いたブランドの目指す姿の整理
● 全5回の専門家派遣プログラム
クライアント情報
株式会社藤田屋 公式サイト:
▼お客様のインタビューは以下よりお読みいただけます





