築90年の古民家を、地域と旅人が交わる宿へ。用宗「ミクソロジーハウスふじや」の立ち上げ
(自社事業)
クライアント
Astlocal株式会社
地域
静岡県静岡市
プラン
事業伴走プラン

港町の古民家に、地域の新しい入口をつくる
ミクソロジーハウスふじやは、静岡市の港町・用宗にある築90年以上の古民家を再生した、一棟貸しの宿泊施設です。Astlocal株式会社が運営し、家族や親族、友人同士の旅行、合宿など、複数人でゆったり過ごせる宿として国内外の旅行者を受け入れています。
用宗は、静岡駅からアクセスできる距離にありながら、海、漁港、路地、地元の飲食店、クラフトビールなど、港町らしい時間が残る地域です。宿から海岸へ歩き、富士山を望み、地域の店で食事をする。観光施設を巡るだけではない、暮らしに近い滞在ができることが魅力です。
建物の古さも、単に取り除く対象とは考えませんでした。長年使われてきた柱や建具、部屋のつながり、広い畳の空間を残しながら、水回りや寝具など宿泊に必要な設備を整えています。古民家ならではの味わいと、複数人が安心して過ごせる快適さの両立を目指しました。
「ミクソロジー」は、本来、異なる材料を組み合わせて新しい一杯をつくる考え方です。地域住民、旅行者、空き家、地域の事業者、外から来た人の知恵を混ぜ合わせ、新しい価値をつくる。施設名には、そのような思いを込めています。

空き家、宿泊、地域との関係を同時に解決する
プロジェクトの出発点には、静岡市の二つの課題がありました。一つは、使われなくなった住宅が増えていること。もう一つは、静岡が目的地として通過されやすく、市内での宿泊や滞在が十分に生まれていないことです。
空き家を改修して宿にすれば、すぐに地域課題が解決するわけではありません。物件を探し、所有者と話し、法令や届出を確認し、改修費を確保し、近隣住民の理解を得る必要があります。開業後も、予約獲得、清掃、騒音やごみへの配慮、地域の店や交通の案内など、運営を続ける仕組みが欠かせません。
特に大切にしたのが、地域の外から来た事業者だけで完成させないことです。宿泊者が増えることに不安を持つ人もいれば、古い家の改修を応援したい人もいます。完成後に説明するのではなく、つくる途中から地域との接点を生み、どのような場所を目指すのかを共有する必要がありました。
資金集めの前に、仲間を集める
ふじやの立ち上げでは、改修と開業に必要な資金を集めるため、クラウドファンディングに挑戦しました。
ただし、ページを公開して支援を待つところから始めたわけではありません。地域の方々と一緒に壁を塗る左官イベントやDIYの機会をつくり、実際に建物へ入ってもらいました。手を動かした人にとって、ふじやは知らない会社の施設ではなく、自分もつくる過程に関わった場所になります。
SNSでは、完成予想図だけでなく、工事の進捗、うまくいかないこと、地域の人と作業する様子を発信しました。チラシや声かけも組み合わせ、オンラインだけに閉じない広報を行いました。
クラウドファンディングでは、宿泊券だけでなく、施設や地域とのさまざまな関わり方を用意しました。最終的に245名から500万円を超える支援が集まりました。資金調達の達成だけでなく、開業前から応援者と将来の宿泊者が生まれたことが、大きな成果です。

