地方企業のためのコーポレートブランディング|全体像と測定指標について。
- 2 日前
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「技術もサービスもいいのにクライアントに刺さりづらい」
「採用募集を出しても応募が来ない」
「SNSで日々発信しているのに、会社のらしさが伝わらない」
こうした悩みの根っこには、「会社として何者か」「自分たちは何屋なのか」が言葉になっておらず、結果としてアウトプット(例:Web、採用資料、会社紹介、SNS、PR、現場体験)がバラバラになっている問題がよくあります。
コーポレートブランディングは、ロゴやデザインを整えたり新聞広告を出す話ではなく、企業のアイデンティティを言語化し、社内外のコミュニケーションを統合して、好ましい評判(レピュテーション)を積み上げるための一連の経営活動のことを指します。
本記事では、実践フレームワークも踏まえながら、コーポレートブランディングの流れとフェースごとに決めるべきこと、そして見るべき効果指標について、地方企業向けに具体化してまとめた内容となっています。
▼この記事でわかること
コーポレートブランディングとは何か(プロダクトブランディングとの違い)
実践の全体像(4段階プロセス)
各段階で決めるべきこと/作るべきアウトプット
他社の事例(言語化→アウトプット一貫の例)
地方企業に求められる、優先順位の付け方と進め方
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目次
1) 発信する前に、「会社の軸」を決めること
2) プロダクトブランディングと違い、「全社変革」となる
3) 効果指標も多様化
Stage 1:理念・ビジョン
Stage 2:コーポレートブランド開発
Stage 3:コミュニケーション設計(社内浸透+社外発信)
Stage 4:レピュテーション構築・測定
他社の事例
コーポレートブランディングとは?
まず、コーポレートブランディングとは何か?について、一言でいうと、「組織のアイデンティティをマネジメントし、ステークホルダーとの間に好ましいレピュテーション(評判)を形成するためのプロセス」です。
少し抽象的でわかりづらいと思いますので、以下の3つのポイントに沿って深掘りしていきます。
1) 発信する前に、「会社の軸」を決めること
SNSの発信や採用サイトでの求人募集の広告配信に力を入れても、軸が曖昧だとメッセージが毎回ブレてしまいます。逆に言えば、軸がしっかりして言語化できると、アウトプットの判断基準が揃い、制作・発信が一気に強くなるとも言えます。
2) プロダクトブランディングと違い、「全社変革」となる
コーポレートブランディングは、顧客だけでなく採用候補者、社員、地域、投資家など複数のステークホルダーが関わります。だからこそ、部門・会社内外をまたぐ「全社案件」になりやすく、推進体制や巻き込み方が成否を分けることとなります。
3) 効果指標も多様化
コーポレートブランディングの成果を何をもって測るか?については会社によって分かれています。例えば、以下のようなものが効果指標として設定されることがあります。
【測定設計】
✔ ミッション/ビジョン理解・浸透(社内)
✔ 顧客認知・ブランド体験
✔ 採用・人的資本
✔ ビジネス成果(売上・収益)
✔ CSV の具体価値
✔ リスク管理/リスク露出
成果や評判は短期でつくれません。理念・行動・発信・体験が一貫し、時間をかけて信頼が積み上がっていきます。
コーポレートブランディングの流れ(4段階プロセス)
電通×研究者の論文をベースに考えると、コーポレートブランディングは次の4段階で整理されています。
理念・戦略ビジョンの策定(Stage 1)
コーポレートブランド開発(Stage 2)
コミュニケーション設計(Stage 3)(社内浸透+社外発信)
レピュテーション構築・測定(Stage 4)
この流れで重要なのは、上流(言語化)が曖昧に設定してしまうと、下流(アウトプット)が増えるほど矛盾やブレが生じてしまうことです。
まず最初にやるべき「勝ち筋とスコープ」の決め方
いきなりコーポレートブランディングをつくろうとして理念の言語化に入ってしまう前に、地方企業ほど先にやった方がいいのが 「勝ち筋(目的)とスコープ」の設定です。
なぜならば、地方企業はほぼすべてにおいてリソースが限られており、「とりあえずやってみよう」「一通りやってみよう」では破綻してしまうからです。
まず、ここで決めたいのは、次の4点です。
何を実現したいか(勝ち筋):採用強化/指名相談を増やす/海外信用を高める/地域の信頼を得る…
やる範囲(スコープ):採用から?営業資料まで?サイトまで?現場体験まで?
やらないこと:ロゴ刷新は今回はやらない、マス広告はやらない…など
成功指標(KGI/KPI):応募数、内定承諾率、指名相談率、紹介数、eNPS…など

ここの合意があると、あとで「やっぱりこれも必要かも…」が起きにくくなり、プロジェクトのちゃぶ台返がなくなっていきます。
各段階で決めるべきこと・作るべきアウトプット
それでは具体的に4つのステージごとに「決めるべきこと」→「出すべきアウトプット」→「つまずきポイント」の順で整理をしていきましょう。
Stage 1:理念・ビジョン

▼決めるべきこと
存在意義(Purpose / Philosophy):なぜこの会社があるのか
Mission:何によって、誰に、どんな価値を届けるのか
Vision:将来どうありたいか(ありたい姿)
Values:意思決定の基準、守る価値観
単に整えた美しい言葉ではなく、現場の人たちが納得する言葉、意思決定に使える言葉になっているかがポイントになります。
▼つくるべきアウトプット(例)
PMVV(Purpose/Mission/Vision/Values)をまとめる
トップメッセージ(社長の言葉):なぜ今これをやるのか/何を変えるのか
自分たちのブランドらしさの定義(トーン&マナー)
▼つまずきチェックポイント
一見かっこいいけど、現場の業務とつながらない
社長の言葉と、部門の現実が乖離している
※Stage 1は「正しさ」より納得と運用が重要となります。
Stage 2:コーポレートブランド開発

上記の電通報の整理では、コーポレートブランドは 社名/VI(視覚表現)/スローガンなどの組み合わせで、理念・ビジョンを社内外に明確に伝えるための表現手段とされています。
▼決めるべきこと
独自価値を定義する
例:「◯◯な現場課題を、◯◯の強みで、◯◯な形で解決する会社」
Proof(証拠):実績・技術・数字・事例・思想など、信頼の根拠
ブランドプロミス:顧客や候補者に約束する体験は何か
VI運用ルール/トーン&マナー/NG表現:言葉と見た目のブレ防止
▼つくるべきアウトプット(例)
タグライン/スローガン案(国内・海外があるなら分ける)
メッセージ(統合したメッセージ+根拠+訴求軸)
ブランドガイドライン(簡易版でもOK)
ロゴ、色、写真、文章のトーン、禁句、表記ルール
会社紹介スライド(営業・採用どちらにも使えるようなフレームに)
事業の成果・実績集
▼つまずきチェックポイント
強みを盛ってしまうと運用時に現場が苦しくなる
Proof(根拠)が弱くなると、「想い」先行となってしまう
Stage 3:コミュニケーション設計(社内浸透+社外発信)

Stage 3は、認知・理解・共感・支援を得るための設計です。ここで重要なのが、社内浸透(Internal)と、PESO(Paid/Earned/Shared/Owned)を組み合わせた社外発信(External)を分けずに考えることです。
▼決めるべきこと
最優先ステークホルダー(上位3者):誰に集中するか
Key Message:ステークホルダー別に、何を第一想起にしたいか
情報発信基地(Owned)をどこに置くか:Web/パンフ/現場体験/採用LPなど
PESO設計:Paid/Earned/Shared/Ownedをどう組み合わせるか
社内浸透のゴール:社員が自分の言葉で語れる状態をどこまで作るか
▼つくるべきアウトプット(例)
内部(浸透)
ブランドブック(薄くてOK)/クレドカード
管理職向け「会話ガイド」(理念を現場の言葉に翻訳)
オンボーディング資料(新入社員向け)
表彰・称賛設計(行動指針を強化する仕組み)
外部(発信)
コーポレートサイト(理念・強み・Proofが伝わる構成)
採用LP(EVP・社員ストーリー・仕事のリアル)
プレスリリース雛形/メディア向け資料
SNS運用ガイド(投稿テーマと禁則)
現場体験の設計(工場見学、店舗体験、オフィスツアー など)
▼つまずきチェックポイント
発信担当だけが頑張って疲弊(“属人化”)
部門ごとに勝手に発信して、言葉が割れる
電通報でも、SNSの普及を背景に情報発信の一元管理や、機能統合がトレンドとして言及されています。

Stage 4:レピュテーション構築・測定

レピュテーションは「価値創造能力に対する評価の総体」で、長期的に蓄積される資産です。だからこそ、Stage 4でやるべきは短期的な数値だけを追うのではなく、中長期で終える数字を設定することです。
▼決めるべきこと
KPI設計(領域別に設定)
採用:応募数、内定承諾・辞退率
顧客:指名相談率、紹介数、NPS など
社内:eNPS、理念理解度、離職率 など
地域:見学受入数、メディア掲載数 など
レビュー頻度:月次/四半期など
危機管理の基本セット:想定問答、連絡網、公式発信テンプレ
▼つくるべきアウトプット(例)
レピュテーション・ダッシュボード(スプレッドシートでもOK)
定例会議の型(見たい数字、議題、意思決定ルール)
危機管理テンプレ(Q&A、一次コメント、社内アナウンス)
▼つまずきチェックポイント
KPIが見たい数字ではなく可視化できる(可視化しやすい)数字になってしまう
KPIが多すぎて集計することに躍起になってしまう
アウトプットの優先順位の付け方
地方企業のコーポレートブランディングでよくある失敗は、「制作物(アウトプット)が多すぎて運用できないことです。そのため、おすすめは最初から3つの段階に分けて運用すると良いと思っています。
Must(必須):(例)採用LP・会社紹介資料・コーポレートサイトの要点整備
High(優先):(例)実績集・社員インタビュー・広報素材(写真・動画)・PRの型
Mid(余力):(例)ブランドブック・カード・ノベルティ・空間演出の作り込み
他社の事例
一貫性の作り方の参考として紹介します。
1) Patagonia:ミッションを短い言葉にし、行動と発信に落とし込む
Patagoniaはミッションとして「We’re in business to save our home planet.」を掲げています。さらに、リペア・循環の取り組み(Worn Wear)など、ミッションに沿った施策・情報設計へ接続しています。

2) サイボウズ:PurposeとCultureを組織文化をブランドの核にする
サイボウズはPurposeとして「チームワークあふれる社会を創る」を掲げ、あわせて複数の文化(Culture)を明文化しています。理念だけではなく、文化の言語化も行い同時に発信しています。

3) 星野リゾート:MISSION/VISIONを明確にし、採用・体験価値に接続する
星野リゾートはVISIONとして「世界で通用するホテル運営会社」を掲げ、MISSIONとして「旅は魔法」という独自の言語で旅の意義を切り取っています。

4) スノーピーク:ミッション改定の背景まで語り、事業展開の筋を通す
スノーピークはミッション(The Snow Peak Way)を改定し、時代変化に合わせて以前の言葉が合わなくなった背景も含めて説明しています。

最後に:地方企業に求められるコーポレートブランディングの要点
ここまでコーポレートブランディングの定義や考え方について書いてきました。最後にリソースの限られる地方企業だからこそ「ここだけは押さえてほしい」というポイントを記載させていただきます。
1) 上位3ステークホルダーに集中する
ステークホルダー全員に刺さるメッセージをつくるのはとても難易度が高いです。そのため、まずは「採用候補者」「顧客」「地域」など、上位3者に絞って設計すると、アウトプットがシャープになります。
2) Owned(自社の発信基地)を最優先にする
PESO(Paid/Earned/Shared/Owned)でいうと、地方企業ほど最初に手をつけるべきなのはOwned(自社サイト、パンフレット、現場体験など)だと思っています。ここが脆弱だと、広告やSNSでいくら頑張っても受け皿がなくなってしまいます。
3) 現場をブランド接点の主役にする
地方企業には、工場・店舗・地域との関係など、都心よりも地域コミュニティが強い傾向にあります。HONEが大切にしているのも、机上ではなく現場に足を運び、地域の空気や人の温度から戦略へ落とすことです。現場できることを優先して考えましょう。
4) 推進体制を設計する
PRマトリクス「誰に×どの部門が関わるか」を棚卸しし、推進部門・連携方法を考えることを推奨しています。地方企業は人が少ないからこそ、担当者の善意・自己犠牲に依存しない運用設計が必要です。
もしこの記事を読みながら、「うちのブランドの強みってなんだろう」「どんな価値を届けたいのだろう」などと感じることがあれば、HONEにお気軽にご相談ください。
HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。
日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。
地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。

▼HONEにできること
語られていない価値の「骨」を探す
商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。
現場に入り、五感を使って「骨」を磨く
戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。
手を動かしながら、「骨」を強くする
支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。
文化となる「骨格」を、未来へ残す
目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。

▼HONEの強み
01/一貫サポート
戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。
02/現場主義
デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。
03/全国実績
北は北海道、南は沖縄まで、一次産業から観光、教育、行政、ベンチャー、スタートアップ、アトツギなど、多種多様なプロジェクトに携わってきました。たくさんの地域を見てきたからこそ、それぞれの良さに気づくことができます。そして土地に根付くその事業の「らしさ」を、より鮮明に見つけることができます。全国各地で積み重ねた知見を、次の挑戦に活かします。
04/産学官連携
企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。

なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか
マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。
制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。

地方に必要なのは、「地域理解」
こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。

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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。










